第161話 オーガタウンの殲滅
ダンジョンでの夜明け。地上の夜明けとほぼ同調している。次の階層にアタックする。この階層もそうだけど、次の階層も当然未踏の階層だ。みんな、ぐっすり眠れたようだ。本来なら在り得ないことだけど、ゴーレム様様だ。
朝食を済ませ、次の階層入り口へと向かうことにする。地図作りは、この次の機会に回すことにした。上の階層もだけど、この階層も十分に広い。階層入り口から次階層入り口までの地図だけでも十分に役に立つ。
「出発します。」
フォーメーションは昨日の通り。ゴーレム戦車は、小型からいつもの多足ゴーレム戦車に乗り換えた。
途中、草原の魔物、ビッグブルが何頭も現れた。それに加えて、オーガが頻繁に表れるようになった。オーガは、体調は、人の大人位。武器、主にこん棒や剣、盾を持っており、弓も使うようだ。知能はかなり高く、作戦行動を取ってくるため油断できない。
オーガを倒すと魔石と武器をドロップする。強い武器ではないが、素材は鋼鉄かミスリルだった。鋳つぶして鍛えなおせば、かなり強い武器になる物ばかりだと思う。
だんだんオーガの現れる頻度が高くなってきた。弓での攻撃も頻回になっている。上のデッキでは、バッキーが大活躍しているようだ。アンディーとロジャーもクナイやロックバレットなど軽くて速い攻撃に変えて対応しているみたいだけどとにかく数が多くて大変そうだ。
「シエンナ、大楯を作ったら、この戦車に持たせることができる?」
「どうしてですか?今くらいの弓なら、この戦車なら何の影響もありませんよ。」
「この先も、弓だけならいいんだけど、次階層入り口からまだかなり離れているのに、こんなに中距離攻撃をしてくるんだったら、ボス部屋があるならかなり強い遠距離攻撃を持っている可能性もあるなと思ってさ。その為に、大楯を準備していたら使えるのかなってね。」
「ゴーレムハンドで、シールドバッシュができるかどうかは分かりませんが、魔法攻撃を防いだり、強力な遠距離攻撃を受け止めるのには役に立つかもしれません。」
「作っておくけど、どこに収納しておこうか。ゴーレムハンドがすぐに手に取れる場所じゃないと意味ないからね。」
「じゃあ、ゴーレム戦車の後方左右に盾の収納場所を作っておいてください。あっ。アンディーさんに作ってもらわないといけないですね。タブレットで図を入れて連絡しておきますので、大きさを教えてください。形状は長方形で、弧を描く形ですか?」
「ガーディーの大楯と同じ形で幅を3m、高さを7mにしよう。」
「分かりました。ガーディーの盾同じ形ですね。拡大した寸法を書き込んでアンディーさんに送ります。」
「お願い。」
こうして、雑魚オーガを倒しながら、ボス戦に向けて準備を整えて行った。
今、9時、コテージを出発して2時間半が経過した。前方1500mに階層入り口に続くボス部屋がある。その前に連なるオーガの集落。いったい何軒の小屋が建てられているんだ。一番最初のゴブリン集落の時よりも一軒一軒が大きい。数千件はあろうかという集落というよりは、町だ。城壁などなく、その小屋が一つの岩壁のようなものだ。幾重にも重なるオーガの家が、階層入り口を守る城壁のような働きをするようだ。
「オキシゲンカッターね。」
「そうだな。それに、ファイヤーボールライフル。」
「集落ごといや、オーガの街ごと焼き尽くすしかない。木の杭を打ち込んで燃料増し増しにしておこうか。レイ、杭を2000本ほど作ってくれ。」
「アルケミー・ウッデンパイル 2000。」
「アルケミー・オキシゲンカッター(大) 5000」
「前みたいに手を広げて収納体制を保っていて。」
僕は、デッキの上でロジャーに伝えると、長さ3mの木の杭を次々に出し、ロジャーに手渡していった。
「アルケミー・ウッデンパイル 2000」
「アンディーにも木の杭を渡しておくから、ウェポンバレットの武器として撃ち込んでくれない。」
アンディーは、アイテムボックスを開き、木の杭を受け取ってくれた。
「じゃあ、私は、アイスバレットで町から脱出しようとするオーガを牽制する。シエンナは、ゴーレムたちを展開して同じくだしゅつしようとするオーガの牽制と、ゴーレム戦車の護衛ね。準備が出来たら総攻撃よ。」
「「「「了解」」」」
今回は、シエンナもデッキの上で指揮を執る。やっぱり声で伝達した方が動きやすい。
「みなさん。配置に着きましたね。ゴーレムたちも大丈夫です。ゴーレムハンド、盾を横向きにして町への射線を確保。」
「射程距離まで前進。」
「射程距離に入った。」
「全員停止。攻撃開始。」
「オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター…」
「フンッ、フンッ、フンッ、フンッ、フンッ、フンッ…。」
ロジャーは凄いペースで木の杭を投擲している。
町の後方から、ロックバレットの弾丸が飛来してきた。
「ライトハンド、射線を切らないように素早く盾を上にあげて。」
「あんな石礫なんて全部弾き飛ばしてやるよ。ウェポンバレット、ウェポンバレット、ウェポンバレット、ウェポンバレット…。」
前方から飛来するロックバレットの数倍の弾幕が石礫を弾き飛ばしながらオーガの町に飛んでいく。アンディーは、ロックバレットが飛んできた方向に狙いを絞ったようだ。
「オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター、オキシゲンカッター……………………。」
オーガからの攻撃が収まって来た。しかし、僕たちは攻撃の手を緩めない。
「微速前進。レイさん、オキシゲンカッターの弾幕を奥の方に濃くしてください。オーガが後方に退避していっているようです。」
「了解。オキシゲンカッター、オキシゲンカッター………………。」
町から飛び出して、攻撃を仕掛けてくるオーガは、ほとんどいなくなった。焼き討ちの開始時期かもしれない。
「火を放ちましょう。手前にファイヤボールで点火してください。」
皆、サングラスをかける。
「ファイヤボール、ファイヤボール、、ファイヤボール、ファイヤボール、ファイヤボール、ファイヤボール……………。」
アンディーと僕がファイヤーボールで町の手前に火を放った。真っ白に輝く炎が一瞬で町の建物を白い灰に変えていく。
「ミラさん、ファイヤボールライフルで町の一番奥から火をつけて下さい」
『ピュゴーッ、ピュゴーッ、ピュゴーッ、ピュゴーッ、ピュゴーッ…。』
僕も、精錬したファイ―ボールライフルで攻撃を開始した。ミラ姉は、最奥の中央から右に向かって火を放っている。僕は、左に向かって火を放つ。
オーガの町が燃えている。これで最奥にあるボス部屋へのアタックが可能になった。ゴーレムハンドが、盾で燃え盛る町からの熱波を遮ってくれている。もうしばらくは、この炎は消えないだろう。
しかし、どのくらいの時間で、このオーガの町はできたのだろう。何年もかけてできたのなら、しばらくは、復活しないと思うけど…。ボス部屋とボスは、何時間かで復活するはずだ。一緒にこの町まで復活しなれば良いのだけれど…。
それぞれの建物は火が付けば一瞬で白い灰になるんだけど、数が多すぎてなかなか燃え終らない。火を放って既に、1時間は経っていると思う。2時間後ようやく火が消えた。町があった場所は、白一色になっている。
この広さだとさすがに一度に収納するのは無理だ。そんなことしたら魔力切れを起こして倒れてしまい兼ねない。
町の跡に近づいてみる。熱い。半端ない熱気で近づくことができない。このままほおっておけば、全てダンジョンに鳩首されてしまうだろう。どうしようもない。
「収納できる範囲だけ収納してみるね。アイテムボックス・オープン・収納」
町の外周部分の500m四方を収納できた。
『レイ:シエンナ、町の外周に沿って最奥のボス部屋の方に移動してくれない。移動しながら収納できる範囲を収納していくから』
ゴーレム戦車の移動に合わせて収納できる範囲を収納していく。オーガタウンは、ボス部屋を扇方に囲むようにできていたため、一番端に来てもボス部屋に突入する道がなかった。
『レイ:反対側に回ってもおんなじだったら、高温の町跡の中を通らないといけないね』
「そうですね。その時は、デッキでは無理でしょうから中に入って下さい。酸素もないと思います。」
「そうだね。その時は、液体酸素と液体窒素で戦車を冷やしながらボス部屋に向かうことになるよね。」
同様に、焼け跡の灰を収納しながら反対側に回ったけど、反対側にもボス部屋につながる道はなかった。
「皆さん。戦車の中に入りましょう。」
全員、戦車の中に移動し、高温多分無酸素の町跡を通ってボス部屋に入ることにする。一番奥は、一番扇方が横に広がっていたため、20度位の角度の場所から進入する。
「前進します。この位の温度ならオットーは大丈夫だと言っていますが、レイさん、室内の温度と酸素の管理お願いします。」
「酸素は、急にはなくならないからあわてて液体酸素をぶちまける必要はないからね。前、凍りそうになったこと忘れないでよ。」
ミラ姉ったら前とっても寒がってたからな…。凍り付くなんて大袈裟なんだから…。声にしない。そんなことしたら怒られる。
「何か変なこと考えてない?」
「えっ、ないないないです。」
「少し車内の気温が上がってきました。レイさん、液体酸素と窒素で冷却お願いします。」
慌てないよ。
「アイテムボックス・オープン・液体酸素。」
ぶちまけないで、壁と床に少しずつ巻いて行った。
「アイテムボックス・オープン・液体窒素。」
液体窒素も同様。ぶちまけないで優しく床と壁にかけていく。
「上手じゃない。冷えすぎていないわよ。」
それからもシエンナの指示で、液体窒素や酸素を撒いていってミラ姉に褒められた。何か僕が誉められた気がしないのは何故だろう。
5分もかからず、ボス部屋の前に着いた。ゴーレムハンドでボス部屋の扉を開けると、数百を超えるオーガが待ち構えていた。
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