第163話 ドローンの改造

 また、一週間が始まる。学校と家を往復する日常。ベルカラコンビは、また実験に参加したい言って帰って行ったが、本当に楽しかったんだろうか?僕は、楽しかった。大した実験はできなかったけど、酸化鉄の性質と還元反応だけであんなにいろいろ実験できるなんて思わなかった。


 ほんの少しだけど、僕の能力を知ってくれた人がいるのも嬉しかった。あそこで、怖がられたり、引かれたら立ち直れなかったかもしれない。


 ダイアリーを確認したけど、再転生の日程について何も返事がなかった。読んでないのかな…。



 ウィークデーは、特段何もなく過ごすことができた。始まりは金曜日の夕方になる。




 ********************************************************************



 朝起きて、ダイアリーの確認をした。


 ええっ。再転生の誘いが書いてあった。しかも、これ書かれたの一昨日の朝だから、再転生って4日後の早朝か?みんなに相談しないといけない。


 でも、玲には、早く、10人乗りのドローンも作ってもらいたいし、僕は、向こうのラーメンをレシピ化したいし、音声通信の方法も教えてもらいたい。爆薬も作りたい。…、落ち着こう。兎に角、食堂に行って朝ご飯を食べよう。


「お早う。」


「「「「お早うございます。」」」」


「「「お早う。」」」「お早うございます。」


 いつもの朝の挨拶。朝の風景だ。おいしそうな朝ご飯。落ち着いて、朝の打ち合わせを済まそう。でも、ここで話して良いことなのかな…。ゴーレムコア採集の時でも良いか。


 否、ごれーむコア採集には、僕は行かないんだった。今朝は、ドローンにカメラ機能を取り付けて上空からのパソロールができるかをシエンナと一緒に実験するんだった。


「そうだ。朝食の跡、ゴーレムコアの採集に行くんでしょう。その前に、みんなに相談したいことがあるんだ。会議室に来てくれない?」


「食後のお茶の時間になさいますか?」

 エリックさんが、聞いてくれた。


「いや、ちょっと込み入った話だから、お茶はいいや。話し合いが済んだら、呼ぶからその時持ってきて。」


「畏まりました。」


 朝食後、パーティー会議室にみんな集まってもらった。


「どうしたんだ?エリックさんにもメイドのみんなにも話せない話って、向こうの玲のことか?」


「そう。流石ロジャー。鋭いね。4日後、転生しないかって誘いがあってな。相談というのは、4日後で大丈夫かってことしかも今回は、早朝6時30分何だよね。そして2翌日の夕方7時に地球に戻るっていう計画らしいんだよね。」


「それは、良いと思うけど、ドローンを作ったり他にも色々やらかす計画何だろう。そうしたら、どこで実験するんだ?」


「でさ、パーティーハウスのみんなに打ち明ける方が良いのか、まだ、黙っていた方が良いのか。どうしたら良いの?」


「難しいわね。エリックさんもドナさんもいずれ出て行く可能性があるしね。」


「そう。今は、シャルたちの教育係として、ここにいてくれるけどいずれその仕事も終わるはずなんだよね。」


「そうよね。今、異世界の玲のことを伝えても、何ができるってわけでもないし、今回は、まだ伝えないでおきましょう。」


「じゃあ、玲の実験は、どこでするんだ?」


「前回と同じ、森のダンジョンの4階層で良くないか。森の賢者の実験場所として一番ふさわしいんじゃないか?」


「そうか。あっちの玲が森の賢者なのか。そう考えると、森のダンジョンの森の階層の中に実験場所があるのって納得できるかも。」


 僕がそう言うとみんなも笑って納得していた。玲は、僕たちの中では、森の賢者になった。


「じゃあ、ゴーレムコアの採集に行ってくるわ。」


「お願い。行ってらっしゃい。」


「皆さん、いってらっしゃい。」


「シエンナ、実験宜しく。」


「はい。頑張ります。」


 ロジャーとアンディー、ミラ姉の3人はゴーレムコアの採集に出かけて行った。僕とシエンナでパトロールもできて通信もできるドローンを作ろうということになっている。


「このドローンは、シエンナには、直接情報を送ることができるんだよね。」


「そうですね。使役しているドローンであれば、直接情報を受け取ることができますね。」


「シエンナ以外が情報を受け取るにはどうしたら良いかってことだよね。」


「はい。私が受け取るのは、ドローンたちが魔力の変化として認識している情報なので、光や音とは少し違っているみたいなんですよね。暗闇でも見えるし、声として発した物でも意思が乗っていないと聞き取れないですしね。心の声の方が聞こえてくる時もあるようです。」


「音の情報は、タブレットの音声変換機能を見ると大丈夫だと思うんだけど、視覚情報は、魔力のそれだと受け取る方が混乱するかもしれないな。」


「それに、ドローンもどの情報を送ったらいいのか分からないと思います。私の場合は、欲しい情報だけを送るようにドローンに指示を出しているようなものですから、その指示が適切になされなかったら周囲の情報をランダムに送ってしまうことになりかねません。」


「そんな、多すぎる情報をタブレットが受け取っても映像になならないだろうね。」


「そうですね。最低、どの方向をどの範囲での指示は必要ですよね。」


「そう考えると、光魔石とフィルターを使って、このタブレットに送る情報を限定するのは良い方法かもしれないね。」


「そうですね。それでしたら、3色の合成データを送らせた方が良いでしょうね。それと撮影範囲を指示できるようなコマンドを与えた方が、思った使用方法ができるかもしれません。」


「じゃあ、インクに当たる染色魔石の粉は、必要ないね。」


「でも、ドローンに何らかのコミュニケーション手段を持たせておけば、タブレットを持っていない相手ともドローンを通じて連絡することができるようになりますよ。」


「じゃあ、文字と白黒写真位は表示できるようにしておこうかな。表示板のしたに光魔石でカラーレンズを付けてみよう。」


「まず、カラーレンズとシャッターをコピー」


「シエンナ、使役しているドローンを出してくれない。」


「はい。リングバードです。」


「じゃあ、リングバード今から、お前に目と文字を表示するディスプレイを追加する。僕たちにも情報を伝えることができるようになってくれ。」


 僕は、リングバードを収納して、黒の魔石の粉とカメラ機能を融合してく。レンズの部分は収納可能にしておいて上空では、真下を撮影できるようにした。


 精錬後、リングバードを取り出し、タブレットから映像合成情報や文字と言葉の情報などを転送する。ゴーレム同志の情報交換はスピーディーで簡単だ。使用者は、それぞれの機器に送信内容と受信内容を支持するだけで大丈夫だ。


「じゃあ、外に出て、上空からの様子をタブレットに送ってもらおうか。シエンナ、僕のタブレットに送るように指示を出してみて。」


「レイさんのタブレットを認識できるようにしました。レイさんのタブレットにリングバードを認識させてください。」


「テスト送信、送信先リングバード」


『レイ:テスト送信』


 リングバードのディスプレイに文字が表示された。


「リングバード、今からテスト飛行をします。私の指示がない時は、レイさんからの指示を実行しなさい。」


「じゃあ、魔の森の上空を飛行して、写真を転送してくれ。」


 リングバードは、パーティーハウスから上昇し、魔の森の方に飛んで行った。


 すぐに1枚目の写真が転送されてきた。ゴーレム戦車のエスが写っている。後10分もしないで戻って来るだろう。


「1500mまで上昇。リングバードに送信」


 30秒後に1500mから撮影した写真が送られてきた。


「東に移動。5秒ごとに写真を転送。リングバードに送信」


 すぐに写真を転送してきた。5枚転送してきた後、転送してこない。


「東側には、リングバードの中継基地がありませんから、通信範囲を超えたみたいです。」


「シエンナは、まだ連絡できる?」


「はい。かろうじてつながっています。戻しますね。」


「お願い。」


「森の東側には、ゴーレムタブレットの中継基地は設置してあるのになんとかならないかな…。」


 そうしているうちに、ミラ姉達が戻って来た。今日もたくさんゴーレムコアを採集してきたそうだ。


「今日は、ゴーレム階層を隅々まで回ってコアを採集してきたわよ。アンディーとロジャーの二人で、なんと256個。凄いでしょう。」


「凄い。その中にガーディアンの分も含まれているの?」


「それは別。それまで入れると276個ね。」


「レイさん。リングバードが戻って来ました。」


「中継基地、あと何個分、残っていたっけ?」


 アイテムボックスを調べてみる。中継基地にできるコアは、まだ半分くらい残っていた。節約して使えば、まだかなりの数の中継基地を作ることができるだろう。


 10g程のコアを取り出し、針金状にした。リングバードを収納とて、針金の先端を接合してコアからの情報を受け渡しできるようにミスリル導線で繋いでみる。リングバードのボディーに針金で書いたような模様ができた。なんかあんまりかっこよくない。後でアンディーに作り直してもらおう。


「シエンナ、もう一回同じコースを飛んでもらうね。こんどは、最初から1500まで上昇して5秒ごとに写真を送ってもらうように指示してくれる。」


「了解しました。行きなさい。リングバード。」


 1500m上空から、写真を送り出した。5秒ごとに1枚。さっき通信が途切れた辺りの写真も送って来た。今のところ順調だ。


「停止して、全方向の写真を送信。リングバードに送信」


 定位置からの360°8枚の写真を送って来た。レンズの角度を少しずつ変えて撮影したようだ。


「パーティー通信に変更。パーティー全員に5秒ごとに写真を転送。魔の森の終わりに着いたら西に膨らんで引き返してこい。リングバードに送信」


 パーティーメンバー全員に写真が転送された。10分後には、西に大きく膨らんで戻ってきているようだった。森の写真に不審な映像は見当たらない。


 ドローンによるパトロールはうまくいった。後は、通信中継用の針金部分をもう少しカッコよくしてもらって精錬コピーしよう。マジックバッグ付き通信機能付きのドローンが普及したら通信流通革命がおこるかもしれない。


 この日は、アンディーに針金部分をカッコよく成型してもらってリングバードと同じ性能のドローンを8台作った。メンバー全員分の4台とパーティーハウス用に1台。残りの3台は、献上用1台。後2台は誰か買ってくれると思う。森の賢者の新作魔道具だ。


 ギルマスに連絡したら、まだ、王都から帰ってきていないということだった。誰か領主様の所に最終確認に行かないといけない。こんな役目は、ミラ姉なんだけど、僕もお供しろと言われた。


 領主様の所について、待っていると夫人がドレスは無理を言って間に合わせたけど、アクセサリーが似合わないと泣きついてきた。領主様と一緒にロックバレーダンジョンに潜った時に、ダンジョンでドロップした宝石を持っているのを見せたからだ。


 アイテムボックスから、今持っている宝石をすべて出して、どの宝石でどんな形のアクセサリーにするか決めてもらった。明日、王都い向かうゴーレム戦車の中でお渡しすることになった。アンディーに作ってもらう。


 明日の、正午、領主様のお宅に迎えに行く約束をして、パーティーハウスに戻った。アクセサリーの代金は、後日ということになっている。

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