第154話 人口宝石と光と色の三原色

 朝、日記を開くと色々書いてあった。でも、衝撃を受けたのは、日記に写真が貼り付けてあったこと。直接、印刷したみたいに日記の紙一杯に貼り付けてあった。領主様の写真。暗いけどくっきり写っているダンジョンの写真。ミラ姉達の写真もある。父さんと母さんに見せてあげよう。


 あれ?そういえば、昨日の朝ってダイアリー確認したかな…。まっ、いいや。昨日の朝の書き込みだったって、何もできなかったし…。


 今日は、土曜日だから二人ともまだ起きていないようだ。昨日は、夜遅くまで深刻な話をしていたみたいだったから、まだ起きないだろう。草刈りボランティアでかなりの量の木材を手に入れたからコテージを作ることができるようになっていた。それを言ったら、今日、庭にラボを作ろうということになったんだ。


 実験を家の中ですると色々と不都合が多いからな。コテージを建てたら電気屋さんを呼んで、電気を引き込んでもらう予定だ。棚や机も作る予定だけど、木材が足りるかな。


 下に降りて、庭を眺めてコテージを建てる場所を考えていたら母さんが起きてきた。


「お早う。」

「お早う。休みなのに早いわね。」


「早いって、もう8時だよ。お腹空いたな。」


「今から、朝ご飯作るから待っててね。もう中学3年生なんだから、朝ご飯くらい自分で作れるようにならないとね。」


「材料さえ、使って良いんだったらパパっと作れるよ。精錬でだけどね。母さんの出来立て朝ご飯の味よりは、落ちるけどね。」


「まあ、嬉しいこと言ってくれるじゃない。まあ、美味しい朝ご飯を作ってあげるわ。メニューは、大したことないけどね。」


 それから、サラダと目玉焼き、お味噌汁の朝ご飯を作ってくれた。朝ご飯ができた頃、父さんも起きて来て一緒に食べた。


「おとうさん、片付けお願いね。」


「おう。洗い物は任せておけ。」


「父さん、収納・精錬で良ければ、食器の片付け手伝おうか?」


「おっ?収納で食器がきれいになるのか?」


「うん。多分ね。収納、クリーン・ウォッシュ・ドライ」


 きれいになった食器をテーブルの上に並べた。


「本当にきれいになってる。じゃあ、片付けとくな。」


「そうだ。二人とも、ミラ姉達、見たい?」


「えっ?どういうこと?」

「見たいぞ。」


 夫婦といっても、微妙に反応が違うんだな。


「レイが、ダイアリーに貼る付けてくれたんだ。ゴーレムタブレットで写真を撮ることができるようになったらしくてね。白黒だけどね。」


「見たい。見せなさい。」


 僕は、ダイアリーをアナザースペースにコピーして、アルケミーで情報だけの部分を追加精錬し、実体化した。アイテムボックスの中にある情報は紙やインクの材料を使って実体化しないと出すことが出来ない。


「ここ、ここから見て。これがミラ姉で、こっちがロジャー。ここにいるのがアンディーだね。そして、この子がシエンナ。この人は知らないな。あっ、領主様だってさ。」


「みんな西洋風の顔つきだけど、どことなく日本人っほい所もあって、可愛いわね。なになに、そして、どの子が好みなの?」


「何言ってんだよ。みんな家族みたいな仲間だよ。」


「はいはい。まあ、いいわ。で、どうやってこの写真みたいなの撮ったって?」


「ええっと、ゴーレムタブレットに、光属性の魔石を組み込んで、胃のの濃淡を黒色の魔石で表したんだって。」


「じゃあ、カラー写真も撮れるようになるかもしれなわね。光を感じることができるセンサーみたいなのがあるんでしょう。そのセンサーに赤いセロファンを通した絵と、緑のセロファンを通した絵、青のセロファンを通した絵をそれぞれの色のインクで書かせて重ね合わせるのよ。そんなイメージ。捕食系のセロファンの透過光とインクを使った方がより見た目に近くなるかもしれないけどね。」


「どういうこと?良く分からない?それに、見た目に近い絵になるセロファンってどんな色のセロファンなの?」


「そうね。補色系のフィルターを作るのは難しいと思うけど、色だけ言うわね。シアンは明るい水色、マゼンタは、明るい赤紫色、イエローは、黄色ね。この3色が補色系よ。でも、この色のフィルター、簡単なものだと色付きセロファンね。それって色の調整が難しいと思うのよね。だから、赤・青・緑の原色系のフィルターでやってみて、フィルターの色を変えて言ったらどうかしら。」


「セロファンって何で作れるのかな?色は何で付けてあるんだろう。」


「そうねえ、セルロースに似ているから植物繊維化も入れないわね。でね、原色のフィルターでやった後、色を変えるって言ってもどうやって変えていくのかは見当もつかないのだけどね。まあ、ゴーレムのAIだったら、試行錯誤でフィルターを完成するんじゃないの?まずは、赤、青、緑のフィルターとその色の魔石を探すことからね。今は、黒色の魔石しかないんでしょう。」


「まず、赤と青と緑のセロファンを買って来て、精錬してみるよ。それから、光の重ね合わせの実験をする。その実験結果をレイに知らせたらその色のフィルターを作ることができるかもしれないでしょう。」


「そうだな。それに、向こうには、こっちにない不思議素材があるんだろう。案外、色付きセロファンさえ作ってやれば、ゴーレムが自前のフィルターを作ってしまうかもしれないぞ。」


 父さんが、突然、話の中に入って来た。でもその通りだ。こっちの材料では考えられないような方法で写真を撮ってるから、原理さえ分かりやすく伝えれば、向こうの素材で作ってしまうかもしれない。


「あっ、それとね。先週言ってた、人工宝石の材料が届いているっ連絡が来たわ。取りに行くついでに人工ダイア、宝石の方よジルコニアと人工サファイアと人工ルビー買って来て。お金は、今度のボーナスで必ず返すから。というか、できた人口宝石を販売して返せると思うからね。お願い。一つぐらい人工の物、持ってても良いかなって気がしてたのよね。」


「レイも一緒に行くか?」


「うん。色付きセロファンも買ってくれる?」


「良いぞ。買ってやる。ついでに直食用に食紅も買っておこうかな。赤と青と緑で良いよな。」


「それなら、パソコンインクの染料系っていうの買ってみたら?今、パソコンで調べたら、顔料系よりも発色が良いんだってよ。」


「なんか、太っ腹だね。父さんも母さんも。」


「とことんやってみようって決めたからね。」


 良く分からないけど、母さんが意味深な笑顔を父さんに向けていた。どういうことだろう。


 それから、父さんと買い物と品物の受け取りをして帰って来たのは、12時を過ぎていた。


「ご飯食べたら、ラボづくりをしましょう。実験環境を整えないと、良いものは作れないわ。明日には、電気工事に来てくれるって言ってたから、今日中に作り上げるわよ。玲、なんか美味しそうなお昼ご飯作って。材料は、何使っても良いからさ。」


 何故か、母さんからお昼ご飯を丸投げされた。父さんと台所に行って材料を物色してメニューを決めた。ミートソースパゲッティー。熱々をすぐに作ってみんなで食べた。美味しかったよ。ファミレスのスパゲッティーくらいには。


 食後、庭に出て、ラボづくりだ。しかし、7m四方のスペースが取れない。我が家の庭はそんなに広くなかった。という訳で、3.5m四方のラボを作ることになった。家の高さは、母屋の半分と少し位になるように、何度か立て直ししました。外から見えなかったはずだ。見えていたら大騒ぎになったと思う。


 ラボの中にテーブルや棚を作っていった。窓もきちんとあります。実験用の建物だから、上履きを履くようにした。何かあった時危ないし、土足だとすぐに汚れそうだったから。


 3時過ぎには、大体出来上がった。電気は、来ていないけど、灯りもつくように精錬コピーして作ったよ。天井に引っ掛けているだけだけどね。


 まず作ってみたのは、人工ダイヤ。材料は、砂糖だ。買って来たジルコニアをアイテムボックスの中に入れて精錬コピーだ。簡単にできた。あっさりした物だった。取り出してみてもらう。ガラスに押し付けてこするとガラスに傷がついた。成功したみたいだ。


「このダイヤより大きな物作ってみて。」


 母さんからのリクエストだ。丁度2倍の大きさをイメージして


「アルケミー・ダイヤモンド。…、できた。」


 アイテムボックスの中から取り出した。さっきのダイヤモンドの2倍の大きさになっている。


「次は、ルビーね。人工ルビーを収納してみて。ただ、このルビー、値段から言うと少し怪しいのよね。小さいからかもしれないけど。」


「ええっ?ここに鑑定書があるよ。人工ルビーって書いてあったから買って来たんだよ。」


「とにかく、精錬してみるよ。アルケミー・コピー・ルビー」


「うん。できたみたいだよ。」


 僕は、アイテムボックスの中のコピーしたルビーを取り出した。きれい赤。人工ルビーだ。


 次は、人口サファイア。材料はほとんど一緒だけど不純物として混ぜる者が違うだけらしい。


「アルケミー・コピー・サファイヤ。できた。」


 これも、取り出してみた。青いきれいな宝石だ。なんか、時計の装飾に使うって言ってたからそんなに大きくなくても大丈夫だろうけど、母さんのリクエストで、買って来たものの5倍くらいの大きさにして作ってみた。


 材料が沢山あったから、全部、ルビーとサファイヤにしてみた。次の実験は、色と光の実験だ。染料系のプリンターインクや食紅なんかを収納して、セロファンを作ってみた。一応できたけど、色が今一つだ。かえって、ルビーの赤やサファイヤの青の方がフィルターに向いているかもしれないと思った。


 ダイヤリーに、今日の実験結果を書き込んで、人口宝石のことも書き込んだ。酸化アルミニウムとクロムや酸化鉄やストロンチウムなんていう薬品で作ると言ことも書き込んでおいた。それを含む鉱物も書いたけど、異世界にあるかどうかは不明だ。


 書き込んだ、日記をリペアしようとして、日記がもう一枚書いてあることに気が付いた。火薬の作り方?火薬は、どんな材料で作るのか教えて欲しい。できれば、その材料の作り方が分かれば、それも教えろって、無理だよ。火薬は実験しにくいよな…。後で、父さんと母さんに聞いてみよう。





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