第180話 Sランク昇格審査
「ただいま。」
「お帰り。楽しかった?」
「ああ…、かあさん。うん。楽しかった。色々作ったし、ダンジョンにも入った。ドラゴンとも戦ったよ。」
「ドラコンだって…、だ…、大丈夫だったのか?誰も怪我しなかったか?」
「それが、とってもいいドラコンで、大丈夫だった。」
「なんか良く分からんが、怪我もなくて済んだのなら良かった。」
父さんは怪訝な顔をしていたけど、まあ、そうだよね。
それから、昼過ぎには眠くなってきたけど、何とか我慢して、晩御飯を食べてすぐに寝た。溶岩の魔法陣からは、一日中お湯が出ていた。
とにかく一日中ボーッとしていて、何もする気が起きなかった。時差ボケだ。
****************************************************************************************************************************************
朝起きるのが辛かった。昨日の夜なかなか寝付けずに夜中になってようやく眠りに落ちたからだ。
ダンジョンの中でも外の夜明けに合わせて明るくなるようだ。たぶん、ずっと前の時間に夜が明けていたのだろう。僕が起きて食堂に行った時には、みんなもう食事を終えて今日の行動予定を話しているところだった。
「お早う。」
「「「「お早う。」」」ございます。」
皆の声が重なって聞こえた。
「御飯少し冷めてるけど、このまま食べる?温めようか?」
「大丈夫。ありがとう。そんなに食欲ないから。昨日の夜、なかなか寝付けなくてね。」
「そうですか…。じゃあ、何か飲み物持ってきましょうか?」
「じゃあ、フルーツジュースをお願い。冷たいのがいいな。」
「ギンギンに冷えたのがありますよ。氷の魔石が手に入りましたからね。」
シエンナが冷たいジュースを持ってきてくれた。冷たくて目が覚めた。
「じゃあ、一番初めに冒険者ギルドに行ってロックバレーの拠点に冒険者の学校を作ることを知らせて、領主様にお願いに行くのね。」
「領主様も冒険者ギルドのギルマスも反対はしないと思うけど、話は通しておかないとね。」
「それから、レイとアンディーで石材と木材を採集してもらって、その間に私たちは、8階層で光の魔石集めに行かない?」
「そうですね。エスとドローンを使えば、苦労せずに8階層まで降りることができますからね。8階層でオットーに乗り換えれば簡単に光の魔石を集めることができると思います。」
僕が、食事を終えると、いつもの冒険者服と装備に着替えて賢者の工房をでた。勿論、魔石にはたっぷりと魔力を充填しておいてだ。
もうガーディアンたちは復活してるはずだけど階層入り口の前に立つと出入り口は開いた。中に入るとガーディアンの間をすり抜けるように階段の前に立っていた。振り返るとガーディアンの間が見えた。不思議だ。
エスに乗りってゴーレム階層を駆け抜けた。数体のゴーレムとすれ違ったが、攻撃されることは無かった。2階層、1階層も何事もなく通り過ぎた。そのまま入り口を駆け抜けて、フォレストメローの町に向かった。
「おはようございます。アンデフィーデッドビレッジャーの皆さん、ギルマスが会って話がしたいって言ってます。執務室の方に回ってもらえますか?」
いつものように、並んで順番を待っていると、ティアさんから声がかかった。
「ちょうど良かったです。私たちもお話がしたかったので。」
執務室に行くと、ギルマスが一人で部屋にいた。書類が沢山あって忙しそうにしている。
「おう、来てくれたか。お前たちに聞きたいことがあってな。お前たちは、ついこの前、Aランクになった。そのことは、知ってるよな。」
「はい?ギルドカードはCランクのままですけど…。Bランクにしていただけるっていうのはい聞いた気がします。」
「それは、始めて王室からの依頼を受けた時だな。それから、どれだけのことをやらかしたと思ってる?それに、今回はドラゴンを倒したって言うじゃないか。王室から後付け指名依頼だ。依頼達成後の指名依頼は、本来受け付けていないんだがな。ギルドへの依頼料もきちんと支払われているから受け付けない訳にはいかなかったそうだ。それで、ギルドカードも切り替えないままなのに、Sランクへの昇格審査に上がっている。お前たちにSランクの依頼を受ける気があるかどうか確認しないといけないんだよ。」
「あの…、Sランクの依頼って何でしょうか。もしかして、Sランクの魔物の討伐とかですか?」
「そう。Sランクの魔物討伐か大量のAランクの魔物の討伐だ。」
「私たちには、無理です。まだまだ力不足なのでもう少し力を付けてから挑戦します。」
「お前たち、本気でそんなこと言っているのか?ふざけてるんだろう。」
「ギルマス、ひどいです。私、ふざけてなんていませんよ。私たちは、まだまだ成長段階です。国から依頼されるようなSランクの魔物の討伐なんて無理に決まってるでしょう。」
「なあ、王室からの指名依頼の時、聞かなかったか?国宝級のロックリザードはAランクの魔物だって話。」
「あっ、そういえば、国宝級のロックリザードの魔石は、Aランクの魔物の魔石だって言ってましたね。」
「魔石だけじゃない。国宝級のロックリザード討伐がAランクの魔物の討伐に当たるんだよ、」
「へぇー、そうなんだ。それなら何千体か討伐してるな。」
ロジャーがミラ姉の横から話しかけてきた。
「でも、もう国宝級のロックリザードなんて狩り尽くした。今更依頼を出されてもどこにもいないぞ。」
アンディーが言う通り、早くSランク査定の審査を受けていれば、良かったがすでに遅い。
「魔石を持っているだろう。王室からの依頼で出した以外にもたくさん持っているはずだよな。」
「魔石はある。売る程な。でも、ギルマスが全部売ったら価値がひどいことになるから売るなって言ったから売ってないぞ。」
「それに、王室依頼でドラゴンの魔石を売っただろう。」
「はい。偶然倒すことができたホワイトドラゴンの魔石を買っていただきました。」
「そのドラゴンは、喋っていただろう。」
「はい。話すと言うか、直接頭の中に響くようなそんな感じでしたが、話すことが出来ました。」
「そりゃー、特S級の魔物だ。お前たちは、ドラゴンスレイヤーの称号も手に入れてるんだよ。そうなると、魔石の依頼だけでSランク査定合格だ。まあ、お前たちの活躍具合だとそれも当然だけどな。おめでとう。お前たちは、今日からSランクパーティーだ。この書類にサインをしてくれ。ギルド本部に提出しておく。」
「え?そんなに簡単で良いんですか?私たちは、まだ弱くて自分たちで身を守れるほどの力ないと思います。」
「以前、つい
「えっ?」
ミラ姉が、戸惑った返事をした。
「「「はい。」」」
でも、僕たちの返事は、揃っていた。
「あの…、私もSランクパーティーの一員何でしょうか?」
シエンナが、変なことを聞いた。
「何言ってる。不動のシエンナ。お前もに決まっているだろうが。」
こうして、僕たちはとうとうSランクパーティーになってしまった。Cランクに上がって2カ月弱でだ。昇格の話が終わって、冒険者の学校の話をした。ギルマスはとっても喜んでくれて、一緒に領主様の所に行ってくれることになった。
領主様も冒険者の学校についてはすぐに賛成してくれた。森のダンジョンの砦の話も出たが、予算の関係でもう少し待って欲しいということだった。今回のロックリザードの素材販売の利益が町に回るようになるまでもう少し時間がかかるからだ。もう少し立てば、税金として領主様が使うことができるお金ができる。
領主様の邸宅をギルマスと一緒に出て、冒険者ギルドに戻った。その途中、王都の貴族から僕たちのパーティー宛てに大量のAランクの魔石採集の指名依頼が来ているという話を聞いた。
手元にたくさんの魔石があるからすぐに受けることができるけど、いったいどうしてだろうと思っているとティモシー様からタブレットで連絡が入った。
カメラ機能付きのタブレットの希望者が国営商会に殺到していてどうしようもなくなったらしい。値段は、以前言っていたように金貨150枚なのにだ。そして、どこからか、森の賢者と王宮の魔術契約への参加者は優先してタブレットを購入できるという噂が流れたらしい。Aランクの魔石が金貨200枚もするのにだ。両方合わせると金貨350枚。そんな大金どこから準備するんだと思うが、どうしても手に入れたい人たちがいるらしい。
そこで、ティモシー様と相談して、噂通り、魔術契約をしてくれる人には、優先してカメラ機能付きタブレットを販売することにした。タブレットは、国営商会で管理販売し、魔石も国営商会で購入することができるようにした。あまりに高額にならないように魔石は、金貨200枚だが、魔術契約をした者には、タブレットを金貨100枚で販売することにした。月に金貨10枚の10カ月支払いも可能にした。クーパー様と同額だ。
この販売方法で、カメラ機能付きのタブレットの契約が127台になった。王宮の輸送部隊に5台販売したから残りは、80台だ。
午前中は、冒険者ギルドや領主様との話で終わってしまった。午後は、石材と木材の採集だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます