第135話 帝国領

朝だ。眠い。昨晩は、夜遅くまでかかって2階建てゴーレム車を作ったから寝たりない。でも、いつも起きる時間に目が覚めた。


そういえば…、リキロゲンボムを作っていない。今日から本格的に使用することになるはずなのに。午前中に帝国から帰ってくる予定だけど、朝からの分を作って渡しておかないといけない。


眠ってなんていられない。急いで、リキロゲンボムを製造しないと。


「アルケミー・リキロゲンボム・2000」


4個銀貨1枚で販売して、500セット分。金貨50枚分のリキロゲンボムだ。これと手袋を200セット程作ってロジャーに持って行ってもらわないといけない。


ロジャーに運んでもらうなら、保温用の箱に入れておかないと心配かな…。ストレージの熟練度が上がって、温度管理ができるようになってきたって言ってた気もするけど…。まあ、念のため入れておこう。


色々作っていたら、起きる時間になってしまった。そして、コルク材がもう少ししか残っていない。帝国から帰ってきたら、アンディーに付き合ってもらってロックバレーの側の森に素材採集に行かないといけない。アンディーならあっと言う間に木を切り倒してしまえるからコルク材は直ぐに手に入るだろう。


部屋を出て食堂に行くともうみんな席についていた。


「「「おはようございます」」」

シャルたちに先に挨拶されてしまった。


「お早う。」


「「「「お早う。」」」」


すぐに朝食を食べて今日の打ち合わせだ。僕とアンディーは、帝国の外交部隊と連絡がつき次第出発する。ロジャーにリキロゲンボムと手袋を預けて、一足先に、パーティーハウスを出発してもらった。


バスで移動しても20分もかからない。拠点では、今頃朝食が始まった頃だ。タブレットでエヴィに連絡して、道具屋の開店時間を朝の8時30分にしてもらった。8時には、エリックさんも拠点についていて道具屋の開店準備を手伝えるだろう。


僕たちは、クーパー様に連絡を取っているところだ。何時にどこで落ち合うのかと、作業場所の確保の依頼だ。あまり人眼があるところで作業をすることができない。僕たちが製作者だと分かると後々面倒なことになるからだ。


僕たちの役回りは、配送と装飾の仕上げ職人だ。アンディーが装飾の仕上げ職人。僕がストレージ持ちの配送職員だ。その設定は、昨日、確認してある。しかし、どこかで落ち合って作業をしない訳にはいかない。


『クーパー:本日10時、送ってもらった町で、私(クーパー)が待っている。作業用の工房は確保済み。町の入り口にゴーレムバイクで来られたし』


『レイ:了解いたしました。』


「もうすぐ8時になるけど、これから出発したら早すぎるよね。」


「そうだな。ショートカットの山間の空路を発見したからな。最短で30分以内だ。」


「後1時間は余裕があるね。そうだ。ロックバレーの近くの森に行ってコルク素材の採集ができないかな。ゴーレムバイクで行っても10分もかからないでしょう。」


「ゴーレムバイクで最速で走れば、そうだろうけど、少し慌ただしくないか?」


「1時間も何もしないのはもったいないよ。サクっと素材採集しよう。」


「まあ、いいか。じゃあ、出発するぞ。俺が運転していいか?」


「ゴーレムバイクだよね。それならいいよ。」


「ええっ、ゴーレムバイクか。それならレイが運転しな。俺、後ろでいいや。」


「いいよ。じゃあ、後ろに乗って。安全最速でロックバレーの近くの森までお願い。」


いつものリクエストでゴーレムバイクで森に向かった。


10分後には、森に着いていた。サーチでコルク材がある場所を探してアンディーに教える。アンディーはウェポンバレットで根こそぎ木々を倒していく。一発で2~30本の気を倒してそれを僕が収納する。木々と一緒にウェポンも収納するから収納したウェポンは、アンディーに返す。これを5回ほど繰り返して、あっと言う間にコルク材は十分に確保することができた。


時刻は、8時50分になろうとしていた。


「一旦パーティーハウスまで戻ってそこからドローンに乗ろうか?」


「そうだな。その方が人目も気にしないで良いからな。」


僕たちは、ゴーレムバイクでパーティーハウスに戻って、帝国へ行くためのドローンに乗り換えた。シャルたちに見送られてパーティーハウスの前の広場を離陸し帝国へ向かった。


「高度を2000mまで上げるぞ。少し寒くなるけど我慢してくれ。」


2分程加速していたが、吐き気を催すほどではなかった。離陸前に身体強化ポーションを飲んでいたのが功を奏したようだ。10分ほどで山間のコースに入った。少し蛇行したが、2000mの高度を保っているので障害物はなかった。


10分もせずに山間を抜け、帝国領内に入った。


「あの山間の道って歩きでも行けるかな?」


「森を通ってあの山間まで何匹くらいの魔物と戦うことになると思う?そのコースは、魔物の大発生コースだぞ。まあ、無理だと思うな。」


「じゃあ、普通は、帝国領に入るのにどのコースを通るのかな?」


「俺も良く知らないけど、グリーンレイクのすぐそばの峠を越えて、魔の森を突っ切った後に海沿いに馬車で3~4週間ってコースだそうだ。そのコースを宰相閣下は行くことになっていたんだと聞いた。」


「誰に聞いたの?」


「宰相閣下にだ。一番安全だけど、命の保証はないコースなんだとさ。」


だから、土下座依頼か。ミラ姉がドローンで来た時、天使が舞い降りたみたいに見えたのかもしれないな。


そんな話をしていたら、着陸予定地についてしまった。ドローンを降りて収納し、ゴーレムバイクを出した。アンディーが、運転して町の入り口に向かう。時間は、まだ、9時30分。町までは、15分位の距離だそうだ。


山に沿ってできた道を走っていると茂みから一匹の魔物が出てきた。グリーンスネイクだ。全長9m程はある。僕がエアカッターを撃とうと構えた時に、グリーンスネイクは、頭に大剣をはやして倒れていた。


ソードショット。いつの間に撃った?


「せっかくだから収納しようか。」


「時間もあるしな。」


アンディーがスピードを緩めて獲物の側に近づいた。グリーンスネイクの方に手をかざして収納。一瞬も止まることなく収納して、再び、町へ走り始めた。


途中、何匹か魔物は見つけたけど、ゴーレムバイクに追いついてこれる魔物はいなかった。


町の入り口に着いたのは、9時48分。もう少しで10時という時間だったが、クーパー様は、すでに待っていてくれた。不敬罪にならないように少し早めにつくつもりだったのに。


「よく来てくれた。工房へ案内する故、ついて参れ。」


バイクを降りて収納した僕たちは、クーパー様の後をついて工房へ向かった。工房は、広い倉庫のような場所で日ごろは実際、作物の集積場になっているのではないかというような場所だった。


「クーパー様、良くこのような場所が見つかりましたね。」


「ここは、この町の領主が税として作物を収めさせるときに利用する場所でな。普段は使用することがないからと借りておるのじゃ。今回は、ロックリザードの皮を広げるために広い場所が必要だったからな。して、今回の献上品はどのような品なのだ?」


「まず、ゴーレムバイク2台は、これでございます。」


ゴーレムバイクは、王宮へ卸したものと同型のものを用意した。色は、変えることができるが、今は白である。


「色はどういたしましょうか?」


「帝国の騎兵隊の基本色は、紅蓮のオレンジだ。オレンジ色に塗り替えることはできるか?」


「分かりました。でも、騎兵隊って何をオレンジ色にしているのですか?」


「旗と騎馬の鞍の色をオレンジに染めておる。」


僕は、ゴーレムバイクの車体の色をオレンジに変更した。


「何か模様は入れますか?」


「それは、献上する者の仕事ではないな。献上後向こうで何かしらの模様を入れるであろうよ。」


「では、ゴーレムバイクはこれで良いということでございますか?」


「うむ。大丈夫だ。では、皇帝への献上品を見せてくれ。」


「はい。」


僕は、昨日作った2階建てゴーレム車を取り出した。


「うっ。色は、シルバーか。」


「はい。まだ、何も塗装しておりません。ミスリルの色になっています。」


「塗装は今から施すということだな。」


「はい。何色にしたら宜しいでしょうか?」


「王室の色は、深い紫。黒と見まごう深さの紫じゃ。しかし、その色を王家以外の者が使うことは不敬とされる。それは、献上品にしてもしかりじゃ。故に、染められる前の色。白で塗装して献上するのがよかろうな。」


「分かりました。白で塗装でございますね。細かい場所。例えば階段は何色がよろしいでしょうか?」


「うむ。難しいのう。色のバランスから言うと、銀が良いかのう。ドアに引き手も銀色で頼む。」


「内装の色はどういたしましょう。」


「今は、魔物の毛皮の色を生かしておるのじゃな。明るめの色だな。このままで良いのではないか。」


「では、ゴーレム足の部分はどういたしましょう。今は、塗装をしておりません。ゴーレムコアの色のままでございます。」


銀色がかった半透明の色。不思議な光沢の素材だ。そのままの色合いをした状態が今だ。硬度を上げ、防御陸を上げようとするならミスリルなどと融合する。そうなると硬度は上がるがスピードは落ちる。今は、なんとも融合させていない、スピード重視の状態だ。


「うむ。このままで良いだろう。では、操縦方法をブランドンに伝授してくれ。」


「魔力登録等一切しないままでございましょうか?」


「お久しぶりです。ブランドン様。」


「お久しぶりです。レイ様、アンドリュー様。」


「ブッ、ハハハハッ。久しいですかな…?つい2日前あったばかりではないですか。」


「まあ、そうですが。魔力登録なしでゴーレム車を操縦したことがないので、試し試し動かしてみるしかないのですが、やってみますか?使役すれば、お願いするだけでほぼ目的の操縦ができるようになるのですが…。」


「ハンドルを通して、進行方向やスピードなどを支持しないといけません。今から、その設定をしますね。まずは、方向から。ハンドルを右に回せば右に方向を変え、左に回せば左に方向を変える。ゴーレムコアにイメージを流し込んでいく。前へ押せばスピードを増し、手前に引けばスピードを落とす。何かにぶつかりそうな時は、まず止まる。止まり切れないときは、なるべく安全法へ方向を変える。」


コアへの行動設定を行う。ハンドルを通して、指示をすべて出さないといけない。後は、コアが判断する。


「では、ブランドンさん、ハンドルを握って運転してみて下さい。魔力をうっかり流さないように気を付けて下さいね。」


「では、魔力登録は、誰にしてもらうのが良いのじゃ?」


「皇帝陛下が運転を慕いそうなので、皇帝陛下と、専属の運転手に魔力登録をしていただけば良いのではないでしょうか。」


「では、いよいよ献上に参るぞ。お主たちも念のため着いて参れ。皇帝の前に出る必要はないが、何かあった時に我々だけでは、全く対処できぬからな。」


「では、帝都まで、収納して参りましょう。帝都の近くで取り出して、ブランドンさんに運転してもらって献上の場へ移動してもらうということで宜しいでしょうか。」


「では、その手はずで参ろう。」


僕たちは、帝都に向けゴーレムバイクの二人乗りで走って行った。






【後書き】

国外にも話が広がってきました。しかし、これでは、いつまでたっても砦が完成しません。




児童文学ってどんなものかいまいちわかりませんが、朝読コンクールの短編、長編の入り口って言う感じで書いてみました。宜しかったら、お読みいただいて感想など頂ければ、嬉しいです。


https://kakuyomu.jp/works/16817330655893068467

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