第100話 王都到着

 <ロジャー視点>


 大体、なんで俺が、王都に行かないといけないんだ。ミラ姉の指示には従うよ。よっぽど間違ってない限り従うさ。それでもさ。おれって、荷物持ち?


「ロジャー、先頭交代お願い。そろそろ疲れてきたわ。」


「了解。」


 俺は、ミラ姉の前に出た。ぶっ飛ばしていく必要はないから、全速力の7割程度の速さだ。それでも、普通の冒険者に比べても早いと思う。ギヤの使い方や隊列の組み方が巧みだからだ。王都まで450km程度。後1時間半くらいで着くかな。


 しばらく走っていると、前方に商隊が見えた。後ろのミラ姉に合図を送り、左に避ける。


 王国内に走っているマウンテンバイクやゴーレムバイクの台数はまだ少ない。レイやアンディ―が作っている物しか流通していないからだ。でも、冒険者ギルドや王宮が購入したバイクとたまにすれ違うようになってきた。それで、左側通行が周知されることになり、商隊もマウンテンバイクにあまり驚かないようになった。


 その後も数台の商隊にすれ違ったが、魔物に出会うこともなく王都に到着した。ミラ姉と先頭を2回交代した。フォレストメロウを出発して2時間15分で到着したことになる。王都の門でギルドカードを提示するとぐに通してもらえた。


 王都に入るとたくさんの自転車が行き来していた。レイが作ったマウンテンバイクではない自転車だ。変速ギヤがついていない簡単な構造の自転車だけど、マウンテンバイクをギルドに紹介して1カ月もたっていないのにこの台数を流通させるなんて鍛冶師ギルドと商人ギルド恐るべし。


「ロジャー、このまま宿に行って部屋を取りましょうか。」


「そうだね。話がすぐに済むなら、ロックリザードの皮を引き渡してフォレストメロウに帰るって手もあるけど、まず、無理だろうね。」


「この前の宿で良いわよね。」


「いいよ。」


 宿の受付に行き、部屋を取った。今回は、シングルを二つ取ることにした。二部屋続きの部屋を取るよりそったの方が断然安い。部屋で装備を外し、大浴場に行く。部屋をできる時にミラ姉も出てきた。フォレストメロウから王都まで走るとさすがにほこりだらけになる。お風呂は、必須だ。


「ロジャーもお風呂よね。」


「勿論。全身、ほこりだらけだからね。」


 もう秋だが、昼間の気温は高い。マウンテンバイクで走っている時は、風があるから暑さはそう感じないけど、汗はかく。その汗に埃が付くからすごいことになっていた。


 髪の中に、たくさんの細かい砂がたまっていた。洗い流してもなかなか取れないくらい。時間をかけて、全身のほこりを洗い流してゆっくりとお風呂に浸かった。お湯につかって暑くなったら、水風呂に入って体を冷やした。汗が引いたくらいで水風呂を出た。


(さっぱりしたー。何か冷たいもの飲みたいな。)


 風呂上がりに宿の軽食コーナーに寄って冷たい飲み物をもらった。部屋番号を伝えれば、お金がなくても大丈夫だ。ストレージに金貨は入れているけど、こんなところで金貨を出すなんて無粋ぶすいなことはしない。


 ゆっくりと冷たいジュースを飲んでいたらミラ姉がお風呂から出てきた。


「あら、美味しそうね。私も頂こうかしら。」


「いつもだったら、この位の時間走ったら、途中の休憩タイムでジュースなんか飲んでいるからね。流石に、回復ポーションだけだと喉が渇くよね。風呂にも入ったし。」


 ミラ姉がジュースを飲み終わるのを待って、一緒に部屋に戻った。部屋に戻って、間もなくドアがノックされた。


「ロジャー、メッセージカードが置いてあったわ。受付に来てくれだって。」


「ほーい。今、出て行く。」


 ミラ姉と二人受付に降りていくと、ブラウンさんが待っていた。


今日こんにちは、急にお伺いして申し訳ありません。」


 ブランドンさんが丁寧にお辞儀をしながら挨拶をしてきた。


今日こんにちは。私たちが王都に来たことは、まだ、どこにも知らせていないはずなのですが…。どうして、ここにいることが分かったのでしょう?」


「ギルドの者が王都の門を入ってくるお二人を見かけておりまして、私に知らせてくれたのです。あっ、立ち話も何ですから、あちらの方へ移動しましょうか?」


 俺たちは、さっきジュースを飲んだ軽食コーナーとは別のコーナーと言うところに案内された。


「早速なんですが、実は、先日、ポーションの注文をドローンに託したのですが、まだ帰ってこないのです。それで、何かあったのかと心配になりまして…。」


「「あっ!」」


「心当たりがおありなんですね。無事なら良いのですが…。」


「心当たりあります。多分、ドローンは、フォレポイ村、私たちの住んでる村ですが、村で私たちを待っているんだと思います。ギルド依頼で村を出ていて、ここ数日帰っていないんです。」


「良かった。何かあったのかと心配しておりました。ドローンの心配ではありませんよ。皆さんをです。」


「今から、レイに連絡を取って村に向かわせますね。それと、これからも留守のことがあるかもしれないから、何か対策を講じておかないといけないですね。」


「メイドか執事をお雇いになれば宜しいのではないでしょうか?何なら調剤ギルドから誰か派遣しましょうか?」


「王都からフォレポイ村まで来ていただくわけには…、申し訳なさすぎますし、私たちの家は、メイドを雇うような立派な家ではないのでして…。はい。」


「行くと言えば、あの…、調剤ギルドにゴーレムバイクを5台程融通していただけないでしょうか?私共のギルドには、身体強化を持つ者がほとんどいなくて、マウンテンバイクでは、診察や治療に行くことが難しいのです。そこで、緊急時の為、是非、ゴーレムバイクを備えておきたいのですが…。」


「そんな事情なら、是非、備えてください。それも、レイに伝えますね。あっ、でも、冒険者ギルドから購入したことにしてくださいね。どこから、購入したかを隠匿するために必要なことなので。」


「勿論です。隠匿の契約はわたくしたちもしておりますから、ご心配なく。」


「レイには、今日中に連絡が付くと思います。私たちは、今から王宮に依頼の品を届けに参りますから、ゴーレムバイクについては、明日にでもどのように届けるかをお知らせに行きます。」


「有難うございます。では、明日、宜しくお願いしたします。」


「私は、今からレイに手紙書くわ。ロジャーは、王宮に行って、依頼の品を持参した故の面会を願い出て来て。この宿にいることもちゃんと伝えてよ。」


「分かった。行ってくる。」


 俺は、宿を出て王宮の門の所に行った。門番にミラ姉に言われたことを伝え、宿に戻ろうとすると後ろから声を掛けられた。


「ロジャー殿。」


「あっ、ウィルさん。今日こんにちは。」


「もう王都に戻ってこられたのか?帰郷されてまだ数日しか経っておらんぞ。」


「王宮からの依頼の品を届けに来たんです。」


「依頼の品とは何なのだ?」


「ロックリザードの皮です。1000体分の。」


「それは、また、豪華な依頼だな。一体いくらで引き受けたのだ?」


「いくらかな…。金貨1000枚?」


「いくら、ロックリザードの皮が貴重だと言ってもそれはないだろう。それを1000枚分ともなれば、国家予算並みになってしまうぞ。」


「いやいや、全部で金貨1000枚ですよ。でもあれ?ギルド依頼は金貨1枚だけど、俺たちは、ギルドを通していないから金貨1枚は、もらえないんじゃあ…。タダ働き?そんなー…。」


「ロジャー殿?一体どうした。それに全部で金貨1000枚って何のことだ?」


「いえ…、何でもないです。いくらで渡すのか聞いてなかったので…。ミラ姉に聞いておきます。」


 そういえば、契約書にも初めの1000枚を納品しろと言う指示だけで、値段のことはかいていなかった。うっかり契約だ。ギルド依頼をするからそこからもらえるんだったら金貨1000枚だけど、ギルドを通しいてないから…、最低でも金貨1000枚は貰おう。


 そう決意して、宿に戻った。






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