第129話 王宮からの緊急依頼

『ミラ:王宮からの緊急依頼。全員王都にドローンで集合して』


『ロジャー:中継基地の設置の設置終了。今王都に着いたけどどういうこと?』


この後に手書きの文字で


『ミラ:目の前で、ティモシー様とクーパー様が土下座しているの。何とかして』


『ミラ:王宮の中庭にドローンで直接入って来て頂戴。到着の仕方も含めて王室から緊急依頼よ。一番時間がかかるのがレイとアンディーだから、二人が乗ったドローンに合わせてロジャーたちは入って来て。王宮上空で合流するように。繰り返すわよ。王宮への入場の仕方も含めて王室からの緊急依頼。以上』


『ロジャー:了解』


「アンディー、ということらしい。エリックさんに事情を話して、すぐに出発しよう。全速力で王都まで何分か測ることもできるね。」


「そうだな。とにかくエリックさんを呼んで、出発だ。」


僕たちは、エリックさんを呼んで、金貨を50枚ほど預け、パーティーハウスの整備をお願いした。金貨が足りなくなった時は、僕たちに連絡すれば、冒険者ギルドから引き出すことができるようにしておくとも言っておいた。


エリックさんは、金貨が足りなくなることは無いでしょうと言っていたが、何があるか分からない。とにかく明日からは、エリクックさんもロックバレーの拠点へ移動することになるのだ。その準備もしてもらっておかないといけない。


エリックさんとの打ち合わせを5分で終え、パーティーハウスの庭からドローンで出発する。留守番組全員で見送ってくれた。時刻は、1時30分だ。王都までの距離は、450km程、さて何分で到着するのか楽しみだ。


アド機の操縦は、勿論アンディー。僕は、後部座席だ。


「最速で王都へ向かう。」


アンディーは、アドに指示を出し、離陸ボタンを押した。


アド機は、高度1000mまで、急上昇し、更に、王都の方向に急加速した。大きなGがかかり少し気分が悪くなる。


「アンディー、吐きそう。」


「もう少しの我慢だ。もうすぐ加速が終了する。」


2分程で加速による後方への押しつけはなくなった。フッと体が浮きあがったような感覚に襲われ、気持ち悪かった。


10分ほど最高速度で進んだかと思うと、タブレットにアド機からアナウンスが入った。


『アド:減速を開始します。先ほどよりもゆっくり減速します。減速時間は4分程です。』


今度は、前方に押し出されるような力が加わって来た。確かに加速時の半分ほどの力だけど気持ちの悪さは、半分ではない。3分の2くらいにはなっているかもしれないけど…。吐きそう…。


『アド:後、5分程で王宮上空に到着します。』


「了解した。同文をパーティー送信してくれ。」


『アド:了解』


『アンディー:後5分弱で王宮上空に到着』


『ロジャー:了解。王都門の上空1000mで待機する』


『アンディー:了解。高度1000で飛行後、合流する。』


2時丁度に王都上空で合流することになる。約450kmを30分程で飛行したことになるわけだ。気持ち悪いくらいの加速だったけどすごく速い。平均時速900km位出ていたんだ。最高速度は、時速1000kmを超えていたかもしれない。


王都の門の上空にロイ機を見つけた。平行に20m程の距離を取り、時速50km程のスピードで王宮へ向かう。あっと言う間に王宮上空に着いた。


ロイ機を先に着陸させ、アド機をロイ機から5m程離して着陸させた。


着陸時のやり取りは、ハンドサインだ。お互いに見える距離ならそちらの方がスムーズらしい。


僕たちがドローンから出ると、ミラ姉と一緒にティモシー様がやって来た。


「忙しい所呼び足して済まぬ。まず、謁見の間へ来てくれ。今回の緊急依頼。明日までには終わらせるゆえ是非、頼む。国家の一大事なのだよ。」


急いで、謁見の間に通され、国王陛下とティモシー宰相閣下、クーパー財務卿の前に立たされていた。


「今後の我が国の発展の為、そして、我が国の財政危機を回避するための緊急依頼なのだ。お主たちにとっても初めてのことになると思うのだが、是非お願いしたい。」


何故かハードルだけが上がっていく。一体どんな依頼なんだろう。


「して、その依頼なのだが、外交補佐じゃ。しかも緊急のな。」


「それは…、どういうことなのでしょうか?」


ものすごく簡単に言うと、ティモシー様とクーパー様と商業ギルドのギルドマスターを乗せて、魔の森を超えて、隣の国まで連れて行って欲しいのだそうだ。


何故財政危機の回避につながるのかというと、今回王宮が買い取った1000体分のロックリザードの皮の暴落阻止の為ということだ。王宮が、最高級のロックリザードの皮1000体分を入手したことが貴族たちに漏れてしまったのだ。王宮としては、ロックリザードの皮を少しずつ市場に出して、王宮の資産を増やし、公共設備への設備投資と福祉事業の拡充を行う計画だった。


しかし、王宮がロックリザードの皮を1000体分も入手したことが漏れた。つまり、希少価値がなくなったということだ。希少価値がある故、莫大な資金になるはずだったのだから、その価値が無くなれば、ただの素材としての価値しかなくなる。


それでも、価値がななるわけではない。しかし、そこに、ギルドから討伐依頼がなされたことが広く知れ渡った。今後もたくさんの皮が入手できるようになることが知れ渡ってしまったのだ。そうなると素材としての価値も暴落してしまう。


それで、国外に販路を広げるしか方法が無くなったという訳だ。どのように国外にまでロックリザードの皮を運ぶか苦慮している時に、ミラ姉がドローンに乗って王都にやってきたことが知られてしまった。


それ故の緊急依頼らしい。


それから、話し合って計画を立てた。国の代表として前にあげた3名をまず、魔の森を超えたところにあるドワナ帝国の帝都まで送る。そこで、ロックリザードの皮を1枚献上した後、商談を始める流れらしいのだが、帝都に3人を送るのは良い。しかし、その護衛は、どうするということで、計画の練り直しだ。


国の代表として送り込むのならある程度体裁を整えなければならない。そこで、3人の護衛として最低必要な人数を教えてもらった。一人につき、3名。つまり、全員で12名の人間を森を超え、帝都の前まで送らないといけないということだ。


ドローンでは、同時に3名ずつしか送ることができない。しかも、今、新たにドローンを増やすこともできない。ゴーレムコアがないからだ。王都から帝都近くの町まで送り、そこで体制を整えて帝都に行ってもらうことが現実的だ。


そこで、今回の依頼内容。先発、商業ギルドのギルマス。護衛として商業ギルドから1名、騎士1名を今すぐ王都から帝都近くの町まで移動してもらう。残りのティモシー様とクーパー様、僕とシエンナ残りの護衛騎士7名は、少しだけ窮屈かもしれないけど、ゴーレム戦車で僕たちのパーティーハウスまで行って、自分の順番を待ってもらう。という手順で移送依頼を行うことにした。


商業ギルドのギルマスと護衛の人たちにもゴーレムタブレットを渡しておく。ミラ姉たちに帝都側の町から戻って来る時に中継基地の設置をお願いした。戻るまでに少し時間がかかることになるけど、今後のことを考えると、中継基地の設置は重要だ。


森の中への中継基地設置は無理があるだろうから、山沿いに飛んで、見晴らしのいい山の頂などに空中から打ち込んでもらうようにお願いした。少し寒いかもしれないけど主に、ロジャーとアンディー、頼む。


第一陣が王都を出発したのが3時半。凄いスピードで準備が行われたことになる。まあ、明日には、魔の森を抜ける決死舞台として出発するはずだったらしいから、命を掛けなくていい分、準備が早かったのかもしれない。


ゴーレム戦車でパーティーハウスに向かう途中も打ち合わせを進めた。ロックリザードの皮100枚は、ストレージを持つ商業ギルドのギルマスが持っているが、足りなくなった時は、ドローンで運ぶ手はずを整えたい。そのためには、出発する外交部隊k

ドローンを荷物運び用のドローンに追わせて経路を確認させないといけない。


12人の移動は、ゴーレムバイク3台とマウンテンバイク3台で行う予定だそうだ。ゴーレム戦車を貸してほしいと言われたけど、この大きさを収納できる人がいないということで、諦めてもらった。


ゴーレム戦車の全速力でパーティーハウスに向かって到着したのが2時間後の午後5時半。それから、30分後の午後6時くらいにミラ姉たちが戻って来た。タブレットで通信してみた。


『ティモシー:宿の確保はできたか?』


『リリアン:二部屋押さえております。私とルナは相部屋です。』


ギルマスのリリアンさんは女性で、ストレージ持ちだ。ルナさんは護衛騎士で女性。カーターさんは、商業ギルドの男性だ。先発隊は、この3名だった。


「今から、もう一度、飛行することは可能か?」


「いえ、飛行中の安全を考えると明るくなった後の方が良いかと存じます。」


ミラ姉がティモシー様に答えた。


『ティモシー:我々は、明日の早朝、そちらへ向かう。朝食は、そちらで取る予定だ。お主らの分も含めて15名分の朝食の準備を頼む』


「時間は、何時くらいが良いかな?」


「そうですね。中継基地の設置は終了しましたから、ここから往復で1時間10分。移動終了まで、3時間半見て頂ければ十分です。第一陣の出発を早朝5時として全員の到着は、8時半で宜しいかと。」


再び、ミラ姉が答えた。


『ティモシー:時間は、8時半で頼む』


『リリアン:了解いたしました』


ミラ姉達は、8時から朝食を食べるのなら、戻って来るのは11時近くになるかもしれないな。それでも、昼からのロックバレーへの移動にはゆっくり間に合うけどね。


皆がそろってパーティーハウスのお披露目と完成パーティーを行った。この人数でパーティーをする予定ではなかったんだけど、王都を出発する前にエリックさんに知らせておいた。大慌てで手はずを整えてくれたようだ。シャルたちにも少し疲れが見えたからね。後で、ボーナスを渡さないといけないかな…。


ティモシー様が、国王陛下に連絡したらしく、後から、何故招待状が来ないのだとお叱りのメールが届いた。すぐに情報が伝わるのも善し悪しだ。


いやいや、もともとお披露目パーティーの計画なんてなかったのですから…、勘弁してください。


ドナさんやエリックさん活躍で、お披露目パーティーも楽しんでもらえたようだ。客室もできたばかりだったけど、寝具なんかも準備してくれていた。男湯、女湯も完備だ。皆さん、喜んでくれた。


明日は、早朝に出発するということで、みんな早々に休んだ。

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