第170話 大型ドローン製作

「王室に送るドローンに必要な機能って何だろう?」


「やっぱり護衛機能じゃないか?」


「そうですね。今のドローンには、高速で逃げる以外に戦いの方法はありませんから。体当たりしたら多分、自分たちが壊れてしまいます。」


「じゃあ、護衛機能ってどんな能力があればいい?」


「攻撃なら、前方だけでも全然大丈夫だろうけど防衛機能ということになれば、結界は絶対要るよな。魔術結界・対物理結界は最低付けておかないといけないけど、結界を貼ると中からの攻撃が出来なくなるからな…。」


「じゃあ、人が乗る部分を結界の範囲にしてファイヤーボールライフルみたいな攻撃魔道具の部分を結界の外に出していたら良いよね。そこは、攻撃されて壊れるかもしれないけど、中の人は守られるようにさ。」


「そんなことが可能なら、そうしたいけど、できるかな。使用に耐える位の強度の結界をそんなに微妙な距離の違いで有効にしたり無効にしたりさ。それに、人が乗るときは、結界を完全に消さないと乗り込めないんだぜ。」


「やってみないと分からない。それに、そもそもそんな大きさのドローンが空を飛ぶのかも分からないんだよ。」


「まあな。護衛騎士が操作するとして、どの方向にも死角がないような装備なんてのも不可能な注文だからな…。でも、ドローンは、そう何台も作ることはできないし、できれば、今回の一台だけで、王室の皆さんが安心して空の旅を経験できると良いのだけどな。」


「じゃあ、機能を整理するよ。対魔術結界と対物理結界。防衛のための攻撃がほぼ全方向にできること。離陸するときは、上方向が進行方向になるから、魔上にも攻撃手段があると安心だよね。逆に、着陸する時は、下方向が進行方向になるから、下にも攻撃の手段がないと、着陸直後に襲われたらどうしようもなくなるよね。」


「じゃあ、上、前後左右と下に魔道具の攻撃手段を付けて、中から操作できるようにするということか。」


「前後左右は、プロペラを付けるアームが乗り込み席の一番遠くにあるからその先端に取り付けて発射角度を変えることができるようにすればいいな。この4門で水平方向360°+上15°、下45°位はカバーできる。その細工は、俺ができると思うぞ。」


「下は、普段は、乗り込み席に内蔵しておいて、戦闘時だけ下に降ろす可動砲台席式にしたらどうかな。王室の皆さんの移動場所が、そんなに危険な場所にあることってめったにないと思うからさ。」


「それじゃあ、護衛騎士の人数とゲストの人数を合わせて何人乗りにしたらいいんだ?」


「王室の皆さんを基準に考えて、まず王室7名。これに大臣級が同席すると考えるとプラス3名。まず、全員一緒に乗ることは無いと思うけどね。でも、最大10名。護衛が水平方向4名と前後に1名下に1名で上は、前か後ろが担当することにしても7名合計17名のりということになる。」


「ドローンでの攻撃以外にも身辺警護は付くはずだからその方たちを3名までとしてもらって20名乗りドローンにしておけば、大丈夫かな。外国に出た時も護衛付きで行くことができる。」


「その方向で作り始めてみよう。20人乗りドローン。20人全員の重さを何キロと考えたらいいのかな?」


「その中には、座席や衣服装備品も入りからな…。平均で一人90kg見ておけば良いかな?それで1800kg。座席はできるだけ軽く作って、装備品は、飛行中は、アイテムバッグに入れてもらえばもう少し軽くすることもできるかもしれないけど…。でも、1800kgは余裕で運べないといけないということだね。」


「大きさは、どのくらい必要かな…。居住空間として…、できるだけ余裕を取ってあげたいけど、大きさを2倍にするとその重量は3乗倍の8倍になるからな…。できるだけ、空間を多くとって隔壁で強度を増さないと大変なことになる。」


「強度が必要な場所には、発砲ミスリルを使って、内部は空間でできるだけ隔壁で強度を増すようにするとしても、限界があるからな。」


「シエンナ、何かいいアイディアある?」


「そうですね。私は、ゴーレムの調整要因ですから、構造のことになると全く分からないのですが、ゴーレムコアを軽くする方法として、小型のドローンはコアを細く伸ばして各部品の連絡を取っていましたが、これだけ大きくなるとコアを伸ばして連絡をするとなるとかなりの量のコアを無駄にしていしまうことになります。コアは、細くするのにも限界があるので、ミスリル導線でつないではどうでしょうか?魔力の通りも良くなりますからコアでつなぐよりも効率的ですし、細く加工できる分、軽くなると思います。」


「そのアイディア良いね。その分、コアを動力に回して回転翼をより速く回すことかできるようになる。」


「その回転翼なんだけど、発砲ミスリルとミスリルの混合使用をすることで軽くて強いものにできそうなんだ。内部と表面の構造を少し変えて作ってみた。試してみてくれ。」


「でも、肝心の大きさが、設定できないな。地面に操縦席や搭乗者席、護衛の騎士が座る砲台席を置いてみてイメージを固めてみようか。」


「それじゃあ、俺が土魔法でクリエートしてみる。土は、ダンジョンの物を使ってみるな。何分かは吸収されないだろう。」


「まず、操縦席は、この辺りかな。その後ろ1mくらいに可動式砲台席の入り口。その後ろにゲストルームを作って。その中に、席を固めて10個。4席、4席、2席でなべてみて。戦闘時のバタバタの時に不安にならなくていいようにゲストルームは完全に隔壁で分けておく。ゲストルームはほぼ4mの正方形。左右には、護衛席用の幅1mの通路かな。…」


僕が移動しながら示していく場所にアンディーが次々に椅子やそれなりの装備を形作って、置いてくれた。設置した物の大きさや長さをシエンナが図って記録しながら教えてくれる。


「搭乗者スペースの幅は約6m。ゲストルームの前のスペースに操縦席と可動砲台入り口1m。操縦席に必要なスペースを150cmとして、その左右に護衛席。ゲストルームの後方には、搭乗用の階段とゲストルームへの階段をつなぐスペースとして3m。そこに左右の護衛兼射撃手席と後ろの射撃手席を設置しています。搭乗スペースの長さは、これで7.5m。これに階段や装甲の厚みを足すと、ドローンのアーム部を除いた大きさは、長さ8m幅、6.4mになると思います。」


記録した数値をシエンナが読み上げてくれた。


次は、高さを決めるために、模型を作成することになった。椅子や装備は、木材で作成し、透明な部分はガラスで作ってみた。およそ10分の1の模型にしてみた。内部を幅60cm、長さ75cmに設定して、外部の長さを64cmと80cmになるように作った。ゲストルームの内部は、22cm程の空間にしてみた。護衛騎士には2mを超える身長の方はいるが、王室にはいないから大丈夫だろう。いたら少し屈んでもらおう。ゴーレム核や様々な装備を配置するための空間に1m。隔壁で区切ってなるべく空間を多くする場所だ。


そのボディーにちょうどいい大きさのアームとプロペラを付けてみた。これは、木で作った模型だから動くことはない。でも、この模型が、運ぶ人の重さの10分の1、つまり180kgの物を運ぶことができるかと考えると難しいと思ってしまう。大きさを10分の1にしたら重さだと1000分の1になるからだ。1.8kgぐらいだったらもっと小さいドローンでも運んでいる。立体物を拡大するのは、だから難しい。


出来た模型を参考に、アンディーに機体を作ってもらった。アームの細い部分や装甲には、発砲ミスリルをミスリルコーティングしたものにした。広い空間は、ミスリルの10ミリ板で50cm四方の隔壁に区切っていった。この機体の重さだけで150kgを軽く越えている。これでも、水にプカプカ浮く重さだ。


更に、ゲストルーム、座席や操縦席、移動砲台などを取り付けて行った。仮付けでファイヤボールライフルと、物理結界、魔術結界の魔石も取り付けた。魔石の大きさを調節して、結界が武器を覆わないようにしないといけない。この時点で重さが300kgを越えた。でも、人が乗るとこの何倍もの重さになる。それが心配だ。


この機体にゴーレムコアを融合して、プロペラを回すことができるようにする。ガーディアンクラスのコアを41個融合して各回転翼の動力に10個分ずつ、コントロールコアに1個分で振り分けた。


「シエンナ、この大型ドローンを使役して。まずは、単体飛行をさせてみよう。アンディーとシエンナでドローンを追いかけて、テスト飛行をやってみて。大型ドローンのコントロールコアに中継コアを融合しておいて、タブレットで通信できるようにしておこうかな。」


「そうですね。そうすれば、レイさんのタブレットから情報を得たり指示を与えたりすることが可能になります。」


「一度、ドローンを収納して、中継基地をコアに融合するね。」


僕が、コントロールコアにタブレットの中継基地を融合している間にアンディーがアド機を出して追跡の準備をしてくれた。


「じゃあ、テスト飛行お願い。」


「はい。では、大型ドローンを使役します。あなたは、ビー。大型びっぐのドローンとbeeのビーよ。今からテスト飛行をするわ。私の指示とタブレットから出されるレイさんの指示をしっかりと聞いてね。」


ドローンの使役が終わると、シエンナは、アンディーの後部席に乗り込んだ。


「では、出発します。離陸。上空20mで待機。」


「行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」「行ってくる。」


二人を乗せたドローンが離陸して、すぐに上空に消えて行った。大型ドローンもそれを追うように上空に消えた。


『シエンナ:飛行成功、水平飛行は安定しています。次の試験を行います。アド機を追尾させます。追尾開始、3、2、1、開始。』


『シエンナ:アド機、追尾を振り切るように飛行しています。ビーは、小回りは難しいようですが、スピードで優っていて、振り切られることなく追尾してきています』


『アド:最高速度で飛んでみる。追尾できるか試す』


『レイ:了解。試験開始して』


『アド:現在、最高速度到達。ビーは遅れることなく追尾している。』


「現在の状況を送信してくれ。ビーに送信」


『ビー:良好です。現在、最高出力の6割ほどで飛行中、アド機の回避行動は終了しました』


「一旦、工房へ戻ってきてくれ。アンディーとシエンナに送信」


『アド:了解』


「外に出て待つから、上空に到着したら連絡頼む。アド機に送信。」


『アド:了解』


無人飛行は成功だ。次は、有人飛行。ミラ姉達にも知らせた方が良いかな…。タブレットの通信が繋がれば良いのだけど…。


「大型ドローンの飛行テストが成功した。これから有人飛行テストに移行する。ミラ姉達も乗りたい?ミラ姉とロジャーに送信。」


『ミラ:乗りたい。階層入り口に迎えに来て』

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