第175話 仮面の賢者と村長との話し合い
良く寝た。昨日は、 8時前に寝てしまったからな。今6時だ。それでも10時間も寝たことになる。
食堂に行くと、まだ誰も起きていなかった。じゃあ、何か朝食を作ろうかな…。メニューを確認する。料理でサーチしたらすぐには数えきれないほどのメニューが出てきた。聞いたこともない料理が沢山並んでいる。
材料があってすぐに作れる料理から次々に作っていった。できた料理は、15品になった。アイテムボックスの中に入れたままにして、出来立て状態を保っておく。6時30分になった頃みんな起きてきた。
「お早うございます。賢者様。よく眠れましたか?」
「シエンナ、そういうの止めてくれる。お早う。よく眠れたよ。」
「おはよ。レイ。今日は、賢者バージョンで頼むぞ。村長に会って、これからの計画を話すんだぞ。」
ロジャーは、何を言ってるんだ?
「何の話かな?多分、昨日聞いたんだと思うけど、眠すぎて頭に入ってない。」
「やっぱりな。だから言ったろう。明日の朝、話した方が良いって。レイってば、目の焦点が合ってなかったもんな。」
「そうね。案の定ね。じゃあ、朝ご飯を食べながらもう一度話しましょうか。今すぐ準備するから、昨日決まったところまで説明しておいて。」
「ミラ姉、朝ご飯作ったよ。テーブルに並べるからみんなで食べよう。果物は、冷やしたものがあるんだったら出してくれない?」
「分かった。冷やした果物を準備するわね。」
ミラ姉は、テキパキと果物をカットしてお皿に盛ってくれた。そのお皿をテーブルの中央に置いて作った15品の料理を並べて行った。名前を知らないものが多かったけどどれもおいしそうだった。
「じゃあ、いただきましょう。レイ、ありがとう。頂くわ。」
「ありがとう。美味しそうだ。」
「「頂きます。」」
皆、それぞれの食事の挨拶をして食べ始めた。
こっちの世界でも「頂きます。」って言うんだ。
食事を食べながら、今日のことを話した。午前中に村長の所に行って今後の砦の運用計画を話し合う。今のところ決まっているのは、僕たちのパーティーの拠点として利用すること。
その他には、王都のマウンテンバイクや時計の生産方法を参考にして、砦の中に、森の賢者の魔道具工場を作っていこうと言うこと。その工場を砦の産業にして人を集める。そして、精錬術師や様々に製造魔術の使い手を集めた工場ギルドを作ったら面白いんじゃないかってとこまで話したらしい。
「でもさ。森の賢者の魔道具ってどうやって工場で作ることができるようにするの?レイが一人で作るのなら簡単だけど、たくさんの人が集まってみんなで作るとなると、その作り方まで考えないといけないよね。」
「問題は、それなのよね。森の賢者の作った物って本当は、分担して作ることができる物が多いはずなのに、できてないでしょう。ポーションにしたって、今回作ったライフルにしたってね。ゴーレムタブレットも工夫すれば、工場で生産できるようになるんじゃないかなって思うのよね。」
「そうだな。そのカギになるのが魔法陣と精錬窯なんだよ。」
「それで、森の賢者には、その研究をして欲しいの。この工房は、森の賢者が面白い物を作る秘密の工房でしょう。研究所は、みんなに公開する工場で作る物を研究する場所にして欲しいのよ。色々な仲間と一緒に便利な物を沢山考えて、みんなが幸せに暮らすことができるようにして欲しいなって考えたんだけどどうかな?」
「俺のクリエートも色々な人に伝えようと思う。うまく教えることが出来たら、俺とレイが色々な物を作っていったように、工場ギルドで色々な物を作れるようになるんじゃないかなって思うんだ。」
「それって大学みたいだね。」
「大学って何?」
「いろいろな研究もするけど、勉強する場所でもある所。学校って言うんだ。知識や技術を学ぶ場所だよ。そして研究する場所。」
「そう。それじゃあ、砦に研究所と学校を作ろう。そして、そこで色々な物が作れるようになったら工場ギルドにしていこうよ。先行投資だ。」
「でもさ。生産系ばかりの学校じゃあ、素材はどうするんだ?何を作るにしても材料集めが必要なんだぞ。それを集めるのは冒険者だろう。生産者だけを集めても、材料がなければ、何も作れないぞ。」
「じゃあ、冒険者の学校も作ったらどうかな?」
僕がいうと、
「でも、砦に冒険者の学校を作っても、森のダンジョンやロックバレーのダンジョンに行かないと素材も集められないしランクも上がらないぞ。わざわざゴーレムバスかなんかで冒険者見習いを運ぶのか?」
アンディーの言うことはもっともだ。時間もゴーレムバスももったいない。
「じゃあさ。冒険者の学校は、ロックバレーの拠点に作ったら?」
「ロジャー、それは良いかもしれないな。」
「あの…、皆さん。それって、村の村長さんに相談する内容でしょうか?」
「あっ…。違うかも。」
「とりあえず、砦の中か外に森の賢者の研究所を作らせてくださいってことを相談しましょうか?」
「そこって、森の賢者が住んでる場所じゃないんだよね。」
「住まないでしょう。賢者の魔道具を工場ギルドで生産できるように精錬術師や錬金術師、鍛冶師や工学魔術師が集まって研究する場所ということにしましょう。時々、森の賢者がやって来るけど。」
「そうだね。森の賢者の住まいは、当面ここ。賢者の工房だね。」
「朝食も食べ終わったし、村長の所に行きましょうか。その後、王室に大型ドローンの献上に行っていいかを確認しましょう。森の賢者のレイモンド様が献上した方が良いと思うの。叙爵のお礼にね。」
「ええっ。それはちょっと…。」
「森の賢者は、今日しか出て行けないから、もしも王室の皆さんの都合が付かなければ、私たちが預かって持って行くわ。それでいいでしょう。」
「今日、献上に上がるのは、シエンナと私と森の賢者のレイモンドだけね。ロジャーとアンディーは留守番。レイと一緒に素材集めに行っていることにするわ。」
「俺たち、本当にロックバレーのダンジョンに素材集めに行ったらダメかな。火属性の魔石をかなり使っただろう。」
「じゃあ、氷属性の魔石を使って、ライフルのカートリッジにアイスジャベリンを入れておこうか?多分作れると思うぞ。」
「頼む。そんなのが出来たら、火属性の魔物なんかバンバン倒せると思うぞ。ついでリキロゲンボムも200個ぐらい頂戴。」
「了解。ロックバレーの帰りに、コルク材料と木材を採集してきてくれない。」
「よし。アンディー今から出かけよう。久々のマウンテンバイクだ。」
「了解。」
「村長さん所にもいかないの?」
「だって、レイがいないんだから、素材採集に言っておかないと可笑しいだろう。」
「そ…そうだね。じゃあ、ライフルちょっと貸してね。それと、ボムは、200個ずつ?」
僕は、アイスバレットのカートリッジをアイスジャベリンのカートリッジに変えて渡した。
「一度試し撃ちしてみて。威力なんかが変だったらもう一度持ってきてね。」
200個ずつのボムとライフルを渡すと、外で一度試し打ちをしたみたいだったが、戻って来ることなく出発してしまった。
「私たちも砦に向かいましょう。エスで良いでしょうか?」
「エスでお願い。シエンナが運転してくれるの?」
「はい。」
僕たちは、シエンナが運転するエスに乗って砦に向かった。仮面とローブ姿の僕は、何となく不気味だった。これって、絶対、悪役ファッションだと思う。
「お早うございます。」
「おう。アメリアか。どうした。こんなに朝早くから。」
「あの、今日は、私たちがいつも依頼を受けている森の賢者様をお連れしました。国王陛下が仰っていらしたように、これからの砦の運用について村長にお話ししたいことがあるそうです。」
「おお。わざわざ出向いて下さったのか。我が家に上がってもらって大丈夫なのか。狭苦しい所だぞ。」
「村長のジョージさんですね。私は、つい先日、たまたま国王陛下のお計らいで叙爵しただけの者。そのようなお気遣いはなさらずお願いします。」
「では、今後の砦の運用。使い方についてでございますね。」
「この砦は、まだできたばかり。只、広いだけで、住民を集めようにも生活の糧がない。そこで、ここに私の研究所を作って、これまで作って来た魔道具を製造できるようにしようと思うのだが、どうであろう。」
「ということは、賢者様がこの砦にお住まいになるということでしょうか?」
「否、私は、森の賢者と呼ばれる者。森の奥に住まいを構えておる。常人には来ることが能わぬ場所にな。そこに暮らすのは、私の静かな生活を守るためじゃ。だが、ここの研究所にはたまに来ることになる。建てる場所なのだが、砦の中に立てては、他の者の迷惑になるかもしれぬ。そこで、この者たちのパーティーハウスがある辺りの外、砦の外側に小さな拠点を立てて研究所にしようと思うのだが、許してくれるか?」
「砦の中でもよろしいのではないでしょうか?外に研究所を建てては、行き来だけでも大変になるのではないですか?」
「なに、パーティーハウスがある辺りの壁に、頑丈な扉を付けて小さな入り口を付けてくれぬか。さすれば、何かあった時には、研究所の者が逃げ込むことができる。」
「私には、出来かねますが、賢者様ならお出来になるのではないでしょうか。それは、賢者様にお任せします。それで、その研究所とやらは、いつから作り始めになるのでしょうか?」
「そうじゃな。近々じゃ。いつものように、アンデフィーデッド・ビレジャーのパーティーに依頼を出すことから始めることにするょ。」
「ご随意に。私たちは、協力は惜しみませぬゆえ。何なりとお申し付けください。」
「よろしく頼む。研究所が完成した折には、砦に寄らせてもらう。今日は、忙しい所邪魔したな。」
僕は、村長さん挨拶し、そのまま外に出た。次は、王都だ。ここに来る前にタブレットで連絡したら、とにかく急いでくるようにと返信があった。憂鬱だ。
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