第83話 商隊救助

 時速180km。時刻は、3時。野営地についた商隊は、移動をやめて野営の準備を始め、次の野営地へと急ぐ商隊は、近くなったはずの目的地へと急ぐ時間だ。


 ミッドリバーを出て20分程の距離、先頭のアンディーが右手を上げた。止まれの合図だ。


 「僕も気が付いた。近くで戦闘が行われている。」


 「魔物の気配はない。多分、野盗と商隊の戦闘だ。どうする。」ロジャーが気配を探ってミラ姉に確認した。


 「ブランドンさん、ウィルさん、王都の騎士団としては、野盗逮捕に向かいますよね。」


 「「協力してくれるか。アンデフィーデッド・ビレジャーの諸君。」」


 ブランドンさんとウィルさんから僕たちへの依頼だ。


 「「「「勿論です。」」」」


 「急ぐぞ。」


 「私が先頭、次がウィル。その後ろからロジャー、アンディー、アメリア、最後がレイだ。」


 「会敵までは、1分もかからないだろう。全速で行く。レイ君遅れるな。」


 「はい。」


  1分でできること、


 「アルケミー・コーシェン」


 ググーッと魔力が消費された。


 戦闘場所に到着した。


 ブランドンさんが、大きな声で野盗を威圧した。


 「王都騎士団・ファルコンズ・フラッピング・ナイツだ。」


 ほとんどの野党がブランドンさんの方を見た。


 僕は、前に出てブランドンさんの横に移動した。


 「コーシェン・動くな~!」


 残りの魔力を乗せて野盗を威圧する。


 野盗は、動きを止め、動くことができなくなった。


 「ウィルさん、馬車のが実に一人いる。」


 ロジャーが、ウィルさんに伝えた。


 ウィルさんが馬車の陰に駆け寄り、野盗の腹にこぶしを撃ち込み、腹を押さえて屈んんだ男の手を取って地面に打ち伏せた。


 ウィルさんはやっぱり強かった。カッコ良い。


 動けなくなった野盗をみんなで縛り上げて行った。野盗は、全員で15人だった。僕は、ゴードンたちを移送した時に使った牢屋付きの馬車を出して、野盗を詰め込んだ。


 僕たちの到着が早かったからか、商隊の商人にも傭兵にもけが人はいなかった。馬車も馬も無事だったため、ここから10km程進んだ野営場までいって野営すると言ってきた。


 僕たちのパーティーの名前もきちんと告げておいたから、商人ギルド経由で報告してくれるだろう。


 「こいつらどうしましょう。」


 僕は、ブランドンさんたちに尋ねた。


 「この馬車を引くと、時速30km以上は出せないんですよ。転倒してしまうからですね。」


 「一番近い町までもおよそ60kmは、離れているからな…。」


 「私たちが、ミッドリバーを出て、まだ30分しか経っていないな。ウィルさんが時計を見て行った。」


 「そうですね…。それがどうかしたのですか?」


 「騎士団から2人こちらに派遣してもらおう。その2人に移送を依頼する。」


 「えっ?でも、騎士団の方が来るまで誰が待っているんですか?」


 「ん~~~。一番早く走る、ロジャーとアンディーしかないだろうな。」


 「王宮ドローン。着陸だ。」

 ブランドンさんが命令すると金色のドローンが着陸した。


 僕が紙と鉛筆を精錬して、手紙入れの筒を出してあげた。


 ブランドンさんが野盗の受け取りの為、二人こちらに向かわせる指示と、この手紙を受け取ったら、ドローン1号に受け取った場所を書いて渡すように書いてもらった。筒の中に白紙の紙と鉛筆を入れておくことを忘れていない。


 僕は、ドローン1号に王宮ドローンと一緒に騎士団を追って、手紙を受け取ったらロジャーとアンディーに届けるように指示を出した。


 「王宮ドローン、騎士団に出紙を届け、私たちの元に戻るのだ。行け!」


 2台のドローンは、指示を受け、騎士団に手紙を届けに行った。


 僕は、ゴーレムバイクを一台精錬して、アイテムボックスから出した。


 「このゴーレムバイクを移送の為に使ってもらうため貸し出します。マウンテンバイクより、安全に短時間で一番近い町までこの牢付き馬車を持って行くことができると思います。それと、この馬車とゴーレムバイクは、次に王都に行ったときに受け取ります。」


 「分かった。宜しく頼む。移送の為にここに来た騎士には、アンディ様たちからお伝えください。」


 ブランドンさんは、アンディ―を様付けだ。グルって呼んでたし…。


 「ロジャー、アンディ―、後は、宜しく頼む。」


 ミラ姉が二人に頼み、僕たちは出発した。


 ミラ姉、ブランドンさん、僕、ウィルさんの順番だ。コーシェンの魔術を精錬して使用したため、僕の魔力は、カスカスだった。次、ちょっと大きな魔力を使ったら久しぶりに魔力切れで気を失いそうなくらいカスカスだった。


 どうにかこうにか、ブランドンさんの後ろについて行って、1時間20分ほどで開拓村に到着した。時刻は、4時40分になっていた。


 「ようこそいらっしゃいました。ここが、私たちの拠点。開拓村です。」


 ミラ姉が、ブランドンさんとウィルさんに笑顔を向けた。


 「ここまで、有難うございました。皆さんの拠点に連れて行っていただければ嬉しいのですが…、宜しいですか?」


 「全然かまいませんが、狭くてみすぼらしい家ですよ。それでも大丈夫ですか?」


 「「勿論です。」」二人の声が揃った。


 みんなで家に帰って、お茶の最中だ。焼き菓子も出している。宿で出たデザート系は何種類か精錬して出してみた。3人とも美味しそうに食べてくれた。それよりも、ポーションジュースが嬉しいようだ。みんなお替わりしていた。


 5分もしないうちに、甲高い音を響かせてドローンが帰って来た。調剤ギルドと冒険者ギルドのドローンは僕たちと一緒についていたから、王宮ドローンとドローン1号が戻ってきたら全部そろったことになった。


 僕たちが村について1時間ほどした頃ロジャーとアンディーが村に戻って来た。時刻は5時40分。まだ、十分に明るい時間だった。


 家に帰って来た二人にポーションジュースと焼き菓子を渡し、みんなでフォレストメロウの町に向かった。開拓村には、宿がないからだ。ブランドンさんたちを宿屋まで案内して僕たちは、村に戻った。


 家に戻って荷物を片付け、食卓に集まった。王都の依頼では、Bランクまで昇格させてもらった。運が良かったと言えばそうなのだけど、僕たちの実力もかなり上がったと思う。もう少し経験を積んだらAランクに昇格させてもらってもいいくらいアップしたんじゃないだろうか。


 このひと月、色々あって目まぐるしかったけど楽しかった。王都からの依頼での一番の心残りは、今日、王都を出発するときにミーシャ様とチャールズ様にしっかりと挨拶ができなかったことかもしれない。


 お手紙を書いて、謝ろうと話をしながら、宿の朝食メニューから美味しかったもののリクエストを聞き、ご馳走を食卓に並べて、反省会と言う名の打ち上げパーティーをした。


 僕たちだけで、ワインを開けるほど、僕たちの舌は、大人になっていない。ジュースで乾杯してご馳走を食べて、話して笑って楽しい時間を過ごした。夜はあっと言う間に更けていった。


 

 

 

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