第130話 畑づくりとゴーレムバス

翌朝5時、暗闇が吹き払われ、小鳥たちが囀り始めた頃、パーティーハウスに残っいる全員に見送られて、ドローンに乗った6名が離陸した。昨日のうちに魔力は満タンにしてある。昨日の魔力の減り具合から見て、3往復しても余裕だろう。2000m近くの高さで飛行しているドローンを襲ってくる魔物は今のところいない。油断をしてはいけないが、依頼は順調に進んでいる。


1時間後、ドローンが戻って来た。早い。着陸前5分にタブレットが振動し、到着を知らせてきた。到着と同時に、3名が乗り込み離陸していった。慌ただしい出発だったけど、アンディーたちは、疲れた様子もなく笑顔だった。


更に55分後、ドローンが戻って来た。だんだん早くなっているけど大丈夫だろうか…。ティモシー様、クーパー卿、ウィルさんが乗りこんで離陸した。これで移送依頼は無事終了だ。この移送に物資移送用のドローンを随行させた。


そういえば、この指名依頼、契約はしているんだろうか…。不安だ。


全員がドローンで出発した後、朝食になった。シエンナと二人だけで朝食をとるのも寂しいので、エリックさんたちと一緒に朝食をとることにした。エリックさんたちはとっても嫌がっていたけど無理やりお願いした。大勢で食べた方がにぎやかで美味しい。


朝食の後の片付けはさせてもらえなかった。シエンナと二人手持ち無沙汰になってしまった。


「ミラ姉たちが帰ってくるまで暇だね。」


「そうですね。後、何時間位で戻ってこられますかね。」


時計を見ると、まだ8時前だ。ミラ姉たちは、向こうでゆっくり朝食を取って帰ってくるはずだから…。


「10時過ぎるよね。きっと。」


話していると、タブレットが振動した。


『アンディー:今、ティモシー様たちが先発隊と合流した。今から朝食会場へ向かう』


『レイ:ドローンの回収も頼むね』


『アンディー:了解。回収後、誰に預けておけば良い?』


『レイ:ティモシー様のアイテムバッグで保管を頼んでいいと思う』


『アンディー:今、ドローンが到着した。回収後、ティモシー様にお渡しする』


『レイ:宜しく』


会話の流れで、選択送信になるようだ。ゴーレムタブレットは凄い。


「予定より少し早く着いたようだけど、食事の時間は決まっているから、帰ってくるのは、11時近くになるだろうな。」


「後、3時間はありますね。」


「じゃあ、シャルとアリアを呼んで畑づくりをしようか。何故か、ゴブリン集落の灰が山のように増えてるからさ。」


「良いですよ。ゴーレムたちに頑張ってもらえば、畑づくりも短時間でできると思います。」


「じゃあ、シャルたちを呼びに行こうか。」


「レイさん、タブレットがありますよ。シャルたちに送ってみましょう。」


「シエンナ、僕たちのパーティー送信のように、エリックさんとドナさん、シャルとアリアちゃんに同時に送信できるようにならないかな?」


「認識名をグループにまとめる機能を付けたらどうですか?そのグループにさらに認識名を付ければ、グループに一斉に送信したりグループ内で受信したりできるようになると思いますよ。」


「やってみる。グループの認識名を登録。エリック、ドナ、シャル、アリアをパーティーハウスで登録。」


「畑を作ろうと思うから、シャルとアリアをよこしてくれないか?-パーティーハウスへ送信。」


『エリック:承知いたしました。私もご一緒したいと思いますが宜しいでしょうか?』


『レイ:了解。承知しました』


すぐに、畑仕事用の服を着た3人がやって来た。


「どのあたりを畑にしたらいいかな?」


「今日のように、ドローンが発着したり、ゴーレム戦車を一時駐車するなら、屋敷の前にはかなり広いスペースが必要になりますね。」


「あっ…。」


「どうしたのですか?」


「いや、ちょっと忘れていたことがあって…。」


「何を忘れていたのですか?」


「いやー、今日の昼フォレストメロウの町からロックバレーの拠点までスタッフの移動をしないといけなくてさ。その移動に8足2輪のゴーレムバスを作ろうと思っていただよね。それで、ゴーレム階層のガーディアンが復活する今日の午前中にゴーレムコアを回収に行かないといけないかな~って思っていたんだった。」


「私たち二人じゃあ、ゴーレム戦車があってもコアの回収はできませんよ。アンディーさんが戻って来てからで間に合いますか?」


「今のうちに、人が乗る部分と2輪部分を作っておくよ。2輪部分は、8足のゴーレム部分がないと倒れてしまうから、外には出せないな。外に出して仕上げるのは、上の箱の所だけね。人が乗る部分と乗降口なんかも作っておかないといけないけど、組み立てには、アンディ―の力が必要になるなぁ。後、座席。できれば、クッションを効かせた乗り心地が良いものにしたいけど…、できるかな。」


何とかなりそうだ。今は、畑づくりをしよう。エリックさんに相談しながら、畑の場所と果樹園の場所、薬草園の場所を決める。毒気し草は水気の多い日当たりが良い場所に生えるから、水路を作ることにした。その水路予定地も線を引いておく。


場所が決まったら、ゴーレムたちに耕してもらう。ゴーレム用の鍬とスコップを精錬で作って渡した。決められた場所をあっと言う間に耕し終わっていくゴーレムたち。耕し、柔らかくなった土を収納してゴブリン集落の灰とブレンドしたら、元に戻す。


ふんわりとした少しだけ明るい色になった土が、耕した場所にほんの少し盛り上がっていた。次は、畝づくりだ。これもゴーレムがあっという間に終わらせてしまった。


先日、教会の畑に蒔いた種をシャルたちに蒔いてもらう。これは手作業だ。シエンナにも種蒔きをしてもらった。その間に、ゴーレムバスのボディー作成だ。透明金属を精錬し、側面に貼っていく。異世界に転生した時に乗ったバスそっくりの乗車部分ができた。ただし、前面のバンパー部分は異世界のバスの何倍も頑丈にして、シリコンゴムで分厚くコーティングした。魔物を弾き飛ばしながら走らないといけないからだ。魔物はとっても丈夫だから、相当の勢いで弾き飛ばしても、ゴムでショックを軽減すれば死んでしまうことは無い。ぶつかられたバスのショックもゴムが軽減してくれると思う。


中の座席は、木で背もたれや座席部分を作って魔物の皮と植物の繊維を使ってクッションの聞いた椅子を作った。試しに座ってみたけど座り心地は良かった。もしかしたら、異世界のバスの椅子よりもクッションが良いかもしれない。流石魔物素材だ。


ゴーレム足を付ける2輪駆動部分は、高さを50cmにした。タイヤ直径が25cmだ。これ以上低くするとカーブ時に即路面を削っとしまいそうだし、高いと乗るのが大変だ。入り口の所から収納可能な階段を出して乗り降りが楽にできるようにした。


2輪だからゴーレム足の代わりにシエンナのゴーレムたちに支えてもらった。ゴーレムバスのゴーレム以外の部品が完成したのが10時だった。種蒔きはまだまだ終わりそうにない。三人でやっていたのだけど、半分くらいしか終わっていなかった。今は、エリックさんも種蒔きをしている。


薬草園は、次回に根付けを行う。薬草採集をしないといけない…、忘れそう。バスの部品作りが終わったので、僕も種蒔きに参加した。11時前にタブレットが振動して、ミラ姉達の期間を知らせてきた。


只今ただいま-。」一番最初に着陸したのは、ロジャーだ。


その後、次々にドローンから降りて来た。


「今から、ガーディアンのコアの採集に行きたいんだけどアンディー、手伝ってくれない?」


「えっ?俺だけで良いの?」


「えええ、そんな意地悪言わないで俺たちも誘ってくれよ。」


「意地悪なわけじゃなくて、疲れてるんじゃないかなって思ってさ、アンディーには申し訳ないけど、手伝いがないと一人じゃできないからさ。シエンナも一緒だよ。 3人だったら、何とかなるからさ。」


「私たちも行くわよ。ドローンに乗って座っているだけでほとんど何もしなかったようなものなんだから。何かあった時の為に座ってただけなのよ。勝手におしゃべりもできないし、どれだけストレスがたまったと思う?」


というわけで、全員でダンジョンに行ってサクッとコアを採集しました。僕たちがガーディアンのコアを採集している時、ロジャーとミラ姉は、二人でゴーレムコアの採集をした。どれだけ体を動かしたかったんだと思った。


ガーディアンのコアの採集が終わっても、もう少しだけなんて言って回収を続けようとするもんだから、二人を残して、ダンジョンの外に出た。


ゴーレム戦車のかなで、ガーディアンのコアを5個合成して、ゴーレムバス用のコアを作成。駆動部分に前2足を左右、後ろ2足を左右融合して、8足ゴーレムバスに成型した。運転席には、バスの方向やスピード扉の開け閉めなんかをコントロールするコントロールコアをハンドルと融合して取り付けた。


ここまで出来たら、アイテムボックスから取り出さないといけない。戦車を降りて、ゴーレムバスを取り出した。後は、仕上げだ。アンディーにお願いして、開け閉めができる扉を取り付けてもらった。次に、扉の下に自動的に折りたたまれて、乗り降りの時だけ出てくる階段をつくる。これは、コアを加工して作ってもらった。全ての加工が終わると、足の動かし方や制動方法など、戦車の情報をバスに流し込むんで、40人乗りのゴーレムバスの完成だ。


「シエンナ、使役と試運転お願いして良いかな?」


「はい。大丈夫です。認識名は何にしましょう。ボディーが青い色だから、ブルーにしますか?」


「じゃあ、ブルーで。」


シエンナの魔力登録と使役が終了したころ、ミラ姉とロジャーが戻って来た。


「40個のコアを採集してきたぞ。」


「大型のドローン作るんでしょう?」


「うーん。大型ドローンは、向こうの世界の玲に任せた方が良いと思う。僕は、しっかりとしたイメージも軽くする方法も分からないからさ。次にこっちの世界に来た時にお願いしよう。安全の為にもさ。」


「分かったわ。それまでに必要な素材を集めておくわ。」


僕たちは、ゴーレムバスに乗って開拓村に向かい、エリックさんを乗せてフレストメロウに向かった。町に到着したのは、12時丁度になった時だった。計画通りだ。まあ、偶然だけどね。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


異世界のバスは、前後輪の2輪に八本の足がついています。

〇〇ロのね〇〇スではありません。猫のお腹の中に乗るわけではないです。見た目はきちんとしたバスですよ。レイは現代で乗ってますから、イメージはできています。2輪で8本脚ですが…。


面白いなと思ったら ★

一話から読んでみようと思ったら ★★

早く次が読みたいなとおもったら ★★★


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よろしくお願いいたします。




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