第155話 カラー写真と人口宝石

 ぐっすり眠れた。今日は、ゴーレムコアの採集に行く日だ。でも、もう少し時間がある。まだ、6時30分になったばかりだ。腕時計を付けて、ダイアリーを確認してみた。


 あっ、何か書いてある。

『白黒写真を色付き写真-カラー写真-にできるかもしれない。』


 とにかく、ゴーレムタブレットに赤・青・緑のフィルターっていうのを通した画像を作らせて、それぞれの色で白黒写真みたいな濃淡の絵を描けば良いんだな。


 まず、光属性の魔石にロックバレーダンジョンの5階層で手に入れた宝石の中から、赤、青、緑の宝石を使って、薄い膜を作って被せてみた。インクは、赤、青、緑に着色した3種類の魔石を使用してみた。


 写真を撮ってみる。タブレットにそれぞれの場所から入ってくる色でそれぞれの魔石を使って絵を描かせようとしたが、普通の白黒写真の若干色薄めの者ができた。


 黒の所は、黒の魔石を使用するように指示を変更した。今までの白黒写真のイメージだ。もしかしたら、赤だけ、青だけ、緑だけの絵を描いて重ねる必要があるのかもしれない。まあ、書き重ねるんだけど。


 それぞれの色のデータが取れるように、3色に塗り分けた宝石の上に円の一部だけ扇形にくりぬいたシャッターを作って付けてみた。でも、うまく回るように細工することができない。この仕事は、アンディーしか無理だ。ベッドで工作するのはもうやめて、起きることにした。


 食堂に行くと、シャルたちは準備を整えていつでも朝食が取れるようになっていた。


「「「「お早うございます。」」」」


 元気な声で挨拶してくれる。みんな違う動きをしているのに挨拶が揃っているのが不思議だ。


「お早うございます。」


 僕も挨拶を返しテーブルに着く。今日は僕が一番に食堂に来たようだ。いつも最後の方に席に着くことが多いから、なんか新鮮だ。その後、次々にメンバーが食堂に現れた。全員そろって朝食を始める。それから、今日の打ち合わせだ。


「朝一番で、ゴーレムコアの回収ね。」


「今日は、誰が行く?」


「アンディーに作ってもらいたいものがあるから、僕とアンディーでコアの回収させてくれない?」


「私、久しぶりにコアの回収に行ってみたいです。」


 シエンナが運転してくれるようだ。


「じゃあ、俺とミラ姉で森のパソロールに行ってこようかな。」


「そうね。朝一番でパトロール終わらせておけば、ロックバレーダンジョンに泊りで潜ることもできるかもしないわね。」


 シエンナとアンディーと僕がゴーレムコアの回収。ミラ姉とロジャーが森のパソロールという分担が決まった。ゴーレムコアの回収は、30分もかからないから、ロジャーたちが、パソロールから帰ってくるまで、アンディーとカラー写真のタブレットづくりができる。


 食後にゴーレムコアの回収を終えると、パーティーハウスの工房にこもってカラー写真タブレットの開発だ。まず、光属性の魔石に薄く加工した赤、青、緑の宝石の板を張り付ける。120度の角度で丁度均等になるように貼り付けてみた。


「でも、この形だと、シャッターが回転するときに隣の色のデータと混ざってしまわないか?」


「じゃあ、各色の角度を半分にして、間を光を通さない金属で覆ってしまおうか。」


「そうだな。そうすれば、シャッターを一周することで、赤の光だけの絵、青の光だけの絵、緑の光だけの絵が描けるよな。」


 とにかく作ってみて試すしかない。回転体の構造はアンディーが受け持ち、部品を作りっていく。僕は、ゴーレムコアと構造体の連携を受け持つ。そのころには、シエンナも工房に来て、光の魔石へのシャッターの制御を手伝ってくれて、フィルター部分もシャッターとは逆方向に回転するという、複雑な構造体になっていた。


 これで色々な角度の各色のデータでタブレットが絵を描くことができるようになるはずだ。シエンナの写真を撮って重ね合わせる。タブレットに写真ボタンを作っておいた。


「変だ。唇が水色だ。シエンナの唇は赤いのに。白目の部分は白いけど、緑色の瞳の色は、赤くなっている。」


 ダイアリーを読み返してみる。補色系のフィルターの所に出てきた色と一致している。本来赤の所が赤の反対色になっているんだ。じゃあ、着色した魔石の色を変えてみればいいのかも…。赤のフィルターの時にの像をシアンつまり薄い水色に、青フィルターの時の像を黄色に、緑フィルターの時の色をマゼンタつまり紫色に変えてみよう。


 僕は、タブレットを収納して、色付きの魔石を回収した。赤に着色していた魔石をシアンに、青に着色していた魔石を黄色に、緑に着色していた魔石をマゼンタに着色しなおしてタブレットに収納させた。


 もう一度、シエンナの写真を撮ってみた。


「凄い!シエンナが居るぞ!」


 タブレットを覗いたアンディーが叫んだ。


「ええっ。見せて下さい。な…、何か少し違うような…。鏡と違います。」


「鏡は、左右反転しているからね。僕たちが見ているシエンナはこの絵の方が近いと思うよ。」


 色見は、少し違うと思うけど、タブレットを調整していけば、自然な色合いになるんじゃないだろうか。


「レイ、俺のタブレットもカラー写真取れるようにしてくれ。すぐにできるか?」


「ちょっと待って。」


 僕は、アイテムボックスの中の宝石の魔石や着色料の材料の確認をした。くず魔石はまだたくさんある。フィルターに必要な宝石はほんの少しだから、後20個分くらいは、余裕である。でも、光属性の魔石が、もうない。今作っている分に関しては、すぐにカラーにできるけど、新たにカラー写真を撮ることができるタブレットを作るためには、光属性の魔石を調達しないといけない。


「白黒写真が撮れるタブレットは、全部カラー写真が撮れるようにできるよ。」


「じゃあ、頼む。」


「私もお願いします。」


 僕は、渡されたタブレットを収納して、光魔石を取り出してはカラー写真用に作り替え、着色した魔石をタブレットに収納させた。かろうじて残っていた、光属性の魔石を使って、カラー写真撮影機能を持つタブレットを一台精錬コピーしておく。これで、材料さえそろえば、同様の機能のタブレットを精錬でするようになった。


 この一台は、エリックさんに渡しておこうかな。そうすれば、遠くでも、パーティーハウスの様子を送信することができるようになる。光属性の魔石に余裕が出来たら、シャルたちに渡してあげても良いかもしれない。


 次は、人口宝石の実験。これは、すんなり終わった。ダイアモンドだけ作ることができた。後は、材料が足りない。でも、ダイアモンドができたことで、時計の装飾実験はできた。結果は、成功だ。文字盤の12時の所にダイアモンドをあしらったおしゃれな時計を作ることができた。魔力反発は、起きていないようだけど、王都に行って確認しないといけない。


 王都で、自動時刻合わせがうまくいったら、いくつか作って、王都の冒険者ギルドのギルマスに献上用に送っておこう。だから、送るのは、今度王都に、領主様を護衛で送った後になる。まあ、王都にいる間に作って、ギルマスに渡しておけばいいか。


 そんなことをしているうちにミラ姉達が帰って来た。カラー写真を見せると大騒ぎになってミラ姉達の分もカラー写真対応に変えてあげた。僕たちの間と、ダイアリーには、カラー写真の添付ができるけど、パーティーハウスの関係者以外は、白黒写真で受信されるんだよな…。しばらくは、それでいいか。


今から、泊りでロックバレーダンジョンに潜ることになった。食事も二日分用意してもらう。僕のアイテムボックスに入れておけば、時間経過なく保存できるから、メインの食料は僕が持っておくことにする。でも、もしもの為に、アイテムボックスとストレージを持っているロジャーとアンディー、小さいアイテムボックスだけど発生したミラ姉にも持ってもらう。


一番最初に食べるのは、ミラ姉とロジャーが持っている分だ。要人の為7食分の食事を持ってダンジョンに出発することになった。小型ゴーレム戦車でロジャーが運転してだ。中に入ったらシエンナにお願いするたらせめて、ダンジョン入り口までは運転するってロジャーがいって運転した。ロジャーは、考えなしに見えるけど優しいお兄ちゃんなんだよね。


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