第105話 指導者探しとドローン実験

 教会を出て、直ぐに冒険者ギルドに回った。エヴィのお師匠さん兼拠点の道具屋の取り仕切りをしてもらう人を探してもらうためだ。そう都合が良い人がすぐに見つかるとは思えないけど、使えるコネはすべて使おうという目論見もくろみだ。


 冒険者ギルドで、依頼で出した方が良いか聞いてみたが、無駄だろうと一蹴された。クラフト系のスキルの持ち主が冒険者にいるはずもなく、しかも万が一居たとしたら、ロックリザードの討伐に参加する方だろうと言われた。もっともだ。


 しかし、知り合いには、声をかけてれるということだったので、是非にとお願いした。ギルマスの知り合いに、クラフト系のスキル持ちが居たらいいのだけど…。


 調剤ギルドにも行ってお願いしてみたが、こちらの方が可能性があるかもしれないという返事だった。クラフト系のスキル持ちは、薬師の工房に見習いなどで入っているかもしれないから、聞いてみると言ってくれた。ただ、道具屋の手伝いがメインだからどうだろう…。給金は弾むから是非来てもらいたい。


 直ぐには決まらないようだったから、王都でもお願いしてもらうことにした。ついでに、シャルたちのメイド仕事の指導者もお願いしよう。どうせ、シャルたちの住むところを作らないといけないのだから、シャルたちの先生の住むところも一緒に作ってしまえばいい。砦が完成するまでの仮住まいだから、そう豪華な物じゃなくても良いだろう。


 教材ギルドを出た僕たちは、まっすぐ、村に戻ってきていた。家に戻って、今までのことをミラ姉たちにも知らせようと言うことになった。


『シャルとアリアが留守番とメイド見習いをしてくれることになったこと。この二人の指導をしてくれる人を探してほしいこと。エヴィが道具屋の手伝いをしてくれるのだけど、エヴィと一緒に道具屋の手伝いをしながらエヴィにクラフターの指導をしてくれる人がいないか探していること。シャルたちとメイドの仕事の指導をしてくれる人の為に家を作ろうと思っていること。』


 これだけのことを手紙に書いて、ドローンで送ることにした。


 ついでにドローンとシエンナの情報共有の実験をすることにする。実験用ドローンの為、ゴーレムコア20個合成して、特大のコアを作った。そのコアを4等分して1つがいつものコア5個分くらいの大きさにした。そのうちの一つでドローンのゴーレムコア部分を作った。いつもの倍くらいの大きさのコアで作ったことになる。スピードを重視するため、ボディーには、いつもよりも小さめのアイテムバックを結合した。どけだけ早く王都に着くか楽しみだ。


 情報共有の実験の為、今回作ったドローンは、シエンナに魔力登録してもらわなければならない。シエンナは、ドローンに王都の皆さんの様子をしっかりと伝えるようにお願いして、ドローンをリングバードと名付けた。


 僕は、残った3つの4分の1のゴーレムコアそれぞれを更に16等分し、48個の中継コアを作った。アンディーにお願いして、48個のコアを木に突き刺すことができるようにクナイのような形にしてもらった。


「シエンナ、大変だと思うけど、中継コアのすべてにシエンナの魔力を登録して。名前は付けなくても良いと思うけど…、リングバードからの情報を間違いなく伝えるようにって念じながら登録してね。」


「分かった。やってみる。」


「で、この中継コア、どうやって使うんだ?」


 アンディーが聞いてきた。


「できるだけ高い所に打ち込んでおくだけ。木の上や、建物の屋根の上なんか。建物壊しちゃ、怒られるから、木の上が良いかもしれないね。」


「俺が、設置してきてやる。15km位に1本ずつ打ち込んでくればいいんだろう。30ヶ所で、王都まで着く。念のため35本の中継コアを持って行く。もしもの為に、上級回復ポーションを2本と初級ポーション入りのジュースを水袋に入れて持たせてくれないか?氷と一緒にアイテムボックスの中に入れていく。」


「あれ?アンディーの収納ってアイテムバッグじゃなかった?」


「エヘヘッ、熟練度が上がってアイテムボックスになった。レイのみたいにでたらめな大きさじゃないけど、以前の100倍以上の容量にはなっているぜ。荷馬車4台分はあるかな。」


「凄い速さで上達したんだね。」


「そりゃあ、半端ない頻度で使っているからな。まあ、ポーションの準備頼むぞ。」


「手持ちがあるから大丈夫。はい。持って行って。それから中継コア35本宜しく。一人で大丈夫だよね。王都まで2時間もかからないんでしょう。」


「一人で行くからな。2時間以上かかると思っていてくれ。じゃあ、行ってくる。」


「ドローンに魔力充填するね。登録が終わっているなら僕が充填しても大丈夫だよね。」


「大丈夫だとは思うけど…。私が充填したか方が確実なんだろうけど、全部の中継器に魔力登録したから、もう無理。お願い。」


 直ぐに、魔力の充填は、終了した。以前王都まで飛ばしたことがあるドローンからデータをコピーして出発準備は終了。


『シエンナとこのドローンの情報共有実験をするから、このドローンの手にペンを握らせて紙を渡してほしいこと。ドローンに話しかけて欲しいこと。出発時刻1時20分。』を手紙に追加した。


「行きなさい。リングバード。ミラさんとロジャーさんの所に。」


「出発時刻、1時20分。20秒前、10秒前、5、4,3,2,1,出発しなさい。」


「シエンナ、リングバードの視界情報共有できる?」


「ちょっと待って、視界を少し下げる。今は、街道から少しずれたところを飛んでいる。細かい様子を伝えるのは無理。目が回りそうになる。とにかくものすごいスピードで王都に向かっているみたいよ。」


「そうか。じゃあ、アンディーに追いついて追い越すように指示してくれない。できるかな?」


「大丈夫みたい。アンディーさんの魔力は追うことができるようよ。」中継器の魔力は、アンディーさん以上にはっきりと感じているみたい。」


 5分後にアンディーに追いつき、追い抜いた。追いついた時には、アンディーは、木の高さに飛んでいたけどいつもよりも速いくらいだったそうだ。リングバード計測によると時速230km位じゃないかと教えてくれた。


 そのアンディーに10分程度で追いつくなんて時速何kmで飛んでいるんだ。


 心の声が漏れていたらしい。


「時速600km以上のようです。」


「王都まで46分くらいで着くのか…。」


「静止画情報ですが、もうすぐミッドリバーの上空になると思います。」


「あっ。」


「どうしたのですか?」


「ロジャーとミラ姉の部屋知らない。」


「あの子だったら、魔力を探ってたどり着くんじゃないですか?大丈夫ですよ。」


「でも、あのドローンは、ミラ姉にもロジャーにもあったことないんだよ。」


「そのあたりの情報は、先輩ドローンからもらっていると思いますよ。」


 28分後には、答え合わせが終わっていた。シエンナが正解。リングバードは、ミラ姉の部屋に到着していた。


 ミラ姉は、直ぐにロジャーを呼びに行ったようだ。静止画像の送信間隔がだんだん短くなってきているそうで、ほぼリアルタイムで状況を伝えてくれた。


「手紙は読んだわ。私の声は、聞こえているの?」


『聞こえている。』

 シエンナが書いた文字がそのまま紙に書かれた。(らしい。)


「エヴィっいうのは、ラニザの町の女の子なのね?」


『そう。』


 こうして、王都のミラ姉たちとの会話?ができるようになった。でも、ミラ姉やロジャーが言っていることをシエンナがしゃべって、僕やシエンナの発言を文章に起こすってなんか手間がかかる。直接すことってできないかな…。まあ、とっても便利なんだけどね。今でも。


 ミラ姉の話では、ブラウンさんが執事とメイドをお世話してくれると言っていたから、さっきは断ったけど、今から行って、お願いできるかどうか聞いてくるということだった。エヴィへの指導ってしばらくは、アンディーにさせたらって言ってたけど、一応それもブラウンさんに頼んでみるということだった。


 冒険者ギルドのギルマスからの依頼。セイレーンの魔石を使った自動時刻合わせ機能が付いた腕時計の装飾は、今からアンディーが来るからアンディーに頼んでみたらと言ったが、アンディーだけじゃ難しいらしいと言われた。なんでも、セイレーンの魔石を使用したせいで、普通の金属加工ができなくなったそうだ。どうしては、聞いていなかったから、ギルマスに確認して欲しいとお願いした。


 お互いに、何か知らせないといけないことが出来たら、リングバードを通して知らせるということを確認して通信を終わった。


 話している途中から静止画通信からだんだんリアルタイム動画に変化していったとシエンナが伝えてきた。アンディーが王都に近づいてきているのだろう。


 僕は、ダイアリーにシエンナとドローンの情報共有実験について記入した。これを読んだ玲が、参考になりそうな遠隔通信の方法や理論を教えてくれたらいいのだけれど…。ダイアリーの新しいページをリペアして、ホームスペースにコピーする。


 そうだ。時計に魔道具機能が付与されて自動で時刻合わせができるよになったことも知らせておこう。次の面白道具のヒントになるかもしれない。僕は、もう一枚、日記のページを精錬すると、時計のことを書いた。アナザースペースに戻るのが面倒だったから、そのままホームスペースのダイアリーにリペアだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る