第182話 設計契約と宝石集め

 次の朝、エリックさんと一緒に町に向かった。賢者の研究所と冒険者の学校の建築依頼を建築ギルドに依頼してもらうためだ。ギルドとの契約のようなことは、エリックさんにお願いした方が間違いがない。


 昨日の夜、これからの計画をエリックさんに話して、設計図から依頼した方が良いということになった。まずは、図面で色々な要望を形にしていった方が間違いないと言われたのだ。


 まずは、設計の予算。これは、金貨1枚から2枚で良いということだった。しかし、これに金をケチっているといい加減なものが出来かねない。学校の広さと中の施設なんかは、昨日話しておいた。研究所については、大きさと研究スペースと工房、それと研究員たちが寝泊まりしたり、食事をする場所と調理施設。倉庫なんかは最低必要な施設だ。清潔さも保って欲しいからお風呂もいる。


 そのくらいの要望でまず設計図と建物の完成予想図を作って欲しいとお願いしている。これから先は、エリックさんの腕の見せ所だ。エリックさんにはマウンテンバイクを渡しているから帰りの心配はいらない。


 それに、ゴーレムバスが砦から出て、フォレストメロウ経由でロックバレーの拠点の間を一日40往復位している。砦では、建築ラッシュは続いていて、その職人さんが午前中にたくさん乗っている。朝早くや夕方にはお風呂目当てに来る人もいるものだから、昼間の時間以外はバスは、割と混んでいる。


 お風呂は、防壁の積み上げ時には無料で開放していたけど、入り口で銭貨1枚を頂くことにした。料金を集めるのは、町の孤児院から来た子どもたちの仕事だ。その代金は、孤児院にそのまま寄付され、子どもたちの服や食料を購入するための資金になっていた。


 今は、魔力の運賃以外に、銭貨一枚を料金にしている。どちらによる支払でもOKだ。だから、子どもも良く乗っている。子ども料金の魔力は少くて良いから、普段あまり魔力を使う必要のない子どもは、バスに乗って楽しんでいた。


 交通事情が変わり、町からの人の流れが少しずつ変わっていていた。そして、フォレポイ村には、様々な公共施設や入村者向けの建物が建っていた。勿論、ロックバレーの拠点への人の流れも相変わらず途絶えることがなかった。沢山の冒険者が一攫千金や日々の生活の糧を求めてダンジョンの中に入って行った。宝石の魅力はそれほど大きかった。


 僕たちも今、ダンジョンの中に入っている。宝石が採集できる階層は5階層だ。エスに乗って5階層まではフリーパスで進んだ。まだ、午前8時だ。僕たち以外の冒険者は、ほとんど歩きだから3階層のゴーレム階層を抜けるのに時間がかかる。気配を消してゴーレムとの戦闘を避けながら移動しても、次の階層入り口まで2時間以上の移動時間が必要だ。1階層、2階層を抜けるのにも30分以上かかるから、ここまで来ているパーティーは居ない。


 上の階層で火属性の魔石を手に入れるパーティーも多い。中級以上の魔石なら金貨数枚で引き取ってもらえる。それくらい価値が高い。しかも、リキロゲンボムを持っていれば、比較的簡単に倒せるんだ。銀貨1枚で4個のリキロゲンボムを購入することができるから稼いだ金でマジックバッグを購入して数十個のリキロゲンボムを準備して溶岩流階層で狩りをしてるパーティーも多くいる。価値が確定していない宝石と金貨1枚以上の火属性の魔石、どちらに魅力を感じるかは、それぞれだ。


 僕たちは、5階層に到着して、次々に魔物を狩っていった。シエンナもデッキに出ている。全員デッキの上から周りの魔物を狩って行く。ロジャーも今日はライフルを使っている。アンディー以外皆ライフルだ。アンディーは、ライフルとロックバレット、ファイヤーボールを相手によって使い分けている。


 魔石や宝石になった魔物やドロップ品は、僕がシエンナとミラ姉の分を収納し、アンディーがロジャーの分を収納している。ゴーレム以外は当たればすぐにドロップ品や宝石になる。ゴーレムは、核を収納して素材は、金属の時だけ周のする。


 1時間ほど採集すると宝石は、赤59個、青82個、緑64個になっていた。その他に赤スライムの核を8個手に入れた。鉄塊が20個、銅塊が30個、金塊が2個、ミスリル塊を1個手に入れていた。


 ミスリル塊は、階層ボスを倒した時に手に入れたものだ。階層ボスの部屋は、宝石もたくさんドロップするから美味しいんだ。


 宝石階層の下は、泥沼階層だ。ここの魔物のドロップ品は確認していない。泥沼セイレーンがいるからセイレーンの魔石が手に入るかもしれない。それで、今回は、挑戦してみることにした。まず、船を作る。


 今回地球で精錬コピーした大型漁船だ。スクリューとドローンの回転翼を船の側面に取り付けてみた。泥沼だとスクリューがうまく回らないかもしれないからだ。今回動力に使ったゴーレムコアは、スクリュー用に5個、舵のコントロールも行わせるコアだ。回転翼用に9個。舵と連携して回転翼からの風の方向と強さで進行方向を決める。


 最初は、スクリューだけで進めようとしたんだけど沼の様子を見て心配になって回転翼までつけた。イメージを固めて動力部品から作る。


「アルケミー・ゴーレムスクリュー」


「アルケミー・ゴーレムロータリーウィング」


 回転翼には、保護用のガードを付けておいた。船体は、木製だけど表面にミスリルを貼り、頑丈にする予定だ。


「アルケミー・ゴーレムシップ。」


 大型の漁船が沼の上に浮かんでいる。表面は、ミスリルの銀色に輝く漁船だ。漁船と言っても外洋での漁を想定している船だからかなり頑丈で大きい。


「レイ、これ何?」


「これ?海で狩りをするための船。漁船だよ。」


「海での狩り用の船ですか。じゃあ、シードラゴンと命名しましょう。」


「なんか強そうな名前だね。」


「はい。ドラゴンですから。」


「じゃあ、その名前で使役してあげて。宜しくね。」


「それから、せっかくですから船体の中心左右にゴーレムハンドを付けていただけませんか?水面では、左右のバランスと前後のバランスを取らないといけないでしょうから、船体中央にお願いします。材質は、できればミスリルで、あまり太くならないようにして下さい。戦闘用というより、ドロップ品を拾うための物です。普段は折りたたんでいて、伸ばしたら40m以上欲しいですね。この船が全長25m程ですから前後に30m近くの距離をカバーできることになります。横には左右に40mですからかなりの距離のドロップ品を回収できるようになると思いませんか?」


「分かった。折りたたみゴーレムハンドだね。船内に収納できるようにしてみるよ。」


 僕は、まず伸縮可能なゴーレムハンドを作ってみた。1mでミスリルとコアを合成した棒の間をロックリザードの皮でつないでみた。魔力を流すと硬く丈夫になるからだ。40本の棒の先に手を取り付ける。ゴーレムコアを多めに合成したミスリルだ。これで伸縮できるゴーレムハンドができた。


 船の中に収納しておいて、側面から送り出すことができるように穴を空けゴーレムコアとロックリザードの皮を合成した物で穴とゴーレムハンドの棒の隙間を埋めた。そして、ゴーレムハンドを送り出しながら方向と強度を調整できるように船のコアと接続した。送り出し用の部品を同じコアから作る。表面にシリコンゴムを撒いたローラーにしてみた。かなり複雑なつくりになってしまったが、この船のコアとシエンナなら使いこなしてくれるだろう。


 ゴーレムハンドを装備したシードラゴンが完成した。


 ぶつぶつ言いながら精錬している僕をみんな温かい目で見ていてくれた。


「できた!」


 沼に船を浮かべ、みんなで乗り込んでいった。かなり高いところまで跳び上がらないといけないんだけど、身体強化ポーションを飲んでいたから何とかできた。


「シエンナ、泥沼セイレーンの狩りに出発だよ。」


「了解です。」


 スクリューでしばらくの間進んでいった。シードラゴンとの情報共有で、座礁の危険などは皆無だが、スクリューに巻きついてくる藻のような植物があるところでは、スクリューを止めておかないといけないかった。その時は、回転翼で進んだ。少し、下向きに風を送ることで喫水線を下げて、できるだけ水の浅い所を進んでいった。


「前方にマッドフィッシュの群れが近づいてきています。」


 前方から泥沼を飛び跳ねる魚のようなカエルのような魔物が近づいて来ていた。大きさは50cm程度でどのような攻撃をしてくるのかはまだ分からない。


「先手必勝よ。攻撃を待たないでバレット系で攻撃しましょう。ロジャーは指弾。アンディーとレイはロックバレット、私はアイスバレットで攻撃するわ。シエンナは、私たちの攻撃をすり抜けてくるマッドフィッシュを見つけたらライフルで撃ち落として。」


「「「「了解。」」」」


 熱い弾幕が前方に展開された。ごく偶にその弾幕をすり抜けてくるマッドフィッシュが居たけどそれもシエンナが狙い撃ちだ。10分もしないでマッドフィッシュの群れを片付けることができた。


 水面に魔石や良く分からないドロップ品が浮いていた。僕とアンディーで魔石とドロップ品を回収した。魔石は、1000個を超えていた。ドロップ品は良く分からない物ばかりで、マッドフィッシュのヒレというのが一番多かった。後は、美味しくなさそうなお肉と、小さな牙が手に入った。牙は水に浮くほど軽いがとても鋭く矢じりなんかにするとよさそうな素材だった。


 マッドフィッシュの後は、あぜ道になってる所にゴーレムやボアが現れたが、船に向かって泳いできてもはるか後方に置いてきぼりになっていた。


 しばらく進むと、泥沼セイレーンの住処に近づいていた。


「ドローンで近づいて行った時には、上空50mくらいに近づいたら攻撃態勢に入ったわ。だから、攻撃態勢に入る前に仕留めましょう。」


「全員長距離攻撃準備。」


 僕、シエンナ、ミラ姉は、ライフルを構えた。ロジャーは、投げ槍、アンディーはソードショットを準備するようだ。


「前方1時30分の方向に泥沼セイレーンを2体発見。右をアンディーさん、レイさん、ミラさん。左を私とロジャーさんで攻撃しましょう。皆さん、確認できましたか?」


「「「「できた。」」」わ。」


 4人の声が重なった。


「攻撃開始。」


 シエンナの合図で全員攻撃を開始した。


「前段命中。魔石を2個獲得した模様です。近づいて回収します。」


 泥沼セイレーンは、遠距離攻撃で比較的安全に討伐することができた。その後も会敵次第討伐し、泥沼セイレーンの水に浮く魔石を20個程手に入れることができた。


「近くには、セイレーンはいないようです。」


「じゃあ、一旦上陸してドローンに乗り換えようか。」


 僕たちは、近くの島に上陸して、ドローンに乗り換えて、次の階層入り口に向かった。


「次は、森の階層だね。高級肉が沢山手に入る階層でしょう。」


「でも、お肉は売り切れないほど持っているから森の階層はボス部屋攻略だけで良いわ。」


「了解です。森の階層に到着したらエスに乗り換えてボス部屋を目指しましょう。」





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