第144話 氷の聖女

「お早う。」


「お早う。」


「あのさ。母さん人工宝石って持ってる?」


「人工宝石?ジルコニアとか人工ルビーのこと?」


「そう。そんな組成は、本物と同じだけど科学的に合成されて作られた物かな?」


「残念ながら持っていなわね。それに合成宝石もピンキリあって、高いものは、そこそこの値段するわよ。勿論天然物に比べるととっても安いけどね。」


「なに?彼女でもできて、ねだられてるの?」


「そんなはずないじゃん。レイからの依頼だよ、何か、向こうの宝石って全部魔石なんだけど、今回、魔力を含まない宝石が必要なんだってさ。こっちの世界でどうにかして作ることができて、向こうの世界にも材料があるものはないかなって言うことなんだけど。」


「一番考えられるのは、砂糖からダイヤモンド。そのほかにもいろいな方法で作るくことができるけどね。次は、酸化アルミニウムとクロムを高温高圧で結合させて結晶化させてできるのがルビーね。後は、サファイアなんかも作れるそうだけど後で、ネットで調べてみたら材料は、教材屋さんで揃うものもあるわよ。今日の今日じゃ無理だけど、ネットで調べたら注文してあげるわ。」


 ということで、僕は、人工宝石の作り方をネットで調べて、材料を注文してもらった。かなり高かったみたいだけど、僕が合成出来たら元は取れるんじゃないかって気前よく買ってくれるそうだ。実験は来週の土日でしようということになった。




 ********************************************************************





 前の晩、深夜までゴーレム戦車づくりをしていたからとても眠い。でも、引っかかっていたことに目途がついたから、ぐっすり眠れた。


「お早う。」


「「「「お早うございます。」」」」


 メイドの皆みなさんとエリックさんたちの爽やかな挨拶。元気が出る。


「おはよう。」

「おはよ。」

「お早うごさいます。」

「おはよ。」


 パーティメンバーは、少し眠そうでどんよりしている。


「じゃあ、朝ご飯を食べて、小型のゴーレム戦車で拠点に向かいましょう。ゴーレムバスは、村発フォレストメロウ経由ロックバレーの拠点行きを出発させないといけないわね。」


「そうだね。シエンナ、朝ごはん食べたら、バス出発させてもらって良い?」


「了解です。」


 村長さんたちは、昨日の夕方6時には、バスに乗って村に戻ってきていた。町で、商業ギルドに砦の工事の手伝いを募集してもらう手続きをしてきたそうだ。今日から、ゴーレムバスは、朝、夕を中心に10往復位しないといけないかもしれない。


 ゴーレムバスを出発させて、僕たちも、小型ゴーレム戦車の試運転だ。いざという時の為に、シエンナに使役をしてもらう。こうしておけば、ゴーレム戦車をシエンナが遠隔操縦できることになる。


 後は、全員の魔力登録を行う。これで、パーティメンバーは、誰でも戦車の操縦が可能になった。


「私に運転させてくれない。」

 ミラ姉が、最初の運転を買って出た。


「シエンナと交替するなら私だと思うからさ。できるだけ早く慣れておきたいの。」


「じゃあ、お願いするね。」


 僕は、みんなにハンドルの使い方を説明した、前に押すとスピードアップ。後ろに引くとスピードダウン。真ん中は、スピード維持だ。ハンドルに向かって命令してもいうことを聞いてくれる。右左への方向転換は、ハンドルを回すことでできる。自転車やバイクとこの辺りが少し違うから戸惑うかもしれない。


 別にゴーレムハンドの起動スイッチを取り付けている。左右に一本ずつ車の前方から伸びた腕と手は、天井側面に固定しているが起動し、指示を与えると車の前方に握りこぶしを出したり、人を乗せたりすることができる。刀や槍を持たせたら戦闘も可能かもしれない。武器を持たせて戦わせるには、シエンナの操作が必要になると思う。


「俺とアンディーは、上に乗って良いか?」


「うん。分かった。僕は、シエンナと護衛席に乗るよ。」


 村からフォレストメロウまでは、スピード控えめに運転した。途中でバスは追い抜いたけどね。バスには、村長が乗っていた。依頼初日だから商業ギルドで人集めをするつもりだろう。


 フォレストメロウを過ぎて草原に入ってしばらくすると魔物がポツポツ見え始めた。


「ミラ姉、ブラッディブルが何頭かいるから、狩っていみない?」


「戦車に乗ったまま狩りをするの?」


「そう。上の二人に攻撃してもらって、ゴーレムハンドでつかみ上げて僕が収納するってどうだろう。」


「シエンナ、ゴーレムハンドの操作お願いして良い?」


「じゃあ、タブレットで送信するよ。」


「パーティー送信。ロジャー、アンディー、前方のブラッディブルを狩ってみよう。天井から攻撃してみて。ゴーレムハンドで回収するから。」


 僕のタブレットから、送信するとすぐに返信が返って来た。


『ロジャー:了解。右前方を俺、左前方をアンディーが仕留める。回収頼む』


 ロジャーは、投げ槍で、アンディーは、ソードショットで、それぞれ一発で仕留めた。少しだけ近い左の獲物から回収する。左側のゴーレムハンドがブラッディブルを掴み、右側の席に座っている僕の席から射線が通る位置に持ってきた。僕は、攻撃窓を開いて手をかざし収納した。回収成功。右側の獲物は、右手が回収し、回収することができた。


「これで、拠点の晩御飯が少し豪勢になるかもしれないね。」


「そうね。楽しみだわ。」


 2頭のブラッディブルの狩りで素材は十分だろうということになり、そのまま拠点に走った。フォレストメロウの街から10分ほどで拠点に到着した。


 僕とエリックさんは、道具屋の仕事とリキロゲンボムを卸さないといけないから、拠点で降りたが、他のメンバーは真っ直ぐ狩場へ向かっていった。勿論、ロジャーとアンディーには、ボムを2000個ずつ渡しておいた。


 拠点に着いたのは、8時前だったけど、道具屋の前には、すでに列が出来ていた。昨日の狩りの様子から、ボムを大目に仕入れていた方が良いと思ったらしい。


 懐も温かくなっているから、小型のマジックバッグを購入しているパーティーも増えている。マジックバックも格安でといっても金貨6枚はするんだけど、道具屋で購入できるように僕が卸しているから、たくさんのパーティーが買っているようだ。卸値は、金貨5枚にしているから一つ売れると金貨1枚の利益が出る。暴利だ。


 そのマジックバックを使えば安全に持ち運びできるし、20個くらいなんてことなく持ち運べる。メンバー全員分をそろえたパーティーもあるそうだ。毎日、どれだけのロックリザードを狩っているんだ。


 そんな事情があると聞いて、今日は、大急ぎで、ボムを10000個も作った。すると、また、断熱材のコルクが無くなってしまった。狩りが始まる前にアンディーを呼んで、素材採集に行こう。


 次にギルド出張所に向かった。昨日の成果と何か困っていることは無いか聞きに行くためだ。



 昨日の成果を聞いてびっくりした。





 冒険者

    1108体  内 上級 438体 国宝級 38体

 アンディとロジャー

    942体  内 上級 624体 国宝級 318体

 合わせて 2050体


 ロックリザードが大型化しているのに討伐スピードが落ちていない。冒険者の皆さんの熟練度がすごい勢いで上がっている気がする。




 オークション級と国宝級は全て王宮に送り出している。おかげで、大幅な値崩れはしていないということ。ティモシー様たちが、頑張ってくれたおかげだ。まだまだ、稼ぐことが出来る。


 王宮から追加の報償金が届いたということで、僕たちの討伐報奨金も支払われた。今までの分は、金貨1852枚になっていた。全部、ギルドカードに振り込んでもらった。この後、素材の代金も振り込まれることになる。いったいいくらになるのか怖くなってきた。


『レイ:断熱材の材料のコルクが無くなった。森へ、素材採集に行きたい。手伝って。シエンナに小型戦車借りて、乗って来て』


『アンディー:了解』


 すぐに、アンディーが戦車に乗ってきてくれた。森まで行って、前回の4倍位の木材を収納した。この辺り禿山にならないか心配だ。


 今日のロックリザード討伐が始まった。冒険者の人数が昨日よりも増えている。Cランクパーティーでもロックリザードを狩ることができているという噂が広まって、かなり遠くからも冒険者が集まってきているようだ。その分負傷者も増える。ミラ姉は、怪我人の治療に飛び回っている。


 僕は、ロックリザードの回収と素材分け、石材の回収に忙しい。討伐スピードは明らかに上がっている。でも、今の所気の緩みはないようだ。どの冒険者の皆さんも慎重に討伐することができている。


 素材分けが、ある程度終ると、ケインたちの待機場所に素材を認識番号ごとに並べて、ドローンでギルド出張所に運んでもらう。これもかなりの重労働だが、ケインとエミリーは、黙々と取り組んでいる。偉いぞ!


 本当は、ゴーレムたちに手伝わせれば、楽なんだろうけど、ゴーレムは、護衛の1体以外、ロックリザードの認識番号貼り付けと引換券の配布の為走り回っている。僕は、玲に教えてもらった身体強化ポーションを飲みながら頑張っているよ。ロックリザードの回収。


 忙しいけど、こんな討伐が続けばいいなと思いつつ、5日目のロックリザード討伐は、終了した。大きな事故はなかったけど、50人以上のけが人が出ていた。骨折や捻挫なんかが多い。今日の怪我で一番ひどかったのは、ロックリザードの牙に引っ掛けられて投げられた冒険者で右太ももが半分千切れかかっていたものだ。


 ミラ姉のアンチドートとヒールで、すぐに回復して次の討伐に向かっていた。ミラ姉聖女伝説は、冒険者の間にますます広がって行ったよ。


 照れたミラ姉が

「私は、聖女なんかじゃなーい!」って言って討伐途中のロックリザードにアイスジャベリンをぶっ放したもんだから、伝説はもう一つ付け加わって「氷の聖女」になっていた。少しおっかない聖女伝説になりそうだ。


 晩御飯の時は、たくさんのパーティーに、ご飯を奢ってもらっていたけど流石に食べきれないと言って僕たちに回してきた。ケインやエミリー、エリックさんとエヴィに回しても食べきれないくらいだったから僕が収納して町の教会に持って行ってあげることにした。


 笑い声と、笑顔で一杯の食堂兼酒場は、夜遅くまでにぎわっていたようだ。僕たちは、お腹いっぱいになると、食堂を出て、フォレストメロウ経由でパーティーハウスへ戻った。石材を補充しないといけないのと、明日の朝、ゴーレムコアの採集に行かないといけないからね。



 今日の成果

 冒険者

    1808体  内 上級 538体 国宝級 105体

 アンディとロジャー

    962体  内 上級 630体 国宝級 332体

 合わせて 2770体

  


 石材 120万個 30万個ずつ壁の近くに4か所に分けて置いた。運ぶ距離が短くなるから喜んでくれるかな…。これで、ようやく基礎の部分の石材が揃ったことになる。








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