第165話 緊急依頼の清算と評価
今日は、領主様が、王宮に呼ばれてロックバレーのロックリザード討伐に関する褒賞を受け取っているはずだ。その上、宝石を産するダンジョンまで発見したことになるのだから、相当の褒賞を頂いてもおかしくないはずだ。
ロックバレーの魔物による占領の責任を取って隠遁していた領主様だから喜びも大きいと思う。ギルマスも今回の働きで廃嫡も免れるだろうなんて言っていたし。
僕たちは、宿で待機だ。昨日は、美味しいお料理を食べて、ゆっくりお風呂に入った。元気いっぱいだ。光属性の魔石が手に入らなかったら、今頃、中級ダンジョンに挑んでいたはずだけど、魔石もそこそこ手に入ったし、完全休憩日だ。
そう思って、朝食後も宿のベッドの上でゴロゴロしていたらタブレットが振動した。
『クーパー:帝国献上のゴーレム車と皇帝献上のタブレット、王宮使用のタブレットなどの購入金額のことで話し合いを持つ。正午に王宮の財務卿執務室までパーティー全員で来られたし。冒険者の服装で登城してかまわぬ。』
『レイ:連絡拝見いたしました。正午に登城いたします』
メンバー全員を集めて、クーパー様からの連絡を知らせる。
「アンディー、帝国献上のゴーレム車いくらくらいにするって言ってたっけ?」
「ゴーレムコアは、バイク3台分だけど、金属やシリコンゴムなんかはゴーレムバイクの10台分以上かかってると思うんだよね。」
「じゃあ、思い切って、ゴーレムバイク10台分の金貨800枚にしたら。有人ドローンに比べたら安いもんじゃない。」
「じゃあ、王国に献上する多足ゴーレム車は、いくらくらい?」
「あれは、かなりかかっているよ。今回は献上品だからお金は取らないけど、他国に輸出するならって考えるとね。まずあれにはガーディアンのコアが5個必要なんだよね。ゴーレム戦車とおんなじだからさ。そうなると、有人ドローンと同じ数になるんだ。オマケに有人ドローンと同じ発砲アルミニウムで軽量化を図っているし、透明金属も多用してるから、有人ドローンと同じ値段でって言いたいけど、金貨5000枚ならいくつか作っても良いよ。」
「タブレットは、金貨80枚だったっけ。」
「そう。ゴーレムバイクと同じ。」
「それって材料考えたら高すぎない?」
「じゃあ、金貨50枚。」
「カメラ付きタブレットは?」
「材料集めるの大変だから、金貨150枚」
「ドローンっていくらだった?」
ミラ姉は、聞くばっかりだ。覚えようとしていない。
「いくらだったけ、冒険者ギルドに行けば分かる。金貨200枚かな」
「そうだった。そして、馬車一台分のマジックバッグが金貨100枚って決めていたと思う。」
アンディーが助けてくれた。
「よし、ここまで決めていたら、何聞かれても大丈夫だ。」
僕たちは、安心して王宮に行けると思っていた。
正午になる前に王宮について、クーパー様の執務室を尋ねた。待合室でしばらく待たされた後、執務室に通された。
「よく来てくれた。くつろいでくれと言いたい所なんだが、そうゆう訳にもいかなくてな。早速、交渉に入ろうではないか。」
「まず、その前に、今回の働き誠に見事であった。そなたたちが運んできた献上品の見事さに帝国の連中は腰を抜かしておったぞ。しかし、それはそれ、国の財政を預かる身としては、法外な報酬を支払う訳には、いかんのでな。率直に聞く。報酬はいくら望む。」
「ゴーレム車の報酬ですか?タブレットでしょうか?」
「まずは、ゴーレム車の報酬じゃな。同時に献上したゴーレムバイクは、運搬料も含め、1台に突き、金貨100枚で良いか?」
「それで大丈夫です。問題ありません。」
「では、ゴーレム車はいくらだ。相応の金額は準備しているつもりだが、お主たちに先に聞こう。」
「はい。ゴーレム車は、金貨800枚と考えております。」
「なっ、なんと申した。金貨800枚だと!」
「そ、それはまずい。帝国への献上品がたった金貨800枚とは、お主ら、ケタを間違っておらぬか。間違っているというのじゃ!」
「えっ?ええっ?で、では、間違っておりました。…、安すぎるんですよね。?」
「ミラ姉、交渉、交代して。」
「何言ってんのよ。私に分かるはずないじゃない。アンディーにしなさい。あの子がデザインしたんだから。」
「お主ら、何ぶつぶつ言っておるのじゃ。早く値段を言わぬか。」
「恐れながらクーパー様。俺たちには、材料の値段や量、作るためにかかった時間などは分かりますが、国の体面や俺たちが作ったものへの評価など付加価値と申すものは測りかねます。できれば、クーパー様に値段を付けていただきたく存じます。」
アンディー凄い。やっぱりお兄ちゃんだ。
「うむ。分かった。お主たちが作り上げ、帝国に献上したゴーレム車は、金貨5000枚で買い上げよう。本来ならもっと高額な金額も考えたのだがな。国王が同様の物を欲しがっているのじゃ。もう一台買いあげるとなると、金貨5000枚で勘弁してくれ。」
「分かりました。しかしながら、国王陛下への献上の品は、他のゴーレム車を考えております。帝国に献上したゴーレム車は、安全なゴーレムバイクというものです。その為、乗り心地はあまりよくありません。国王陛下には、乗り心地が良いゴーレム車を献上したく存じます。」
ここまで言うと僕は、フーッと息を吐いた。
「そのほかにも国王陛下にはいくつかの献上品を準備しております。しかし、その品を献上いたします前に、クーパー様とティモシー様にご確認いただきたいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「それは、分かった。後ほど時間を取ろうではないか。しかし、その前に確認しないといけないことがあるであろう。次は、皇帝とルーナ様への献上の品じゃ。あの二つの値段はいくらじゃ。」
「それがですね…。クーパー様、今、タブレットはお持ちですか?」
「おお。持っておる。肌身離さず持っておるぞ。」
僕は、クーパー様とその前にいる後姿のミラ姉達の写真を撮った。
「クーパー様に送信」
「なっ、何だこれは。見事な絵が、今の様子を描いた見事な絵が送信されてきたぞ。」
「そうでしょう。そしてこれ、私のタブレットの絵をご覧ください。」
「何なのだ。お主のタブレットの絵には、色がついておる。この部屋と私の様子が見事に描かれておるではないか。」
「そうなのです。これがカラー写真とカメラという新しい機能です。」
「皇帝陛下とルーナ様への献上の品にこの機能を付け加えたいと思っております。勿論、王室の皆さんのタブレットにもです。」
「わしのタブレットには、付け加えてくれんのか?」
「欲しいのですか?」
「欲しいに決まっておるであろう。して、その写真とやらは、今までの連絡のように取っておくことができるのか?」
「はい。できますよ。後から見直すことも。」
「欲しい。その機能。儂にも付けてくれ。」
「お高いですよ。この機能を付けるために光の魔石や三食宝石などが必要なのです。」
「いくらだ。いくら出せば、その機能を付けてくれるのじゃ。」
「新たに購入していただく場合、金貨150枚ですが、機能追加だけでしたら、金貨100枚です。お高いですよ。どうなさいますか?」
「うううっ。金貨100枚は、確かに高い。右から左へと出せる金額ではない。しかし…。分割で何とかならんか。金貨10枚ずつ10月で。いや、11月でお願いできぬか。」
「分かりました。金貨10枚ずつ10月で大丈夫です。」
「皇帝への献上品のタブレットも金貨150枚が二つということで大丈夫でしょうか。」
「勿論じゃ。恩に着る。」
「では、これで私たちへの緊急依頼は終了したということで宜しいでしょうか。」
「うむ。冒険者ギルドには、S査定で報告しておく。大儀であった。」
この後、帝国へ販売するタブレットの値段、卸価格は、1台に50枚それに、中継基地が1000個で一台につき金貨10枚と決めた。タブレットの販売台数は、200台だ。中継基地が1000個あれば帝国の半分以上の面積をカバーでいる。追加注文の為にタブレット用に200台分、中継基地用に2000個分を取っておくようにできる。ここ数日間のゴーレムコア採集の成果だ。輸出価格は、お任せしておく。
皇帝陛下のタブレットに、このアンテナを合成すれば、ハイブリットのタブレットになることは、お知らせしない方がいいかな。
以上で王国からの緊急依頼の清算は終了した。この後、ティモシー様とクーパー様に多足ゴーレム車を見ていただいて、色やデザインを決めた。明日にでも謁見の時間を取って下さるそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます