第139話 魔道具の納入
朝だ。ロジャーは、朝食をとると直ぐアンディーと一緒に森のダンジョンへ向かった。僕は、朝のうちにリキロゲンボムを2000個程作り、エヴィに卸した。
道具屋の収益は昨日一昨日で、銀貨400枚を超えている。そのうちの銀貨120枚は、エヴィの練習大剣の売り上げだ。金貨にすると12枚。一般的な成人の10年分くらいの収入になる。ミスリルも使っているから、材料代が金貨6枚分くらいは必要かもしれないけど、それでも5年分の金額だ。
食堂も賑わっている。朝早くから朝食準備で忙しく、昼間も仕込みが大変そうだけどみんな笑顔だ。
大きな事故が一つもないことがみんな笑顔で居られる一番大きな要因だ。これからも安全第一を続けていかないといけない。
一番疲れがたまっているのがギルドの職員の皆さんだ。でも、いずれ報われるはずだ。その為にも、ロックリザードの皮が暴落しないように調整しないといけない。商業ギルドと王宮に頑張ってもらわないといけないことだ。
朝食を終えて、石切り場でせっせとロックブロックを作っているとタブレットがブルブル震えて着信を知らせて来た。僕は、ロックブロックの製作を一旦中止して、拠点の宿舎に戻り、エリックさんを呼んだ。
『ウッドグレン(国王):帝国へのゴーレムバイクの輸出の可否と期限、ゴーレムタブレット2台の可否と帝国向けゴーレムタブレット200台の可否と期限。最後に、有人ドローンの販売の可否と販売予定日を知らせてくれぬか。どれも、我が国の将来の為と我の家族の為、お願いしたい依頼なのだ』
『レイ:(アンデフィーデッド・ビレジャー)全て可能でございます。ただし、引き渡しについてお願いがあります。これらの製作者を森の賢者という架空の人物とすること。私たちアンデフィーデッド・ボイジャーは、その森の賢者の依頼で製品を運んだり、安全性の実験をしたりしていることとして広く伝えていただくこと。期限については、正確には分かりかねますが、この返事を頂いた後に大まかな日程をお知らせいたします。』
「ここまでは、昨日打ち合わせをした通りでございますね。」
エリックさんが、僕の連絡文を見て話しかけてきた。
「うん。でも、こんな返事をして、不敬罪になることってないよね。王室からの命令に条件を付けているようなもんでしょう。」
「ウッドグレン王なら大丈夫でしょう。あの方は、物の道理が理解できる方でございますから。」
『ウッドグレン(国王):あい分かった。お主らの立場をどうしたら良いのか苦慮していた所だ。お主らの提案に全面的に乗せてもらう。賢者の依頼の実験で有人ドローンを飛ばしておるのじゃな。それであれば、何か失敗しても賢者の責任になるわけじゃ。良いことを聞いた。お主らとは、これからも近しい関係でいたいのでな』
「エリックさん、この連絡文にどう返事したら良いのでしょうか?王様の大暴走の匂いがプンプンなのですが…。」
「今後、何かあっても第2、第3の森の賢者を作ればなんとかなると言う安易な考えが透けて見えますな…。しかし、仕方ありますまい。今回の進言、お受けいただき、ありがたく存じます。とでも返しておきましょう。」
僕は、エリックさんの言う通り返信を返した。その後、ゴーレムバイクは明日でも大丈夫だけど、帝国へ届けるのは、王宮でお願いしたいこと。
タブレットは2台はすぐに届けられるけど、200台については、帝国とどのような規模の通信がしたいのかを詰めないと中継基地の数を決定できず、いつまでに収めることができるかを決定できないことを知らせた。
有人ドローンについては、国王陛下も欲しいなどと、直後に連絡が入ったので一旦保留した。国王に献上するなら二人乗りじゃ無理だと思うんだよね。そう連絡すると間髪入れず、国王妃から、商業ギルドへの1台を優先するようにと連絡が入った。国家事業に影響するらしい。なんか、リリアン様と王妃は繋がっている気がする。
そんなこんなの調整をしていると、12時過ぎてしまい、ロジャーとアンディーが帰って来た。アンディーたちが持ち帰ったゴーレムコアと金属ブロックでゴーレムバイクを100台作ることができた。タイヤのシリコンゴムは、午前中に作っていたロックブロック数十個分で事足りた。
ゴーレムタブレットは、手元にあるし、帝国用のタブレットは、その通信規模を詰めてもらわないと作ることができないので、その旨を王室に伝えた。
バイクを準備をしたついでに、有人ドローンもコピー製作した。2台のタブレットは手元にある。いま届けられるものは、全て揃った。そのことを、王室に連絡したが、帝国には行きたくない。しかし、有人ドローンを魔力登録しないまま飛行させるのは危険だ。まず、無理と言っていい。では、どうやって届けるかなんて考えていたら、王室とリリアン様から連絡が入った。
リリアン様が帝国領の端、前アンディーと着陸した場所に来るそうだ。そこに迎えに来て欲しいということ。王室からは、空中行動ができる騎士を二人起用したから、リリアンさんの分の他にもう一台有人ドローンを作って欲しいという依頼だった。
ガーディアンのゴーレムコアは必要分揃っている。発泡アルミの余裕もある。つまり、もう一台、有人ドローンを作ることができるということだ。それで、了承の返事を王室に送った。
しかし、これで、8人乗りドローンを作るためには、後1回以上ガーディアンのコアを採集に行かないといけないということになった。まあ、次に玲が異世界から来るまでには、採集できているだろうけどね。
さて、リリアンさんを迎えに行って、王都にいる空中行動ができる騎士様と合流しないといけない。リリアン様だけならミラ姉に迎えに行ってもらえばいい。その間の救急対応は、僕が、ポーションを使ってやる。
迎えに行った後、二人で王都に行ってもらって空中行動の騎士様と合流。ミラ姉に、騎士様の飛行訓練をしてもらって、終了後、帰還という流れが一番安全且つ無駄がないかな。あっ、もう一度ドローンに乗った騎士様やリリアン様を帝国領まで案内しないといけないのかな…。多分、そうだろうな。じゃあ、ミラ姉は、帝国領から帰還してもらわないといけないな。
ドローンやそのほかの魔道具の引き渡しの手順を説明していてふと引っかかった。誰が王都までゴーレムバイク100台と2台の有人ドローンを持って行くんだ?
結局、ロジャーがぶつぶつ言いながら王都に荷物を運ぶ事になった。それに、僕もついて行くことにした。上級ポーションと中級ポーションをアンディーとシエンナに預けてだ。そこまで対応しておけば、王都に着いて行っても安心でしょ。騎士様の飛行訓練は、引き渡し時にロジャーが担当した。ミラ姉は、リリアン様を帝国領まで、迎えに行き、一旦王国へ戻った。
リリアン様は、その足で、王宮に向かい、ドローンの代金の負担割合や今後の行動予定を王宮と詰めた。
僕の役回りは、その内容を森の賢者に知らせて、返事を伝える事。森の賢者あての連絡は全てマザーに処理してもらった。
その後、リリアン様は、ミラ姉の案内で、騎士様たちが操縦するドローンで帝国領に戻っていった。今までなら、一カ月以上かかっていた打ち合わせや移動行程をわずか一日で終わらせたことになる。
ちなみに、ドローンは、一台、金貨2万枚で購入してもらうことになった。購入時の話し合いの時、森の賢者の設定は、事実として、リリアン様に伝わったはずだ。
ゴーレムバイクは、王宮騎士8人のチームでマジックバッグに入れられ、帝国に向けて輸出されることになった。帝国への輸出価格は、一台、金貨180枚らしい。ギルドは通さず、卸価格はギルドと同じという契約になっていた。
つまり、国営商会は、一台につき金貨100枚の利益があるということだ。今回の輸出だけで金貨1万枚の黒字になる。これから、輸出の為に帝国に向かった騎士の皆さんの報酬などは引かれるのだけどかなり大きな収益になることは間違いない。
僕たちのパーティーにも相当な利益が入ることになる。バイクと有人ドローンだけで金貨48000枚。しかし、国営商会は、第一回のロックリザードの皮の売り上げだけで金貨50万枚を稼いだとも聞いた。まだ、10分の1しか販売していないのにだ。そりゃあ、有人ドローンの購入も認めるよね。
ゴーレムバイクの輸送部隊にはタブレットを一台貸し出している。中継基地を10個も渡した。基地を設置しながら移動することになるけど、何あった時に緊急対応できるようにだ。暗くなる前に魔の森を越え、国境の村に到着しているはずだ。僕たちに連絡が来ることは無いだろうけど無事を祈っていよう。
今日って話し合いの場にはいたけどのんびりしちゃたなあ。帝国で胃が痛い思いをしたから今日くらい大丈夫だよね。
僕もロジャーものんびり気分で、一緒に拠点に戻って行ったんだけど、今日もギルド出張所は、大変だったようだ。倉庫には、溢れる位ロックリザードが並べられ、積み重なっていた。帰った後、ちゃんと手伝いましたよ。ちゃんとね。
報償金が無くなったことは、ゾーイさんからギルマスに連絡を送ったそうで、ギルマスから王宮に知らせを送ったそうだ。今、王宮でタブレットを持っているのは、王室の方だけなんだけど、上手く連絡が付いただろうか。少し心配だ。
もう一つ、ゾーイさんに泣きつかれたこと。僕たちの報償金を後回しにしてくれということだった。僕たちに報奨金を払ったら、すでに確定している討伐報償金が払えなくなるというのだ。流石にペースが早すぎたようだ。今は、王室からの別依頼も受けていてお金には困っていないから承知した。でも、すぐに払うから心配しないでくれとも言われている。
本日の討伐数
冒険者ギルド 1110 体 (未確定)
僕たち 304 体 (アンディーひとり午後から)
累計(確定・未確定含む) 約 3600体
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