第91話 拠点壁づくり
10時。僕たちは、ロックバレーに着いた。
「本当に、マウンテンバイクって速いですね。歩きなら1日かかる距離をあっと言う間ですから。」
シエンナはまだ、バイクでの移動に慣れていないから思わず言っているようだ。でも、すごいのは君たちだと思う。僕は、マウンテンバイクじゃこんなに速く移動することなんてできない。
「今日は、拠点づくりとシエンナとの連携練習を中心に活動しましょう。」
ミラ姉が提案してきた。
「どんな形の連携を練習するの?」
「そうねぇ。アンディーは、クリエートで石材をたくさん作らないといけないわよね。素材はたくさんあるから、近くの石を片っ端から切り出してブロックを作って。レイは、アイテムボックスに岩の塊を収納出来たら石のブロックを作ることができるでしょう。シエンナ、ゴーレムを2体出して二人の護衛をしてくれない。ロックリザードが近づいて来たら、一旦足止めをしてレイにリキロゲンボールをぶつけてもらって、ソーディーにとどめを刺させなさい。私とロジャーは、皮集めをしてくるわ。」
「「「「了解。」」」」
まず、入り口近くの石切り場で、ロックリザードの討伐から始めた。ミラ姉たちは、もっとロックリザードがたくさんいる所で狩りをすると言って奥に行ってしまった。
「アンディー右側、シエンナその左。」
僕は、近くにいるロックリザードにリキロゲンボールを2発ずつぶつけ、動きを止めると指示を出した。僕の動きに合わせて、アンディーとシエンナも移動する。2体ずつ仕留めては収納し、あっと言う間に近くのロックリザードはいなくなった。
「サーチをしたけど、ロックリザードは、近くにはいないみたいだから、石集め始めるね。アンディーが作ったブロックが500個くらいになったら教えて、収納するから。50cm四方のブロックでお願い。」
「了解。シエンナ、索敵と見張り頼む。」
「分かりました。」
それから集中して石のブロックづくりをした。できるだけ大きな岩の塊を収納しては、『アルケミー・ロックブロック 100』を繰り返した。大きな石の塊は、そうたくさんは転がっているはずないから時々、シエンナにお願いしてゴーレムパンチで岩を崩してもらった。流石に地面につながっている岩山を収納することはできなかった。やろうとはしたんだけど…。
アンディーは、僕について来ながら手当たり次第にブロックを作った。僕は、大きな岩の塊を探しながらアンディーが作ったロックブロックを収納していった。500個出来たらなんて言っている場合じゃなかった。
12時前には、5000個のロックブロックが出来ていた。僕たちは、ロックバレーの入り口にある広場に移動した。切り出した石を船に積むための船着き場が側にあった場所だ。船着き場は、壊れてしまっていたが、石を集荷していた場所が広がっていた。
その広場の片隅ににロックブロックを並べていく。川からは200mくらい離れた場所だ。内側一辺200mの正方形に並べてみた。かなり大きな拠点になる。ブロックを400個、角に4個、4辺で1604個をきれいに並べた。並べた1段目はアンディーの土魔法で全て土に埋めた。この上に石の塀を積み上げていくことにする。
「塀の高さは、5mは欲しいよね。壁の厚さはどのくらいいるかな?」
「ロックリザードから拠点を守ると考えると1mは欲しいかな…。」
「高さ5m、厚さ1mとすると何個ブックがいることになるかな?」
「内側に厚くするか、外側に厚くするかで変わって来るけど…、やっぱり外側だよね。狭くなるの嫌だからさ。じゃあ、置いてくよ。」
今度は、1辺に402個ずつ石を置いていった。角に4個置いて1612個。さっきと同じように地面に埋めて土台の完成だ。
一段に3216個必要なんだから5mの高さにするには後、その10倍、32160個必要になる。
「アンディ―、31000個くらい作らないといけないね。角の補強を考えるともう少しあった方が良いかもしれないけど…。頑張ろう。」
「レイ、違うぞ。塀の前に堀がある。その分も下に埋めておかないといけないから最低でもさらに、堀の深さプラス1ブロック分の外側の石の数必要になる。1612個×堀の深さの2倍と1612個だ。」
「堀の深さを3mとすると…、42500個くらい作らないといけないのか…。じゃあ、ブロックづくりに行こう。シエンナ、護衛お願い。」
それから、頑張った。5時間で約42500個作り上げた。1秒間で1個以上作れるようになった。僕もアンディ―も。その間に5匹ほどロックリザードが来たけど、リキロゲンボールを2個ぶつけたら後はシエンナに任せた。
その日の成果は、ロックブロック42500個。僕たちが狩ったロックリザードが57頭。ミラ姉たちは258頭も狩っていた。
ロジャーがストレージから出すロックリザードを次から次へと僕のアイテムボックスに移してアルケミーで素材に解体した。ロックリザードの皮は、後、695頭で良い。かなりのハイペースだ。
暗くなってきたから、村に帰るのはやめにして、コテージを出した。拠点予定地の中に7.5m四方の穴を掘ってコテージをセットする。ミラ姉に中で食事の準備をしてもらいながら僕とアンディーは、塀作りだ。ロジャーとシエンナが二人で護衛。途中、ロジャーは、晩御飯の肉を狩りに行ってしまった。
ライトの魔術で作業場所を照らしながら石を積み上げていく。外側の石を1段積み終わるとアンディーが埋めていく。これを6回繰り返して外側の基礎が終わった。
次から積み上げ作業と外堀を作る作業になる。そのころには、狩りを終わってロジャーが戻ってきていたから、僕の護衛をお願いした。アンディーは、外堀作りだ。護衛は、シエンナとゴーレムたち。
1時間程でアンディーたちは外堀づくりを終わった。僕は、まだ、4段目までしか積み上げ終わっていなかった。
「レイ、今日は、これまでにして明日、続きをやろうぜ。お腹が空いた。」
ロジャーの提案で塀の積み上げは一旦終わり、コテージで夕食を取ることにした。頑張ったよ。
コテージに入るとミラ姉が食事の準備を終えたところだった。中々僕たちが戻ってこないから色々作ったらしい。御馳走が並んでいた。ミラ姉は、氷魔術が使えるからマジックバッグでも肉や野菜を保存することができる。
ボア肉のステーキやロックリザード肉のから揚げもあった。シチューも作ってあって、肉と野菜の煮込み料理も絶品だった。ひとしきり食べるとようやく会話をする余裕ができた。
「明日なんだけど、ロックブロックは、もういらないんでしょう。後は、砦の中の建物づくりになるわね。あっ、でも塀作りはまだ終わってないんだったわね。」
「そうなんだ。後、1時間もかからず積み上げ終わると思う。終わったら、アンディ―に土魔魔術で接着強化してもらわないといけないんだよね。アンディーならできるでしょう?」
「クリエートの延長でできると思うぞ。でも、少し時間がかかるな。魔力もかなり必要かもしれない。まあ、やってみないと分からないけどね。」
「ところでさあ、塀を積み上げ終わる前に、堀に水を流し込んでも大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うぞ。堀を作るときに堀の壁と塀は、土魔術で強化しておいたからな。」
「壁を積み上げる前に、門を作り上げて、跳ね橋をセットするよ。堀に水を流し込めば魔物もそう簡単にこの拠点に入ってこれなくなるでしょう。いないと思うけど野盗もね。」
「分かったわ。作業順を整理するわよ。レイは、明日の朝一番に、門と跳ね橋を作る。アンディーは、その間に、堀に水を引き込むための水路を作る。この時の護衛はロジャーね。私が朝食づくりを担当して、シエンナがレイの護衛。朝食の準備が終わったら声をかけるから、みんなで朝ご飯をたべる。ここまでは良い?」
「水路は、堀側から作っていくことになると思うけど、上流方向と土地の傾斜は一致している?」
ミラ姉が確認してきた。
「一度確認してから作業を開始する。逆になっていたら水路の深さで調節しないといけなくなるからな。」
「朝ごはんの後は、レイは、塀作り、アンディーは水路づくりに戻って、私が空くわね。私は、晩御飯の肉を狩って来るわ。」
「あっ、さっき狩って来た。ブラッドブルとゲイルシープが取れたからレイ、血抜きして肉をミラ姉に渡しておいて。」
そういえば、ロジャーはさっき一人で狩りに行っていた。ミラ姉がロジャーをジト目で見た。きっと狩りに行きたかったんだ。
僕は、ロジャーから得物を受け取ると、血抜きをして、素材に分割し、肉だけを木材で作った保温容器に氷と一緒に入れてミラ姉に渡した。
「ありがとう。」
ミラ姉、目が笑っていないんだけど…。怖い。
「じゃあ、私は、このお肉を使って、美味しい煮込み料理でも作っておくね。」
「塀の積み上げと水路づくりが終わったら、次は?」
会話を変えよう。次に行かないとなんか怖い。
「アンディーは、塀の接合強化ね。レイは、建物の資材は全部そろっているの?」
「足りないかも。」
「じゃあ、シエンナと一緒に材木取りね。ソーディー用の斧を作ってあげればすぐに終わるでしょう。シエンナも斧使ってみる?」
「えっ?斧?、やってみたいです。」
「じゃあ、レイ、ソーディー用の斧とシエンナ用の斧作ってくれる?それとシエンナ用のアイテムバッグは、もっと容量増やせない?ソーディーとガーディを入れているから容量が小さくない?」
「午前中で、拠点づくりは目途がつきそうだから、午後から全員でロックリザード狩りするのも良いわね…。ロジャーと私は、水路に水がたまったらロックリザード狩りに行くわ。アンディーは、塀の強化、一人で大丈夫でしょう?」
「大丈夫だ。存分に狩りを楽しんでくれ。」
「じゃあ、明日も頑張りましょう。」
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