第94話 シエンナのフォーメーション
拠点が完成して、門を出たのが3時30分。アンディーは、とっくの昔に塀の強化を終えていたんだけど、僕の拠点施設づくりを手伝ってくれた。おかげでかなり細かい作りができたと思う。
僕が大雑把な建物を作った後、アンディーがドアに飾りをつけたり、窓を整えたりしてくれたからだ。それに、壁を付けたのは、ほぼアンディーだった。
出来上がった拠点をゆっくり見て回りたい所なんだけど、冒険者を呼んで、本格的に狩りを始めてもらう前に連携の準備をしたり、必要な道具を準備したりしないといけない。
まずは、事故が起こらないように、ロックリザードの数をコントロールする連携から行うことにした。
僕たちは、冒険者たちの狩り場と、ロックリザードの数をコントロールするため蓋になる場所を探していった。そこでは、シエンナとゴーレムでロックリザードの数をコントロールしてもらう。ある程度の数を残して冒険者に狩ってもらい、狩り終えた数、蓋を開けて追い入れるようなことをしてもらうのだ。
狩りに参加する冒険者の数にもよるが、蓋の中にバーディーの数と同数のロックリザードしか入れられない。高ランクの冒険者なら次々狩って行くだろうから蓋を開けるだけじゃなく、追い込まないといけなくなる。追い込み兼蓋がソーディー。蓋兼、狩場への追い出しがシエンナ。シエンナの後ろを守るのがガーディーになる。
昨日、入り口付近のロックリザードは、狩り尽くしていたから、少し奥に入った。地形を確認しながら入って行くと、昔、石の切り出しをしていたらしい広場があり、ロックリザードが20頭程、のんびりと石を食べていた。同じような石に見えるのだけど、競い合って食べている石と転がっているのに見向きもしない石がある。どこが違うのだろう。不思議だ。
広場の先は、谷が迫っていてしばらく狭い通路のようになっていた。アンディーに崖の上から確認してもらうと、谷の先にはまだ、たくさんのロックリザードがいるようだ。ソーディーに谷の中ほどに陣取ってもらい、シエンナには、広場の入り口近く、ガーディ―には、シエンナの後ろについてもらう。
「じゃあ、始めるね。僕とアンディーでこの広場にいるロックリザードを狩っていくから、シエンナは、広場のロックリザードが5匹くらいになるように数を調整していって。初めは大急ぎで狩るけど、5匹に近くなったら、ペースを落とすから。お願いだよ。」
「アンディ―、始めるよ。」
「了解。」
近くにいるロックリザードの首と頭ににリキロゲンボールをぶつける。動きが悪くなったロックリザードの頭にアンディーのソードショットだ。固い頭を大剣が貫き、ロックリザードは、絶命した。直ぐに収納しながら次のロックリザードの頭と首にリキロゲンボール。ソードショットで絶命。…。10分もかからず15頭のロックリザードを仕留めて収納した。
「次、倒したら、5頭入れてー!」
「分かったーっ」
ロックリザードにリキロゲンボールからアンディ―ののソードショット。収納。
「アンディ―。」
僕は収納してたまった大剣らアンディーの方に積み上げた。
アンディーが、積みあがった大剣を収納したのを確認して、
「リキロゲンボール!」
「ソードショット」
残りが4頭になった。
このタイミングで5頭のロックリザードが広場の中に入って来た。
アンディーの方に走って来たロックリザードに
「リキロゲンボール。」
続いてアンディーが
「ソードショット。」
「リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール。」
「ソードショット、ソードショット」
連続で2頭倒した。
「収納、収納」
「リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール、リキロゲンボール。」
手当たり次第に、リキロゲンボールで動きを止める。
「ソードショット、ソードショット、ソードショット」
追い込んでもらった5頭は倒し終えた。
「次、5頭お願~い。」
「収納、収納、収納」
「アンディ―っ」
5本の大剣をアンディ―の側に出すと直ぐにアンディ―が収納した。
「追い込みました~。」
シエンナが声をかけてきた。
「了解~。この後、蓋をして次を入れないで~!」
「分かりました~。」
狩場のロックリザードは、9頭だ。
「リキロゲンボール、リキロゲンボール、…」
18発のリキロゲンボールでロックリザードの動きを止める。
アンディーも被せてソードショットを放ってきた。
「ソードショット、ソードショット、…。」
9発のソードショットで狩りは終った。後は、地道に収納だ。
15分程で30頭のロックリザードを狩り終えた。
広場のロックリザードを狩り終えてシエンナを呼んだ。
「ねえ、シエンナ、もう一体ゴーレムを使役してシエンナの役をさせることができる?ガーディ―タイプでもソーディーにタイプでも良いからさあ。」
「ガーディ―タイプのゴーレムならできるかもしれません。」
「分かった。ガーディ―タイプのゴーレムを一体出すね。」
僕は、大楯を持ったガーディ―タイプのゴーレムをシエンナの前に出した。
「シエンナ、魔力登録お願い。」
「はい。」
シエンナは、魔力登録をしながらゴーレムに話しかけている。
「お前は、インディー。私が指示するように魔物を誘導して頂戴。頼んだわよ。」
「終わりました。それで、私は、何をすればいいのですか?」
「シエンナは、この広場と蓋になっている谷が見渡せる場所から狩りをコントロールしてもらいたいんだけどできるかな?」
「では、広場の終わり、谷の入り口の前にある崖の上が良いかもしれません。」
「でも、あそこじゃ、ガーディ―が背中を守る場所が取れなよ。狭いし、ガーディ―が登ったら崩れちゃうかも。」
「じゃあ、コテージの中で見張りをしてくれているくらいの大きさのゴーレムも使役させてくれませんか?」
「ガーディ―は、収納しておくのかい?」
「崖下に待機してもらって、危ないパーティーが居たら援助に回るようにしたらどうでしょう?」
「そりゃあ、事故防止には効果的なフォーメーションになるかもしれないけど…、4体もの同時使役はかなりハードなことにならないか?」
アンディーが心配そうに聞いてきた。
「さっきの連携は、楽でしたし、私のスキルもあるので指揮だけなら負担は少ないと思います。」
「えっ?シエンナのスキルって指揮系なの?」
「はい。職業が魔術指揮者、マギコマンダーですから。」
「じゃあ、小型ゴーレムも使役してもらうよ。」
「アルケミー・ヒューマノイドゴーレム」
「アイテムボックス・オープン」
僕は小型ゴーレムを精製するとシエンナの前に出した。
「魔力登録をお願い。」
「はい。あなたは、バッキー、私の警護をお願い。」
「じゃあ、フォーメーションの練習を始めよう。シエンナ、配置について。」
「はい。」
シエンナとバッキーは、広場と谷の入り口が見渡せる崖の上、僕と、アンディーが狩場、インディーとソーディーは、谷の方に配置した。
「10頭くらい追い込んで、その数―をキープしてくれる。」
「はーい。了解です。」
ソーディーが谷の奥から10頭ほどのロックリザードを追い込んでくると、インディーが10頭丁度にになるように蓋の所で調整して、10頭を僕とアンディ―の近くに誘導してくれた。
「リキロゲンボール、リキロゲンボール。」「ソードショット。」「収納」
三つのローテーションでロックリザードを狩り続けていったが、ほぼ10頭が維持されていた。
20分くらいで、息が上がって来た。
その間に一体何頭のロックリザードを狩っただろう…。
「一旦やめてくれ。疲れてきたよー。」
「ソードの材料が無くなって来た。ペースを落として一度大剣を収納させてくれ。」
「はーい。了解です。」
シエンナはそう言うと、蓋の所に溜まっていたロックリザードを追い払いながら、ガーディ―を僕たちの前に送って、ソードを出すことができる空間を確保してくれた。
「ありがとう。ガーディ―。」
僕はそう言うと、アンディーの前に200本以上の大剣を出した。
「残りのロックリザードを片付けるよ。」
「リキロゲンボール、リキロゲンボール…。」
20発のリキロゲンボールでロックリザードの動きを止めた。
「ソードショット、ソードショット…。」
アンディ―が、リキロゲンボールに被せる様に、10発のソードショットでロックリザードの息の根を止め、狩りは終了した。
さっきの、連続狩りで収納が間に合わなかったものも含めて、すべてのロックリザードを収納し、拠点に帰ることにした。
「シエンナの指揮は完璧だな。」
アンディ―がシエンナを褒めた。僕もそう思う。びっくりするくらい完璧だ。ゴーレムと連絡を取り合っているようだ。
「ありがとうごさいます。ゴーレム指揮にもだいぶ慣れてきました。ゴーレムからの情報をかなり明確に感じることができるようになってきたんですよ。」
「ええっ?ゴーレムを声を出さないで指揮してるのかなとは思わないこともなかったけど、ゴーレムから情報も受け取っていたの?すごいね。」
ゴーレムってしゃべれないから、なかなかコミュニケーションが取れないかなって思っていたけど、シエンナは喋っているのかもしれない。どの位明確に情報を受け取っているのか、いつか実験してみたいものだ…。
「ただいま~!今帰ったよ。橋を下ろして~。」
コテージに入って休憩しているとミラ姉たちが帰って来た。シエンナの完璧な指揮の話をしてやると見て見たいと五月蠅かったけど、「また今度ね。」とサラリ流した。だって、疲れているんだからね。
今日の成果
シエンナ・僕・アンディ― … ロックリザード 特上 250体
ロジャー・ミラ姉 … ロックリザード 上 200 体
中 100 体
この調子だと明日で1000体行くな。
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