第171話 試験飛行と3人乗りドローン

 シエンナが操縦。僕とアンディーは、前方の狙撃手県護衛席に座っている。通路は少し狭いけどドローンの内部は、割と広い。出力的にも少し余裕があるようだから、通路に護衛騎士用の予備席をいくつか作ろう。


 これで、最高搭乗人数は、ロイヤル席10席。ロイヤル席内の護衛席は補助席として2席設置。狙撃手兼護衛席左右2席ずつと後方1席。操縦席1席。通路の補助席左右に3席ずつの合計24席が定員ということになる。


「すぐに、次階層入り口に到着します。あっ、ミラさんたちがいます。着陸態勢に入ります。着陸します。」


 ふわりと、着陸し、下降が終了したため、身体の重心だけが下に下げられるような変な感覚に襲われた。


「到着しました。後方階段ドアを開きます。」


「すっごーい。」


 ミラ姉達が入って来た。ゴーレム戦車のエスは、ロジャーが収納しているようだ。


「入り口を閉めます。」


 シエンナの声がした。階段ドアの開閉ボタンは、入り口側と操縦席に着けている。外からドアを開いて階段を卸すには、タブレットで指令を伝えないといけない。


「飛んで見せて。それとライフルの狙撃試験は済んだの?」


「いや、ライフルのテストはやってない。」


「じゃあ、飛ぶ前に一度発射試験しておかないと危ないわよ。アンディー、この近くに少し大きめの的をいくつか作っておいて。ストーンクリエートで収納の中にロックブロックいくつか入れてるでしょう。」


「分かった。最低、7個は作っておかないといけないな。下の可動式砲台席からの狙撃もやってみるだろう?」


「ロジャー、飛行開始ししたら、可動砲台席に乗ってみて。」


 ロジャーならきっとうまく狙撃できると思う。何せマウンテンバイクで飛びながら投擲できるんだからね。可動式の砲台なんて簡単なもんだと思うよ。


「おう。分かった。試験してやる。」


 前と後ろは、操縦席からシエンナ後方の右と左がアンディー、前方の右が僕、左がミラ姉が担当することになった。下はロジャーね。


 すぐに、アンディーが的を作って戻って来た。


 階段を収納したら離陸だ。離陸後すぐにロジャーが可動砲台席に移動した。一発目は、シエンナ。感覚共有があるから楽勝だ。前、後ろと簡単に的に当て破壊していく。前後は、上手くいった。ライフルもかなり伸ばして結界の外に出している。


「次俺、左側から狙撃する。」


 アンディーの声にシエンナが反応して右側を的の方向に向けた。


 アンディーがはっしゃ。命中。


「次、私。そのままの方向で大丈夫。」


 ミラ姉も命中させた。


「次僕が撃ってみる。」


 シエンナが右を的の方に向けた。


 発射。外れ!もう一発発射。命中。


「うまいじゃない。練習したらもっとうまくなるわよ。」


『ロジャー:もう少し上昇して停止してくれ』


 ロジャーが回転砲台から射撃した。8発撃ってアンディーが作った的に全部当てて破壊していった。


 ロジャーが戻って来た。砲台席の中から席の移動ができる。


「どうだった?うまかっただろう。」


「うまかった。流石だね。」


「そうだろ。でも、魔道具の乗り物って今までいくつも作って来たけど、魔道具の中にいて結界に守られた状態なのに攻撃できるって初めてだよな。」


「まあ、戦車のデッキで魔物を攻撃している時も、バッキーに守られてはいたけどな。」


 それは、そうだけど、大型兵器と呼べるものになってしまったかもしれない。ただ、武器が大量殺戮兵器でないことだけが救いかな…。今の所、魔物用武器と言って差し支えないだろう。戦争に利用されたりしたら嫌だな…。


「ねえ、このファイヤーボールライフル、二人乗り用のドローンにも付けなくていい?この前、ダンジョンを飛んだ時には、必要なかったけど、着陸する場所に魔物が居たら、今のドローンだったら着陸できないわよ。」


「それに、倒した魔物のドロップ品を手に入れる方法を考えておかないといけないよな。小さい手で良いから、ゴーレムハンドを付けておかないか?アイテムボックスとセットで。」


「それと、間に1席増やすだけで良いから、3人乗りドローンを2台作らないか。一人で乗るの寂しいし。武器の操作が必要なら、3席あっても良いだろう?」


「そうだね。コアを一つ増やして、ゴーレムハンドと6丁のファイヤーボールライフルを取り付けた3人乗りドローンを作ってみようか。ファイ―ボールライフルは、魔石をカートリッジ方式にしてても手で入来を切り替えられるようにしてみようかな…。」


「カートリッジ?何だそれ?」


「ライフルに組み込む魔石を何種類かにして、手元の操作で取り換えられるようにできたらどうかなって思ってさ。」


 回転式のカートリッジにしたら、威力が違うファイヤーボールが打てるようになるかもとにかくアンディーと相談して、作ってみよう。それと3人乗りドローンだな。機体の部分をほんの少し長くして、コア10個を合成してから後は、全く同じ。アームの先端と前後、コックピットの上にライフルを合成。


 ゴーレムハンドは、普通のコアを3個で十分でしょう。後、大き目の魔石を使って魔獣の皮を中に貼ったぽボックスと合成したら…。アイテムバッグの出来上がり。これをドローンの機体先端に合成してゴーレムコアと接続したら、操縦席から、マジックバッグを開いて、ドロップ品をゴーレムハンドで回収できる。


 試験飛行は、順調だった。スピードは今使っているドローンよりも出るようだ。只、高速飛行の時に、機体を前に傾けるため、速度によって椅子の角度を変更できるようにして、コントロールコアが調整できるように設定を変えた。これで、シートベルトをしていなかったとしても椅子からずり落ちることは無いだろう。


「3人乗りドローンをファイ―ボールライフルを付けて作ってみたから、一度、工房に戻って飛行試験と調整をしようと思うんだけど、良いかな?」


「ええっ?もう作っちゃたの?」


「うん。ただ、ファイ―ボールライフルを少し改造したいから、工房に戻りたいんだ。ライフルの改造と試験飛行は、同時にできると思うんだよね。僕と、アンディーでライフルの改造をしている間に、シエンナとミラ姉、ロジャーで無人飛行実験と、有人飛行実験を済ませておいてくれない?」


「わかった。なんだか忙しいけど、できると思うわ。チャチャっと済ませて、ダンジョンの探索に行きましょう。」


「では、工房に帰還します。最高速度実験は、狭すぎてできないかもしれないですが、できるだけスピードを出してみます。」


「私たち用の大型ドローンって作れないの?私たち5人とゲスト5名くらい乗れるドローン。ロイヤルルームは無しで。」


「ロイヤルルームの場所にテーブルとゲスト席を付けてようなものなら精錬コピーとアンディーのクリエートですぐ作れると思うよ。」


「テーブルは何時もあると邪魔だから、収納式にしてもらえるかな。」


「だってさ。アンディー。」


「でも、ゲスト席のコアへの接続は、レイじゃないとできないぞ。」


「そのくらいなら、あっと言う間に終わるよ。」


「それと、後方の射撃手席も一応作っておく?」


「そうね。一応ね。」


「それなら、ロイヤルルームを取り外すだけだから簡単だ。」


 そんな話をしていたら、工房についてしまった。ロジャーが、上空から、魔物や人の気配を探っている。異常はないようだ。


「工房の結界を外しても大丈夫みたいだ。」


「賢者の工房、結界を外してくれ。賢者の工房に送信。」


 階層入り口の左側に工房が現れた。大型ドローンで着陸する。


「賢者の工房、結界を張ってくれ。」


『ブォーン』


 小さな音がして、結界が張られたことが分かった。


「じゃあ、まず大型ドローンを収納。精錬コピーでもう一台作る。」


「アルケミー・コピー・ドローン。」


「じゃあ、次に、3人乗りドローンを作るね。アルケミー・ドローン。」


 前と後ろの席の間に1シート分の空間が空いたドローンができて出てきた。


「アンディー、まずシートを作って設置しておいて。空間を広げるのとイスを作って設置するのの両方はできなかった。」


「了解。シートはいくつも製造設置しているからすぐに終わる。」


 本当にあっと言う間に設置してしまった。


「じゃあ、出来上がったドローンと今あるファイ―ボールライフルを融合して、トリガーをつなぐね。光の魔石とゴーレムコア、黒の魔石で銃口の向いた方向を、前と真ん中、後ろの席に左右と操縦席は、前後と上の3つのモニターにつないぐよ。」


 銃口モニターは、前が前後と上、中と後ろは、それぞれ前後の左右の銃口の先を映し出している。対応するトリガーに魔力を流し込めば、ファイヤボールが発出する。


 出来上がったドローンをすぐにコピーして2台にした。


「完成した。一度、取り出して確認するね。」


 僕は、2台の3人乗りドローンを取り出した。


 中に乗り込んでゴーレムハンドの動きや銃口の向いた方向がきちんとモニターに映し出されているかを確認した。


「大丈夫、地上での確認は、終わった。後は、シエンナ、お願い。」


「はい。分かりました。無人飛行実験と有人飛行実験ですね。」


「宜しく!」


 ミラ姉とシエンナ、ロジャーが一人でドローンに乗り込んだ。


「では、行ってきます。」


「行ってらっしゃい。」


「アンディーにお願いしたいのは、ここの部分。」


 僕は、ドローンに取り付けるファイヤーボールライフルの魔石格納部分を示しながら説明した。回転式の魔石入れのようなものの中に様々な設定の魔石を組み込んでおいて、必要に応じて回転させ、違った威力や違った効果の魔石をセットできるようする。回転式弾倉の魔石版のようなものだ。


 その説明でどの大きさの魔石をセットしても、銃口とぴたりと繋がり、トリガー横のボタン操作で、弾倉を回転させることができる仕組みを作ってくれた。それを取り付けたライフルに弾丸を自分の方に向けたように形の魔石カートリッジに大きさの違う魔石をセットして入れて行った。


「有人飛行実験まで終わったら戻って来て、こちらの改造は終った。ロジャー、シエンナ、ミラ姉に送信。」


『シエンナ:有人飛行実験終りました。工房前に着陸します。』


 僕たちは、工房の外に出て、2台のドローンが着陸するのを待っていた。3人一緒に一台のドローンから降りて来た。


「お帰りなさい。どうだった?」


 僕は、ドローン収納しながら尋ねた。


「快適だったわよ。スピードも出るし、寂しくないし。」


 ドローンにアンディーと作った魔石ライフルを融合しなおして、もう一度取り出した。


「ライフルの改造終了したよ。ダンジョンの探索に出かけよう。」

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