第97話 フォレストメロウの冒険者ギルド

「拠点づくりも終わったし、ノルマの1000体分の皮集めも終わったから、一回フォレストメロウに戻りましょうか。ギルマスに拠点の確認もしてもらわなくちゃいけないからね。」


「ミラ姉、僕を後ろに乗せてくれない?ロックリザードを精錬して皮づくりをしながら、そのほかの素材も取りたいからさ。」


「俺の後ろに乗ればいいじゃないか。」

 とロジャーが、誘って来る。


「ロジャーの後ろは怖すぎて、落ち着いて精錬できないから無理。それと、帰りに狩りをしないでよ。僕たちのお肉は、今のところ売るほどあるからね。これ以上ギルドの仕事増やすと怒られるよ。きっと」


「なんか、レイがお父さんみたいだ。」

 とアンディ―。


「はいはい、もうやめ!」

 ミラ姉の一括でみんな静かになる。


「さあ、町に戻るわよ。ゴーレムたち、お留守番お願いよ。レイ、もう、忘れていることない?」 


「忘れていることはないよ。したい実験ならあるけど、後でやるから大丈夫。」


「レイがまた変なこと思いついたみたいだぞ。アンディー!気をつけろ。」


「ねえ、ミラ姉、次にここの拠点に来るのは、いつになるかな?」


「ギルマス次第だけど、明日か明後日かな?」


「じゃあ、冷却ボムを何個か塀の上に置いておこうかな…。」


「どうして?」


「冷却ボムはしばらく置いておくと、冷たくなっているんだよね。つまり、冷気が少しずつ漏れているってことでしょう。4時間おいても爆発しなかったし、効果は変わらなかったけど、もう少し耐久性は確認した方が良いと思うだけど、どうかな?」


 「そうだな。耐久性は、安全性につながるな。俺たちだって、ロックリザードの討伐するときは、かなり動き回るからな。低ランクのパーティーだと俺たち以上に動き回って討伐に時間がかかる可能性がある。」

 アンディーもの耐久性の確認に賛成してくれたようだ。


「じゃあ、ゴーレムたちには、壁の側に近づかないように指示しておきましょうか?」

 とシエンナがゴーレムたちを心配して言ってきた。


「そうだね。冷却ボムで、ゴーレムが損傷することはないと思うけど、何か事故があったら大変だからね。でも、ロックリザードが寄ってきたりしたら使っていいって指示を出すことできる。」


「自衛に使用することは可能ということですか?」


「そう、そんな感じ。」


「はい。事故がないようになるべく近づかないことと、自衛のため必要と感じたら使用してよいことを伝えました。」 


「ゴーレムってそこまで判断できるの?」


「この拠点のゴーレムを私が使役していいですか?」


「良いけど、どうして?」


「私が使役したらかなり距離が離れていても、感覚共有できるんじゃないかと思うんです。そうしたら、この拠点で何があっているか見たり聞いたりできるでしょう。」


「それって、すごいね。実は、僕がやってみたかった実験の一つでもあるんだ。シエンナの感覚共有がどのくらい離れた距離でできるのか。」


「じゃあ、どの子を使役しましょうか?」


「ここのゴーレム、誰も魔力登録していないから、どのゴーレムでも大丈夫だと思うよ。」


「分かりました。やってみます。」


 シエンナは、側にいたゴーレムを呼び寄せて魔力登録を行った。


「あなたは、ガルド。この拠点を守ってちょうだい。他のゴーレムを指揮してね。何か変わったことがあったら、私に連絡するを忘れないで。もし、連絡が取れないときは、あなたが守衛の指揮を執るの、良いわね。」


 魔力を流し込み、使役は終った。いつもの4体は、アイテムバッグの中に待機している。これで準備は終了。フォレストメロウに向かって、出発だ。


 僕は、ミラ姉の後ろに乗った。集中して素材精錬をしないといけない。


 拠点からフォレストメロウまで、わずか20分くらい、僕は集中した。頑張って素材の精錬をしたけど、200体分の素材精錬しかできなかった。みんな、速すぎるよ。


 フォレストメロウに着くと真っ直ぐ冒険者ギルドに向かった。時刻は、2時になったばかり、ギルドの中はほどんど誰もいなかった。


「今日は、ティア。」


「今日は、ミラ。みなさん。」


「ギルマスいる?」


「王都からの依頼のための人集めでバタバタしているみたいだけど、執務室に居るわ。あなたたちを待っていたみたい…、いや、待ってはいないわね。あなたたちに用があるみたいだったわ。ちょっと待ってね。部屋に通して良いか聞いてくるから。」


「待ってる。」


「あっ。そういえば、この前お願いした魔物の解体終ったかな?」


「えっ?魔物の解体?あっ、大量の魔物の解体依頼があったって言って毎日残業してるわ…。まだかな…、昨日も残業してたみたいだったけど…、聞いてみたら?」


 ティアさんは、僕の質問に答えながら、ギルマスの執務室に入って行った。


「部屋にどうぞー。」


 ティアさんが執務室の前から大きな声で読んだ。今、解体所に解体が終わったか聞きに行こうとしたのに…。」


 執務室に入ると、ギルマスは机の上にたくさんの書類を積み重ねていた。なんか忙しそうだ。


「おう、途中経過の報告か?お前たちにしちゃあ気が利くじゃないか。てっきり拠点が出来上がるまで、町のギルドに寄りつかないと思っていたぜ。で、拠点づくりはどの位進んだんだ?」


 「今日は、拠点づくりの依頼が終了したので、その査定のお願いに来ました。」

 と、ミラ姉。


「それに、Cランク以下のパーティーに使い勝手がいいロックリザード討伐用の魔道具もできたので、その相談もしたくて来ました。」

 これは、僕。


「もう一つ、王宮依頼のロックリザード1000頭分の皮も終わりましたので、それ以上を王宮販売か、ギルド販売かで迷っているんですよね。どっちがいいと思いますか?」

 これは、ロジャー。


 「ちょっと待て、いい加減な拠点ならだめなんだぞ。ギルド出張所と食堂兼酒場と冒険者の宿泊所は揃っていないとだめだって言ったよな。それでも、大丈夫なのか?」


「はい。出来上がっておりますので、是非、査定にいらしたください。今、シエンナが使役しているゴーレムが警備しています。もしも、拠点に追加注文がありましたらうけたまわりますので、遠慮なくおっしゃって下さい。」


 「家具でもご相談に応じますよ。高級家具でも私がきっちり、お納めいたしますので、ご遠慮なく個注文ください。」


 アンディーが珍しく売り込んできた。今回、かなりたくさんの細工をしたから自信がついたようだ。


「お前たち、どんな営業トークだよ。それに、いったい、どのくらいの広さの拠点だったらこんなにに早く作ることができたんだ?」


「そこそこの大きさですよ。200mの拠点になっています。」


「た…、確かに、その大きさなら大丈夫だと思う。この町だって、塀で守られているのは、2km四方位だからな。」


「それで、査定は、いつになる?」


 ミラ姉は、営業トークはやめていつも通りの口調に戻った。


「書類仕事にもいい加減飽きてきたからな…。休憩がてら今から行ってみるか…。」


 ぼそぼそと独り言を言っているギルマス。


 「おーい!エイデン。」


 ギルマスは、ドアを開けて、副ギルドマスターのエイデンさんを呼びつけた。


「へい、何ですかギルマス。」


「うむ。今から、こいつらが作った拠点の査定に行こうと思うのだが、マウンテンバイクは、まだ、一台ギルドに残っていたよな。」


「へい。残っていますよ。でも、後2時間位で王都方面のギルドに手紙を届けに行っていたギランたち3人が帰ってきますぜ。モトス湖方面のギルドへの手紙はもう書き終わったんですかい?」


「モトス湖方面の手紙は書き終えた。これで、全方面、パーティー派遣の依頼の手紙は書き終えたことになるだろう?だから行ってくる。この儲け話を逃したくない、足の速い連中が明日くらいからやってくるかもしれないだろう。その為にも、拠点の確認は重要だろうが。なっ、だから、マウンテンバイク、出してくれ。」


「はいはい。分かりました。ただ、書類仕事から逃げたしたいだけのような気もしますがね。」


 ギルマスが、視察の準備をしている間、シエンナとゴーレムとの情報共有実験をした。


「何も異常はありません。情報共有問題なくとは言えませんが、今のところで来ています。」


「問題って何なの?」


「近くにいる時のように、視覚情報は、明瞭ではありません。止まっているような場面が時々送られてくるような感じです。ゴーレムからの言語イメージ情報もまとまって時々送られてくる感じですね。会話をしているような感じではありません。たとえるなら、数秒?ごとに手紙が送られてくる感じでしょうか?」


「じゃあ、何かあった時に指揮することはできそう?」


「リアルタイムに細かい指揮を出すことはできないと思いますが、作戦を伝えることはできると思います。」


「スムーズにに情報をやり取りするための対処方法ってないかねぇ。」


 そんな話をしていると、マウンテンバイクを持ったギルマスがギルドから出てきた。


「そういえば、お前たち、この前のロックリザードの皮と魔石の査定終わっているぞ。皮を売ってくれるなら査定量は無料だ。どうだ?すべて買い取りは、予算的に難しいが、預かっておいて、代金ができ次第順次買い取りという方法も考えて欲しいのだがな。それと、大量の魔物の解体。昨日終ったそうだぞ。魔石と肉と皮、売ってくれるのか?」


「解体素材は、一度収納して分析したいので頂けませんか?その後、僕たちが要らないものは全部ギルドに卸しますから。ロックリザードの皮は、これからたくさんギルドに入るんでしょう。そんなに買い取って大丈夫ですか?」


「ロックリザードの皮は、どこでも不足しているからな。ギルドに卸してもらえると助かるのだ。まずは、小さい物から10体分。1体分につき、金貨100枚だ。考えておいてくれ。それじゃあ、解体所に寄っていけ。ここで待ってるから。」


 僕が、処理場に素材を取りに行こうとしたとき、ミラ姉がギルマスに話しかけた。

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