第174話 温泉化粧水と花火の精錬
眠い。今の時刻は、5時20分。夕方だ。ほぼ徹夜の感じだと思う。
今、地球は、夜中の3時頃。10時間近くの時差は、辛い。僕は、ドローンの中でうつらうつらしていた。極寒の階層だけど、さっきよりも風はなく、穏やかだ。もうすぐ湖と島の階層の入り口に着く。
「眠いの?もうすぐ湖の階層だから、一度ドローンを降りるわよ。」
それから、5分もしないうちに、ドローンを降ろされた。寒い中歩いて階段を上った。10分くらい歩いただろうか。ようやく、湖の階層のボス部屋にたどり着いた。この階層ボスもサービスボスだのかな…。でも、そうじゃないと誰も攻略できないかもしれない。目をつぶりそうになりながら、またドローンに乗せられた。あっと言う間に湖を渡り、階層入り口に着いた。流石に眠る暇はなかった。また、階段を上がって、ドローンに乗った。後は、工房に戻るだけだ。
40分程の飛行中、熟睡していた。工房に帰り着いた時には少しだけ元気になっていた。それから、夕食の準備だ。ミラ姉達が準備してくてるけど、僕も、精錬で手伝う。お米がないのが残念だ。それに、精錬では、発行が進まない。オムレツ。ハンバーグ。ビーフシチュー。お好み焼き。うどん。ラーメン。思いつく限りを精錬調理した。その結果、工房のテーブルの上には、食べきれな程の量の料理が並んだ。
晩御飯を食べるとまた、眠くなってきた。
ミラ姉達が明日の予定を話しかけてきている。でも、良く分からない。村の村長の所に…。多分、今ベッドに運ばれている。おやすみなさい。
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時間は、12時間程さかのぼる。
「お帰りなさい。レイ。」
お母さんだ。
「ただいまです。」
「さあ、今から温泉に行くわよ。美肌の湯。レイに分析してもらって新しい化粧品考えるのよ。」
夕方の6時30分。僕たちは、すぐに車に乗り込み、出発した。美肌の湯で有名なS県のU〇〇温泉に行くそうだ。隣の県だけど、高速と一般道で1時間位で着くらしい。車に乗るとすぐに眠気に襲われ、そのまま眠ってしまった。
車が到着したのは、初めて見る光景の町だった。鉄筋ビルのホテル。大き目の駐車時用とホテル入り口は、ビルなのに瓦屋根が付いていた。それが玄関。中に入ると、すぐに受付。フロントと書いてある。眠い目をこすりながらお父さんとお母さんについて行った。1泊2日の温泉旅行。
まず部屋に通されて、浴衣というのを持って温泉に入りに行った。どうせ食後にも入るだろうからあんまり長湯をするなと言われたが、お父さんも一緒だったから、かなり急かされて入った。僕たちが風呂から上がってしばらくしてお母さんが上がって来た。それから少し遅めの夕食。食べたことがない珍しい食べ物が沢山出てきた。白く濁った湯豆腐というものは、不思議な触感と味だった。美味しかったけど不思議だった。
お腹いっぱいになって、眠りそうになっていると、お父さんが風呂に行こうと誘って来た。少しだけ、美人の湯を収納してくるようにとお母さんに言われて、風呂に行った。
精錬してみたけど、微量な物質が沢山溶けているようで、手持ちの材料で同じものを作ることはできなかった。
逆に、この温泉の湯を材料にして、化粧水と初級ポーションを作って欲しいと言われた。
水の代わりに温泉のお湯を使って初級回復ポーションを作ってみた。ポーションとしての効果は少し落ちる気がする。何しろ、純粋にけがや病気の回復を目指したものではない。
その回復ポーションで化粧水を作ってみる。コラーゲンと温泉のお湯で作った回復ポーションと僕の魔力しか入っていない。作った量は、5ℓ位。あんまり沢山温泉のお湯を持ってくることはできなかった。
出来上がった化粧水をパシャパシャと顔に着けているお母さん。明日が楽しみと言いながら、風呂上がりのビールを楽しんでいた。
それから、しばらくテレビを見ていたが、眠気が襲って来たので、布団に入った。ベッドじゃなくて布団。畳の上に敷いてある。中に入ると心地よい眠りに落ちていく。
次の日の朝、目が覚めるとすぐにお風呂に行った。誰もいない広いお風呂にお父さんと一緒に入った。
「気持ちいいね。それに、なんか少しはだがすべすべになってる気がするんだけど。」
「そうだな。ここの温泉は、アルカリ泉と言って、水質がアルカリ性だから古い角質なんかを溶かしてしまうらしいんだ。それですべすべになるということらしい。」
「薬草の成分で新陳代謝を促して、古くなった皮膚を溶かしながら補修するのか。皮膚の復活薬みたいな感じだね。」
「そうだな。そんな化粧品が出来たらすごいことになるだろうな。そうだ。誰もいないし、少し多めに源泉の所から収納していてくれないか。せめて10ℓ位は欲しいんだよな。ここのお湯で作った回復ポーション。玲が帰って来た時に実験に使いたいからさ。二重精錬のだよ。」
お風呂から上がったら朝食バイキングだった。お腹いっぱい食べた。それから、船に乗せてもらうために近くの漁港に向かった。お父さんの昔の友達が、船大工をしていて、今、作っている船があるということで見せてもらいに行くことになった。ほぼ完成しているそうなので、見せてもらうのが楽しみだ。出来たら収納精錬分析して、作れるようになりたい。
「お早うございます。」
「おう、久しぶり。中学の時以来だよな。」
「そうだな。吉やんは、あのころやんちゃだったからな…。」
「そうかぁ。お前だって相当だったじゃないか。先生に食って掛かったりさ。」
「若気の至りだよ。今は、品行方正。立派なもんだぞ。」
「はいはい。昔話に花を咲かせる前に、息子の願いをかなえてあげてよ。」
「おお、そうだった。息子がな、モノ作りに興味があって、俺が、船大工に知り合いがいるぞって言ったら是非船を作っているところを見せて欲しいって言いだしてな。昨日、電話した時に行ってただろう。ほぼ出来上がっている船があるって。見せてくれないか?」
「ドックにあるぞぉ。来週には、進水式をする船がなぁ。ただ、船に勝手に上がり込んだりはするんじゃないぞぉ。漁船にしては大きな船だからなぁ。見ごたえはあると思うぞぉ。」
「分かった。勝手に上がり込んだりしないよ。」
休日のドックには、誰もおらず閑散としていた。その中に大きな船があった。木造船ではないが、漁船だ。多分外洋で漁をする船なんだと思う。船底は、赤いペンキで塗られている。かなり大きい船だけど、収納して精錬分析をすることは可能だろう。木造船の方が良かったけど、船づくりの参考にはなると思う。
周りに人がいるかをサーチで確認する。
「サーチ。」
近くに人はいない。収納して分析だ。
「アイテムボックス・収納。アルケミー・アナライズ。………アイテムボックス・オープン」
分析に時間がかかったけど、誰も来ないうちに元の場所に戻すことができた。内部に小さなひびがあったけど、補修しておいた。多分、素材のむらのようなヒビだったから大丈夫な物なんだろう。
その補修がドックでの作業が始まった日に小さな騒ぎをおこしたんだそうなんだけど、それは、僕の知らないことだ。
その日の昼ご飯は、念願のラーメンだった。勿論、メニュー化した。その後、ホームセンターに寄って、花火と肥料を買った。木炭は、アイテムボックスの中に入っていた。
その夜、僕たちは、家の庭で花火をした。パチパチと音をたててきれいな炎を出す花火はとてもきれいだった。
「レイ、お願いがあるの。」
「何?お母さん。」
「向こうの世界に戻ってね。火薬を作れるようになったとしても、あまり広めないで欲しいの。特に人殺しの武器としては。」
「う……。実は、火薬を使わないでも、武器を作ってしまったんだ。それが、強力過ぎて、魔物相手だとしても危なすぎるような気がしたから火薬を使ってみようって思ったんだ。」
「そうなのね。あなたの世界は、魔術や魔法がある世界だからね。この地球にも魔術や魔法は実現できるのに、どうしてみんな使用できないのかしらね。」
「魔物がいなくて、魔石がないからかもしれないね。空気中には、僕たちの世界と同じくらい魔力があるのに不思議だね。」
「そうね。どうしてかしら。勇樹、どうしてだと思う?」
「僕に関しては、魔力も感じることができないからな。さっぱり分からない。」
「そうよね。さっぱり分からないわ。」
それから、僕は、花火の火薬を精錬した。色を付けるためには、金属が必要だったけど火薬はすぐに精錬できるようになった。
前乗ったモノレールって模型かおもちゃないのかな…。
「ねえ、お母さん。前来た時に乗ったモノレールっておもちゃ化模型ないのかな…。」
「モノレールのおもちゃ…。見たことある気がする。うちにあるわ。玲が小さい時買ってあげたのが。まだ動くかなぁ。プ〇モノ〇〇ルっていうの。懐かしいわってどこにあったかな…。探してみるわね。」
良し!モノレールのモデルがあれば、向こうの世界で作りやすい。でも、モーターがなあ…。なんせ電気の魔術がないからな…。
今回の転生で最高の精錬は、このおもちゃの精錬だったかもしれない。
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