第90話 ロックリザード討伐依頼

 次の朝、僕たちはフォレストメロウの冒険者ギルドに向かった。昨日の夜、暗くなってすぐに王都からギルド依頼書と金貨、それに委任状が届いたからだ。王宮からのロックバレーでのロックリザード討伐依頼だ。それを持って冒険者ギルドに向かう。朝一番の仕事だ。


 冒険者ギルドに着くと人は多くはなかったが、受付に列はできていた。朝一番の時間。昨日飲みすぎた冒険者は、まだベッドの中だろう。この時間は初級冒険者が多い。割の良い仕事を探すためだ。


 受付に並ぶと直ぐに番がやって来た。


「お早うございます。ティアさん。」


「おはよう。名前覚えてくれたんですね。」


「はい?前から覚えていましたよ。」(ミラ姉が…。)


 僕が言うとティアさんは、少し呆れた顔をして聞いてきた。


「今日は、どんな御用でしょうか?」


「王宮からの依頼代理できました。」


「王宮ですか?少々お待ちください。ギルドマスターに報告してまいります。」


 しばらくしてティアさんが戻ってきた。


「ギルマスが、執務室に来るようにだそうです。」


 僕たちは、ティアさんに案内されギルマスの執務室について行った。


「おはようございます。ギルマス。」


「お早う。まあ、こっちに来て座れ。」


 僕たちが、ギルマスの前に座る直ぐに話が始まった。


「早速だが、王宮からの依頼の話、聞こうじゃないか。」


「はい。昨日、暗くなる頃、ドローンが王都から帰って来まして、契約書と金貨、それに委任状が送られてきました。」


「うむ、確認させてくれ。まず、委任状だ。」


 ミラ姉が、委任状を手渡す。


「間違いない。では、これから渡される依頼は、国からの依頼ということで間違いない。では、依頼契約書を見せてくれ。」


「おお!一頭に付き金貨1枚の討伐報酬。しかも、素材は、自由に扱って良いとは、破格の報酬だな。」


「ギルドに対しては、破格の契約内容だと思います。しかし、私たちと別の契約がありまして…。」


「どういうことだ?」


「アンデフィーデッド・ビレジャーとの契約として、ギルド契約維持の為、『鎧を作ることができる質のロックリザードの皮1000頭分を収めること。』という契約です。これって、ギルドポイントに加算されますか?国からの指名依頼にカウントして頂けますよね。」


「その契約書は、持ってきているのか?」


「勿論です。」


 ロジャーがストレージから契約書を出して、ギルマスに手渡した。


「うむ、確認した。この依頼を国からの指名依頼と認め、ギルドポイントの加算対象とする。依頼達成に向けて頑張ってくれ。」


 「はい。では、冒険者の手配宜しくお願いします。それと、討伐確認は、どうしますか?魔石でしょうか?」


「そうだな。魔石が一番確実だが、買取査定を同時にしないといけなくなるからな…。それ以上に、討伐報酬の支払いに関しては不正がないようにしないといけない。その為のギルド手数料なのだからな。」


 ギルマスは、悩まし気にこっちを見た。


「お前たち、村を砦にするためにロックバレーの奪回をしようとしているのだよな?」


 「はい?そうですが…、何か問題でも?」


「砦づくりの練習のために、ロックバレーに拠点づくりをしてみないか?宿泊所とギルド出張所、酒場兼食堂が作れるくらいの大きさの拠点で良いのだ。ギルドからの依頼ということで少しだが、報酬も出すぞ。その上、人件費はこちら持ちで、宿泊費の5割、食堂・酒場利益の5割をお前たちに渡そう。人件費の一部は、利益の中から出させてもらう。危険手当と、勤勉手当としてな。そうしないと、ロックバレーまで行って働いてくれるものなどいないのだ。」


「ロックバレーの攻略拠点づくりですね。契約書は直ぐに作ってもらえますか?」


 「おおっ!拠点づくり頼めるのか。契約書はすぐ作る。まってろ。エイデン!ちょっと来てくれ。国から大きな依頼が入った。」


 ギルマスは、ギルド職員の名前を呼びながら執務室を出て行ってしまった。


 しばらくして、ギルマスは、契約書を持って戻って来た。


「待たせたな。これが契約書だ。ロックバレーの拠点づくりに関する依頼契約書となっている。拠点の最低施設はさっき言った通り。簡易宿泊施設、食堂兼酒場、ギルド出張所の建物だ。できれば、塀で囲んで欲しい。その外側に堀を作ってもらえたら満点だ。塀の強度は高いほどうれしいが、木の塀でも構わない。内にいるのは殆どが冒険者だからな。成功報酬は、金貨20枚。この規模の拠点づくりに対しては少ないが、さっき言ったようにここの利用料から出る利益の4割5分を使用料として支払う。1割がここで働く者へのボーナス。残りの4割五分で維持・管理運営費を賄う。足りない分はギルドが持つ。以上だ。契約のサインを頼む。」


「みんな、この契約で大丈夫よね。特に、アンディーとレイは、達成できるかしっかり判断して。できるなら契約するわよ。」


「問題ない。」

「大丈夫。」


 アンディーと僕は答えた。


 ギルドとの契約は直ぐに終わった。ギルマスは、この討伐依頼を直ぐに掲示することと、他のギルドへも募集掲示を依頼することを約束してくれた。


「じゃあ、ロックバレーに行って拠点作りとロックリザードの皮集めよ。」


 僕たちは、直ぐにロックバレーに向かった。

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