第172話 島と湖階層のボス部屋

 僕は、3人乗りドローンに改造ライフルを融合して取り出した。


「出発しましょう。操縦はロジャー。真ん中にレイ。後部座席に私。後続機は、操縦にシエンナ、後部座席にアンディー。後ろのライフルの操作は、アンディーに変更できるかしら。」


「大丈夫です。私が変更することができます。」


 シエンナが、前と左右と上で、アンディーが後ろと左右を担当することになった。担当の割り振りは、使役しているシエンナができる。


 先頭は、次回層までの入り口をサーチできる僕。二番手にアンディーとシエンナが続く。すぐに階層入り口に着いた。階層ボスのコカトリスが復活している。まあ、この階層にはいくつかの入り口があるらしいし、階層ボスと言っても少し強いだけだが、ここのポスと言えないわけではない。


「1号機で対処しましょう。パーティーに送信。」


 3人乗りドローンは、ナンバリングで呼ぶことになった。初号機は、シエンナが操縦している。ナンバーで言うと0号機だ。そして、今、僕たちが乗っているのが1号機。大型ドローンの献上用は、ビーだったけど、名前は消去されて、僕たち用の大型ドローンがビーの名前を引き継いでいる。


「ファイヤーボールライフルを低威力にセットして、標準があった時に…、撃つ。」


 前方のライフルから高速ファイヤーボールが撃ちだされ、コカトリスの頭部を吹き飛ばした。


 ポトリと魔石と一緒に赤い鶏冠がドロップした。


「流石、ロジャー、一発で仕留められるんだね。」


「おう、魔力の減りは、そう感じないぞ。ダンジョンの中だからかな…。」


「でも、ドロップ品が外れね。あの鶏冠は、ギルドでも安くしか買ってもらえないのよね。」


「鶏冠、あれって鶏冠なんだ。じゃあ、化粧水や乳液を作ることができるよ。きっと、年配の女性には、高額で購入してもらえると思うよ。」


「化粧水って何?」


「ミラ姉には、あんまり関係ないかもしれないけど、お風呂上りや、お化粧の前に美容のために塗る物だよ。」


「美容の為ね。はいはい。どうせ、私には、美容なんて関係ないですよ!」


 ミラ姉が、怒った。


「そういう意味じゃなくて、若い女の子は、肌がプルプルで化粧水の必要がないってことだよ。ミラ姉達は、肌がきれいだから、まだ、必要ないっていう意味で行ったんだよ。」


「本当…。」


 ジト目で睨まないで…。


「兎に角、ドロップ品を回収して、つぎの階層に進もうよ。」


 次の階層は、湖と島。中央の島に次の階層の入り口があった。ロジャーとミラ姉もドローンで島まで飛んだそうだ。階層入り口は、ボス部屋になっていて、中に入るとボスを倒すまで開かないようだったから中には入っていないってことらしい。


 島を探索して水属性の魔石をいくつか手に入れて来てくれた。それには、風と氷の魔法陣を刻んでライフルにセットしている。高速アイスバレットが撃ちだされるようだ。


 魔術ライフルは、使用者の魔力属性に関係なく、セットした魔石と魔法陣に反応して魔術を撃ちだすことができる。だから、全員分のライフルを精錬コピーして渡している。魔法が有効な相手には、全員で魔法攻撃ができる。


「一旦、ドローンを降りて、大型ゴーレム戦車で突入する?」


「そうだね。それに、ガーディーやソーディーたちも一緒の方が安心だよね。みんなで突入することができる広さかな?」


「分からない。扉は、かなり大きかったわよ。全員が横に並んで突入することができるくらい。ガーディーたちと戦車を並べてってことよ。」


「じゃあ、そうしよう。」


「全機、着陸。大型戦車に乗り換えるわよ。パーティーに送信。」


 全機って言っても2機だけどね。


 戦車に乗り換えて、ガーディーが前、ソーディーが殿のフォーメーションで次階層入り口のボス部屋に向かった。途中何体か、半魚人っぽい魔物が出て来たけど、ソーディーのシールドバッシュの一撃で魔石に変わった。一度だけ水晶のような素材を落としたけど、収納して調べたら、魔水晶だった。以前、チャールズ様と探しに行ったことがあったとミラ姉が話してくれた。


 ドローンよりもこっちの方がダンジョン探索をしてるようで面白い。全員で話せるしね。


「階層入り口、ボス部屋が見えてきました。どのような布陣で突入しましょうか?」


 シエンナが、みんなに聞いてきた。


「相手が、どんな戦い方をするか分からないし、縦一列で入って分断されるのも嫌だしね。」


「戦車に盾を持たせて、ガーディーと戦車が盾を並べて一緒に突入、ソーディーは、ガーディーの後ろ、戦車の隣っていう布陣はどうかな。防御力重視の布陣でまずは、敵の戦い方を見るっていうの。」


「それ良いわね。」

「良いと思うぞ。」


「じゃあその布陣で、突入します。ドアは、引き戸、押戸、スライド式のどれでしょう?」


「さあ、まずは、押してみましょうか。」


 誰も挑戦したことがないから分かるはずはない。


 布陣を整えてゆっくりと近づく。ドアの直前に来た時、目の前のドアがふっと消えた。押戸でも引き戸でもスライド式でもなかった。中は真っ暗だ。いや、結界か?盾で探りながらゆっくりと進む。全員が中に入り終わると、眩い光に視界が奪われた。


 途端に、すごい勢いの水。ウォーターボールやウォーターカッターのようだ。


「戦車がきれいになっています。」


「デッキに出てなくて良かったな。」


 確かにそうだけど、なんかピントがずれている気がしないでもない。視界が徐々に戻って来た。確かに、全員が外にいて、視界を奪われた状態でこの攻撃を受けたら、大変なことになっていたかもしれない。大怪我じゃすまなかった可能性もある。でも、大型戦車の中だと余裕がある。


「このまま、前進して、盾で押しつぶしてしまいましょうか?できるんじゃない。シエンナ。」


 何かミラ姉が、恐ろしいことを言っている。


「はい。敵は、横一列で、水魔法の攻撃をしてきていますから、雑魚魔物は、盾で押しつぶすことができると思います。」


 シエンナは、この状況でも、感覚共有で、戦闘状態を把握している。


「じゃあ、いっちゃって!」


「はい。」


 徐々にスピードを上げ前に出るガーディーと戦車。魔物たちも最後の魔力を振り絞るかのように、水魔法の威力を上げてくる。そんな抵抗も難なく押し返すガーディーと戦車。中央から魔法攻撃が収まっていく。


 盾を避け、なおも攻撃してこようとする魔物をゴーレムハンドに持った盾で払い飛ばす戦車とシールドバッシュで跳ね飛ばすガーディー。残った数体の魔物は、討伐行動に出たソーディーによって、切り倒された。


 一段高い場所から一体の魔物が現れた。人魚?大きく口を開けこちらを向いている。


「シエンナ、みんな、僕の後ろに。多分、状態異常系の魔法を撃ってくるつもりだ。」


 僕は、アイテムボックスを前面に開いた。多分、魔法攻撃は、アイテムボックスに収納できる。魔物の魔法は今まで収納したことは無いけど、みんなの魔術は収納できた。だからできる。そう信じて。


「入ってきている。アスリープの魔法だ。多分、眠らせる魔法だと思う。音に乗せて撃ちこんできているようだけど、この戦車の中は、音がほどんど通らないから前からの魔法だけを防いで居れば大丈夫なようだ。」


「でも、このままじゃあ、反撃できないぞ。」


「シエンナ、ソーディーに攻撃させられない?」


「ゴーレムは、眠らないのであの人魚の攻撃は無効です。行けます。」


「シエンナ、感覚共有の音は遮断しておいてね。間接的に魔法にかけられないように気を付けて。」


「はい。意識して音の感覚共有を遮断しておきます。」


「ソーディー、人魚の魔物への攻撃をお願い。」


 シエンナの指示でソーディーが動き出す。ものすごい速さで人魚の魔物に近づいて行った。大剣一閃。人魚の魔物は、切り伏せられた。アスリープの攻撃は、終わった。


「この階層入り口、他の冒険者パーティーは、どう対処したら攻略できる?」


「戦車がなくても、シエンナがいなくても、レイがいなくても攻略できなかったわよ。」


「ロジャーと二人で入ってなくて良かったわ。」


「それに、防御力重視の布陣にしていて良かったね。デッキに出ていたらどうなったかと思うとぞっとする。」


「そうね。ずぶ濡れになるだけじゃすまなかったかもね。」


「とにかく、魔石とドロップ品を回収して次の階層に進みましょう。それと、ゴーレム戦車にも魔術ライフルを付けといた方が良いかもね。」


僕たちは、一旦ゴーレム戦車を降りて、ドロップ品の回収を行った。その間に、ゴーレム戦車を収納し、魔術ライフルを前と後ろと左右に融合した。普段は、折りたたまれてボディーに収納しておくようにしておいた。エスも出してもらって同様にライフルを取り付けた。


「これ、この魔石すごいぞ。多分、セイレーンの魔石だ。それと何だこれ?訳の分からないドロップ品が落ちてる。」


収納して確認すると、人魚の肝。何に使うんだろう?


次の階層入り口が開いている。どんな階層なのか楽しみだ。




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