第183話 暗闇階層のお宝

全ての魔物を置き去りにして、ボス部屋の前に到着した。軟体か跳ね飛ばしたかもしれないけど、魔石の回収はしないままだ。このボス部屋は、一番最初は、グレートオーガが手下の進化したオーガを引き連れていた。昨日は、オーガソルジャーに率いられたオーガたちが居たそうだ。だから、3人でも苦戦することもなくすんなり、突破できたそうだ。


以前、オーガの町があった場所は、広い草原になっていた。その奥にポツンと立っている大扉。オットーに乗り換えた僕たちは、魔法の盾を構えたバッキーと共にデッキの上にいた。僕たちの左右をガーディーたちが固めていた。オットーのゴーレムハンドは、大盾を手に持っている。


ガーディーたちが扉を開いた。オーガマジシャンを中央に、左右に展開していたオーガたちが弓放とうとした。


「ロックバレット!」

「ロックバレット」

僕とアンディーがロックバレットで先制攻撃。


「アイスバレット」

ミラ姉。


「投げ斧乱舞だ!」

ロジャーは、ミスリルワイヤーでつないだ投げ斧を振り回して何匹ものオーガを屠っていた。


「ボスを倒します。」


シエンナが冷静にオーガマジシャンを討伐した。残ったオーガはソーディーたちから丁寧に討伐して終了。


「何か、浅い階層のボス部屋らしくなってきたね。」


「ということは、下の暗黒界層もボス部屋があったら初回サービスの強力ボスなのかな…。」


エスに乗り換えて暗黒界層に入って行った。


「次の階層入り口をサーチするね。シエンナは、暗闇の中でも感覚共有で周りの状況を把握できるんだよね。」


「はい。任せて下さい。」


「じゃあ、僕は、次の階層入り口をサーチして案内するだけしかできないけど宜しくね。」


ロジャーは、デッキでバッキーに護衛されて敵の気配を探っていた。ロジャーの索敵なら、多分、敵よりも早く相手を見つけることができるだろう。使う武器は、指弾とワイヤー付きの投げ斧だ。


「大丈夫です。近くに魔物はいません。」


窓を開けて、ロジャーにもシエンナの声が聞こえるようにしてある。


「次の分かれ道を左だよ。」


暫くは、何の魔物とも出会わずに進むことができた。何の明かりも使っていないから魔物が寄ってこないようだ。


「次は、しばらく分かれ道は左に進んでね。後しばらくは左が正解だから。」


「ドアが開きません。」


「ドア?」


「ちょっと待って。サーチ下階層入り口。あれ?こんなところにドアなんてないと思うけど…。隠し部屋か?」


「隠し部屋なら入るの一択だと思うぞ。」


「でも、ドアがあるなんて罠っぽくないか。」


「シエンナ、どんな風に見えるの?隠してあるのか誘ってあるのか。」


「視覚で見ていないので良く分かりません。魔力的には、普通にドアでしたが、光結界を貼っているかもしれません。」


「ちょっと待って下さい。タブレットのカメラで撮影してみます。」


「こんな真っ暗なのに写っちゃうの?」


「さあ?やってみないと分かりません。」


「あっ、壁です。ドアは見えません。光結界が貼ってあるみたいです。」


「えっ、こんな真っ暗なのにタブレットの画面が見えちゃうの?」


「タブレットがどんな絵を描いたか魔力共有で確認できますから。」


「凄いわね。」


「なっ、だったら入るの一択だ。」


デッキの上からロジャーがうるさい。でも、ドアが開かないなら入れない。


「押し引きは試したんだよね。」


「はい。どちらにもピクリともしませんでした。」


「ドアノブは回るの?」


「ノブというか取っ手になっています。」


「その取っ手って何か仕組みが付いていそうにない?」


「ゴーレムハンドでは取っ手の中まで指を入れることができません。」


「ロジャー、ゴーレムハンドに乗せてもらって、そのドアの所に行ってくれない。」


「了解。シエンナ、ゴーレムハンドを回してくれ。」


「はい。ロジャーさんの目の前、高さは腰の辺りに右手を回します。手探りで確認して乗って下さい。」


「分かった。」


「乗ったぞ。ドアの前に運んでくれ。」


「はい。運びます。」


「ロジャーさんの右手側がドアです。手を伸ばしてみて下さい。」


「はい。そっちです。後20cmくらいです。まだ、前。そこです。今手を置いている高さで左に移動してください。後、30cm、後、2cmです。はい。そこに取っ手が。それです。」


「取っ手を握ったぞ。あっ、何か握り込めるような仕組みがある。」


「ロジャー、毒針なんかの罠に気を付けて。」


ミラ姉が大きな声を出す。


「あら…、あんまり大きな声で話しすぎたようですね。右前方から3体の魔物が近づいてきています。」


会敵まで後5秒。


光を放っていた魔物がポトポトと落下した。


「アンディー敵の気配に気を付けながら落下した魔石を回収してきて。小さい光だけど、他の魔物を引き寄せるかもしれない。」


「了解。」


アンディーがドアを開けて小さい光を放つ魔石の方に近づいて行って一瞬で3個の魔石を回収した。僕たちの気配を頼りにエスの所に戻ってきているようだ。


「回収終了」


「ロジャー、聞こえる?」


さっきよりずいぶん小声になった。


「聞こえる。毒針注意だな。クナイを取り出してクナイで握りを動かしている。」


『ガギッ』


「やっぱり、毒針あったみたいだ。でも握り込みの仕掛けはドアのカギにつながっていたぞ。スライド式みたいだ。今少し動いた。」


「開けるのちょっと待って。中から強い光で照らされたら目をやられてしまう。全員サングラスをかけて。片目をつぶって扉を開けましょう。」


「準備は良いか?」


「光が漏れると魔物たちが集まってくる。突入したらドアを閉めるのよ。バッキーは、ロジャーの援護に回って。突入は、バッキーとエス。ロジャーは、私たちが入ったのを確認してドアを閉めて。」


「了解。じゃあ、開けるぞ。3、2、1。ゴー!」


ロジャーが凄い勢いでドアを開けた。クナイで毒針をへし折ったのかもしれない。案の定強い光が部屋の中から溢れてきた。


中を十分に確認することはできない。それでも、突入。扉が開いている時間が長ければ長いほど集まってくる魔物は多くなる。


「サングラスがあってよかったわね。」


「すぐに目が慣れましたね。」


ロジャーは、突入後すぐに扉を閉めたようだ。戦闘はなかった。隠し扉の中は、数えきれないほどの光の魔石や光を放つ魔道具で埋まっていた。自ら様々な色を放つ宝石もたくさんあった。


「この量だと、半分は領主様に献上しないといけないだろうな。」


「更にその半分は、王宮かな…。僕たちが手に入れられるのは、4分の1程かな…。それだけでも、凄い金額にはなりそうだけどね。」


「贅沢しなきゃ、5人が一生暮らしていける位の金額にはなるだろうな。」


「それって、どれくらいの金額ですか?」


「さあ…、金貨5000枚くらいかな?一人金貨1000枚あれば暮らしていけるよね。多分。今まで1年で金貨1枚も使っていなかったからな。」


「それって、もう持ってますよね。」


「そうだな。その何倍かは、持ってたな。」


「とにかく、この宝は、収納してしまおうか。」


僕とアンディー、ロジャーの三人でこの部屋の宝は全部収納した。部屋が真っ暗になった。


「こんなに暗くなったら、出ることできないじゃない。」


「大丈夫ですよ。ミラさん。バッキー、扉を開けて。その前に、レイさん光の魔石を出して少しの間部屋の中を明るくしてくれますか?少し灯りがあった方が行動しやすいでしょう。」


シエンナの言う通りです。考えなしに収納してしまった僕たちが考えなしでした。


それぞれが所定の位置について、エスを方向転換した後、光の魔石を収納して部屋を真っ暗にした。


「バッキー、扉を開いたら私たちが出た後、扉を閉めてエスに跳び乗ってちょうだい。」


バッキーが扉を開けた。外には、魔物は集まってきていなかった。僕たちが外に出た後、丁寧に扉を閉めたバッキーがエスに飛び乗って来た。


「出発します。しばらく左ですね。」


それからは、気配を消し、静かに下階層入り口に向かった。結局ボス部屋はなく、階段に続く扉がぽつんと立っていた。明かり無しでここまで到達すること自体が難易度が高い。


それに、普通に灯りを準備したら数えきれない回数、魔物と交戦することになるそんな階層だった。夜目が効くようになるポーションで対応できればいいのだけれど…。


次の階層は、どんな階層何だろう。少しワクワクしながらエスに乗ったまま階段を下りて行った。




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