第185話 出張所の査定と拠点のこれから

次の階層を確認して溶岩流階層まで戻っている。会敵した魔物は置いてきぼりだ。このダンジョンの魔物たちは、役に立つ魔石を持っているものが多い。次に実験したいのは、今日手に入れたセイレーンの魔石を使って会話することができるゴーレムの製造だ。


シエンナは、確かに会話している。様々な情報を受け取り、指示している。そんな風に、ゴーレムと会話出来たら、ゴーレムの利用の幅が広がるはずだ。


護衛だけでなく執事としてダンジョンの工房や賢者の研究所を切り盛りするのも夢じゃない。そんなことを考えながらエスでのんびり?走っていた。


「溶岩階層に着きました。どこか溶岩流から溶岩を採集しやすそうなところでエスを停車させます。」


シエンナは、溶岩流が本流に流れ込んでいる場所にエスを止めてくれた。この場所なら、魔術発出口とデッキの上から溶岩を採集できる。


僕は、100トン近い量の溶岩を採集し、アンディーは50トン近く採集した。光の魔石も3原色の魔石も溶岩も採集し、冷却ティーカップをドロップ品として拾うことができた。アイスティーカップの冒険者ギルドでの査定が楽しみだ。


ゴーレム階層はサラッと抜けて、2回のダンジョン出口にやって来た。ここの魔法陣に乗るときは、ゆっくり走らないといけない。目の前に人がいるかもしれないからね。


「アイスティーカップの査定は、出張所で良いかな?」


「だめかもしれないけど、出張所にも見せておかないと、これからドロップ品として届けられるんでしょう。そのたびに右往左往することになったら可哀そうよ。」


「そうだね。じゃあ、出張所に寄ってドロップ品を確認してもらった後に、町のギルドに持って行って査定を確認してもおうか。」


僕たちは、みんなでギルド出張所にいった。


今日こんにちは。最近あまり立ち寄っていただけないので寂しかったです。」


ゾーイさんが嬉しそうに話しかけてくれた。本当ならロックリザード討伐が終わったらこの出張所は閉じられるはずだったんだけど、ダンジョンが見つかり、ロックリザードの幼体にも討伐報酬が少しだけどあるため、当分閉じられることは無くなったんだって。


「お久しぶりです。今日は、ダンジョンの9階層でドロップ品が出たので査定というか、見てもらいたくて来ました。」


「ドロップ品というのは…。」


「これです。」


僕が、3つのアイスディーカップを取り出すとまじまじと見つめて…。


「青い透明なティーカップですね。とてもきれいです。多分、素材も珍しくて、高級な感じですが…。本当にダンジョンのドロップ品ですか?」


「お茶はないか?」


突然、ミラ姉が話しかけてきた。


「えっ、はい。ございます。」


「では、そのお茶をこのカップの中に注いてみてくれ。きっと、ダンジョンのドロップ品ということが分かるぞ。」


「えっ?はい。注ぎましたが…。」


「では、そのカップに少し魔力を注いでみよ。」


「はい。うぁっ!つ、冷たくなりました。急に冷たいお茶になりました。凄いです。」


「なっ、ドロップ品だということが分かっただろう。」


「はい。凄いですね。この魔道具。デザインと言い、色合いと言い。これならオークションクラスになると思います。5個揃ったらソーサーも付けてきっと金貨数十枚で取引されると思います。」


「じゃあ、幾らで査定してくれますか?」


「うっ…、町のギルド本部と相談させてください。」


「じゃあ、後で一緒に乗っていくか?町まで。」


「本当ですか?はい。宜しくお願いします。引継ぎをしてきますので、10分後くらいにどこに行ったらよろしいですか?」


「道具屋に少し用事がありますからそちらまで来てもらえますか?」


僕が応えると、みんな僕に注目した。だって、エヴィとケインが心配だったんだ。


僕たちが道具屋に行くと、ケインとエヴィが二人で店を閉める所だった。


「レイさん。ミラさん。良かった。色々少なくなってきて、タブレットで連絡しようかと思ってたところなんです。」


「そうだろうと思って、ボムを2000個と鉄と鋼、少しだけどミスリル。それに、練習してもらいたい素材として、溶岩とガラスブロックを持ってきた。」


「金属素材は分かるんですが、溶岩って何ですか?岩ですか?私も基本が土属性ですから、石で何か作るのは得意ですよ。」


「そうだろうな。それで、作って欲しいのは、これだ。」


僕は、溶岩で作った箱に開け閉めできる溶岩の蓋を付けた物と水色のガラスのティーカップを出した。


「これって、何ですか?」


「そうだよな。そういうと思って完成形も作ってみた。まず、蓋付きの溶岩の箱はこれだ。」


回りを木とコルクでコーティングした箱だ。木目が少しおしゃれだ。


「ふたを開けて確認してごらん。」


「冷てー。なんで、どうして冷たいんだ。」


「その箱に冷却の魔法陣が刻んであるからなんだ。そして、それは、森の賢者様が作り方を教えて下さったものなんだぞ。」


「森の賢者様?って誰なの。」


「僕たちがいろいろな者の作り方を教わったり、作ってもらったりしてる森の中深くに住んでいる人なんだ。」


「レイさんたちってその賢者様に色々教わっていたの?」


「そう。そしてな、その賢者様が、砦に研究所を作るんだってさ。エヴィもその研究所に入らないか?」


「ええっ。そうしたら、僕とエミリーはどうしたら良いの?今は、エヴィと一緒に道具屋の手伝いをして、冒険者の人たちに色々教わっているのに。」


「この道具屋は、これからも続けて行かないといけないからな。エミリーとケインは、その手伝いは続けてくれないか?」


「でも、僕たち、エヴィみたいに武器を作ったり魔道具を作ったりすることできないよ、」


「そうだな。で、ケインとエミリーさえよければ、今度作る冒険者の学校に入らないか。学費は、この道具屋で働いたり、今まで頑張っていた分で何とかなると思うぞ。」


僕は、エヴィとケインたちのこれからのことを相談しようと思ってた。ケインたちの夢もエヴィの夢も叶えてあげたい。冒険者の学校と研究所は、三人の夢につながっているような気がした。だから、早く知らせたかったんだ。


「学校って何ですか。」


「仲間を作ったり、冒険の仕方を習ったりするところさ。でも、本当の所はまだ良く分からない。少なくともケインたちを立派な冒険者にするところにしたいと思っている。怪我したり死んだりしないで、立派な冒険者になることを目指す場所にしたいって。」


「学校に行ったら、立派な冒険者になれるの?」


「うーん。なれたらいいな。でも、そこで学んだら、死なないで、CランクやBランクになれるようにしたい。そして、冒険者として生活できるようにね。」


「分かったわ。じゃあ、ケインと私は、冒険者の学校で頑張る。エヴィも研究所で一杯勉強してね。そして、いつか、一緒に冒険しましょう。エヴィの作った武器や防具や魔道具を使って私たちで色々なところに冒険に行きましょう。」


「そうだよ。エミリー。いままで見つけてきた仲間を大切にして、これからたくさんの仲間を作って、凄い冒険をしてくれ。期待しているぞ。ケインのお姉ちゃんなんだからな。」


「当たり前でしょう。私は、ケインのお姉さんで、後衛魔術師の業火のエミリーなんだからね。」


いつの間にか二つ名がついていた。頑張れ。


僕たちは、ゾーイさんと合流して町のギルドに向かった。ティーカップはいくらで査定してもらえるかな?(^^)


どうせなら、溶岩流階層に冷蔵魔術具を落として来ればよかったななんて思いながら、町のギルドに到着した。査定結果は、ずばり、一個につき金貨5枚。これは、宝石並みの査定額だ。


こんな査定が出たら、ますますたくさんの人たちがロックバレーのダンジョンに潜る浅い階層なのに価値が高いドロップ品が出るのは魅力的だからね。




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