第148話 手伝い冒険者と村の銭湯

タブレットがブルブルと震えた。

『アンディー:基礎の埋め込みが終わった。今からそっちに向かおうか?』


時刻は、3時10分。アンディーが来てくれたら、石材集めがさらに進む。ロックブロックを石切り場の広場に積み上げてもらっておけば、ロジャーに収納してもらって、村に運んだ後も、積み上げながら取り出すことができるようになる。そうなれば作業効率が数倍に上がる。


『レイ:お願い。ロックブロック作りをしてもらいたいんだ』


『アンディー:了解。マウンテンバイクで向かうから15分後には石切り場に到着すると思う』


時間通りアンディーが到着して、ロックブロック作りを始めた。出来上がったロックブロックは、石切り場に積み上げておいてもらった。凄い勢いでブロックが出来上がっていく。


僕も負けないように、石材を収納してロックブロックに変えて行った。アンディーは、最初1個のロックブロックを作るのに5秒ほどかかっていたけど、まとめて作る技を習得して、5秒間で20個近くのロックブロックを作り始めた。この後、どんどん一度に作ることができるブロックの数が増えるんじゃないだろうか…。


僕は、収納さえがんばれば一度に、何個でもブロックを作ることができる。とにかく材料が必要だ。大きな岩の塊を求めて石切り場の中を走り回った。


日が暮れてきたころ、ダンジョンの中から冒険者の皆さんが出て来だした。みんな笑顔だ。怪我人もいないようだ。20組ほどの冒険者の皆さんが出て来た後に、ロジャーたちがゴーレム戦車に乗って出てきた。


戦車を僕たちの前に止めて、ロジャーが天井から飛び降りてきた。


「おうっ。アンディーもロックブロック作りを頑張っていたんだな。それにしてもたくさん作ったなぁ。」


「よっ。このロックブロック、ロジャーが収納しておいてくれよ。明日から、ロジャーに砦の壁づくり手伝ってもらうから。」


「ええええ…。明日もダンジョンに潜りたいなあ。今日は、6階層までしか行けなかったからな。」


「アンディーは、今日ダンジョンに入れなかったから、明日は、私とシエンナ、アンディーでダンジョン探索ね。」


「そうですね。ロジャーさんが砦の壁の積み上げをして、レイさんが、ロックブロックを作るなら、アンディーさんは一緒にダンジョンに潜ることができますね。」


「良し!」


アンディーがとっても喜んでいる。僕も潜りたいけど、今朝、少し潜らせてもらったし、我慢しよう。


「ロジャー、明日は、砦づくり頑張ろうね。」


ロジャーにアンディーが作ったブロックを収納してもらって、数を確認した。アンディーが作った分は、582631個だった。僕が作った分は、180万個。僕は、数を指定して作るから端数が出ない。


合わせて2382631個だ。後、約190万個で最低必要数のブロックが完成する。


タブレットでエヴィにリキロゲンボムの残りを聞いたら600個以上あるということだった。僕たちが潜った時、ダンジョン内には10体くらいしかロックリザードの気配がなかったから、明日の分も十分あるだろう。


4階層まで潜ったパーティーがあれば、もしかしたら使用したかもしれないけど、階層入り口は、かなり離れていたから今日一日では、踏破は難しいだろうと思う。


皆で小型ゴーレム戦車に乗ってパーティーハウスに帰った。ゴーレムバスは、一日中ロックバレーの拠点とフォレストメロウ、開拓村を行き来している。一日の利用者もかなりの数いるようだ。ただ、一日中動いてると魔力が切れてしまいそうだ。


座席の所に魔力補充用の魔石を取り付けて、乗車料金を魔力で支払ってもらうようにしたら魔力の枯渇なくバスを走らせることができるかもしれない。夜の7時には最終運行を終わって、村に戻って来るように指示してあるから、戻ってきたら魔力支払い用の魔石をセットしてみよう。


村に戻って、石材を補充しておく。今日一日で、地上部の1段目がほぼ積み終わったようだ。村長とは、打ち合わせているが、砦の壁の中に何か所か空洞を作っておくことにしている。臨時の退避場所と備蓄品の倉庫として利用するためだ。現場監督の村長がしっかり把握しているはずだけどロジャーにも念を押して、タブレットに建築設計図を転送しておいた。小さいけど何とか見えるはずだ。


シエンナと相談して、タブレットに視覚情報を認識する機能を付けることにした。光の明暗で物を認識することができれば、色の濃淡で画面上に描き出すことができるはずだからだ。ゴーレム戦車からのマッピング情報を地図としてタブレットに送ることができたことで思いついた。


向こうのお父さんは、デジタルカメラって言っていたけどそんな機能になるはずだ。色は付いていないけどね。光属性の魔石を道具屋で仕入れて来て、分割してタブレットの裏側に取り付けてみた。魔石で周りの光情報を魔力情報に変えてタブレットが取り込むことができるようにだ。


シエンナの情報共有で分かったことだが、ゴーレムは、魔力的な視覚はあるようだけど、人間が見えているような光情報と一致していないようなのだ。それで光属性の魔石を利用することにした。うまくいくと色々便利になるんだけどね。


僕のタブレットに魔石をセットして、魔石との情報のやり取りについて細かく設定した。景色を写しては、色と濃淡の関係を調整し、人を写しては、調整しなおす。部屋の暗めの光で調整したから難しかったのか簡単だったのか…。何とかタブレット前方の対象物を濃淡で表現することができるようになった。


そんな実験をしていたら、ミラ姉のタブレットが震えて、フォレストメロウのギルマスからの連絡を伝えてきた。


『FAG:ギルマスのチェイスだ。今日の夕刻、領主様から使いが来た。明日の夕刻、領主様のお宅に、アンデフィーデッド・ビレジャー全員を招待したいそうだ。ロックバレーの奪還のお礼の為ということだ。服装は、日頃の冒険者の格好で来て欲しいと達しがあった。俺も一緒に行くことになっている。馬車の迎えが明日の夕刻にギルドに来るそうだ。必ず来てくれ』


『ミラ:分かりました。服装は、冒険者服で宜しいのですね』


『FAG:ドレスや清掃を持っているのか?』


「あっ。そういえば、シエンナのドレスがないわ。私のドレスじゃサイスが合わないわね。」


『ミラ:ドレスが揃いませんでした。冒険者の服装でお願いします』


「何かあった時の為に、シエンナのドレスも作っておかないといけないわね。シエンナ、明日私とドローンで王都に行って注文してくるわよ。」


「あの…、洋装店がまだ空いてるなら、今から行って注文しましょうか?ドローンで行けば、1時間もかかりませんよ。」


時刻は、まだ5時30分だ。今から行って間に合うかどうか微妙だけど、間に合わなくても、朝1番で注文すれば、11時前には、戻って来ることができる。


「良いんじゃない。二人で行ってくれば?」


「そうね。二人で、王都の夜を楽しんできましょう。」


「えっ。じゃあ、はい。」


シエンナって戦闘中は指揮官なんだけど、普段はなんか天然系なんだよね。面白いね。


大急ぎで出て行く二人を見送って、男3人で夕食をたべると台所に知らせに行った。そういえば、今日から、砦の建設を手伝いに来るって言ってたミラ姉の子分のパーティーの人たちどうしたかな?ロックバレーの宿泊所の方がフォレストメロウよりも安いし、食堂も充実しているから、あっちに泊っているかな?


「すみませーん。聖女様はいらっしゃいますかー?」


「あれ?何か外の方から聞こえない?」


「うん。そうだな。せいじょさまとかなんとか聞こえた気がする。」


「エリックさんが、呼んでいます。玄関までお願いします。」


アリアちゃんが、リビングにいた僕たちを呼びに来た。


「はい。何があったのかな?」


僕たち揃って玄関の方に歩いて行った。


今日こんにちは。じゃない、今晩こんばんは。」


「ああ、今晩は。シェリーさんでしたっけ?」


「は、はい。私たちは、Cランク冒険者の大樹の誓というもんなんですけど、実は、今日からこの村の砦建築でやって来たんですが、毎日、ロックバレーから通うのも面倒だから、この村の宿に泊まろうと思って宿を探したら宿がなくて、ゴーレムバスも出た後でして、どうしたら良いかと途方に暮れているところなんです。同じような連中が後30名ほどいるんです。」


「ああ。そう言うことね。でも、どうしてここに?」


この村には、宿屋なんてないし、30人も宿泊できる大きな施設もない。シエンナからゴーレムバスを預かっておいてよかった。


「現場監督の家に行ったら、この家を教えて下さって、ミラに相談してみろ仰ったんです。」


「現場監督?あっ、村長さんね。分かった。じゃあ、ロックバレーまでゴーレムバスを出すからみんなを呼んできて、朝は、ロックバレーからこの村までのバスがあるから大丈夫だよ。でも、寝坊しないようにね。」


「ありがとうございます。さっそく、他の冒険者連中を呼んできます。」


僕は、ゴーレムバスをパーティーハウスの前に出して、魔力を補充しておいた。これで、2~3日は大丈夫。


「アンディー、座席の取っ手の所に魔石をセットできるくらいの大きさの窪みを付けてくれない。」


「え、どうして?」


「その魔石から、コアの方に魔力を充填できるようにしようと思ってさ。直接コアにつなぐと乗っ取られたりする危険性があるでしょう。」


「そうか。全部の座席の左右に取り付けるんだな?」


「そう。そこから座席の中を伝って、床に魔力導線を配線するんだけど、それは、僕がアイテムボックスのかなでできると思う。」


「分かった。すぐ開けてくるから、待ってな。」


アンディーは、本当にすぐに加工を終わってくれた。折角取り出したバスだけど、もう一度収納して、精錬加工。魔石と動線を接合して、コアに魔力を送る大き目の魔石を準備して接合。これで、座席の取っ手ににある魔石に魔力を流すことで、魔力が補充されることになるはずだ。今日の利用者からやってもらおう。


バスの加工が終了したころ冒険者の皆さんがやって来た。ついさっきまで力仕事をしていたのだろう。みんな少し汗臭い。今晩の内に村にも銭湯を作っておこう。町から来た人たちも汗だくで帰ったのだろうからな。それから、バリーおばさんの所に、お風呂のセットと下着なんかを仕入れてもらっとかないといけないかな。


僕は、バスを見送った後、村長の所に行って、銭湯を作る許可をもらい、相談しながら、銭湯を場所を決めた。村の人たちも利用するだろうからということで、村長の家の横、村の広場に面したぱょに作ることになった。


拠点の戦闘と同じようにまず、脱衣場や棚を備えた建物を精錬ビルドし、アンディーに土魔法で洗い場と掛け湯を貯める場所、叩き湯のお湯の出口なんかを作ってもらう。火の魔石は、ロジャーがいくつも持っていた。魔法陣を大き目の魔石に刻み、お湯を出すことができる様にしたら、温度調整のために水を出すことができる魔法陣を刻んだ魔石も作る。これで洗い場と湯舟の貯めるお湯は心配ない。


魔石に魔力を貯めてお湯を出す。これで、村に銭湯ができた。時刻は、7時12分。僕たちも御飯の後で大きなお風呂に入りにこよう。


「村長さん。お風呂で来ましたよー。」


バリーおばさんの所にお風呂セットを置いてくれるように頼みに行った。1セットにタオル・石鹸と石鹸入れが付いている。銭湯の利用料金は、しばらくは無料で良いだろう。


お風呂ができたことは、すぐに村中に伝わってみんなお風呂に入りに来た。お風呂セットは銅貨1枚と少し高いけど、タオルだけなら鉄貨1枚。昨日今日の2日間、銀貨数枚がほとんどの家庭に臨時収入として入っているから、どの家庭もセット購入してお風呂に入ったようだ。僕たちの懐に入るのは、お風呂セットで鉄貨8枚。タオルだと銭貨6枚だ。冒険者の皆さんも購入してくれると思うから、バリーおばさんの所にも臨時収入が入ることになる。









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