第153話 日程決定とパトロール

砦用の武器づくりなんて始めたら、思ったよりも時間が過ぎていた。シャルたちも武器づくりを見学していたけど、途中で退屈して、薬草採集を再開していた。


武器づくりは、中断して砦に戻って薬草畑作りの仕上げをする。予定していた場所に毒気し草や薬草を植えて、初級回復ポーションを水で1万倍くらいに薄めたものを噴霧した。明日には、根付いていると思うんだけど…。そこまでしたら、後は、シャルたちにバトンタッチだ。畑のお世話と一緒に薬草園のお世話も任せる。


畑仕事が一段落して、パーティー会議室で、領主様の依頼の返事の相談をした。


「日程だけど、4日後でどうかしら。ゴーレムコアの採集もないし、一応、砦の外観は完成しているけど今後の運用方法なんかは俸給とも相談が必要だと思うのよね。今の所、スタンピードの心配もないようだしね。でも、一度、森を上空から見回ってから決めた方が良いかしら。」


「そうだね。まだ、日没まで、時間もあるから、今から3台のドローンで手分けして森の見回りをして決めようか。多分大丈夫だと思うけど、念のためにさ。」


意見がまとまったらすぐに動き始める。表に出てドローンに乗り込むと出発だ。


僕は、ロジャーの後ろ。シエンナは、ミラ姉の後ろだ。アンディーが一人で操縦する。


ドナさんが、アンディ―の後ろに乗りたそうにしていたけど、エリックさんにたしなめられて諦めた。晩御飯の準備が始まっているそうだ。僕とロジャーのロイ機は、砦から西に向かってパトロールを行い山沿いに北上して森の中川を通って帰ってくる。


ミラ姉とシエンナのリア機は、砦から西に向かい、ケス台地にぶつかったら、大地に沿って北上した後森の中を通って砦に戻る。アンディ―のアド機は、砦から西に膨らんで北上し、森が切れたら直進で砦に戻るコースをそれぞれ担当することにした。


『アド:こちらアンディー、森は、いつも通り変わったことは無い。飛行系の魔物も時折みられるが、興奮した様子もなければ、数も多くない。』


『リア:こちらシエンナ、各機の情報を受け取っていますが、どの機も、異常な魔力の動きは感知していないようです。このまま、各機との情報共有は維持します。』


どのドローンもタブレットと情報共有してドローン経由でタブレットに情報を表示している。そのコントロールは、使役者のシエンナが行っているんだ。タブレットとドローンの情報が共有できるってやっぱり便利だ。


タブレットが完治した魔物の群れの方に移動してみても異常は、ないようだ。40分程パトロールをして、砦に帰ることにした。


全員が、砦に戻って来て、会議室に集まった。


「異常なかったね。」


「それじゃあ、初めに行っていたように、4日後に王都へ向かうということで大丈夫ね。」


「護衛は、何で行うの?っていうか、小型戦車?多足ゴーレム戦車?」


「スピードが少し落ちて、使用魔力は、ものすごく大きいけど、乗り心地とゆったり感で、多足ゴーレム戦車ね。」


「そうですね。安心感が違いますからね。」


「それに、王都から宰相閣下やクーパー卿を乗せてきたことがあると言うのも大きいよな。あの時は、11名乗れたからな。今回の依頼人数は、領主様ご夫妻と領騎士4名と俺たちだろう。シエンナが運転で、ミラ姉が護衛として下に乗ったとしても、上で俺とアンディーとレイが中遠距離攻撃護衛部隊として守りを固めれば、安心じゃないか?」


「そうだね。シエンナにゴーレム戦車との情報共有で魔物の気配を探ってもらえば、後は、言われた方に魔術を撃つだけで終わってしまうかもしれないね。」


「それなら、レイよりも私の方が中遠距離護衛は適しているわね。レイの魔術は、距離が短いし、威力が大きすぎるか小さすぎるのが多いからね。」


「ええっ。私ひとり、領主様たちと一緒に1階とか言わないですよね。」


「それはない。いくら領騎士様が居ると言っても、領主様の護衛依頼を受けているのに誰も領主様の側にいないなんてことは許されないからね。」


「しかし…。」


「どうしたの、アンディー。」


「レイが一人で領主様と話すとなると、なんかややこしいことにならないかなって心配なんだよな。」


「アンディー、それってひどくないか?」


僕が言うと。


「レイは、その辺、自覚しないといけないわよ。」


ミラ姉まで被せてきた。


「そうですね。レイさんが領主様と盛り上がって、また何か変な依頼を受ける可能性は高いと思います。」


「多分、王都でも絶対怒られると思うわ。王宮や王室から普通に褒められたことなんてないからな。いっっっっつも、なんか一言怒られたり呆れられたりして、その後だもんな、褒められるの。」


「そ…そうなんですか?私、王室や王宮から怒られたりしたら、普通にしていられないと思います。多分、そのまま、気を失ってしまいます。怖すぎて。」


シエンナは、本気で怖がっている。


「大丈夫だよ。シエンナ。みんなオーバーに言っているだけで、そんなに怒られたことなんてないからね。悪いことなんてしていないし。」


「何言っているの。宰相閣下なんて、『お前たちは全く…。』なんて言いながら絶句していたし。私なんて、口から心臓が飛び出るんじゃないかって思うくらいびっくりしたり、怖かったりしたんだからね。」


「やっぱり、私、王宮に呼び出しがかかっても留守番します。嫌です。一緒に行くの。」


「シエンナ。怖いと思うけど、呼び出されたら一緒に行かないとダメなのよ。拒否なんてしたら不敬罪で、大変なことになるからね。大丈夫。レイから一番離れたところに立っていたら、直接怒られることは無いから。二人でなるべく離れたところに立っていましょうね。」


「本当ですか?」


「本当よ。大丈夫。私が守ってあげる。ロジャーとアンディーも私たちを守ってくれるわ。」


「お姉さま~。


シエンナとミラ姉が小芝居を始めたけど放っておこう。


「でもさ。4日後って、王宮に早く連絡しないと報告の為の謁見時間なんて作ってもらえないんじゃないか?普通、もっと先の日程の予約じゃないと無理じゃない?」


「そうなの?ロジャー達ってその日に行って次の日に会ってもらってなかった?」


「ああ、ロックリザードの皮を持って行った時な。あれは、特別だと思うぞ。」


「そうよ。普通何カ月も前からお願いしてようやく会えるものなのよ。」


「じゃあ、無理じゃん。僕たちの都合に合わせるっていっても、領主様が王様に会えないんじゃ意味ないんじゃない?」


「それなら、先に領主様に聞いたらいいわね。いつくらいだったら、王様への謁見の予約が取れますかって。」


ミラ姉がもっともなことを言ってきた。でも、領主様は、僕たちの都合に合わせると言って下さっている。それに対して、もう一回質問返しをするのって怒られないかな…。


「こんな時は、ティモシー様に相談したら良いんじゃない?ロックリザードの討伐が終了しました。領主様が報告に伺居たと言っておりますが、いつぐらいだったら都合が付くでしょうかって。」


僕が言うと、さんざん宰相閣下にそんなこと聞けるはずがないとか、非常識だとか言われたけど、結局聞くことになった。ただし、僕がだけど。


『レイ:ご相談があるのですが、この時間にご相談させてもらって大丈夫でしょうか?』


『ティモシー:どうした。忙しいが、今、帝国へのロックリザードの皮の輸出の件についてひと段落付いた所だ。短時間なら大丈夫だ。』


『レイ:そのロックリザードの討伐が終了いたしました。その件で領主様が報告に伺いたいと仰っているのですが、いつならお会いしていただけるでしょうか?』


『ティモシー:タブレットに変なことが書いてあったのだが、このタブレットの調子が悪いのか?』


『レイ:変なこと?』


『ティモシー:王都に送られてきているロックリザードの皮は、まだ800体分くらいなのだが、討伐が終わったとか誤変換されたのだろう文が送られてきた。しかし、領主の挨拶がどうのとかとも書いてあったのでな。タブレットが、壊れているのではないよな。』


ティモシー様にロックリザードの討伐は終っていることと今まで送ったのは、ほとんど前回の1000体分の質を越えている物だけということ。残りは、10000体分以上あるということも含めて、砦の建設も壁ただけは済んだことも一緒に伝えた。


その報告を聞いて、しばらくして、領主との謁見は、四日後で良いということと、僕たちのパーティーは、全員揃って来るようにということ。その前に、冒険者ギルドのマスターをすぐに王都に連れて来いということが付け加えられた。


タブレットで冒険者ギルドのギルマスに四日後に外線報告の日程が決まったことと、王都から呼び出しがかかったから僕たちのパーティーハウスに来て欲しいということを伝えた。


ギルマスは、領主様に報告に行った後すぐ、青い顔をしてパーティーハウスにやって来た。


「領主様が、4日後と聞いて、青い顔をされていたぞ。服の仕立てを何としても間に合わせないといけないからな。出発時刻も伝えた。領主様の家を正午で良いのだな。」


「では、王都に向かう。済まんが、マウンテンバイクを貸してくれんか。あれだったら明日中には着くからな。」


「大丈夫ですよ。送りますよ。アンディー、お願いして良いかしら?ギルマスは、一人で行って大丈夫なんでしょう。」


ミラ姉がなんか気前が良い。


「おお。大丈夫だ。マウンテンバイクだったら、一人護衛を付けようかとも思ったがな。アンディーが、送ってくれるんだったら人のでも大丈夫だ。」


「じゃあ、アンディー、お願いね。」


「了解。」


ギルマスとアンディーが機上の人となって見えなくなった後、


「やったー!」


ミラ姉が妙にはしゃいでいる。


「どうしたの?」


「ギルマスが、先に行って怒られてたら私たちが怒られなくていいでしょう。だって、先に一人で来いなんて、怒られに行くの確定じゃない。ありがとうギルマス。」


ミラ姉は、ヤッホーってダンスを踊り始めた。


ありがとうティモシー様。僕も、ミラ姉と一緒に踊りたい気分だったよ。これで、安心して眠れる。今日は、美味しく晩御飯を頂いてゆっくりと眠ることができた。








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