第138話 森の賢者と魔道具実験

今日は、すぐに全員揃ってくれた。エリックさんも一緒だ。心強い。


「さっき、3人の方から相談の連絡があった。3人別々なんだ。それでみんなを呼んだんだよ。」


「それで、相談内容は分かったの?」


「別々の相談を受けて良い物かどうか判断しかねてさ。何か聞く前にみんなを呼んだんだ。」


「それは、良い判断でございましたね。しかし、本当に個人的な相談でしたらどうなさいますか?」


エリックさんの質問は僕をからかっている質問のようだ。顔がニヤニヤ笑っている。


「まあ、あの三人から個人的な相談なんかは在り得ないので、ご心配いらないと思います。」


「そうですか。では、相談内容をお聞きになってはいかがでしょうか。メンバー全員そろっいると言うこともやんわりお伝えすると良いと思います。」


「他の、方から相談の連絡が届いたことはやんわり伝えるの?」


「それは、どうでしょう。相談内容次第ですね。」


『レイ:ご相談とは、何でしょうか』

「ティモシー様に送信、同連絡をクーパー様に送信、同連絡をリリアン様に送信。」


これで、別々に送信されたはずだ。


まず最初に相談が帰って来たのがクーパー様だった。タブレットの前で僕からの返事を待ち構えていたのかもしれない。


『クーパー:ゴーレムバイクの注文を受けた。輸出単価やギルドへの手数料など細かいことを決めた後になるが、帝国は100台以上欲しいと言っている。作成は可能か。作成期日は何日程必要か知らせて欲しい。また、この返事は、王室経由でお願いしたい。私のタブレットの連絡文章は、すぐに削除する。』


クーパー様からは、ゴーレムバイクの作成についてたった。ゴーレムバイクは、動力と、ハンドルの二つのコアで作ることができる。そしてそのコアは、普通のゴーレムのコアで良い。


「ねえ、ロジャー、手持ちのゴーレムコアっていくつある?」


「今ストレージに入ってる分か?ええっとガーディアンサイズは、全部レイに渡しているから…、全部で120個だ。」


「僕のはガーディアンサイズしかないからな…。いつか、ゴーレムコア採集に行かないといけないね。」


「おれが、明日行ってこようか?アンディーと一緒ならサクサク採集できるぞ。ついでに、ガーディアンのコアも採集してきてやるよ。明日の朝復活するだろう。」


「じゃあ、お願いしようかな…。だけど、金属やシリコンタイヤの材料も採集しないとそうたくさんないんだよね。まあ、ガーディアンのコア採集で金属は足りると思うけど。シリコンタイヤの材料は…、そうか石切り場に一杯あるんだった。」


「俺たちは、明日コアを最低いくつ採集すればいいんだ?」


「これからのことを考えたら、最低でも100個かな。」


「それくらいなら、午前中いっぱいもかからないで採取できるな。」


そんな話をしていたらティモシー様から連絡が入った。


『ティモシー:後ほど王室の方からも相談があると思うが、ゴーレムタブレットのことだ。知っての通り、帝国と我が国の王室は姻戚関係にある。第一王女のルーナ様が皇帝の第三后として嫁いでおられるのだ。その為、国王夫妻とルーナ様は今までであれば、二度と会うことのない親子となってしまわれたのだ。しかし、此度、お主らの力を借りれば、再会することもかなうかもしれぬ。そのような期待を感じることもできるようになった。そこで、ゴーレムタブレットについての相談になるのだ。この相談は、皇帝陛下と私だけの間で進められておる。勿論王室も含めてではあるが、他には話を通しておらぬ。細かい相談は、王国に戻った後になるが、皇帝とルーナ様に一台ずつ我が国のゴーレムタブレットと連絡ができる物を渡してほしい。それと、帝国内の連絡用に200台のゴーレムタブレットを準備してもらいたいのだ。この200台については、ずっと後ほどで良い。そう皇帝は仰っておる。この連絡への返事はいらぬ。すぐに削除して欲しい。返事は、後ほど王室からの依頼分に頼む』


「これも削除しないといけない連絡なのですね。」


「それにしても、今回も色々やらかしてきたみたいね。レイ、アンディー?」


「俺は、全くやらかしていないぞ。レイも少ししかやらかしていない。やらかしたのは、クーパー様で、後は、皇帝が鋭すぎただけだ。」


「そうだよ。本当に。でも、帝国様にタブレット200台準備するなら、コアがいくついるかな…。」


「通信範囲をどのくらいにしたいのかによって中継基地の数が変わってくるからね。カバー範囲によっては、手持ちのタブレットを作った時以上のコアが必要になるかもしれないね。」


「帝都内だけの通信で良いってことは無いでしょうね。」


「少し心配なのは、今の所レイさんしか作ることができないって分かった時の向こうの対応です。」


「今後も作れる人間が出てくるかどうか分からないからね。」


「とにかく、連絡を削除するね。クーパー様の分と二つとも。」


「さて、今の二人は、王室経由の依頼待ちね。シエンナが言うようにとにかくレイが製作者だということは絶対漏れないようにしてもらわないといけないわね。ゴーレムタブレットにしてもゴーレムバイクにしても、戦争に使用すれば大きすぎる戦力になるわ。逆に言えば、自分たちになければ相手にも作らせたくない物なのよ。だから、作らせないようにする。つまり、レイが狙われるということ。それが心配。そうでしょう。シエンナ。」


「はい。その通りです。」


「国外へレイを出したのって失敗だったかもな。」


「でも、制作者がのこのこ出てくるなんて誰も思わないからかえって敵を欺くことになるかもよ。しばらくの間はだけど。」


「皇帝には、『ゴーレム車にやけに詳しいのだな』なんて言われてたけどな。何も言ってないのにだぞ。なっレイ。」


「うん。そう。あの皇帝ってなんかすごく鋭かった。」


「まだ、皇帝が敵になるって決まったわけじゃないわ。しばらくは、王室の陰に隠れておきましょう。良いわね。」


「うん。」


そんな確認をしていると、タブレットが振動した。


『リリアン:有人ドローンの製作者を紹介してくれないかしら。クーパー様もティモシー様も知らないし、教えられないなんて言うから。あなた達、自分たちで持っているんだから、製作者も知ってるでしょう。指名依頼として依頼料も払うからお願い。連絡が遅くなってごめんなさいね。お風呂に入っていたものだから。我が国の商会を国際的な組織にするためには絶対必要なの。だからお願いね。』


「なんか。へんな連絡ですね。これってあんまり情報を与えない方が賢明かもしれないですよ。」


シエンナが警戒しているようだ。


「シエンナ、まさかだけど、リリアンさんのタブレットから向こうの様子が分かったりするの?」


「使役していないゴーレムから情報が送られるわけないじゃないですか。変なこと言わないでください。」


「そりゃあそうか。で、どう返事しようか?」


「私たちは、国王の依頼で動いているのよね。では、そう書いて国王から依頼してもらえば、作ってもらえるのではないかと進言しておけばいいんじゃない?私たちも製作者は知らないということにしておきましょう。」


「じゃあ、どうやって王室も持っていないドローンを手に入れたことにするんだぁ?」

アンディーが突っ込む。


「偶然…かな。」


「誰も納得しないよ!」


「では、こうしたらどうでしょう。ゴーレムタブレットで連絡を取ることができる。それができるのは、王室と私たちそして、フォレストメロウと王都の冒険者ギルドだけ。私たちは依然受けた依頼をきっかけに…、製作者名前は後で考えましょう。仮にXとしておきます。Xと知り合った。色々な発明品の実験を今も依頼されている。ドローンやタブレットもその一つで、有人ドローンは今も安全確認の実験中だという設定はいかかでしょうか?」


「それいいわ。知り合ったのは偶然よね。やっぱり、偶然じゃない。」


「ついでに、Xとは、魔術契約を結んでいてその名前や居場所を言うことはできないってことにしておいた方が良いね。」


「で、Xの名前だけど何にしたらいいでしょう。」


「森の賢者。」


「名前は?」


「名前は言うことができないんでしょう。だったら森の賢者だけで良いじゃない。」


「よし。そうしましょう。これからいろいろな魔道具を作るのは、森の賢者よ。私たちは、その森の賢者の依頼で色々な魔道具の実験をしてるの。これで決定ね。」


「では、その設定を踏まえて、リリアン様に御返事をお願いします。簡単に言えば、先ほど言った通り、私たちでは、お教えできないので、王室へご相談くださいです。」


「それから、先ほどの設定は、王室にもお知らせしておかないといけませんよ。向こうから連絡が入った時で結構ですからね。」


「はい。設定を知らせるのは王室だけで良いでしょうか?」


「他の所には設定ではなく、事実としてお知らせしたらよいのではないでしょうか?私たちは、森の賢者が作った道具を運んでいるだけだと。」


「「「「はい。了解しました。」」」」


リリアンさんに、言われた通りの返事を送り、今日の相談への回答は終了した。なんか疲れた。明日から砦づくりを本格的に始めよう。


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