第191話 帝国移譲用ドローン
ここは、森のダンジョンのガーディアン間だ。コアを回収して、最後2体のガーディアンコアを破壊し終えたところだ。現れた魔石を壇上にセットして扉を開く。
開いた扉から出ると、すぐ右側に見えない工房がある。タブレットで結界の解除を指示して、門扉を出し、すぐに中に入った。
「結界を張ってくれ。」
結界の魔道具に向かって指示する。タブレットと同様、登録者の声で指示を理解して反応してくれる。
「さて、ドローンを作ろうか。まずは、今まで通りのドローンを作成して武器を外してキャノピーを作り替えた方が良いのかな?」
僕が聞くと、アンディーが反対してきたというか、教えてくれた。
「三人乗りドローンの武器無しバージョンは、既に作っているはずだぞ。そっちが先だったからな。」
アイテムボックスを探し見るとあった。
「あったよ。じゃあ、3人乗りドローンを精錬してみるよ。」
15分程で完成した。これから、キャノピーを飛行中にも開くことができるようにしないといけない。しかも、隙間があったらいけないからかなり難しい。上空にいる場合、キャノピー内の気圧と外部の気圧差が大きいから、そのまま開いてしまったら、大変なことになる。開くことができるとしたら、高度1000mくらいまでだと言っておこう。まあ、そんな上空でキャノピーを開く必要があるとは思えないけど…。
普段の飛行も高度2000mまで上昇する必要な少ないと思う。2000mだとかなり気圧が低くなる。急に20%近く気圧が下がることになるから、耳鳴り位で済めばいいと思えるレベルだ。でも、気圧の調整をした後であれば、開けないことは無い。緊急脱出をしても、ヒールで癒せる程度のダメージしか受けないと思う。
ドローンにはキャノピー内の気圧の調整機能は、既についている。ゴーレムコアに支持を追加すればそれを調整することはできるようになる。外の気圧とほぼ同じ気圧にしてキャノピーを開くようにすれば地上で開くのと変わらない力で開け締めすることができるようになるはずだ。
しかし、地上と違うのは、速度がある可能性があるということだ。どちら向きか分からないが移動中にキャノピーを開かないといけないかもしれないとしいことが大きく違う。だから、停止中の開き方と違い完全に本体内に収納する開き方にすることにした。側面に何本も切れ目が入って景色の見え方は良くはないが、前方と後方のフードを除いて、キャノピー全体をドローン内に収納して開く方式になった。
しかも、基本、空気が漏れないような作りにしないといけないから大変だった。主にアンディーが。何度も試験をして出来上がりまでに3時間程度かかったが、なかなかいいものが出来上がった。3人乗りドローンは、こっちを主流にしても良いかもしれない。
出来上がったら、試験だ。まずは、シエンナに使役してもらって無人飛行試験。上空でのキャノピー開閉試験も行った。結果は、上々。20分ほど飛行試験をした後、有人飛行実験に切り替えた。
操縦は、シエンナ、中央座席にロジャー、後部座席にアンディーだ。飛び立ち前にロジャーとアンディーから指摘があった。
「座席を変えないとダメだ。後部座席は、普段は、前を向いていていても、キャノピーを開いた時には、後方を向くことができないと後ろに回られた時に対処できない。」
「中央座席は、立った状態で体を保持できないと、前と横への攻撃ができないぞ。前方と後方にはフードがあるからそれよりも高い所から攻撃できないといけない。前方フードはともかく、後方のフードは、低くするか、収納できるようにした方が良いんじゃないか?」
「分かった。座席の工夫は、アンディーに任せて良い?中央の座席は、立ち上がるよりも、座席を
「いや、俺たちは、立っていた方が攻撃魔術を使いやすいな。座っていても大丈夫な者もいるかもしれないけど、ほとんどの攻撃魔術使いは、立っていた方が使いやすいんじゃないか。俺は、魔術というより投擲だからな。なおさらだ。」
「じゃあ、風で飛ばされたりドローンから落ちたりしないように腰の辺りだけを固定してたっておけるようにして、椅子を収納しようか?」
「そうだな。キャノピーを開けるということは、戦闘態勢になるということだからそれが良いかもしれないな。」
それで、キャノピーを開いた時には、中座席と後部座席は、収納させれて背もたれの一部が残って、立ち上がった身体を支えるようにし、腰の辺りを固定しながらも、自由に動けるつくりに変形できるように工夫した。
背もたれの一部を残して椅子部分は下に沈み、背もたれ部分は、立ち上がりを補助しつつ、風に飛ばされないように身体を保持できるようにした。
これはも、アンディーが頑張った。僕は、コントロールコアとつないで自動で椅子の収納や背もたれの
もう一度、無人飛行試験から行う。でも、キャノピーを開いた時、今の細工を起動させて異常がないかの試験だけだからすぐに終わった。いよいよ有人飛行試験だ。座席は、先ほどと同じ。
ミラ姉と僕は、武器を付けているドローンで追っかける。
前方を飛ぶロジャー達から連絡が入った。
『試験機:前方にコカトリスを発見。キャノピーを開き、攻撃します。』
ロジャーが投げ槍で攻撃、命中。コカトリスは、ダンジョンに吸収されドロップ品が残った。鶏冠と魔石だ。試験機が着陸し、ロジャーがドロップ品を回収してまた乗機した。
『ロジャー:いちいちドローンを降りて回収するのは面倒だな』
「アンディーに頼めば降りなくて良かったのに。パーティー送信。」
ミラ姉が、ロジャーの送信に突っ込んでいる。
それから、何体かの魔物を狩って、アンディーが収納するを繰り返して試験は終了した。
「武器装備のドローンと武器無しでもキャノピーを開くことができるドローンは、どっちが強力か分からないね。」
「でも、強力な武器を搭載したドローンの方が強力には見えると思うわ。」
そうだね。見え方は大切だ。僕たちのドローンは、武器付きで、キャノピーを開くことができる仕様にしよう。一番強力だ。
工房にもどって、精錬コピー。コア情報を転送して同様の動きができるように調整した。一台作るのに15分以上かかった。でも、3台だけだから、50分くらいで出来上がった。
その後、僕たちのドローンを収納して、キャノピーの変更。シエンナにコアを調整してもらって僕たちのドローンは、武器もあってキャノピーも飛行中開くことができる仕様に変更された。
王宮に届けるドローンのうち、一台を献上仕様に変更。真っ白のドローンにした。その他のドローンは、発砲アルミニウムの表面をミスリルコーティングした色だ。金属色そのもの。
「ドローンが完成しました。ティモシー様に送信。」
それから、工房の食堂に行って、しばしの休憩を取ることにした。シエンナがお茶を入れてくれて、僕がお菓子を出した時に、ティモシー様から連絡が入った。」
『ティモシー:できるだけ早く王宮中庭までドローンを運んでほしい。騎士たちの訓練を行いたい』
「ええっ。すぐに持ってきて欲しいって言われても…。折角お茶とお菓子出したのに。」
ミラ姉は、お茶とお菓子で休憩したかったようだ。
「ねえ、シエンナ、パーティー用ドローンのフィートを自動操縦なんてできない?」
「どうしてですか?」
「みんなで、お茶休憩しながら王都に向かおうよ。ドローンなら今のところ襲撃される心配ないでしょう。」
「面白いな。みんなでお茶しながら移動なんて考えたこともなかった。」
「できると思いますが…、やりましょう。では、エスでダンジョンの外に出て草原でフィートに乗り換えですね。」
僕たちは、草原で僕たちのパーティー専用ドローン、フィートに乗り換えて、優雅にお茶をしながら王都に向かっている。テーブルは、普段使いのテーブルだから豪華という訳ではないけど、楽しい。ドローンは殆ど揺れないから快適だ。
おしゃべりの内容は、ダンジョン探索やこれら作る学校のことやタブレットの性能アップのことなんかだけど面白かった。そんな話をしていたら、あっと言う間に王都の側についてしまった。
草原にフィートを着陸させて、持ってきた帝国に献上販売するドローンに乗り込む。今日は、ミラ姉とシエンナが献上機、アンディーと僕が組んで乗り込んで、ロジャーが一人だ。あっと言う間に着く距離だから文句をしいものもいない。
飛び立つ前にティモシー様に連絡を入れる。
「もうすぐ王宮上空に到着します。着陸の指示をお願いします。ティモシー様に送信。」
『ティモシー:すぐに準備する。5分以内に到着するのか?であれば、準備が終わるまで上空に待機をしてくれ。5分で準備する』
「了解しました。5分後に着陸します。ティモシー様に送信。」
「じゃあ、出発しよう。王宮上空で待機だそうだ。5分後、準備終了の連絡があったら着陸しよう。」
「分かったわ。離陸します。」
全機、キャノピーを閉じて離陸した。2分もせず王宮上空に到着し待機だ。
『ティモシー:準備は終了した。着陸してくれ。』
「この連絡をパーティー送信。」
「アンディー、ミラ姉に続いて着陸お願い。」
「了解。」
ロジャーとアンディーは、ハンドサインで連絡している。ミラ姉を先頭に三角形の編隊で着陸した。
王宮の中庭には、王室の皆さんをはじめたくさんの人たちが見物に来ていた。
ミラ姉は、国王陛下の前に跪いて、ドローン移送を報告した。
「森の賢者レイモンド様の依頼により、ドローンの移送受け渡しに参りました。帝国に移譲するドローンのご確認をお願いいたします。」
「ご苦労であった。国王執務室にて引き渡しの手続きを行う。騎士団は、手筈通り、飛行訓練を行うように。尚、その指導をシエンナ、ロジャー、アンディーに依頼する。アメリア、レイは執務室について参れ。」
「はい。承知いたしました。」
ミラ姉の返事でそれぞれ動く。シエンナとロジャー、アンディーは、騎士団の皆さんの輪の中へ、僕たちは、執務室へだ。飛行訓練の方が楽しそうなのに…。
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