第159話 森の階層とバストイレつきコテージ

 次の階層は、森の階層だった。深い森だけど、木々が大きく木と木の間は、10数メートルはある。下生えの低木や雑草が茂っていて、魔物の数も多そうだ。これだけ高い木の下を移動するとなると木の上からの攻撃にも神経を使わないといけないよね。


 ここって、全部森なんだろうか?ドローンで一気に全容を探りたいところだけど、大木が上空へ出ることを阻んでいて、ドローンを使用することは難しそうだ。


 探索を続ければ、上空への脱出口も見つかるかもしれない。時刻は、すでに4時になろうとしてる。階層入り口の側にコテージを立てて拠点にするか、もっと開けた場所を探すか、時間的にも難しい所だ。


「シエンナ、ここからドローンを上空に飛ばすことできると思う?」


 上を見上げたシエンナが困った顔をした。


「どうにか光は届いているので、絶対不可能という訳ではないと思いますが…、木の枝や葉で空は全く見えませんよね。ドローンは自分で状況の把握がある程度できるので、無理だったら戻って来るように指示を与えておけば、墜落したり壊れたりすることは無いとは思います。ただ、不意の攻撃にさらされる危険はありますね。」


「そうだよね。この状況で上空に上がるということは、暗闇を手探りで歩くようなものだよね。」


「この場所も安全な場所という訳じゃありませんし、沼の階層にも野営場所として適切なところはありませんでしたから、ゴーレム戦車で進んでみたらどうでしょう。暗くなっても情報共有と索敵である程度敵を回避しながら進めると思うのですが。」


「レイ、そうしようぜ。俺とアンディーが小型戦車のデッキで魔物を仕留めてやる。念のため、バッキーを上にあげてもらって前にソーディーとガーディー、後詰めにインディーで護衛してもらえばそうそう不覚を取られることは無いと思うぞ。」


「ミラ姉と僕で護衛席から左右の敵を仕留めることにするかな。」


 相談がまとまり、まずは、この場を移動することになった。サーチで次階層の入り口を探してそちらに向かって移動を開始した。


「ソーディーから情報が入りました。前方から大型の魔物、多分ボアだと思います。でもとてつもなく大きいです。」


 ソーディーが初撃を与え、よろける大型のボアをガーディーがシールドバッシュで横に向けた。ボアの首に射線が通った。凄いスピードで投げ斧がボアに向かう。一瞬で太い首を切り裂き、ボアは肉と魔石になった。アンディーがドロップ品を収納して先に進む。


『ロジャー:シエンナ、ナイス連携』


『エス:ロジャーさんも』


「エスって何のこと?」


 僕は、シエンナに聞いた。そういえば、この小型戦車の魔力登録の時に名前を聞いていなかった。


「この小型戦車のことですよ。スモールチャリオットの頭文字のエスです。」


 その後も、大型のクマやオオカミ、猛牛なんかが出て来たけど、難なくさばいて、たくさんの肉や魔石、毛皮を手に入れることができた。2時間ほど走って、辺りが薄暗くなった頃、ようやく森を抜けて、草原にできることができた。


 大きな岩が転がっている岩場の手前に小型ゴーレム戦車を止めた。


「アンディー、コテージ用の穴お願い。ねえ、地下室にトイレとお風呂作らない。この階層で、大きな魔石が沢山手に入ったでしょう。町の宿のトイレみたいに、腰かけ式の便座を作って、その下にマジックバッグをつないだら匂いのないトイレになるんじゃない?」


「中の物を捨てる時は、工夫がいるけど、マジックバッグ式のトイレは良いかも。作ってみるよ。お風呂は作れるよ。石も木材もたくさんある。でも、水はどうしよう。どこに流し込んだらいいだろう。」


「排水もマジックバックで貯めておいて、次の日に捨てたらいいんじゃない。レイが収納して精錬の素材に使っても良いと思うし。」


「分かった。湯舟や流し場はアンディーに作ってもらって。トイレの便座もアンディーだな。石を加工して作ってもらおう。いい?アンディー。」


「良いぞ。材料を出してくれ。アイテムボックスに入れて地下室で作りながらセッティングしてくる。」


 まず、コテージの外でて使いやすい大きさに聞そろえた材木や石材を並べて行った。アンディーがすべてを収納して、コテージの中に入って行く。僕たちも全員、一緒にコテージに入って行っていく。


 シエンナとミラ姉は、夕食の準備を始めた。ロジャーが必要な肉や野菜を言われるままにストレージから出している。料理の助手だ。


 僕は、お風呂に必要な魔石に魔法陣を書き込んでお湯を出す準備をしていった。30分ほどしてアンディーが地下室から出てきた。


「湯舟と流し場、トイレは作り終わったぞ。後は、レイの仕事だ。」


 まず、マジックバッグだ。地下室に行ってトイレを一度収納し、トイレの汚物溜めの部分をマジックバッグと融合する。アンディ―の工夫で汚物ダメの部分は、引き出して中を取り出せるようになっていた。その引き出し部分がマジックバッグだ。これで、トイレは完成。


 お風呂は、湯舟に直接、魔石のお湯が流れ込むようにした。かけ流し方式だ。お湯を抜くときは、湯舟の底にある栓を抜くようになっていた。洗い場で流した水もそこに流れ込むつくりになっている。流石アンディー。流れ込む水を溜める排水タンクをマジックバッグと融合する。かなり大きな魔石を使ったから、2~3週間分の水くらい溜めておくことができると思う。


 こまごまとした細工をしていたから、お風呂とトイレづくりに30以上かかってしまった。魔石に魔力を貯め込んでおく。マジックバッグの魔石も満タン状態にしておいた。


 お湯を出して湯舟に溜める一杯になるまで、最大量のお湯を出した。お湯が一杯になったら、お湯が出る量を調節してかけ流し状態にする。これでいつでもお風呂に入ることができる。脱衣所も付けているから、誰かがお風呂に入っていてもトイレが使用できる。なかなか快適なコテージになって来た。


 その晩は、最高級のお肉を食べて、お風呂にも入った。何かダンジョン探索中とは思えないリラックスした夜だった。勿論、バッキーは、コテージの中から警護に当たり、ソーディー、ガーディー、インディーの三体も一晩中、警備を担当してくれたよ。


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