第111話 砦計画と異世界転生
今日は朝から忙しい。村長と村の外に出て砦の大きさを決める約束をしていたからだ。メインの入り口の門は今まで通りの場所にすることにして、村長と一緒に歩きだした。入り口は、町から森への通り道に面している場所だから、別の場所にはできない。
道に沿って真っ直ぐ東西に塀を作る計画だ。今の塀は、300m程で北に向かっているが、まだまだ真っ直ぐ伸ばしていく。その距離は、入り口から東へ2.5kmまでになった。エリックさんがなかなか曲がらせてくれなかったんだ。
そこにシエンナのゴーレムたちが隙間なく杭を立てて行った。。直径30cm長さ3mの杭は2mの高さになるまで、撃ち込まれていった。簡易城壁の出来上がりだ。
次に、北へ5km。北へ向かう途中。ちょうど真ん中あたりに500m四方の囲みを作った。東の壁から20mほど離れた場所。そこが僕たちの拠点、パーティーハウスになる予定の土地らしい。ここの囲みには、15cmくらいの隙間があったが、まずここを石塀にするのだそうだ。中の土地は、開墾すれば、良い畑になりそうだった。勿論ゴブリン集落の灰も混ぜ込むよ。
村長さんと相談しながら、共有の畑にする場所や新しい住宅予定地、新しく入植する者がいた時の条件なんかを決めていった。今のところ何の産業もないから入植者はいないと思うんだけど、土地や畑が出来たら、決めておかないといざという時に困るということだった。
ここは、自由騎士団による開墾地だったから国に収める税金は免除されている。しかし、この大きさの畑が出来たら、どうなるか分からない。
領主もいない小さな開拓村が、かなり大きな畑を持つ砦に生まれ変わるのだからどう扱われるか予測できないということだった。
パーティーハウスの予定地だけでも今のフォレポイ村に匹敵する広さにしようと言うのだから、壮大な計画だと言える。本当なら何年もかかる計画なんだろうけど、どのくらいで完成するだろう。楽しみだ。
問題は、材料の輸送だ。石切り場のロックリザード問題が片付いてもフォレポイ村から石切り場まで60km近くの距離がある。川もないのなら本来輸送不可能な距離だ。
村長さんに心配されながら杭打ちを進めて行った。朝8時から初めて、12時には、5km四方の新フォレポイ村予定地の杭打ちは終了した。
4時間で20kmもの長さのくい打ちを終了したんだ。ものすごいスピードだと思う。ずーっと急ぎ足で歩いていたから疲れた。
途中で何度かポーションを飲んでやっと追いついた感じだった。村長さんにも飲ませてあげた。疲れが見えてたからね。
オマケに途中で、500m四方のくい打ちもしたんだ。パーティハウスの予定地だけどね。凄いと思わない?
村長さんが心配していた輸送問題には、僕とロジャーが頑張りますとだけ答えておいた。
くい打ちが終わると、村長と別れ、僕たちの家に戻って休憩のお茶にした。少しだけケーキやクッキーも出したよ。アリアちゃんもシャルちゃんもドナさんまで大喜びで食べていた。
お茶休憩を終えるとエリックさんたちには町まで行ってもらう。シャルたちにもお小遣いに銀貨1枚ずつ渡した。夕食の差し入れを買って行けば喜ばれるだろうとアドバイスしておいた。
エリックさんとドナさんに、シャルたちにはゴーレムバイクは使用させないで、マウンテンバイクの後ろに乗せてもらうようにお願いした。シャルたちがマウンテンバイクに乗っていると目立ちすぎて危ないからだ。
エリックさんたちが出発した後、家の中に入って行った。時刻は、1時30分だ。後、1時間半で異世界転生の実験が始まる。
「レイ。本当に大丈夫なの?異世界に行くのよねぇ。」
「異世界に行くことは大丈夫だと思うんだけど…、行った後が心配と言えば心配だよね。異世界ってどんなところなんだろう。」
「俺が、代わりに行ければ、行きたいくらいなんだけどな。」
ロジャーは、いつも通り。でも、僕も行きたい。行きたいけど不安なんだよ。初めての場所ってそんなもんでしょ。
「それじゃあ、確認しましょう。レイは、自分の部屋で転生実験するのよね。部屋で見守るのは、ここにいる全員ということで良いわね。」
「昨日、連絡した。やっぱり、みんな一緒じゃなきゃあダメだと思う。」
「それで、転生して来たら、豆や色々な果物や牛乳なんかを見せてあげて…、それからどうするんだったっけ?」
「今日は、ダンジョン見学に行くんだよ。この前のゴブリンダンジョンで良いと思うけどね。行く途中で、ボアか何かこの辺の魔物を倒して、収納・解体させてあげて。出来たら、薬草と毒気し草の採集もさせてくれたら喜ぶと思う。」
「了解だ。ゴブリンダンジョンだったら、俺たちが行ったら色々融通してくれるかもしれないね。最新情報何かもらえるかもしれないね。」
「ダンジョンで何かしないといけないことはあるですか?」
「素材集めだけで十分じゃないか?持田玲は、とにかくこちらの素材を知りたいらしいからね。」
「最後に一つ教えてくれないか?」
「何?」
「レイと玲の区別はどうしたらつくんだ?」
「分からない。口調かな?いろいろ怪しかったら持田玲じゃないかな…。」
「レイも十分怪しいから区別付かないかもしれなわね。」
「ええっ。それって、ひどくないか。」
皆で大笑いしていると、時間が近づいていた。一緒に僕の部屋に移動した。腕どけぅを見ると時刻は2時50分。
僕は、ベッドに横になって、精錬で作った日記帳の紙に、初めての異世界転生と書き、アイテムボックスのホームスペースに収納した。これだけでは、転生は起こらなかった。
まず、ダイアリーを開いてみる。内容は昨日のままだ。ホームスペースの中のダイアリーをしばらく開いたままにしておく。しばらく待っても何も状況変化はなかった。
日記の紙をリペアしてみる。紙には、今日の日付と転生実験を行った時刻、午後2時57分と書き込んだ。そして、57分になるのを確認してリペアした。そのまま、日記を開いておいた。すると、アイテムボックスが僕を吸い込み始めた。暗いアイテムボックスの中に…。意識は途切れ、僕は、アイテムボックスに沈んでいった。
「レイ、大丈夫?レイ!」
声が、聞こえる。誰の声なんだろう。母さんとは違う女の人の声。目を開けると知らない部屋だった。レイは、きちんとダイアリーを読んで準備してくれたみたいだ。ベッドの上に横になっていた。
「やあ、みんな、お早う。そして、初めまして。シエンナは、一昨日、会ったばかりだから、シエンナ以外だけどね。」
「あの…、お早うって、今、お昼なんですよ。午後3時になったばかりです。それに、シエンナ以外ってひどくないですか?なんか、例外扱いしてません?」
「そうかな…。既に、知り合いって言う感じで話してるつもりなんだけど…。そんなことより、皆さん、僕が皆さんからしたら異世界から来た、持田玲です。ええっと、ミラさんですよね。そして、どっちがアンディーでどっちがロジャーなのかな…。持田玲です。宜しくお願いします。」
「おっ、おう。俺がロジャー。あっちがアンディーだ。宜しく。」
「ああ…、ああ、私がアメリア。みんなには、ミラって呼ばれているわ。そして、ご存じのようだけどシエンナよ。」
「嬉しい。レイの
僕は、少々テンション高めだ。血は繋がっていないとは言え、初めて会う異世界人の兄弟がなんだからね。しかも、姉さんや兄さんだなんて、とにかく、宜しくお願いしたい。
「僕もミラ姉やロジャー
「ブッ!ロッロジャー兄…。ブハハハハッ…。」
「笑うな。アンディー、おめえも一緒だろう!」
「どうしたんですか?」
「私のことは、ミラ姉で大丈夫よ。それ以外呼ばれたことないし、それに、もう少し普通に話してくれない?そんな丁寧な言葉遣いだと調子狂っちゃうわ。それと、ロジャーとアンディーは、
「ウッヒャッヒャヒャッ、フハハハ…、そっちじゃないと可笑しくて、笑いが止まらない…。」
「俺は、ロジャー兄でも良いぜ。」
「アッハハハハ……、止めろ!ロジャー、お腹が痛い。」
「五月蠅い!」
「はい、はい。ロジャーとアンディーは今まで通り、ロジャーとアンディーで決まり。良いわね。ええっと、レイ…、で良いのよね。呼び方は。」
「勿論です。他に呼び方が違う人っていますか?」
「今は、いないけど、シャルとアリアちゃんは、シャルとアリアちゃんね。シャルちゃんって言うことあったっけ?」
「なかったと思うぜ。他は、だいたい、さん付けだな。」
「今日は、もうそんなにたくさんの人には合わないと思うから、おいおい、覚えて行けば良いわ。レイの記憶って全然ないの?」
「知識は、頭に浮かんできます。しっかり見れば、誰がロジャーで誰がアンディーかなんてわかるんですけど、持田玲の感情の方が上まっていて…。思わず聞いてしまいました。」
「じゃあ、そう言うことでこれからのこと話しましょう。」
ミラ姉の一言で、これからの確認をすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます