第5章 森の賢者の研究所編
第168話 賢者の工房作り
いよいよ、新章の開始でです。少々、もたつき気味であった砦建築編でしたが、次章は楽しんでいただけたら幸いです。
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王様たちとパーティーハウスにもどり、王室を迎えたにしては質素だけど、僕たちとしては精いっぱいのもてなしをした。王室の
歓待は、急遽の準備としては、申し分なく、国王陛下にも褒めていただいた。エリックさんやメイドの皆さんには、国王陛下より少なくない報酬を頂いている。王宮の方々が、お戻りになった後、ちゃんと手渡した。あのいつも冷静なエリックさんがすごく喜んでいたのが印象的だった。
「このような機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。」なんて言ってくれたけど、急に連れてきたりしてごめんなさいだ。
王宮の方々を送り出した後、全員で、ゴーレム戦車のSに乗り込み、パーティーハウスをでる。打ち合わせは、戦車の中で行うことにしていた。
「森の賢者に叙爵させるなんて、国王陛下も大胆なことしてくれたわね。」
「でも、こうなったら、森の賢者を登場させないといけないぞ。」
「森の賢者は、居ませんでした。なんてことにならないようにきちんとした登場の仕方にしないといけないわね。」
ミラ姉の言うことはもっともだと思うのだけど、そもそも、森の賢者なんていないんだから、登場のさせようがない。
「森の賢者は、異世界から来た玲さんなんでしょう。」
「まあ、そうだけど、それはレイだしな。違う人物して紹介するのは無理がないか?」
「あの…、王都の道具屋で面白い物を見つけて、買ってきているですけど…。」
シエンナがアイテムバッグから変な仮面を取り出した。
「何だ、それ?」
「声を変えることができる魔道具のついた仮面です。認識阻害の結界も貼られるそうなので、仮面を少しずらして食事をとることもできる優れものだそうです。」
「なんで、そんなの買っちゃったの?」
僕は、思わずシエンナに聞いてしまった。
「実は、王室の皆さんと食事をするのが怖くて…、皆さんがそんな機会があるようなこと話をしていたので、思わず買ってしまいました。」
「「「「プッ、プハハハハ…」」」」
「そんなに、笑わないでください。本当に怖かったんですから…。」
「でも、その仮面を使ったら、森の賢者に登場してもらえるかもしれないね。」
「転生してきた玲にかぶってもらったら、パーティーとしての活動はできないけど、ミラ姉と一緒に村長さんと話し合ったりすることはできるようになるね。」
「そうね。口調は、レイに似てると言えば似ているけれど、全く一緒じゃないし、別人と言えば本当に別人なんだから…。それじゃあ、これから転生した玲は、森の賢者レイモンド・フォレス・ポイナーということにしましょう。」
「じゃあさあ。これから王都まで行って、この仮面をしていても不自然じゃないローブや賢者が持ちそうな杖なんかの装備を買ってこないか。」
「そうだね。ドローンで行って、買い物して、できたら、氷の魔石や冷却や送風の生活魔法の魔法陣も仕入れてくれば、面白い実験ができるかもしれない。」
「それから、精錬窯もいくつか買って来ておきましょう。もしかしたら、森の賢者様が魔法陣の解析できるかもしれないわよ。」
「でもさ。実験ってどこするんだ?パーティーハウスの工房は今日は使えないぞ。」
「じゃあ、森のダンジョンの森の階層に、工房付きの拠点を作ろうか。普段は、結界で隠しておいて、僕たちが来た時だけ、姿を現すようにしておけば森の賢者の実験も随分とはかどるんじゃないかな?」
「それができれば、良いだろうさ。見えない拠点にどうやって入るつもりなんだ?というか、見えない拠点にしたらどこにあるかわからなくなるだろうに。コテージさえ、締め出されたらなかなか入ることができないんだぞ。多分魔石の魔力が消えるまで入れないんじゃないか?」
「そうだな…。例えば、目印を付けた石か何かの下に仕掛けを作っておいて、その仕掛けで、魔石を外すとかできない?」
「あの…。」
「えっ?何?シエンナ。」
「通信用のタブレットを改造して、魔力のオン・オフをしたらどうですか?もともと通信機能があるのだから、外から指示することなんて簡単にできますよ。」
「「「「いいねえ!それ」」」」
「そうか。タブレットってそんな使い方もできるんだ。それって色々なことに応用できるよね。」
「今までもしていたじゃないですか。ゴーレムバスの運用なんかの時も使っていたどょう。それとおんなじと思いますよ。」
「いいや。違うと思う。そもそも、鍵代わりにできるなんて思いもしなかった。」
シエンナのアイデアで、ダンジョンの森の階層に森の賢者の結界付き拠点兼工房を作ることにした。その素材集めのために、僕とアンディーとシエンナは、ロックバレーの石切り場と森へ向かい、ロジャーとミラ姉は、王都へ森の賢者の衣装と武器や研究に使う道具を買いに行くことにした。もう、4時だけど、王都の防具屋は、冒険者が町をに戻って来てからの方が賑わうから問題ない。石切り場へは、小型ゴーレム戦車で直行すれば、15分もかからない。
僕たちは、すぐに行動を開始し、15分後には、石切り場でロックブロックを作り始めていた。魔物対策の防壁だし、森の賢者の拠点兼工房は、100m四方もあれば広すぎる位だ。地下に2m埋めて高さが6mの壁にするとして、必要な石の数は…。25600個位だ。フォレポイ砦を作った時の余りが20000個くらいあるから、アンディーと二人で5600個作ればいい。僕は、手当たり次第に石材を収納していって、アンディーは目にもとまらぬ早さでブロックを作っていった。20分くらいの作業でブロックは、二人合わせて10000個程できた。
次に、拠点の建物を建てるための木材を取りにいかないといけない。ダンジョンの中の木材だと、吸収されてしまってあっと言う間になくなってしまう。そこで、ロックバレーの
次に、シエンナの運転で森のダンジョンへ向かった。ディーコムさんにも挨拶は無しで、そのままダンジョンへ入って行く。真っ直ぐゴーレム階層へ向かい、一番近くのいつものガーディアンの階層入り口でコアを採集した後、最後の2体分のコアを破壊して、森の階層に入った。
森の階層に着くと、階層入り口のすぐ左側の崖を背にする形で少し広がったUの字型の防壁を作っていく。僕とアンディーで並べて4段並べたところでアンディーが土魔術で土台を埋めていく。交互に凸凹になるように土台を沈めてその上に更に壁を積み上げて行った。
1時間ほどで高さ6mの防壁が完成した。崖側に寄せるようにして、砦の拠点の4分の1位の規模の建物を精錬。その間に地下室になる部分をアンディーに土魔術で掘ってもらっておく。僕の精錬コピーでは、縮尺の変更は可能だけど、部屋数を変えたり間取りを変えたりすることはできない。だから、使い物にならない部屋ができたけど、使用に耐える家にはなった。
地下部分は、アンディ―の掘った穴に合わせて作っておいた。そのまますっぽりとはめ込む形で拠点兼工房の建物は出来上がりだ。
出来上がった拠点兼工房に魔石を設置して入り口には、アンディーにミスリルの門扉を作ってもらった。結界の魔法を発動できるように魔力を満タンにして、結界の魔道具と通信タブレットの改造スイッチを融合した。そとは、少しずつ暗くなっていく。時刻は、6時近くになろうとしていた。
中継基地の10分の1位の量のコアしか使っていないから、長距離の通信は難しいと思う。この拠点の名前を『賢者の工房』にして、タブレットに登録。通信コアにも同じ名前した。これで、賢者の工房に向かって、結界を切るように命じれば、その姿を現していくれるようになるはずだ。
内装は、全然できていないけど、結界のオンオフの実験だ。
「賢者の工房、結界を解除だ。」
コアの方向に向かって結界解除の命令を出した。
今まで、少し霞んだように見えていた外の景色がはっきりと見えるようになった。コテージの結界は、外に霞みがかかったようになんて見えないのだけど、コテージの何十倍もの広さに強力な結界をかけているからカスミが見えるのかな?魔石は、大きいから一度魔力を一杯にすればなかなかなくならないだろうし、ダンジョンの中なら、魔力が補充されるようだからずっとなくならないかもしれない。
魔石の魔物化の心配はないわけではない。結界を張らずに長くほおっておくと魔物化するだろう。まず、そんなことには無らないのだけど…。そんなことしたら、魔石が魔物化する前に、この拠点が魔物に壊されてしまう。
外に出て、結界の効果を確認する。アンディーには中にいてもらう。そうしないと、もしもの時には、拠点を見つけられなくなる。
「賢者の工房、結界を起動してくれ。」
『ブゥーン。』
小さな音がして、拠点が消えた。
「賢者の工房、結界を消してくれ。」
やっぱり外からじゃ、結界を消すことはできない。
「賢者の工房、結界を消してくれ。賢者の工房に送信。」
『ブォーン。』
また、小さな音がして、賢者の工房は現れた。
研究室の建物が完成したのが午後7時丁度位。そろそろロジャーたちが戻って来ても良い頃なんだけど…。アンディーと一緒にテーブルやベッドなどの日常品を作ったり実験器具を作ったりしていると、タブレットが振動して、ロジャーからの連絡を知らせて来た。
『ロジャー:どこにいるんだ?ガーディアンの入り口から入って来たが見当たらない』
『レイ:ガーディアンの入り口から左側に移動して、結界を消すように、『賢者の工房』へ送信してみてくれ』
『ロジャー:了解』
『ブォーン。』
中にいても小さいと感じる音がして、ロジャーたちが砦の中に入って来た。
「賢者の工房、結界を張ってくれ。」
『フゥーン』
賢者の工房は、結界に隠された。
「いろいろ買って来てやったぞ。特に魔法陣は充実させた。魔石も金貨を惜しみなく使って何種類も買って来た。今日が、生まれて今までで一番お金を使ったもしれない。いや、使った。」
「精錬窯も2台くらい買って来たけど、はっきり言って使い物になるかどうか分からない。一台は、火の魔石を使って暖かい風を吹き出す魔道具を作ることができる精錬窯。もう一台は、普通の魔石を使って氷を作り出すことができる魔法陣を作るための精錬窯だ。いろいろ実験できると思わないか?」
ロジャーは、おしゃべりしながら買って来た道具をテーブルの上に並べて行った。ミラ姉が静かだなぁって思ったら、台所の方で、料理の材料や調理道具を収納して夕飯の準備をしていた。シエンナも一緒だった。森の賢者こと玲を迎えたら、みんなで食事をする予定だ。その後は、夜遅くまで、モノ作りや実験をするんだろうな。一緒にできないのが少し寂しい。
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