第162話 ボス退治と光の魔石

「ゴーレムハンド、シールドよ!」


『ゴ~~~~~~~~ッ』


ものすごい風が、オーガたちを町跡に吸い出している。扉で仕切られていた。ボス部屋と接しているオーガタウンに、大きな気圧差が出来ていた。燃え続けた炎が、町の上空へ、空気を押し上げてしまったからだ。その気圧差がボス部屋の空気を吸い出している。


「シールドを地面に突き刺して、車体を固定しなさい。」


ガンガンとシールドにぶつかり、町跡に吸い出されていくオーガ。強風が収まった頃には、半数近くのオーガが灼熱の町跡に吸い出されていた。


「シエンナ、ガーディーに扉を閉めてさせ、次に熱気が来る!」


ガーディーが扉を閉め、ボス部屋に熱気気が入って来るのを防いだ。


「ハッチを開けて、バッキーからデッキに出て、後続のアンディーたちの安全確保。インディー、ガーディーは、左右に展開、戦車の警護、ソーディーは、前に出て、出てくるオーガを牽制しなさい。」


「僕とミラ姉もデッキでの攻撃に参加する。援護お願い。」


「了解しました。私も、すぐに上に行って、ゴーレム隊の指揮をします。」


前方上方からロックバレットとファイ―ボールが飛来している。バッキーがマジックシールドでことごとく防いでいるが弾幕は厚く、ゴーレムハンドのシールドで防がないと間に合わないくらいだ。


「アンディー、特大の最大出力ウェポンバレットをぶちかましてやんなさい。あの城壁ごとバラバラにするのよ。」


ハッチから頭を出したミラ姉がアンディーに指示を出した。


「了解!」


アンディーの特大最大出力のウェポンバレットがオーガが陣取っている城壁を木っ端みじんに破壊した。バラバラと落ちていく城壁の残骸とオーガソルジャー。


「ロジャー、跳びなさい。右端から攻撃しているオーガマジシャンを薙ぎ払って。」


ロジャーは、縮地で空中に駆け上がったかと思うと、鎖でつながった投げ斧を連続投擲して、右端のオーガマジシャンをすべて薙ぎ払い、オーガアーチャーが攻撃態勢を取る前にゴーレム戦車に飛び戻って来た。


オーガアーチャーが陣取っている城壁は、デッキに出てきたミラ姉が、ファイ―ボールライフルで高温・高速のファイヤーボールを撃ちこみ、城壁ごと崩壊させた。


それぞれの最大出力の攻撃で、一瞬でオーガの軍勢を殲滅。残るは、ボスとその取り巻きのみとなった。僕は何もしてないんですけど…。


オーガソルジャーが陣取っていた城壁最上部から1体のオーガが現れた。今までのオーガの2倍以上の大きさ。グレートオーガだ。


右手を戦車に向けた。


「ライトハンド、射線を切って」


右手から魔法が放たれた。ライトハンドの持つ盾が削られ破片が飛び散った。しかし、盾は大丈夫。削られただけだ。しかし、そう何発ももたない感じだ。


「ロジャー、投げ斧で牽制してみて。動きを見たいわ。」


「アンディー右退避方向にソードショット。」


「レイ、左退避方向にたソードショットよ。」


「ロジャー、初撃の合図。いいわね。」


「初撃、3、2、1、フンッ」


巨大オーガは、左に避けた。その方向には、ロジャーの合図とほぼ同じに僕がソードショットを撃っている。


「貰った!」


と思ったら、跳んだ。


「跳んだわね。貰ったわ。」


ミラ姉のファイヤーボールライフル連射。


跳び上がってしまっては、縮地を持たないものは、急な方向転換などできない。


『ピュゴーッ、ピュゴーッ、ピュゴーッ、ピュゴーッ、ピュゴーッ。』


自らに向かってくる高速のファイヤーボールに、魔法を放とうと右手を構えるグレートオーガだが、高速のファイヤーボールの方が先に着弾した。


『ゴーバフッ。バフッ。バフッ。』


右手、右わき腹、右足に着弾。


「ロジャー、とどめをお願い。」


「了解。」


ロジャーの投げ斧が頭を落とす。グレートオーガは、大きな魔石と一本の短剣をドロップして消えていった。


ボス部屋の戦いで手に入れたドロップ品と魔石を回収した。この部屋のオーガは殆ど進化種だったようで、大き目の魔石がかなりたくさん手に入った。もろもろ合わせて150個。最大はグレートオーガの魔石。ドロップ品の中には、ポーションのようなものもあったが、怖くて使用できるとは思えない。


「さあ、下の階層の確認よ。」


「エスに乗り込んでください。」


「エス?ああ、小型ゴーレム戦車ね。了解。」


シエンナに案内され、僕たちは全員小型ゴーレム戦車に乗り換えた。


次階層入り口は、幅から、5m程の長い階段だった。小型ゴーレム戦車でギリギリ通れるくらい。それにしても長い階段だ。


多足戦車でもこれだけ長い階段だと前が低くなって前のめりの姿勢になるのは仕方がないのだけれど、奥に行けば良く程光が届かなくなり、真っ暗になって来た。


「シエンナ。周りの状況は把握できてる?」


「はい。大丈夫です。今の所索敵に引っかかるような魔物もいません。私のタブレットを通して、皆さんに状況をお伝えしましょうか?」


「いや、無理だ。タブレットの画面も全く見えない。」


この階段の幅じゃあ、方向転換も難しい。とにかく進むしかない。小一時間位進んだだろうか、ようやく階段が終わり、広場らしき場所に着いたらしい。というのも、光がなく全くの暗闇で、視覚による確認ができない。シエンナは、情報共有で、魔力の目で周りを見ているらしいけど、僕たちは、全く見えない。


「ライトの魔法であたりを照らしてみましょうか?」


「シエンナ。大丈夫そう?」


「今の所、近くには、魔物の気配はないようですが、ソーディーとガーディー、インディーを戦車の周りに展開させますね。もしもの時、攻撃手段を豊富にするためにロジャーさんとアンディーさん、バッキーは、2階デッキに出ますか?」


「それじゃあ、私もデッキに出るわ。ライトの魔術ができるのって私位でしょう。」


「僕も一応できるけど、長時間のライトは自信がないな。」


「じゃあ、レイは、中でシエンナの護衛ね。」


「了解。ライトの魔術を使えば、タブレットで連絡を取れるようになると思うけど、読みにくいだろうから気を付けてね。」


「了解よ。じゃあ、行ってくる。」


3人と一体は、後方の梯子からデッキに登って行った。


「ライトを点けたそうです。」


回りがぼんやりと明るくなっている。


「前進します。ライトの魔法を追尾させてください。」


「了解と言ってます。」


シエンナが、タブレットの情報を教えてくれる。


「索敵に敵多数感知しました。全方向から集まってきます。」


「先頭集団と会敵します。」


「ミラさん、ライトを消してください。」


ライトは消えたけど、光がここに近寄ってくる。


「レイさん、魔術発出口を開けて下さい。デッキに声が聞こえるように。」


「光は、敵です。その光に後続の光が集まってきているようです。殲滅してください。」


「「「了解。」」」


一つ、また一つと光が消えていく。デッキからの攻撃で魔物が撃ち落されているんだと思う。20個ほどあった光が全部消えた。地上に小さく光っているものが見える。


「レイさん、あの辺りに落ちている物をまとめて収納できますか?」


「この位の距離なら大丈夫だよ。収納」


「ドロップ品は、何でしたか?」


「光属性の魔石だ。20個。それと、何だろう。蝙蝠のはねが2つ。ヒカリゴケが1つ。光粉が3本。光粉って何だ?」


「一度、皆さんに下に降りてきてもらいましょうか。」


「そうだね。」


皆に下に降りてきてもらって、これからの相談だ。


「光属性の魔石って貴重なんでしょう。それに、今回採集した20この魔石で、写真が撮れるタブレットを何台くらい作れるのかにもよるわね。多分、あのカラー写真みたら欲しがる人がたくさんいるわよ。」


「今回の魔石は、くず魔石が15個、小さいサイズの魔石が5個で、タブレットは、多分、25台くらい作れると思う。」


「でも、ドローンに付けることができれば、家にいて森のパトロールが出来たりするんでしょう。さっき、アド機の下に着けて撮影していたじゃない。普通のドローンにだって取り付けることができるはずだから、家にいてパトロールができることにならない?」


「そうか。シエンナほど詳細には分からないかもしれないけど、遠くの様子を確認することができるなら便利だね。全部のドローンに付けたくなるよね。」


「それなら、狩り方を工夫しましょう。さっきみたいにライトに寄って来るんだったら、ライトの魔術を魔物寄せの罠にして、攻撃しやすい場所に魔物を集めたらどうかしら。」


「大型のゴーレム戦車に乗り換えて、デッキの上から攻撃できる場所に魔物を集めてみたらどうだ。」


「そうですね。その作戦面白いかもしれません。試してみましょう。それに、大型のゴーレム戦車なら、私も上で指揮ができます。いざという時は、真っ暗でも情報共有で敵の位置を知ることができるので大丈夫です。では、光の罠の作戦やってみましょう。」


大型のゴーレム戦車に乗り換えて全員デッキで待機だ。広場を横に向けて戦車を停車させている。広場のほぼ中央にライトで光をともした。しばらくすると魔物が集まって来て、ライトを攻撃しだした。50体ほどの魔物が集まった時、ライトの魔術を消した。それでも、集まった魔物の光に更に別の魔物のが呼び寄せられてどんどん増えて行った。


「攻撃開始。」


「ロックバレット、ロックバレット、、ロックバレット、ロックバレット、ロックバレット…。」

アンディーは、ロックバレットで次々に魔物を屠っていく。


「アイスジャベリン、アイスジャベリン、アイスジャベリン、アイスジャベリン、アイスジャベリン…。」

ミラ姉は、アイスジャベリンで数体まとめて消している。


「エアカッター、エアカッター、エアカッター、エアカッター、エアカッター…。、エアカッター30」


僕は、エアカッターで、ロジャーに至っては、何でもかんでも投げつけている。


15分程で、飛び回る光はなくなり、サーチに引っかかる敵もいなくなった。


「収納。」


「こまごまとした良く分からない素材が沢山と、光の魔石、くず魔石が40個、小魔石が10個、中魔石が1個。これだけあれば、タブレットやドローンを70台以上カラー写真対応にできる。」


「じゃあ、ここのダンジョンを離脱しましょうか。」


「じゃあ、もう一回、エスに乗り換えて出発しましょう。」


その後、ひたすらゴーレム戦車とドローンで帰宅を急いだ。夕方の5時には、パーティーハウスに到着することができた。











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