第110話 パーティー拠点計画

 教会に泊って、教会で朝ご飯を食べさせてもらって、少しだけ畑の手伝いをした。夏野菜は、さすがにもう終わるはずなんだけど、まだまだ元気に葉を茂らせたり、実を着けたりしている。シャルと一緒に、収穫し終わった野菜の場所に植える種を買うため、市場に来ている。


「どんな野菜にしようか。」


「前みたいに、次の日には芽が大きくなるんだったら、今が旬の野菜が良いかもしれなね。」


 八百屋さんに出ている種を取るため、熟れすぎたカボチャやズッキーニを買ったり、売れ残りの秋野菜の種を買っては、アイテムボックスに収納して初級ポーションを浸透させておく。


 リンゴや柿も買った。食べた後、種を貰おう。色々な種類の野菜の種や種付きの果物を買い込んで教会に戻った。ベリーや桃の隣のアイテル場所にリンゴと柿を植えよう。


 朝食は終っていたけど、マリンさんに果物をむいてもらってみんなで食べた。種はすべて回収だ。沢山種が取れたから、3分の1は村に持って帰ることにした。


 種に初級ポーションを浸透させた。急速浸透だ。次にみんなで種まき。畑の種蒔きと果樹園の種蒔きを二手に分かれて行った。


 もう少し広い土地が手に入れば、麦なんかを植えてもいいのにな…。でもそんなことしてたら、教会じゃなくなるか…。


 種蒔きが終わったのがお昼前、いよいよ、村へ出発だ。みんな、教会の外まで出て見送ってくれた。


 町の門を出て、シャルとアリアちゃんたちにゴーレムバイクを精錬してあげた。何かあった時の町までの交通手段だ。僕たちが一緒の時に練習してもらう。


 二人に、魔力登録の仕方を教えて、ゴーレムバイクに魔力を登録してもらった。僕が魔力充填はしてあげる。二人は、まだ十分な魔力を放出することができないからだ。


「ゴーレムバイク安全運転で僕について来て。シエンナは、殿しんがりを頼む。シャル、アリアちゃん、ハンドルを離さないようにね。大きく曲がるときは、傾くけど怖がらないでハンドルをしっかり握っておけば大丈夫だからね。」


 二人が乗ったゴーレムバイクを従えて、村まで走った。二人は怖がる様子も見せず、10分後には、村の中に作った二人の家の前に着いていた。


「アリア姉、面白かったね。ゴーレムバイク。また乗れるのかな?」


「町まで買い物に行く時、このバイクがあったら便利でしょうね。また、いつか乗れたらいいね。」


 そんな話をしてる二人に、ゴーレムバイクを入れることができるポシェット型のマジックバッグを精錬して、ゴーレムバイクを収納してもらった。


「これは、二人専用ね。バイクとポシェットは、魔道具だけど、周りの人に悟られないようにしくれよ。それを狙う悪い奴がいるかもしれないからね。買い物に行く時は、大き目のかごを持ってその中にこのポシェットを入れていくようにしようね。」


「「はい。分かりました。」」


 二人の良い返事だ。それから二人をコテージの中に案内した。


「この二つの部屋を使ってね。部屋割りは、二人で決めて良いよ。まあ、作りと中の家具は全く同じだけどね。それから、二人の台所は、ここね。普段は、僕たちの家の台所を使って良いんだけど、休みの日なんかは、ここを使っても良いからね。」


 教会から運んできた荷物を出してあげて、二人には、荷物の整理をしてもらうように言ってコテージを出た。


「荷物の整理が終わったら、僕たちの家の方に来てね。村長さんに挨拶に行くから。」


 僕たちが、台所のテーブルに座ってくつろいで居るとシエンナがミラ姉たちから連絡が入ったと教えてくれた。


「ブラウンさんからの紹介で、メイドでシャルちゃんたちの先生になってくれる方と、執事でシャルちゃんたちの先生とエヴィちゃんの先生役をしてくださる方を連れてきているから着くのが4時くらいになるということです。メイドの方は女性で執事の方は男性です。」


「今日寝る場所を作っておかないといけないかな…。村長さんに相談してくるから、シャルたちが来たら待たせていて。」


 僕は、バタバタと走って村長の家に向かった。村長に事情を話して、もう一軒コテージを作ることを許してもらった。


 また、走って家に戻って、シエンナにゴーレムを使ってで地下室用の穴を掘ってもらった。コテージを精錬して設置、地下室用の魔石は準備しておいたが、魔力充填はしていない。大人だから大丈夫だろう。なんか、慌ただしかった。4時過ぎて、全員揃って村長の所に挨拶に行くことにしよう。


 今、家の台所のテーブルで4人まったりとお茶を飲んでいる。お茶請けには、王都の宿で出ていたケーキとクッキーを置いていた。シャルたちは、ケーキに夢中だ。もう、3個目を食べている。


「美味しいです。こんなおいしい料理食べたことありません。」


「晩御飯が入らなくなるからあまり食べすぎないようにね。」


「えっ?これ、晩御飯じゃないんですか?」


「え?ただのお茶だよ。休憩のお茶。」


「この甘くて美味しいの、御飯じゃないんですね。残念です。」


「うん。そんなの御飯にしてたら、病気になる。多分。」


 その後、シャルたちを案内して村を回った。道具屋のリアンさんと萬屋のバリーおばさんには、これからお世話になるはずだから丁寧にあいさつした。教会にも行って留守番をしてもらうことを伝えた。


 村を一通り回った頃、アンディーたちの到着時間が近まったので、家で待っていると、ほぼ時間通り帰って来た。


「「「只今。」」」


「先生を連れて来たわよ。シャルちゃん、アリアちゃんしらっしゃい。」


「あっ、はい。」


 アリアちゃんが返事をしてシャルと一緒に二人の先生の前に並んだ。


「アリアです。」

「シャルです。」

「「よろしくお願いします。」」


わたくしは、執事のエリック、皆様にお仕事の仕方や、貴族のマナーなどお伝えいたします。よろしくお願いいたします。」


「私は、ドナです。特にアリアちゃんとシャーロットちゃんにメイドのお仕事をお教えしたしますわ。」


「では、まず、砦ができるまでの仮住まいについてお話いたしましょう。わたくしどもの雇い主は、アンデフィーデッド・ビレジャーの皆様で宜しいですね。」


「はい。その通りです。まず、契約でしょうか?」

 ミラ姉が答えてくれた。


「いいえ、先ほども申し上げましたように、砦ができるまでの仮住まいについて確認したく存じます。パーティーメンバー全員のお屋敷と考えて宜しいのですか?」


「は…、はい。そうです。パーティーメンバー全員で住んでいます。」


「それでは、皆様の住まいは、生活の場であり、活動の拠点でもあるわけですね。そこで、暮らし、お仕事もされることになるのでしょう。」


「まあ、それはそうですが…。今のところ、仕事の話は、フォレストメロウの冒険者ギルドや調剤ギルドの会議室をお借りしていまして、わざわざこんなところまでいらっしゃる方はあまりいらっしゃいません。」


「いえ、これからは、たくさんの方々がいらっしゃるようにななります。砦が完成する前もです。皆さんは、それほど大きな事業をなさろうとしているのですよ。その自覚をお持ちください。宜しいですか。」


「「「「はい?」」」」

 全く自覚などない返事だ。


「宜しいですか!」


「「「「はいっ。」」」」


「シエンナさん。返事がないようですが…、宜しいですか?」


「は…、はいっ!」


「では、まず、村長の所に行って屋敷を建てる土地を確保いたしましょう。このパーティーは、たくさんのポーションや薬もおつくりになるということですが、薬草畑は、お持ちですか?実験栽培場も作ろうとするとかなりの広さの土地を確保する必要がおありと思いますが、如何でしょうか?」


「いえ、全くございません。考えてもおりませんでした。」

 今度は、僕が答えた。畑は作ろうと思っていたけど実験栽培場なんて考えてもいなかった。


「では、村長に頼んで、その土地も譲り受けましょう。どうせ、この村の何倍もの土地を囲んだ砦にするつもりなのでしょう。村の外に屋敷を立て、畑を開墾すれば済むことです。レイ様とアンディー様のお二人だけでもその位簡単でしょう?魔物からの襲撃を防ぐために屋敷と畑の周りを塀で囲めば良いのです。ロックバレーの拠点と同じくらいの広さと塀の高さで十分だと思いますよ。」


 僕たちは、エリックさんに連れられて、村長の家に行き、村の外に僕たちの屋敷と畑を作ることの許可をもらった。そして、明日の午前中、砦の大きさと僕たちの屋敷の場所を決める約束をした。


 この執事さん、どれだけ正確な情報を持っているんだろう。一体何者なんだ?


 それから、僕たちの家で新しい仲間の歓迎化を開いた。お酒は、お昼に、町で購入済みだ。歓迎会だと言うのに、主賓になるエリックさんが指揮を執りテキパキとパーティーの準備を進めて行った。


 僕もいくつか料理を出したけど、ドナさんとエリックさんの指揮のもと、頑張って料理を作ったシャルたちの働きが大きく、夕方にはパーティー料理が出来上がった。


 それから、今後の計画をエリックさんに聞きながら食事をした。


 良かった。料理が出来上がる前にダイアリーを確認しておいて…。ダイアリーには、明日の午後3時からの転生実験が書き込んであった。


 食事中に、明日の午後と明後日は、一旦休暇にしてもらうようにお願いした。エリックさんたちもフォレストメロウの町に行って、屋敷に必要なもろもろを確認したいということだったので休暇には反対しないでいてくれた。


 町に行くならと、エリックさんとドナさんにマウンテンバイクかゴーレムバイクをプレゼントすることにした。二人とも身体強化を使えるからマウンテンバイクを希望するということだった。


 収納と買い物用のマジックバッグを渡すと言ったらエリックさんは収納を持っているから大丈夫と言う返事。ドナさんの分だけを作って渡した。それと、準備資金として金貨10枚ずつを渡して、シャルとアリアも一緒に連れて行って欲しいと頼んだ。


 また、村に帰って来ても、僕たちは、出かけているかもしれないからシャルたちは教会に、エリックさんたちは、町の宿に泊ってくるようにお願いした。


 パーティーが終わって、皆さんが引き上げた後に、ミラ姉たちと打ち合わせをしないといけない。


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