第158話 泥沼階層の地図作り

 ここが厄介な階層。沼の階層。沢山の沼が連なっていて、真直ぐ進むことができない。降りてすぐには、乾いた場所があるが、パーティーハウスの庭位の広さしかない。畑以外の場所ってことだ。


「ここでいつも探索を終わるのよね。ゴーレム戦車で進もうにも、多脚部分がはまってしまって動けなくなるの。」


「どうせなら、ドローンでスルーしようか。」


「ドローンを使えば、上空から、地図だけ作るっていう手もあるわね。」


「そうしよう。地図ができれば、泥沼用の船を作って探索できると思うよ。有用な素材が手に入るかもしれないからね。」


「じゃあ、先頭はレイとロジャーが良いかしら、二人とも索敵がうまいし、次の階層の位置をレイが確認してロジャーが索敵しながら次階層に向かうこともできるでしょう。」


「「了解」」


「地図を作るなら、写真も撮りたいわね。レイ、ドローンに地上に向けたタブレットを付けることできない?」


「光属性の魔石がもうないからな…。」


「それなら、私のタブレットを私が乗るドローンの下側に接合できませんか?私なら、遠隔操作で写真を撮ったり、転送したりすることができますよ。」


 シエンナ、とっても素晴らしいアイディアです。


「それじゃあ、リア機に。」


「ええっ。俺、また一人で飛行するの…。」


「はいはい。分かりました。シエンナ、アンディーに付き合ってあげて。今日は、私が一人で乗るわ。」


「アド機へのシエンナのタブレットの接合は、俺が自分でする。レイ、透明金属ある?」


「あるけど、何に使うの?」


「タブレットカバーに使おうかと思ってな。タブレットが何かにぶつかって壊れないようにな。光がきちんと入ってくるように透明のカバーじゃないと写真が取れないだろう。」


「透明金属を透過すると少し色合いが変わるかもしれませんが、私が調整できると思います。」


「じゃあ、タブレットの収納場所を少しだけへこませて、タブレットを収納して、ドローンに接合。前面に透明金属を貼って。角度的に大丈夫かな…。」


「シエンナ、チェックお願い。」


 僕がシエンナに確認をお願いすると、アンディーがムスッとしていた。


「どうしたの?」


「俺がチェックを頼もうと思ってたのに…。」


 アンディーどうした。なんか、年下に見えてきた。優しいお兄ちゃんだったのに…。


 ドローンに乗り込んで、全てのドローンの魔力状態をチェックする。


『ロイ:チェック完了』『アド:チェック完了』『リア:チェック完了』


『ロイ:次階層入り口の反対側に向かう』


『『了解』』


 僕がサーチで次階層入り口を確認し、ロジャーに反対方向を支持する。ロジャーが上昇し、泥沼階層入り口を左手に見る方向を向いて停止した。その後方にアド機、更に後ろにリア機が上昇してきてホバリングを行っている。


『ロイ:本機、前方に向かって低速前進。どの位の高度とスピードが写真撮影に都合が良いか教えてくれ。』


『シエンナ:了解。まず、高度を上げて下さい』


 ロジャーが徐々に高度を上げていく。500m程の高さになった時、写真が送られてきた。泥沼階層入り口が島のように見える。小高い丘になっている部分が階層入り口。細い迷路のような通り道が見えている。階層入り口の正面の沼が一番大きな沼のようだ。


 入り口の島の後方の沼との間に、浅い湿地になっている部分を挟みながら大きく弧を描くように僕たちが今向かっている方向と反対側に細い道が続いている。


 僕たちが向かっている方向には、大小の沼が点々と広がっていて間の通路は迷路のように複雑だ。沼の中に人のような形の影が見える。


『レイ:前方の大きな沼の左側手前の沼に人のような形をした影を見つけた。アンディー、接近して写真を撮ることができる?』


『アド:やってみる』


 後方のアド機が降下して人影の魔物?の写真を撮りに行った。魔物の上空50m程に近づいた時、魔物の顔が、アド機の方を向いて大きな口を開けた。


 アド機が急上昇してきた。緊急離脱、そんな感じの上昇だった。


『リア:アド機、何があったの?大丈夫?』


『アド:大丈夫だ。魔法は避けることができたようだ』


『シエンナ:あの魔物は、音に魔力を乗せて撃って来るようです。多分、精神魔法だと思いますが、睡眠か麻痺かその辺りかもしれません。写真を撮ることはできたので、冒険者ギルドか図書館で調べれば、分かると思います』


『リア:魔法攻撃があるなら、あまり低空を飛行しない方が安全ね。この高度を維持して、マップ作りをメインに考えて飛行しましょう』


 この後も、何種類かの魔物を発見したが、近づいて写真に収めることはしないでおいた。20分ほどの飛行で沼地の行き止まりになった。このダンジョンは、反対側につながっているようなことは無かった。


 沼地の行き止まりから、中央の島に向かって500m程戻り、行き止まりに沿って反対側に向かった。次階層入り口の上空に着いたらまた、500m程中に入り、後戻りだ。一周回って、また、次階層入り口の上空と沼階層入り口を結ぶ線上に戻って来た。今度は、2kmほど中に入り高度を500m程あげて一周した。


 同じ高度1500mで中央へ2kmずつ近づきながらマップ作りと写真撮影を行っていった。スピードも徐々に上げて行ったため沼地入り口の島を20周ほどして、かなり正確な地図を作り上げるのを2時間30分ほどで終了することができた。


 撮影後、次階層入り口の島に着陸した。ドローン2台着陸するのにぎりぎりの大きさの島だった。着陸するとすぐにドローンを収納して、次の機の着陸場所を作った。この階層には次の階層に行くために階層ボスを討伐する必要はないようだ。

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