第134話 帝国への献上品
『クーパー:持ってきたロックリザードの皮はすべて取引先がはまった。ゴーレムバイクを皇帝が所望しておられる。3台で良い。王室経由で送ってもらえぬか。直接でも王室経由だから安心してくれ』
昨日、採集してきたコアと金属があるからゴーレムバイクは作ることができる。三台くらいだったらロジャーに言えば届けられると思うけど…。大丈夫かな。みんなに相談してみよう。王室にも要相談だな。
楽しい食事の時間だけど、こっそりと抜け出して話し合わないといけない。一人、外に出て、僕たちの宿舎に戻った。
『レイ:外交部隊から依頼が入った。相談したいから一度コテージに集合お願い』
5分もしないでロジャー以外全員揃った。ロジャーは、タブレットでの連絡に気が付いていないのだろう。
「レイ様、ロジャー様にお声掛けをしてまいりましょうか?」
「お願いして良いかな。」
「畏まりました。」
エリックさんは、タブレットでは連絡していないのだけど、メンバーの様子を見てコテージに戻ってきてくれたようだ。
すぐに、ロジャーがやって来た。
「ごめん、ごめん。タブレットの振動に気が付かなかったよ。ところで、何だ急に集合だなんて。」
「クーパー卿から連絡が入ってさ。ゴーレムバイクを3台、皇帝に渡したいそうなんだけど、どうしたら良いかなと思ってさ。」
「国王陛下には連絡したの?お金は王室持ち何でしょう。」
「国持ちになるか王室持ちになるかは分からないけど、どのくらいの装飾が必要かなんかも分からないんだよね。」
「その辺は、クーパー卿に直接聞いた方が良いかもしれないな。外交責任者の一人なんだろう。特に財務面の。」
「クーパー卿から連絡が入ってると思うけど、国王陛下にも、確認して、どんなゴーレムバイクにするのかは、クーパー卿に聞くという流れかな。」
「じゃあ、国王陛下に連絡してみるね。直接連絡して大丈夫かな…、不敬罪とかにならないよね。」
「レイ様、直接の連絡はお控えいただいた方がよろしいかと。」
エリックさんがアドバイスをしてくれた。
「じゃあ、どのように確認したら良いのかな。」
「宰相閣下経由で確認していただければどうでしょう。そうすれば、国お陛下から直々の連絡が入るやもしれません。」
「どんな文面で連絡すればいいのかな…。誰か、教えて…。」
それから、ああだこうだと言いながら文面を考えた。ほとんどエリックさんが考えたようなものだけど、
『レイ:クーパー卿より、皇帝陛下へのゴーレムバイクの献上の連絡いただきました。つきましては、国王陛下から献上の指示を頂きたく、ティモシー様から国王陛下へのご連絡をお願いいたします』
「清書して、ティモシー様へ送信してくれ。」
暫くすると、ティモシー様から連絡が入った。
『ティモシー:我々が、帝都に向かって移動しているのを見られたらしい。皇帝陛下がいたく関心を持たれてしまって断り切れなかった。皇帝陛下の遠駆け用として、警護騎士がのるバイクも含めて3台ということだ。帝国側は、11台と言ってきたがそれは無理だと断っている。すまない。形状は、任せるが一台だけは、少し豪華にしておいてくれ。防御面を配慮できるようならお願いしたい』
「防御面を配慮したゴーレムバイクなんて思いつかない…。」
「皇帝陛下は、バイクにお乗りになりたいのでしょうか?それとも、スピードをお望みなのでしょうか?」
エリックさんが聞いてきた。どちらなんだろう。スピードだけなら小型のバスにして護衛騎士も含めて何人か乗ることができる物を作った方が良いかもしれない。
考えても分からないから聞いてみることにした。
『レイ:皇帝陛下は、ご自分で運転するバイクがご所望なのでしょうか。バイク並みにスピードが出る乗り物でしょうか?もしも、乗り物でしたら、防御面を考慮した物を作ることもできます。バイクだと防御面を考慮した物は難しいかと思います。』
『ティモシー:今から帝国の宰相と確認しようと思う。しかし、防御面を考慮した乗り物を作れるなら、国王陛下にもお願いできないだろうか。しかし、この打ち合わせは、後日内密に行うこととしよう。この文章は、すぐに削除頼む』
「向こうの宰相と話をするならしばらく時間がかかるだろうな。」
「そうだね。じゃあ、いったん解散で。」
「もう一度食堂に行くのも面倒だし、お腹は一杯だからな。レイ、お風呂に行かないか。」
「シエンナ、私たちもお風呂に行きましょう。ロックリザードの討伐で埃だらけだわ。」
という訳でみんなでお風呂に行ってさっぱりすることにした。お風呂から戻ってきたら、国王陛下から連絡か入っていた。タブレットをお風呂には持って行っていなかったならね。
『エルザード(国王):此度は、幾度となく迷惑をかけておる。帝国へのゴーレムバイク献上の件宜しく頼む。話は、変わるが、私もドローンで飛行してみたい。是非乗せてくれ』
「エリックさん、これにどう返事したらいいでしょうか?」
「献上の件承りました。とだけ」
『レイ:献上の件、承りました』
『エルザード(国王):ドローンでの飛行の件はどうなっておる』
「いずれ機会があれば、宰相閣下の許可を受けてご一緒頂くことを願っております。では、どうでしょうか?」
『レイ:いずれ機会があれば、宰相閣下の許可を受けてご一緒頂くことを願っております。』
『エルザード(国王):ティモシーの許可なぞ要らんぞ。奴は先に乗っておるのだからな』
「なんか、ご立腹のようですよ。エリックさん、どうしましょう。」
「国王陛下のご要望承りました。とだけで終わらせましょう。」
『レイ:国王陛下のご要望、承りました』
『エルザード(国王):必ずだぞ!』
『エラ(王妃):私たちもですよ。エラ、エレノア、ステラ、オースティン、ミーシャ、チャールズ』
「レイ、またとんでもない約束しているでしょう。」
国王陛下のご要望承りましたの所だけ聞いた風呂上がりのミラ姉が痛い指摘をしてきた。
「うん。良く分かったね。」
「王室を乗せて飛ばないといけないみたいだよ。主に、ミラ姉達が。」
もしもの時の対応を考えると、どうしてもそうなるんだよね。今の所、僕は飛べないからな…。
王室のやり取りが終わる頃、ティモシー様から連絡が入った。
『ティモシー:皇帝陛下は、バイクを運転したいらしいが部下が許さない。結局皇帝が折れた。自分も運転させることを条件に防御力重視で良いそうだ。その方向で準備を頼む』
「じゃあ、運転席中央で、7人乗りの小型ゴーレムバスにしようかな。」
「屋根の上にも乗れるようにしたらパレードにも使えますね。」
「じゃあ、2階建てにしたらどうだ?2階には、席を6つくらい準備して。天井が開くようにしておけば、パレードの時に盛り上がるよな。」
みんなの意見を参考にして、パレード用二階建てゴーレム車をデザインしていく。
車の前方中央にハンドルを置いて、そこから運転できるようにする。ハンドル前の席は一つにしておいて左右に護衛の為の補助席を付ける。ドアは、左右に付けてどちらからでも入れるようにする。すぐ後方の席は3席。その後ろには真ん中に通路を作って二席、その後ろは、タイヤ収納部を挟んで2席だ。一階部分に乗ることができる人数は8人。
二階は、後方に収納式の階段を付け、中央通路の左右に一席ずつ3列の合計6席。天井は透明金属で覆い。ゴーレムコアへの指示で中央から割れて左右に降りてフルオープンできるようにする。側面は、胸までミスリルで、胸から上は、透明金属にする。この割合は、2階も同じ。
ゴーレム駆動部分は、2輪で8足。ハンドルにコアを接続して運転指示ができるようにしておく。色や装飾は、現地で整えた方が良いから考えない。
ここまで設計企画を終わってここでは、作ることができないことに気が付いた。コテージの中で作ることができる大きさではないし、そんなもの拠点の人眼があるところで作ったら大騒ぎだ。何のために魔術契約までして、ゴーレムバイクやマウンテンバイクの制作者を隠しているのか分からなくなる。
という訳で、暗くなった平原をゴーレム戦車でパーティーハウスに向かって走っている。乗っているのは、パーティー全員とエリックさんだ。
アイテムボックスの中で、ほとんど真四角の機能だけをそろえたボディーと駆動部を作って接合するまでが、僕の仕事だ。一旦、アイテムボックスの外に出す。カッコ良さを求めるなら、アンディ―の出番だ。アンディーは、ボディーの成型とドアなどの接合部分や可動部分を丁寧に作っていく。
少しずつ形が固まってきたら、ロジャーやミラ姉がデザインの修正や可動部の動きの確認や修正を行う。流線型の2階建てゴーレム車が出来上がった。透明金属が多用された不思議なデザインになっている。最後にシエンナがゴーレムの動作確認を行って装飾部分以外の完成だ。
ここまで作り上げるのに4時間以上かかった。時間は、もう12時を回っている。後は、帝国に行って、装飾を仕上げるだけだ。帝国に行くのは、僕とアンディー。残りの3人とエリックさんは、明日の朝ロックバレーに向かってもらう。
死亡事故なく討伐を進めるには、シエンナは不可欠だ。けが人が出た時には、ミラ姉が必要になる。奥の大物討伐担当には、ロジャーとミラ姉で組んでもらえば滞りなく行える。もしもの時は、シエンナがタブレットでミラ姉を呼び出すことになっている。
という訳で、僕がドワナ帝国に行くことができるようになった。アンディーの操縦で行くから不安はない。帝国に献上するゴーレムバイクも2台作成済みだ。アンディーたちがデザインの仕上げをしている間にチョチョッと作った。明日の朝は、7時に起こしてもらえば大丈夫だろう。エリックさんにお願いして部屋で休んだ。
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