第196話 素材精錬と研究所づくり

 とうとう今週は、何の音沙汰もなかった。僕もダイアリーに書き込む内容がなく平和に過ごしたが、昨日と今日は、ダイアリーに書き込みたいことが目白押しだ。まず、溶岩魔道具。お湯は、3日間チョロチョロと出続けた。それで、溶岩採集にキャンプ旅行に行くことになった。


 コテージは、作ることができた。地下部分は、苦労して取り外した。結界は、何とか持ち上げることができる位の溶岩から、ミスリルを精錬して取り除くことで魔石として使用することができることが分かった。ただ、魔力を満タンにしても2日間は持たない。でも、見えない宿泊場所ができたことは、大きい。それをもってキャンプ旅行に出かけた。


 溶岩が取れる場所だから当然温泉があった。温泉を堪能し、見つかりにくそうな場所から溶岩を採集する。そんな旅行を土日で行った。でも、旅行だけで疲れてしまって、実験はできていない。実験は来週行うことにする。


 結界を張ることができるコテージを完成させたことをダイアリーに書き込んですぐに寝た。お風呂は、午前中に入っていたからもういい。シャワーだけ軽く浴びておやすみなさいだった。





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 次の朝、僕たちは早い時間に皇宮を出た。冒険者ギルドに寄ってミノタウロスの素材を受け取るためだ。全ての素材をアイテムボックスに入れ、1体のミノタウロスの素材を精錬分析する。ミノタウロスの血液を分析したら、ミノタウロスの血液を精錬し取り出す。これで、血抜きが終了だ。皮、それぞれの肉素材。骨と解体していく。一通り解体出来たら、次は、数体まとめて解体だ。ミノタウロスの素材は多数ある為、解体作業も複雑になるが、一通り解体出来れば、比較的短時間で解体できるようになる。


 時間経過が止まっているアイテムボックスの中で保管しているから素材が痛むことは無い。昨日の約束を果たすため、クルトシェフの自信作のお店に行った。朝早すぎて、シェフはまだ来ていなかったけれど、女将さんという人が掃除に来ていたから、肉を100kg程渡しておいた。ついでに、溶岩魔道具で、氷の魔道具を作って、痛まないようにその中に入れておいた。渡された肉の量と魔道具にびっくりしていたようだけど、色々な部位の肉を渡したから値段的には、そう高くないかもしれない。


 帝国からの帰りは、僕たちは、自分たちの3人乗りドローン2台で先に戻ることを了承してもらっていた。ロイヤルドローンのそもそもの編隊飛行にも慣れてもらわないといけないからだ。


 帝都の門を抜け、草原に向かってゴーレムバイクとマウンテンバイクで走っているとタブレットが振動した。ゴーレムバイクは、バイクに運転をお願いすることができる。そういう意味では、マウンテンバイクよりも楽だ。なんて思っていたら、みんな停車してドローンに乗り換える準備をしていた。


「皇帝陛下から連絡が入ったよ。」


「俺たちにも入っているぞ。多分同じ内容だ。皇帝陛下は、パーティー送信の設定を解除しなかったようだな。」


『ルキーノ:次は、王国に遊びに行く。招待するから必ず来るように』


「絶対嫌ですって送り返してやりたいな。」


「私は、怖いから送り返すのも招待されるのも嫌です、お留守番します。」


「シエンナ、それは無理だと追うぞ。留守番なんかしてたら、皇帝陛下が家までくるぞ。絶対な。」


「嫌です~。」


「「「「アハハハ。」」」」


 笑いながらドローンを出した。ここまでくれば、パーティードローンだ帰って良いだろう。全員搭乗。


 テーブルの上に御茶菓子を出して、優雅に帰国だ。2時間弱で砦に着く。


 ドローンの中で、帝国に渡す3台の写真機能付きにタブレットを精錬した。砦に着いたら、輸送用ドローンで王都の国営商会に送らないといけない。国営商会では、魔術契約の内容変更で大わらわだろうから申し訳ないけど、僕たちが届けるわけにはいかないから頼む。


 10時前に砦に着いた。少しの間パーティーハウスで休憩して、11時には、研究所の様子を見に行った。何故かミーシャ様とチャールズ様が居た。


今日こんにちは。」


 僕が挨拶するとミーシャ様は可愛いカーテシーとともに挨拶を返してくれた。


今日きょうは、何か気になることでもあっのですか?」


「いや、とくにはございませんの。ただ、出来上がった後、私の研究室になる部屋を早く決めたくて。それから、研究所の中には、お風呂はございませんの?作るのでしたら、どのあたりに作る予定なのでしょうか?」


「お風呂や食堂はできる予定ですよ。お風呂は、男女別にできる予定です。居住エリアは、男性が3階、女性が4階になると思います。しかし、居住エリアと言いましても仮眠室程度ですから、あまり期待でくださいね。1階と2階は研究エリア。総合研究は各階の中央で行うようにします。1階に鍛冶師エリア、工学魔術師エリア、2階に精錬術師エリアと錬金術師エリアを作ろうと思っています。工学魔術師と鍛冶師のエリアが1階なのは、使用する素材が重たいからです。」


「それでは、私の研究エリアは、1階ですか?」


「そうですね。ミーシャ様は、工学魔術に入りますね。素材を加工して様々な物を作ることがお出来になりますからね。」


「アンディー様みたいに様々な素材を自由に加工することができる様になればいいのですが…。」


「熟練度と経験の両方必要です。魔力の扱いや浸透させることができる素材の種類は熟練度が上がらないと上達しませんし、増えません。イメージ通りに素材を加工するには経験が必要です。焦らないで、研究を続けていきましょう。」


「はい。分かりました。」


「ミーシャ様、俺も最初は、土だけしか加工できなかったんだ。沢山魔術を使えば、熟練度は上がる。だから、一緒に頑張ってみよう。チャールズ様も同じだ。色々なことに挑戦して欲しい。」


「「はい。」」


 僕たちは、建築現場に入って行って親方に声をかけた。


「おう。おめえたちか。ゴーレム使いの姉ちゃんも来ているのか?」


「はい。来ています。」


 後ろからシエンナが返事をした。


「嬢ちゃん、ゴーレムで材木を運んでくれねえか。壁の外側からな。それから、兄ちゃんたちは、アイテムボックス持ち何だろう。それなら、床板を渡しちゃくれねえか。4階建ての大きな建物だからな。外壁も石積みが必要なんだよ。手伝ってくれ。強度を増すために、中壁にも石を積み上げるからな。」


 親方の指示で、床板を渡したり、石壁を積み上げたりと忙しく働いた。普通なら5日間かかる工程が2時間程度で終わっていく。慌ただしく作業が進み研究所の形が少しずつできていった。


 僕たちが建築現場から戻った時には、ミーシャ様とチャールズ様は王都に戻られた後だった。


「ふぇー、今日も慌ただしかったな~。」


「お疲れ様です。これ冷たいジュースです。飲んでください。」


 僕たちは、3人で職人の皆さんに初級ポーション入りのジュースを渡していった。


「それから、砦の中にお風呂もあります。ここを出る時にお風呂代の鉄貨1枚をお渡ししますからお風呂に入って帰って下さい。きっと疲れが取れますよ。」


 職人さんたちは、準備した鉄貨を受け取り砦の方に歩いて行った。村に酒場でもあれば、盛り上がるんだろうけど、日銭は渡していないから、町に帰って酒場に行く人も少ないだろう。


「親方、砦の中に簡易宿舎を作ることもできますが、やっぱり毎日町まで戻りたいですよね。」


「そうだな。家庭持ちがほとんどだし、ゴーレムバスがあるからな町まで戻っても10分位しかかからないからな。」


 やっぱりお風呂のサービス位で満足してもらうしかないか。出来上がった時は、家庭持ちの方は、家族連れで来てもらって楽しんでもらえるように準備をしておこう。


 研究所建築3日目、帰りのお風呂サービスと初級回復ポーション入りジュースのサービスを始めた。


 パーティーハウスに戻ると、アグリゲートパーティーハウスに明かりがついていた。最初のパーティーが決まったのかな。


「アグリゲートパーティーハウスに明かりがついてますね。」


「誰か見学に来たのかもしれないぞ。新メンバーなら家具なんかをそろえてあげなきゃいけないからな。」


明かりがついているパーティーハウスのドアをノックするとミラ姉が出てきた。


「お帰り。ちょっとお客さんが来ていてね。中を案内していた所なの。」


「ああっ。レイやっと戻って来たのか。今日は、ここの家にお泊りさせてもらうことになったぞ。」


「チャールズ様…。お帰りなったのではなかったのですか?」


「私もいますよ。」


「ミーシャ様、ドリー様。」


「いやあ、明るいうちに王都に戻るように話していたのだが、こんな時間になってしまって…。私は、夜間飛行の訓練をしておらぬのでな。済まぬが、今日は泊めさせてくれ。王宮にはすでに連絡している。色々と行き違いがあってな。ロイヤルドローンで迎えに来る手はずだったのだが、ドローンが直接帰ってしまったようなのだ。国王陛下もお主らと一緒なら安心だと許可いただいた。今晩は宜しく頼む。」


「ミーシャ様、チャールズ様、私たちのパーティーハウスにお泊りなった方がよろしいのではないですか?部屋は準備できますよ。」


ミラ姉は、さっきからパーティーハウスに泊ることを進めているようだ。


「この家に泊まりたいぞ。あの面白いお風呂に入ってみたい。」


チャールズ様は、溶岩風呂が気に入ったようだ。一人で風呂に入りたいと主張していらっしゃる。


「チャールズ、本当に一人でお風呂に入ることができるの?広いお風呂に一人なんて怖いんじゃない?」


「怖くなったらドリーを呼ぶから大丈夫だぞ。ドリーは、お風呂の側で待っていてくれるだろう。」


「はい。警護しておりますよ。できれば、ミーシャ様とご一緒に入っていただければ警護もしやすいのですが…。」


「姉上と一緒は、嫌だぞ。もう、子どもではないのだからな。」


「はいはい。では、チャールズが一人で入りなさい。私は、後でドリーと一緒に入るわ。」


二人で、この家を楽しむ気、満々のようだ。


「では、食事は一緒にいたしましょう。準備ができたら呼び来ますので、それまでおくつろぎ下さい。」


話をしている間に僕とアンディーで3人分のベッドや寝具を準備した。急遽作ったものだからあんまり大したものはできなかったけど、寝心地がよさそうなベッドは精錬して作っておいた。


3人をお招きして食べた食事は楽しかった。エリックさんも嬉しそうにたくさんの料理を出してくれた。僕たちにしては、夜遅くまで食べ話した。


ミーシャ様の建築現場の感想が面白かった。兎に角あっと言う間に建物が形作られていくのが面白かったようだ。僕たちが気が付かないことに気がついていらっしゃった。


例えば、研究室のつながりと合同研究のつながりとか…。とかく素材が重くなりやすい鍛冶氏エリアと工学魔術師エリアを1階に固定してしまうと、錬金術師と鍛冶師だったり工学魔術師と精錬術師―これは、僕とアンディーの組み合わせだ―だったりの共同研究がしにくくなるのではないかとか。


2階でも重い素材の研究をできるようにすれば、各階に4つのエリアを作ることができて共同研究が進むのではないかなどだ。2階で重い素材の研究ができるようにしなくても1階2階ともに4部門の研究エリアを置くことは良いかもしれない。


本当に2階ではできないような重い素材を使った研究は、実験工房で行えば良い。研究所の話を沢山して、楽しい時間を過ごすことができた夜だった。


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