第104話 新しい仲間

 ロジャーたちが王都で二人のマスターと話をしている頃、レイたちは、フォレストメロウの教会に来ていた。


 <レイ視点に戻ります。>

「ニコ神父~っ、マリンさんいますかー?」


 教会の裏手に回って大きな声で神父様たちを読んでみた。


「はーい。」

 マリンさんが、裏の畑の方から小走りに出てきてくれた。


「お早うございます。」


 僕が挨拶をすると


 畑の方から

「「「「おはようございま~す。」」」」


 沢山の挨拶の声が聞こえてパタパタと足音が聞こえてきた。


「いらっしゃい。レイ、アンディーと、あれ?」


「お久しぶりです。神父様。こちらは、新しいパーティメンバーのシエンナです。王都で出会って、仲間になってもらいました。」


「初めまして。シエンナです。宜しくお願いします。」


「初めまして。神父のニコライです。宜しくお願いします。」


 ニコ神父が代表して挨拶をしてくれた。


「神父様、販売用のポーションは、まだ残っていますか?長くお伺いできていませんが大丈夫でしょうか?」


「ポーションは、まだ、たくさんありますから大丈夫ですよ。ポーションもですが、皆さんで作ってもらった畑や果樹園の作物がことのほか高く売れましてね。教会の運営は、今のところ心配がない状況です。それに、ラニザの町から来たフローラさんたちのお手伝いで畑も順調なんですよ。」


「そういえば、シャルたちのこれからって決まったのですか?」


「いえ、まだ…、ということになりましょうか。そもそも、シャルちゃんたちって、フローラさん以外、成人していなかったんですよ。それなのにゴードンとかいう商人に将来を託したなんて…。よほどうまいこと言って引き取ったのでしょうが、あまりに軽率なことだと思います。ですから、ラニザの町の孤児院に引き引き取りにきてもらうのもどうかと思いましてね。」


 ニコ神父様は少し憤慨気味にお話しされていた。シャルたちには聞こえないように気を使っているようだけど、今のところこの教会で預かっておくつもりのようだ。


「あの…、できればで良いのですが…。」


「えっ?何ですか?まず、言ってみて下さい。私共わたくしの教会は、皆様にできる限りの協力は致しますよ。」


「あっ、はい。ありがとうございます。では、あの、ですね。」


「レイ。俺がお願いするよ。」


 しどろもどろの僕に変わってアンディーが説明とお願いをしてくるそうだ。


「実は、今回、フォレポイ村を砦にする計画を王宮が許可してくださいまして、俺たちは、その計画を進めるためにロックバレーに行ってるんです。ところが、俺たちが仕事で飛び回っている間にも王都やフォレストメロウの色々な人たちから依頼や手紙がやってくるようになってしまったんです。そこで、お願いと言うのが、フォレポイ村で留守番して、俺たちの仕事を手伝ってくれる人を紹介して欲しいということなんです。しばらくは、留守番ですが、フォレポイ村の砦化が終了したら、メイドとしての勉強や仕事の勉強をして、フォレポイ村の拠点を取り仕切ってもらえないかなという願いもあるのですが、ラニザの町の皆さんはどうでしょうか?」


「あの…、それとですね。実は、少し危険なんですが、もちろん僕たちが、危険のないように対処はする予定いや、絶対するのですが、ロックバレーの拠点や石切り場の入り口の辺りで、道具屋を取り仕切ってくれる人もいたらお願いしたいのですが…。」


「ちょっと整理して良いですか?」


 ニコ神父様が聞いてきた。


「はい?はい。大丈夫です。お願いします。」


「まず、君たちの手伝いをしてくれる仲間を見つけているということで間違いないですか?」


「はい。そうです。僕たちの仲間になってくれる人を探しているんです。」


「そのような者たちは、村にはいないのですか?」


「そうですね。それぞれ仕事を持っていたり、村を出たりしていますから。それに、村の砦化計画には、村の人総出で加わることになると思うんです。」


 神父様の質問には、僕が答えた。


「砦づくりは、村のかた、全員で取り組む重要案件ということですね。それじゃあ、村人の手は期待できませんね。それで、何人必要なんですか?この教会で、今の話の手伝いが出来そうな人数はそう多くはありませんよ。」


「そうだな…。留守番は、2人で十分だろう。道具の販売は、石切り場の入り口には、朝から夕方まで2人。ロックバレーの拠点内に2人。討伐が終わったらロックバレーの拠点の方は、0人になると思う。ロックバレーの方から、フォレポイ村の方に移ってもらう形になるだろう。」


「レイ兄ちゃん、石切り場の道具屋って俺でもいいか?」


 ケインが聞いてきた。


「俺、できれば、冒険者になりたいんだけど、11歳じゃ見習い冒険者にも成れないからさ。レイ兄ちゃんたちの側で修行させて欲しいんだ。成人の儀で職業を貰っても冒険者に成れないかもしれないけど、自分の夢に向かって今できることやるのって楽しそうじゃん。」


「ニコ神父様、ケインがあんなこと言ってますけど良いんですか?僕たちはかまいません。危ない目に合わせないように対処しますから宜しいですか?」


「ケインの望みだからな…。ただ、本当に怪我したり、死んだりしないでしょうね。それだけは、心配です。ロックバレーと言えば、たくさんのロックリザードに占拠された石切り場ですからね。」


「僕ができる限りの安全対策を行います。ケイン、仲間になってくれるか。」


「それじゃあ、仕方ないわね。私も、ケインに付き合ってあげるわ。」


「エミリー姉、何で、僕に付き合うってどうゆうこと?」


「あんた一人じゃ心配だからね。私は、エアカッターだってできるのよ。いざとなったらあんたを守ってあげる。お姉ちゃんに任せなさい。」


「エミリー…、ケインは、遊びに行くんじゃないんですよ。魔物が出る危険な場所に行くと言っているのですよ。」


「そうよ、神父様。だから、お姉ちゃんの私がついて行ってあげなきゃ心配でしょ。大丈夫。ケインは、私が守ってあげるから。」


「うう…ん。ところで、二人ともお金の計算はできるのか?道具屋の手伝いなんだからな。それが出来なきゃ失格だぞ。」


「ケインは難しいかもね。私は、お姉ちゃんだから金貨までの計算も楽勝よ。いまでは、教会で小さい子に教えているんですからね。」


「ばっ…、バカにするな!俺だって楽勝だ。今までだってちゃんと勉強してきたんだからな。」


「今回は、1つ銅貨5枚で販売するんだ。じゃあ、「4個くれ。」って言われたら、料金はいくらだ?」


「銀貨2枚。」

 とケインが答えると。


「それか、銅貨20枚だよ。」

 とエミリーが答える。


「計算は、大丈夫なようだね。」


「じゃあ、私が、村の留守番をする。」


 シャルは、計算に自信がないのか、村に一度寄った時、気に入ってくれたからなのか留守番の方に手を上げてくれた。


「シャルちゃん、どうして村の留守番がしたいの?」


 ラニザの町から一緒に来た女の子がシャルに聞いた。


「アリアお姉ちゃんも一緒にお留守番しよう。そうしたら、メイドやお仕事のお勉強もできるんだよ。アリアお姉ちゃんお針子仕事も上手だけど、メイドもできる様になったらすごいと思わない?」


「シャルちゃんは、そんなことまで考えてお留守番するっていたのね。そうね。私もシャルちゃんと一緒にお留守番のお手伝いさせてもらおうかな。お仕事の勉強してみたいし、メイドさんのお仕事もお勉強できるのでしょう?」


「王都の知り合いにお願いして、先生してくれる人に来てもらうよ。約束する。」


「それでは、残りは、ロックバレーの拠点の道具屋の手伝いですね。フローラとエヴィは、どうどすか?」


「私は、やってみたいな。道具屋…。今、メタルクラフトってスキルを持っているんだけど、何に役に立つのか良く分からないの。誰か、スキルの使い方教えてくれる人が居れば嬉しいんですけど。」


「エヴィは、以前から物作りやってみたいって言ってたからね。道具屋のお手伝いはちょうど良いわね。でも…、私は…、神父様?」


「どうしたんですか?フローラさん。」


「私は、出来ましたら、この教会でシスター見習いをさせて頂けませんか?畑のことも気になりますし、残った子供たちのことも気になりますので…。この教会に、シスター見習いは、置いていただけないでしょうか?」


「その申し出は、大変ありがたいのですが、本当に宜しいのですか?レイ君たちの仲間になれば、この先たくさんの思いもよらないような経験ができるかもしれませんよ。ワクワクするようなね。」


「そうですね。そんな経験や冒険も楽しいかもしれませんが、この教会で、子どもたちと一緒にご飯を作ったり、畑を耕したりするのも素敵だと思うのんです。できれば、そちらを選びたいと。」


「分かりました。シスター見習いとして、この教会で働いて下さい。宜しくお願いしますね。」


「レイ君、そう言う訳で、ここの教会で、君の手伝いが出来そうな子たちは、もういなくなったんだ。後1名、道具屋の手伝いはどうする?」


「そうですね。エヴィに物作りを教えてくれそうな方を冒険者ギルドか鍛冶師ギルドに紹介してもらって、ロックリザード討伐の間だけ手伝いに来てもらいましょう。依頼料を払えば、信頼できる人を紹介してもらえるはずですから。」


「そうか…。そうしてもらえるなら、エヴィも安心だな。宜しく頼むよ。」


「はい。フォレポイ村のお手伝いは、明日からお願いできるかな?今から、村に帰って、部屋を作ったり、村長さんに話したりするからさ。明日の朝、迎えに来るから準備しておいて。それから、移住に必要な物をそろえる費用を渡しておくから、特に着る物。下着も買っておいてね。一人に銀貨2枚で足りるかな?」


「レイ君いや、レイ殿、一人銀貨2枚など高額すぎると思いますよ。下着はともかく、服は、皆、古着屋で購入するのですから。」


「神父様、留守番も含めて、皆さん仕事着が必要になります。それは、人と会うための物ですから、古着ではない物、新しい、仕事着を準備してくださいね。道具屋の店員の方に聞いてどのような服が必要か確かめてから買うようにすると間違いないと思います。」


 それから、僕は、フローラさんの方に近づいて行った。


「それから、フローラさん、人手をみんな、私たちが連れて行ってしまいますが、後、宜しくお願いします。フローさんにも、銀貨2枚お渡しします。就職祝いだと思って受け取って下さい。みんなを連れて、出発の準備をさせて下さいませんか。そうしないと、手伝いに来てくれる子たちも思い切って買い物ができないと思うので…、宜しくお願いします。」


 それから、もう一度、みんなに向かって確認した。


「ロックバレーの拠点への出発は、まだ少し後になると思うけど、準備が出来たら向かいに来ます。そして、シャルとアリア、明日の朝、迎えに来るね。準備大変だと思うけど、宜しく。」


 それから、教会の皆さんに見送られて、冒険者ギルドに向かった。今日、新しい仲間が5名増えた。僕たちが冒険を続けていくために必要な仲間たちだ。

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