第149話 石材採集終了

 今日は、ロジャーは、砦の石の積み上げ、ミラ姉達は、朝9時過ぎに直接ロックバレーに来るそうだ。いつもの止まる宿で、いつもの戦いをシエンナも一緒にしているはずだ。今や聖女の聖戦と言えるのじゃないだろうか。そんなことミラ姉の前で行ったらぶっ飛ばされるから絶対言わないけど。


 僕とアンディーは、今、黙々とロックブロックを作っている。後、30分ほどでミラ姉達がやってくるはずだ。昨日あれだけ頑張って、二人で作ったブロックの数が、230万個だったんだ。一人で残りの190万個を作り終わる自信がないと言ったら、ミラ姉達がこっちに着く前に作るのを手伝ってくれると言ってくれたんだ。アンディーは、とっても優しいお兄ちゃんだ。


 二人で、黙々とブロックを作っているとドローンが降下してきた。


「お帰り。ドレス注文することできた?」


「ばっちり、閉店前に滑り込んで、私とシエンナで5着ずつ、10着注文してきたわ。ギルドカードの残高がすごいことになってて、その位へでもないって感じよ。あなたたちも何か必要な物があったら王都で買ってきたらいいわ。」


 なんか、ミラ姉が太っ腹になっている。いやお腹のことじゃないんだけど、お腹もか…。


「アンディー、腹ごなしのダンジョン探索に行くわよ。あんた天井に乗る?」


「勿論だ。ウェポンバレットを久しぶりにぶっぱなしたい。」


「あ…、拾うの大変だよ。アンディーならソードショットで充電じゃない?」


「いや、拾うのが楽になって来た。収納できる距離が伸びて来たからな。」


「あっ、そうなんだ。頑張ってね。」


「シエンナ、できたら、不思議な光景や面白い物見つけたらタブレットで送ってよ。いい。頼んだよ。」


「考慮する。」


 ミラ姉は、約束はしてくれなかった。きれいな物や不思議な物見つけたら、夢中になってタブレットの存在なんて忘れちゃうよね。


 皆がダンジョンに入って行ってからは、黙々とただ黙々と石材の収納を行った。アンディーが作った石材も収納しておいた。アンディーは、1時間弱で10万個のブロックを作っていた。


 身体強化ポーションを飲んで走り回りながら石材を収納していく。最後の方は、石壁を何とか崩しながら石材集めをした。一番効果的だったのが、大き目のヒビに水を流し込んでリキロゲンボールで急速冷凍することだ。大きな石材を収納することができた。


 12時くらいになってロジャーから連絡が入った。ロジャーが預かっていたロックブロックは、全部積み終わったという連絡だった。すぐにこっちに来てもらって、今日作り終わっていた110万個と少しを渡した。後80万個で目標到達だ。


 村に残っているブロックは、後100万個くらいだと言っていた。冒険者や町から来てくれた皆さんも頑張っているそうだ。帰りには、お風呂に入れると現場監督が伝えたらみんな大喜びだったそうだ。


 砦建設で働く人の為に銭湯に石鹸とタオルを無料サービスで置くことにしたと村長さんが伝えてきた。その分のお金は、依頼料の残りで賄うことができるそうだ。


 身体強化ポーションを使いながら、動き回ると目が回りそうになるくらいお腹がすく。僕は、お昼休憩の為に拠点に戻った時、何か食べるものが欲しいと食堂でお願いしてみた。遅い朝食の賄い食を食べている人が居たので、同じものを食べさせてもらった。目が回りそうだったのが収まった。やっぱり、お腹が空いていたんだ。


 昼からも身体強化ポーションを飲みながら頑張った。4時過ぎに目標の190万個を達成した。そして、ダンジョン探索組も帰って来た。戦車で拾ってもらって真っ直ぐ村に戻った。


 僕は、そのまま、お風呂に直行。とにかく汗をかいた。ミラ姉達もお風呂に直行だ。男風呂でアンディーにダンジョンのことを聞いた。


「今日も、6階層までしか行くことができなかった。しかし、5階層でかなり素材を拾うことができたぞ。知らない金属や鉱石が沢山ドロップした。あんまり種類が多かったから、5階層でかなりの時間魔物狩りをしていたんだ。それもあって、今日も6階層どまりになったんだけどな。」


「で、何を拾ったの?」


「ルビーやエメラルドなんかの宝石類が多かったな。時々、クロムザクロ石や天青石なんて訳の分からない石みたいなものもドロップしたけどな。」


「宝石は、魔石で、高く売れるんでしょう?」


「多分な。ギルドに鑑定してもらったら分かるかもしれないけど、もしも高く売れるんなら人気のダンジョンになるかもしれないな。」


「その石みたいなドロップ品、僕にくれないかな。素材はなるべくたくさん持っておきたいからね。」


「風呂あがったら渡すな。」


 そんな話をしていたら、ロジャーが風呂に入って来た。


「お前ら、風呂に行くな行くって連絡してくれよ。俺だって、今日は、領主様の所に行くんだからな。」


「どうしてここにいるって分かったの?」


「パーティーハウスに一回帰ったんだ。ミラ姉達がお風呂の着替えを取りに戻ったんだ。その時に、エリックさんにお前たちが村の銭湯で風呂に入ってるって教えてくれてたから分かったんだよ!」


「そうか。俺たち、村に着いたら真っ直ぐ、銭湯に来たから、タブレットで連絡しておけばよかったな。」


「それでロジャー、今日の砦の壁作りどのくらい終ったの?」


「おおっ、後2段で10段の積み上げ完成だ。しかし、腰壁がないといざという時に危ないだろうから、腰壁までつけるとなると2段と16万個のブロックが必要になるな。」


「48万個と16万個だね。それならもう作り終わっているよ。」


「それなら、明日は、積み上げだけだな。レイとアンディーも積み上げに参加するなら、砦の壁は、明日で完成するかもしれないな。」


「それならさ。今日、領主様に会うんだし、ディーコムさんが言っていた、ゴブリンダンジョンの砦づくりを領主様にお願いしてみたらどうかな?」


「あの広場を囲んで欲しいって言っていたあれか?」


「あそこって1km幅くらいだったでしょう。横は切り立った崖になってるからあの崖を使えば、ダンジョン側と森側に高さ10m厚さ2mくらいの壁で囲むだけで十分な砦になるんじゃない?」


「まあ、そんな頑丈な砦なら、小さな町を作っても安全かもしれないな。」


「高さ、10m地下2m長さ1kmの城壁2つ崖からの敵の襲来を考慮して崖側にも高さ5m、厚さ0.5mの予備壁を作ったとして、2万個足せばいいだけだから40万個のロックブロックがあればなんとかなるよね。」


「そうだな。何とかなる。そして、そのロックブロック作りは、明後日1日で終わるんだよな。」


「そう。多分午前中で終わって、午後で積み上げが終わると思うんだ。ロジャーと僕とアンディーでやればね。」


「壁ができて、安全が確保できれば、町づくりも安心してできるし、ダンジョンからゴブリンたちが逃走することもなくなるってわけだ。」


「その依頼を領主様にしてもらえば、いくらかの報酬でダンジョンシティーを作ることができるでしょう。」


「そうなるとフォレストメロウの領主様は、二つのダンジョンを抱える大領主ってことになるんじゃないか?」


「複数のダンジョンを所有しているのは、王都だけだからね。まあ、王都のダンジョンは、5つくらいあるらしいけどね。」


「まあ、とにかく領主様に相談してみるか。」


「でも、砦にするなら、僕たちはフリーパスにしてもらわないといけないね。」


「そうだな。その交渉は、ミラ姉にしっかりしてもらわないとな。」


「凄いね。拠点と新ダンジョンシティーがあったら、たくさんの冒険者がダンジョン探索にやってくるよね。」


「そうだな。しかも石切り場も復活するからな。フォレストメロウの街はしばらく安泰だな。ファハハハッ」


 何か、良く分からないテンションになってしまった。長湯で少しのぼせてしまった僕たちは、パーティーハウスに戻って、冷たい果実ジュースを作ってもらった。ドナさん凄い。


 全員揃って、小型ゴーレム戦車でフォレストメロウに向かう。


 ゴーレムバスは、今日は、夜8時過ぎまでは、運行するように指示を出している。バスに乗っている人を全員降ろすのを、ギルド出張所にいるゾーイさんと村長にお願いしておいた。ロックバレーの拠点に到着する前にゾーイさんにタブレットで連絡が行き、開拓村に着くと村長さんの家の前に停車して村長さんに確認してもらうのを待つように指示している。最終確認は、夜8時20分位になるだろう。


 冒険者ギルドの中でしばらく待っていると、使いの方が馬車でやって来た。そこから、ギルマスと一緒に領主様の屋敷に行く。馬車1台に6人が乗って移動するから少しぎゅうぎゅうだった。使いの方は、御者の席に一緒に乗っていた。


 ギルマスは正装している。僕たちは、冒険者服のままだ。洗濯は済んでいて、こぎれいな格好にはなっている。


 領主様のお屋敷に着いた。町の一番奥、小高い丘の上に立っている。フォレストメロウの街は、南側に外から引き込んだ川が流れ、野菜などを作っている場内の耕作地を持っている。更に城壁の南側には、麦畑が広がっている。麦畑を守っているのは、木の杭と丸太を組み合わせた壁だけだ。


 冒険者が多く、衛兵たちも巡回を書かせないため魔物の被害は年間を通して比較的少ない。しかし、まったく0という訳ではない。農作業をしている農民が襲われてしまうこともある。フォレストメロウは、そんな辺境の街だ。


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