第143話 ティモシー様への相談

 食事が終わって、パーティーハウスの会議室でティモシー様に相談することにした。時刻は、8時だ。帝国での歓待や会議も一段落ついたはずだと話し合って、連絡を入れた。


 まず、グループを登録する。僕、アンディー、ティモシー様。『相談グループ』

 これで、これからの連絡は、3人に同時に送信されることになる。返信もグループの登録を承認すれば、自動的に3人に送られる。


『レイ:僕とアンディーから相談したいことがあります。グループを作ったので加入を承認して、相談に乗って下さいますか?グループ送信をすれば、僕とアンディー二人に同時に送信されます。』


 ほどなくして、返信が入った。

『ティモシー:グループ承認をした。これで良いのか?』


『レイ:大丈夫です』

『アンディー:大丈夫です』


『ティモシー:して、相談事とはなんだ?』


 僕たちは、先ほどの帝国からの連絡への返信の仕方と、王家のシンボルとしてふさわしいものについて尋ねた。


『ティモシー:すぐに答えられることから答えよう。王家のシンボルだが、ウッドグレン王家のシンボルは、森と剣。王家の守護獣は、ドラゴンだ。王妃様には、ロンサーローズの花だろうな。ピンクの花を王妃様はお好みだと伺っておるぞ』


『レイ:ありがとうございます。ドラゴンとバラですね。』


『アンディー:帝国の褒賞受け取りの件についてはどう答えたらよいでしょうか?』


『ティモシー:その件については、帝国からも要請されておる。お主らは、いつくらいが都合が良いのだ?』


『レイ:今、とりかかっている砦が完成した後ではだめでしょうか?1カ月以上後ですが…。」


『ティモシー:予定がはっきりしないのなら、無理だな。頑張ってタブレットの納入予定日だろうな。そうだな、帝国へのタブレットの納入予定日が良いのではないか?どうせ、一月以内だろう?』


『レイ:ゴーレムコアを集めるのに20日は、必要です。それから、精錬して、タブレットと中継基地を作ったとして、23日…。あまり変わりませんね。』


『ティモシー:お主ら、このタブレットをわずか20日で作り上げると言うのか。』


『アンディー:森の賢者がです』


『ティモシー:そうであったな。そうであれば、完成後、帝国への配達依頼をお主らに行うだけで良いな。それで、帝国からの依頼は終了して、お主らも帝国へ行く用事に合わせて報酬・歓待を受けられるという訳だ。その時には、王宮からだけか同行するように手配いたそう』


『レイ:日程を確認したいのですが、タブレットの完成予定を余裕をもって1カ月にして、その配達を僕たちが行うということで、調整できませんか?』


『ティモシー:タブレットの完成予定日を1カ月後にするのは、全然大丈夫だと思うのだが、お主たちの帝国への訪問日をそれにするのが、厳しいのではないかな。1カ月と言えば35日ということになる。皇帝は、お主たちを早く呼んで、歓待しながら何か探るか依頼するかしたいようだからな』


『アンディー:別日に帝国を訪問する場合、王宮からどなたか同行することは可能でしょか?』


『ティモシー:なかなか難しくなるであろうな。只の冒険者であるお主らに同行する理由が見つからん』


『レイ:23日後であれば、配達と訪問を同時に行えて、王宮からの同行も可能なのですね』


『ティモシー:可能だと思うぞ。それに、国家間の取引なのだから、同行することにも大義名分が立つ』


「みんなか協力してくれたら、20日以内でタブレットを作ることは可能だと思うんだけど、砦を作りながらなんで、少し忙しくなりそうなんだよね。今の僕たちのパーティーの役割分担だと特にシエンナに負担がかかりそうなんだけど、大丈夫かな?」


「私に負担って、どんなことするんですか?」


「ゴーレムコア採集の時に、ゴーレム戦車を運転してもらうことになると思うんだよね。2日に1回、ロックリザードの討伐に行く前になると思うんだけど。コアの採集は、僕とアンディーが組めば一番スムーズだけど、ロジャーと3人で回せるでしょう。」


「ねえ、レイ、ゴーレム戦車の少し小さいの作れないの?今の大きさだと、ダンジョンの中で一度戦車を降りて歩かないといけないでしょう。あれって結構面倒だし、あのせいで情報共有ができるシエンナじゃないと厳しいってことでしょう。」


「そうか。ゴーレム戦車を小さくしたら、誰でも練習さえすればダンジョンの中を運転できるようになるね。ナイスアイディア。みんなで協力してコア集めをできる様になれば、一人に負担がかかりすぎることもなくなるよね。」


「そうよ。みんなで協力すればなんてことないわよ。じゃあ、23日後に、タブレットを完成させて、レイたちが届ける方向で調整してもらいしょう。」


『レイ:では、23日後に完成したタブレットを届ける時に訪問させていただくという方向で調整をお願いします。王宮からの同行もよろしくお願いします』


『ティモシー:心得た。なんとしてもその方向で調整する。王室には、私の方から連絡しておくから安心せよ。なお、明後日には、我々は、帝国を発ち、帰国することになる。帰国は、お主らに用立ててもらったドローンでできる故心配無用じゃ。騎士たちは、ゴーレムバイクとマウンテンバイクで、輸送部隊とともに帰る予定だ。では、帰国後、また会おう』


『レイ:調整よろしくお願いします』『アンディー:お願いします』


 ティモシー様への相談が終わった後、僕たちは、小さいゴーレム戦車をどんなものにするか話し合った。


「戦車の大きさのイメージは、皇帝に送ったゴーレム車だけど、二輪にしないで多足ゴーレムにすればいいんじゃないか?」


 アンディーの提案通りで良いと思う。


「じゃあ、二階部分に腕を付けて、人を乗せられるようにしてくれないか?そうすれば、ガーディアンコアの採集を俺が楽にできるようになる。」


「その腕部分に、コントロールコアを配置しておけば、腕の上から腕を動かすことができるようになる名も知れないわね。」


「じゃあ、戦車部分と腕の部分は、違うコアで作った方が良いかもしれないですね。運転席からは、折りたたんだり伸ばしたりするくらいの大まかな支持しかできないくらいがいいかもしれません。」


「そうだね。運転者の命令と使用者の命令が食い違ったときに誤動作する危険性があるね。それじゃあ、まず、駆動部と運転の為のコントロールコアを作って、ボディーの方に腕の操作とコントロールコアを付けてみよう。ガーディアンのコアがあるから、今日作ることができるね。」


 僕たちは、パーティーハウスの庭に出て、小型のゴーレム戦車を作ることにした。


「運転席は、中央が良くないか?その左右に攻撃と運転手の警護として2名乗車できるようにしたらいいんじゃないか。」


「でも、今回の戦車は、幅が2mなんだよ。座席を配置できるスペースは1m70cmもない位なんだよ、座席間の移動スペースを考えると3列って厳しくないか?」


「運転席は、少し前に出して、高くする。護衛と攻撃の助手席は、運転者の移動スペースを取って、少し後ろに配置したらいいんじゃないか?」


「パーティメンバーは、5人だし、最後尾に3座席、中の左右に一座席ずつにしたら、ゲストが来ても3人までは乗せることができるぞ。」


「二階にも座席を付けるか?オープンスペースにしていて、腕だけなんて少し危ない気もするしな。今までのゴーレム戦車よりも天井のスペースは、狭いから手すりも必要だろう。どうせ、枠付けるんなら、椅子も付けたら、上で攻撃する時も楽になると思うんだけどな。」


「じゃあ、二階は、頭の上にも枠を付けとくね。ゴーレム戦車が移動する時の高さが、3mにならないようにしないと上がぶつかっちゃいそうだから、天井で立ち上がったら、頭は、枠より高くなることになるけど、しょうがないよね。」


「もうすぐ座席の配置が終わるから、一度収納して、椅子の成型とボディー部分との接合をしてくれ。」


 アンディーにクリエートの魔術で座席の骨組みを作ってもらって、僕がアイテムボックスの中で座席部分に皮や綿を接合させていく。次に腕付きのボディーを駆動部と接合して、アイテムボックスの外に出した。


 窓の開け閉めができるように部品を組み込んだり、調整をしたりするのはアンディ―の仕事だ。攻撃窓は素早く開け閉めができて頑丈なようにスライド式にするようだ。内側に取っ手が付いていて、押し付けるとピタッと閉まる作りにしてくれたようだ。なんか、細かい細工が進化している。


 二階部分は腕の部分には、手すりを開けている。後からアンディーに開閉できるような手すりを追加してもらうつもりだ。いつの部分は、駆動部分のアンディ―の椅子パーツをコピーして付けておいた。アンディーに付け直されるかもしれない。天井の椅子は、手すりに沿って左右に3つずつ付けている。一階8人二階6人の14人が乗り込むことができる多足ゴーレム戦車だ。


 細かい、パーツまですべて完成したのは、12時近かった。試運転もできないままだったけど、さすがにみんな眠くて、試運転は、次の日、拠点まで走ることで済ませることにした。




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「お早う。」


「お早う。土曜日たって言うのに早いわね。」


「母さんも、早いね。」


「レイ君から連絡あった?」


「何もなしだよ。ゴーレムタブレットがどうなったかやドローンづくりを何時しようかなんかの質問は書き込んだんだけどね。」


「あんたも、向こうの友だちに会いたいだろうけど、私たちもレイ君とまた実験してみたいわ。あの子の非常識が新鮮なんだよね。」


「今日は、本田さんたちと買いもに行く約束したから、昼ご飯は、外で食べてくる。で、お小遣い、少し頂戴。」


「ええ。いくら?」


「ええっと、本とカラオケと昼食代、締めて4000円は欲しいかな…。」


「はい。おじいちゃんからの快気祝い。お小遣いもくれてたから。後でちゃんとお礼の電話しておくのよ。」


「オジーちゃん。ありがとう。行ってきます。」


僕は、朝ごはんもそこそこにお小遣いの5000円を握りしめて待ち合わせの駅に向かった。


友だちと買い物なんて初めてで、楽しみだ。


普通に、夕方には家に戻ったよ。楽しかった。



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