第112話 体力増強ポーションと魔物退治

「まず、一番の希望は、魔物の狩りなのか?」


「ダンジョンも行きたいけど、ゴーレムバイクも乗ってみたいし、体力増強ポーションを作ってマウンテンバイクで走ってみたい。」


「体力増強ポーションって何?また、変な物作ろって言うのじゃないでしょうね。」


「変な物かな…。レイの手持ちの材料で作ることが出来たらいいんだけど…?」


 僕は、体力増強ポーションを精錬してみようとアイテムボックスを開いた。


「アルケミー・体力増強ポーション。」


「アルケミー・ボトル」


 出来上がったポーションをガラスのボトルに入れて取り出した。ほぼ透明。地球の体力増強ポーションと同じ色だ。匂いは、ブドウとモモの中間のような甘いにおいがする。


 一口飲んでみる。地球のポーションと同じような甘さだ。でも、フルーツの香りはこっちの方が強い。もう一口。


「じゃあ、ダンジョンの方に出発してみようか。まず、マウンテンバイクで走ってみる。」


 なんなで、村の入り口に歩いて行き、外に出て直ぐにマウンテンバイクを取り出した。アイテムボックスには地球の何十倍もの量のアイテムや素材が入っていた。


「どっちの方に向かったら良いのかな?」


 僕は、みんなの方を見て聞いたが、聞くまでもなく分かってしまった。


「あっ!あっちの方だ。」


 レイの記憶が僕の自身の記憶として頭に浮かんでくる。初めての変な感覚だ。アイテムボックスの中の情報を検索するのとは全然違う。ふと思い出すのに似ているかもしれない。


「じゃあ、薬草とボアが狩れる草原の方に向かってみるね。」


「レイ!俺が先に走る。魔物の気配を探りながら走るから着いて来てくれ。初めは、ゆっくり走るからどのくらいのスピードまでついてこれるか試してなればいい。」


「分かった。どんな並び方が良いかな?」


「この時間は、森の方から戻って来る冒険者も多いからな。前から人が来たらちゃんと避けることができるようにしないといけないぞ。冒険者たちも、この時間から町に戻るとなるとかなり急いでるからな。」


「じゃあ、ロジャーが先頭。次がレイ。右にシエンナ、左が私。そして、殿がアンディーで行くわよ。前から人が来た時には、一列ね。その時は、私がレイの前、シエンナがレイの後ろで良いわね。」


「「はい。」」


 僕と一緒にシエンナが返事をした。


 じゃあ、時速50km位でゆっくり走りましょう。」


「了解。」



「えっ?時速50kmって、ゆっくりなの…。」


 ロジャーが出発した。僕も、大急ぎでペダルをこぎ始めた。ロジャーに遅れないように、かなり焦って力いっぱいペダルを踏んだ。


「アワワワ~ッ」


 前輪が浮いている。後ろにひっくり返りそうになってる所をロジャーに支えてもらって何とかひっくり返らずに済んだ。


「ありがとう。ロジャー。」


「なんてことない。何なら、ロジャー兄って呼んでも良いぞ。」


「えっ?ロジャー兄…、ありがとう。」


「ブ~~~、アハハハハハ。ダメ!笑わせないで、外に出てるんだから、緊張していないと危ないわよ…。キャハハハ。」


 ミラ姉もアンディーもシエンナまで大笑いしている。


 体力増強ポーションの効き目は、地球と同じくらいあるようだ。これから力の入れ加減に気を付けよう。


 笑いが収まって、気を取り直して出発だ。


「出発するわよ。いい。外なんだから、気を引き締めて。」


「「「「了解。」」」」


 ロジャーが出発した。僕も慌てず少しずつスピードを上げて行った。これが時速50km…?すごい勢いで周りの景色が後ろに飛んでいく。20分も走らないうちに森の近くの草原に着いた。


「まず、この辺で薬草なんかを採集してみよう。ボアが居れば、ボア狩りな。」


「レイ、この前みたいに、薬草をサーチしてみて。」


 ぼくは、まず、アイテムボックスの中の薬草を手元に取り出した。薬草は、向こうの世界にもあったものとかなり違っていた。よかった。取り出してみて…。薬草のイメージを固めてサーチしてみる。


「サーチ。」


 草原のあちらこちらに、薬草を見つけることができた。その中の群生地に移動して、


「エアカッター!エアカッター!エアカッター!エアカッター!エアカッター!…。」


 薬草に向かってエアカッターを放ち刈り取ると収納だ。これは、地球でもやったから、イメージ通りできた。


「レイ!ひとりで勝手にうろうろしちゃあ、危ないぞ!」


 アンディーに怒られた。


「こっちに戻ってこい!」


 少し、声を潜め気味にアンディーから指示が出た。


「ロジャーが、ボアを見つけた。」


「狩りと解体やってみたいんでしょ?」


「うっ…うん。でも、できるかな…。」


「素材は、少々痛んでも良いから、やってごらんなさい。」


 ミラ姉が言ってくれた。やるしかない。


「ロジャーにこっちに追い込むように伝えるからレイは、準備な。どの魔術で仕留める?ロックバレット?リキロゲン・ポール?ソードショット?どれでやってみる?」


「じゃあ、外しても被害が比較的少ないリキロゲンボールでやってみる。」


「えっ?リキロゲンボール外すと大変じゃない?」


「もうすぐ、来ます。ガーディーで壁作りますか?」


「お願いします。」


 シエンナがガーディ―を出して、ボアを右に流してくれた。僕はほぁの後ろからリキロゲンボールを撃ち込んだ。


「リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール!」


 3発中1発が命中し、ボアは、凍り付いて止まった。草原の2か所が真っ白に凍り付いていた。溶けるのにどのくらいの時間がかかるのだろう。


 凍り付いたボアを収納しようとしたけどできなかった。凍り付いても生きているようだ。凄い生命力。流石、魔物だ。


「最後まで、きちんと仕留めなさい。」


 ミラ姉に言われ、頭部にソードショットを撃ち込んだ。ボアは、ピクリとも動かなかったが、命の火は、消えたようだ。アイテムボックスの中収納して、素材を取った。魔石、肉、皮に分け、肉からは血抜きもできた。全てレイの知識を使わせてもらった。


 初めて、生き物の命を奪った。それで、少し気持ちが重くなっていた。


「レイ、魔石も、薬草も手に入ったから、上級ポーションを作ってみたらどうだ?」


「あっ。そうだね。僕が作った上級ポーションとこっちのレイが作った上級ポーションが同じものになるか試そうと思っていたんだったね。じゃあ、ダンジョンに向かいながら、作ってみる。ミラ姉、バイクの後ろに乗っけてもらって良い?」


「良いわよ。」


「レイ。俺が乗っけてやるよ。」


 ロジャーが言ってきたけど、知っている。ロジャーは危険だということを。だから、断った。


「せっかくだけど、一番安全運転のミラ姉の後ろが良い。後ろで、ポーション作るからさ。今度乗っけてよ。ダンジョンの中でさ。」


 僕は、ミラ姉の後ろでポーションを作りながらダンジョンに向かった。結論、この世界のレイのポーションと僕のポーションは微妙に違うらしい。アイテムボックスの中では、違うポーションとして認識されていた。


 レイの作ったポーションを20本くらい精錬しておいた。どの位変わっているのか、僕が帰った後、調剤ギルドで鑑定してもらって教えてもらいたい。ついでに、初級エリクサーも精錬してみた。これは、あんまり変わった感じはしなかった。


 ついでに、化粧水と乳液を精錬してみた。うまくできた。不思議だ。もちろん、初級回復ポーションを水の代わりにした。地球では、市販の化粧水や乳液がなければ作ることができなかったけど、レイのアイテムボックスの中に代用品があったようだ。


 レイには、何が材料になっているか分かるだろうか。そして、その効果は…。ミラ姉とシエンナじゃ若すぎて効果が分からない。いつか、村のおばさんたちに試してもらおう。


 他にも、何種類かのポーションを精錬し終えた頃ダンジョンに到着した。


 薬草だけを材料にして、初級ポーションも作っておいた。ダンジョンに着いたら、ロジャーたちに筋肉増加・筋肉強化ポーションを作って、飲ませてみよう。身体強化と同時使用したらどうなるか確認してもらうんだ。

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