第87話 シエンナの加入

 ギルド会議室には、手紙をにらみつけているミラ姉がいた。


 「どう書けば不敬にならない!」


 文章が浮かばないようだ。金の無心を失礼にならないようにできれば、一流の詐欺師か財務担当大臣にもなれるかもしれない。


 「レイ、あんたも考えてよ。書きたいことは、ロックバレーには、10000頭程のロックリザードがいたこと。私たち4名だけでは10000頭の討伐は難しいため、冒険者ギルドへ依頼したいこと。討伐報酬として一頭に付き銀貨5枚をだせるようにギルド依頼金を負担して欲しいこと。つまり、1頭討伐のギルド依頼金は、銀貨6枚になってしまう。ってことよね。」


 「不敬なんて考えると面倒くさいことになるから、宰相閣下宛てにミラ姉が今行ったことを王様にお願いしてくださいって書いたら?」


 「それ良いわね。宰相閣下なら不敬なんて言わないだろうし…。」


 早速、宰相閣下宛てにミラ姉がさっき言ったことを手紙にして送った。ギルマスに見せたら、絶対やめとけと止められたけど、ギルド依頼はしないと10000頭のロックリザード退治にどのくらいの時間がかかるか分かったものじゃない。宰相閣下は優しいから大丈夫だ。


 手紙は、郵便用の金属筒の中に入れてドローンに持たせ、王都に向かわせた。今日できることはこれで終わり。会議室から出て1階に降りていくとシエンナがいた。


 「シエンナ…、あっ、やあ。王都ぶり…。元気になったかい?」


 「あっ、レイさん、アメリア…さん。こんにちは。元気に…、ええ元気です。」


 「シエンナちゃん、どうしてフォレストメロウに来ているの?」


 「あの…、無理だとは思いながら来てしまいました。お試しで良いんです。お願いできますか?」


 「僕たちにできることなら、ねっ、ミラ姉。」


 「ばか!何の願いかもわからいで…。シエンナちゃん、お試しのお願いってなに?」


 「あの…、アメリアさんのパーティーにお試し加入させていただけないかというお願いです。私、職業は」


 「ストップ!こんなに人がたくさんいるところでして良い会話じゃないわ。どこかに場所探しましょう。」


 「ティア、会議室借りれるかしら。ギルマスに聞いてみてくれる?」


 受付のお姉さんがバタバタと走って行った。お姉さん、ティアさんって言うのか。

ティアさんは、直ぐに戻って来て会議室を案内してくれた。


 「じゃあ、改めて、シエンナちゃん。どうゆうことかしら。」


 「言葉通りなんですけど…、皆さんの…、アンデフィーデッド・ビレジャーのパーティーメンバーに入れていただけないかということです。お試し加入でもいいので、加入させてくれませんか?私の力が及ばないで、皆さんのお荷物になるのなら諦めます。お願いします。」


 シエンナは、90゜オーバー礼だ。


 「はい。あなたの願いは分かりました。はっきり言って、私たちはあなたが憧れるほどのパーティーではないわよ。私たち、アンデフィーデッド・ビレジャーとして登録したのは、およそ7カ月前なのよ。」


 「れそって、すごいです。わずか7カ月でBランクまで昇給するなんて。」


 「じゃあ、もっとびっくりすこと教えてあげる。実はね。1カ月前まで、初級冒険者だったの。もちろん、じきに、DかCランクにはなれるはずだったけど。それが、わずか一月ほどでBランクだなんて、嘘みたい。でしょっ。」


 「どうして?どうして、一月でそんなに変わることができたのですか?」


 「レイが加入したからよ。」


 「えええ?」


 「そうよね。最弱のレイなのだから、『えええ?』ってなるの当然だわ。でも、レイが私たちのパーティーに入ってからなの。様々なクエストが短時間でかつ、安全に達成できるようになったのって。だから、私たちは、そんなに大したパーティーじゃないの。幸運が重なっただけ。レイのおかげでね。」


 「ミラ姉、それじゃ、最弱のの僕から一言ね。うちのメンバーは、すごいと思う。でも、一番すごいのは、お互いの力を信じながら連携取れるところだよ。僕も、ようやく少しずつその中に入ることができるようによなった。」


 「連携ですか?わ…、私もご一緒に連携が取れるようになると思いますか?私の仲間とは連携が取れずに、仲間の方から崩されて行ってしまいました。」


 「えっ?どういうこと?シエンナが、前じゃないの?シエンナが崩されなかったら、パーティーは崩れないはずじゃ…?」

 ミラ姉が聞いてきた。


 「そうだよね。シエンナは、盾使いなのでしょう。前衛で、攻撃をコントロールして自分たちの攻撃につなげる職業何でしょう。」


 「そうです。しかし、私は、できなかった。前からやってくるゴーレムを捌きながら、後ろで攻撃される仲間たちのガードをすることは。」


 「どうして?あなたたちのバーディーは、どんな隊形を取っていたの?4人パーティーでしょう。」


 「ごく一般的な隊形で、ゴーレム階層は、受け流しながら次の階層に行くはずでした。自分たちを守るために戦う。ゴーレムを倒すことを目指さない。その約束でゴーレム階層を抜けようとしました。甘かった。」


 「どうして?ゴーレムは、そんなにいやらしい動きや罠を仕掛けたりはしないわ。群れになっている場所に入らない限り、野盗どもを受け流しながら、戦っていたあなたなら余裕があるはずよ。」


 「でも、仲間たちは、群れがいる場所に誘導された。殿でゴーレムの攻撃を防いでいた私を引連れながらゴーレムのモンスターハウスへ。」


 「そのモンスターハウスで全滅したのね。」


 「はい。どうしようもなく、あっという間でした。私、ひとり、目の前のゴーレムを受け流し、大きなダメージを追いながら下の階へ移動するだけで精一杯でした。しかし、あなたたちとならそんな状業でも連携できる。私は、あの状況で崩されていった仲間との連携を知っている。そして、あなたたちなら崩されないイメージができる。だから、お願いです。お試し加入でも良いから、一緒にパーティーを組んでみて欲しいです。。」


 「シエンナちゃんの願いは良く分かったわ。わたしも、シエンナちゃんが同じパーティーにいてくれたら嬉しいかもしれない。でも、次は、Cランク魔物のロックリザードを高速で狩る必要があるクエスト。シエンナちゃんとの連携の成果が顕著になるクエストよ。それでも、一緒にやってみる?」


 「はい!」


 「ミラ姉、カッコいいこと言ってるけど、王都からは、まだ返事なんて来ていないよ。本当に大丈夫なんだろうね。」


 「大丈夫だって、きっと。」


 「それとね。シエンナには、辛い連携をしてもらわないといけないかもしれないよ。それでも、僕たちとパーティーを組んでくれる?」


 「どういうこと?」


 「今回のクエストでは、シエンナの役割は、盾。倒すことができる数のロックリザードを冒険者に割り振ること。必要以上の数のロックリザードを冒険者の方に入れないこと。そこに、ミラ姉たちの力は、借りることができないと思う。それでは、誰にシエンナの背中を守ってもらうか…。ここに置くことができるのは、シエンナが使役したゴーレム。でも、前のパーティーを全滅させたゴーレムと組むのは怖かったり、辛かったりしないか?」


 「ゴーレムの使役。やってみたい。私の恐怖を振り払うために。宜しくお願いします。」

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