第99話 依頼評価ランク

フォレストメロウの町を出て、30分後、拠点の前に着いた。


「ガルド、跳ね橋を下ろしてくれ。」


僕の指示をシエンナがガルドに伝えてくれた。何か、僕の指示で、ガルドが跳ね橋を下ろしてくれたみたいだ。シエンナが指示を出しておいてくれれば、僕の指示でもいろいろしてくれるようになるんだろうけど、今、ガルドに指示できるのはシエンナだけだ。


跳ね橋が下りて来た時点でギルマスの口は空いていたけど、拠点の中に一歩入り、ぐるりと見まわした後、目玉が飛びだしそうなくらい驚いてくれた。


「おい。これで金貨20枚か?」


「ええっ?。かなりサービスしたつもりですよ。」


「いや、済まない。これで、たった金貨20枚で良いのかと言う意味だ。これは、もはや砦ではないか。国家事業だぞ。」


「そんな、大袈裟な。3日で作り上げたものですよ。頑張りましたけどね。僕もアンディーも精一杯頑張りましたよ。ただし、家具や調理道具なんかはサービスではできませんよ。別料金になります。ただし、共同使用ということでパン窯は、設置させてもらいました。屋外にですが、食堂兼酒場で使用しても構いません。」


「そう…か。では、建物の中も見せてくれないか。屋根がある建物があるだけで、ギルド依頼は達成しているのだが、一応見せてくれ。」


「じゃあ、ギルド出張所からですね。こちらです。カウンター等は、ギルドの方で設置お願いします。裏口がこちらで、ギルド職員の宿泊所に行くことができます。建物は、話して設置しておりますが、非常時に魔石に魔力を貯めておいて、魔力を流せば結界が張られるようになっています。地下は、避難所になっていて隣の食堂職員の宿舎の避難所とつなぐことができます。ただし、食堂の方からは、開けることができませんから、避難誘導をよろしくお願いします。」


「魔術結界までつけてくれているのか…。すまんな。」


「魔石は、自分たちで準備してくださいね。拠点は、かなり堅牢に作っていますが、いつ、何があるか分かりませんからね。」


「次は、食堂です。ここも建物だけですが、たくさんの冒険者たちが集まってくると考えてかなり広く作っています。席のレイアウトにもよりますが、ギューギューに詰め込んだら400人は入ることができるんじゃないでしょうか。キッチンスペースと飲食スペースは区切っていますが、調理道具などは全く準備しておりません。ご注文いただければ、テーブルやイスなど設置可能ですが、別料金になります。」


「おう。分かった。食堂を出したいという申し出がいくつか来ている。全ての申し出を受けても大丈夫なくらい広い。多分、席のレイアウト次第では、800人以上収納することができるだろう。早く冒険者を集めないとな…。しかし、この砦、ロックリザードの討伐の時だけしか使用しないなんてもったいないぞ。」


「石切り場が再開されれば、石工の方なんかも利用してもらえると思うのですが、さすがにこの大きさはいらないでしょうね。」


「次が、宿泊施設です。男女別に作っています。共に、50m×30mの広さにしていますが、ベッドなどはまだおいていません。しばらくは、自分たちで寝床を作ってもらってと思っているのですがどうでしょうか?参加人数も分かっていませんし…。」


「凄い。お前たちだけで作ったのか…。拠点と言えば、木で策を作った簡易的な物を想像していたのだが、砦を作ったのだな。これなら、フォレストメロウの領主様の謹慎も解けるかもしれない。」


「領主様の謹慎って、何ですか?」


「いや、お主たちには関わりないことなのだが、ロックバレーが、ロックリザードの大群に占拠され、石切り場が使えなくなってしまったことの責任を取ってフォレストメロウの領主様は謹慎中なのだ。以前は、何度か、ロックリザードの討伐依頼も出されたのだが、数が数だけに焼け石に水でな…。この砦建築と、冒険者によるロックリザードの討伐の効果がいくらか上がれば…。領主様の謹慎も解けるかもしれない。謹慎と言ってもどちらかと言えば自主謹慎に近いのだがな。…、まあ良い。お前たち、良い仕事をしてくれた。少ないが、依頼料は、ギルドカードに振り込んでおく。後ほど、家具などの依頼もするかもしれないがよろしく頼む。勿論、評価はSだ。感謝する。」


「良かった。高評価ありがとうございました。それと、もう一つ見ていただきたいものがありまして。一緒にロックリザードがいる所まで来ていただけませんか?」


「何を見ていただくのですか?ガーディとバッキー、インディーとソーディーの連携なら、心の準備が必要ですよ。それに、中で討伐してくれる人が足りません。」


「違うよ。冷却ボムを見てもらって値段を決めてもらおうと思ってさ。」


「どういうフォーメーションで、見てもらうのでしょか?」


「俺が一人でやってみようか?収納は、レイにやってもらうけど。冷却ボムをアイテムバッグに入れれば一人でできるんじゃないかな?」


「発出の時に爆発したりしないかな?」


「大丈夫じゃないか?そうスピードも必要ないから、初速を時速100km位に抑えたらいいんじゃないかな。」


「危なくないように、体から話したとこから発出してよ。20発くらい渡しておくね。」


「何を見せたいんだ?お前たちだけで何の話をしているのかさっぱり分からないぞ。」

ギルマスは、少し不満顔だ。


「ロックリザード討伐の為の新しい魔道具を見てもらいたいんです。」


「ロックリザードは、低温に弱いと言うのは御存じですよね。」


「そうだな。奴らは、高山や寒い所には存在しないらしいからな。」


「僕たちが戦ってみたところ、急激に冷やすと、皮の強度も低くなるようなんです。冷やす前は、アンディーのソードショットも跳ね返したり滑らせたりするんですが、冷やすと刺さるようになるんです。それを見てもらいたくてご一緒したいのですが、時間は、まだ、大丈夫ですよね。」


「正確な時間が分からないから何とも言えないが、まだ、ギルドを出発して1時間ほどしか経っていないだろうから、後30分くらいなら大丈夫だと思うぞ。」


「正確な時間ですね。今、ギルドを出て58分です。ですから、急いで行って何体か倒すところを見てもらいましょう。」


僕たちは、バイクに乗ってロックバレーの狩場まで走った。急げば、拠点から5分程で着く。狩場には、ロックリザードが3匹居た。


「まず、冷却ボムを使わないでソードショットを撃ち込んでもらいます。」


『シュッ』


『ガッキーン、カランカラン。」


「ねっ、刺さらないでしょう。」


「では、冷却ボム2発。頭と首めがけて撃ち込んで!」


『ガチャ、ジャッ…、ガチャ、ビチョッ』


「先ほどソードショットをはじいたロックリザードの頭と首に冷却ボムぶつけました。それからの」


「ソードショット。」


『シュッ、グサッ』


「ねっ、簡単に刺することができたでしょう。頭の一番硬い所に一撃です。これで終了。収納します。」


「ギルマスは、近接戦士ですか?」


「おう。しかし、最近は、素振りもあまりしていないし、剣も持ってきていない。」


「大丈夫です。アンディー、ギルマスに剣を貸してくれない?」


「俺の大剣は、スピード重視の作りだからギルマスには軽すぎるかもしれないぞ。」


「ギルマス、最近、素振りもあんまりしてないそうだからちょうどいいんじゃない。」


「それより、たった二人で、ロックリザードを狩ることなんてできるのか?」


「アンディ―は、ひとりで狩っていましたよ。だから大丈夫。」


ギルマスが、狩場に降りて行ってアンディーと並んだ。アンディ―が指さしたロックリザードに向かって切るギルマスが走って行く。会敵直前、アンディーの放った冷却ボムが、ロックリザードの頭と首に当たった。


動きが鈍くなったロックリザードの首にギルマスの剣が食い込む。大剣を引き抜き、痛みにのたうち回るロックリザードの首にもう一撃。ロックリザードは、絶命し動かなくなった。


「冷却ボムの効果、確かに確認した。この冷却ボムを討伐のアイテムとして販売してくれると言うのだな。」


「最後の一頭も討伐しておこう。」


ギルマスはそう言うと狩場に残っていたロックリザードに向かって走って行った。


「冷却ボム、冷却ボム。」


アンディ―が、頭と首に冷却ボムをぶつけた。ギルマスは今度は一撃で首を落としてロックリザードをを絶命させた。


「この魔道具、幾らで販売してくれる?」


「2発命中させないと、うまく効果を発揮しないようなので、2個セットで銀貨1枚でどうでしょう。金銭的に厳しいパーティーも来ると思いますから安めに設定しておいた方が、討伐の時の安全マージンが上がるかと思います。」


「そうしてくれると、我々も助かる。依頼に応えてやってきた冒険者には、冷却ボムを使用するように周知しよう。製作と販売は、任せておいてよいのか?」


「分かりました。考えておきます。」


「では、私は、ギルドに戻る。依頼の評価は、Sだ。よくやった。」


「はい。高評価有難うございました。」


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