第81話 帰郷の挨拶

 まず、調剤ギルトに立ち寄った。いつもの受付のお姉さんの列に並ぶ。


 「レイ様。アンデフィーデッド・ビレジャーの皆さん。ようこそいらっしゃいました。ギルドマスターがお持ちです。ギルマスの執務室にいらして下さい。」


 何か約束していたっけ?僕たちは、お姉さんの案内を断って勝手に執務室に歩いて行った。


 『コン・コン・コン』

 「アンデフィーデッド・ビレジャーです。入室の許可をいただけますか?」


 「おおっ、お待ちしていました。入って下さい。」


 「失礼します。」

 僕たちは、揃って部屋に入った。


 「あの…、私たちに何か御用でしょうか?」


 「まず一つは、上級ポーションの注文が箱単位で入っているのですが、最短でいつ、何本卸して下さるかということ。二つ目は今後の注文方法についてです。いずれフォレストメロウにお帰りになるのでしょう?」


 「私たちもそのこと?についてお話に来ました。明日の午後、フォレストメロウに戻ろうと思いまして、そのご挨拶に伺ったのですが…、その前に、ブラウン様の御用にお答えしないといけませんね。レイ、一つ目の御用に応えて。」


 「箱単位の注文の件ですが、体力回復ポーション、毒消しポーション、状態異常解消ポーションは、二箱えっと20本を二つだから、40本ですね。魔力病薬は、5回分の材料しかありません。ですから5回分です。」


 「それは、あの…、いつ、卸して頂けますか。」


 「今で良いですよ。」


 「お願いします。代金は、直ぐに準備させます。その数であれば、準備することができます。確認なのですが、一本の値段は、金貨で、体力回復ポーションは、10枚。毒消しポーションは、6枚。状態異常解消ポーションは、20枚。魔力病薬は、50枚で宜しかったですよね。」


 「はい。間違いありません。ですから、400枚、240枚、800枚、250枚で、1690枚ですね。ただ、箱はありませんので、準備していただけますか。できれば、それぞれ一箱ずつ多めに準備していただけませんか?箱は、購入いたしますので。魔力病薬の容器も準備お願いします。販売用の物を持っていないので、高級魔力病薬用の容器です。」


 「畏まりました。直ぐに、準備させますので、まだ、出してはいけませんよ。大切な物なのですからね。」


 ギルマス大慌てだ。バタバタと指示を出し、箱やら容器やらを準備させた。


 「あの…。お金は、僕のカードで良いので急がなくて大丈夫です。箱代と容器代は、金貨1枚で足りますか?」


 「箱代など頂きません。それにそんなに高価ではありません。」


 「それは、申し訳ないです。では、サービスで、初級ポーションを5ℓお付けします。容器は、準備していただいて宜しいですか?サービスですから、販売方法や値段はお任せします。」


 また、ギルマスが大慌てで大型のポーション樽を準備させた。


 (ポーションを入れる樽があるんだ…。)


 まず、樽に5ℓの初級ポーションを入れ、箱や容器を準備してもらっている間に、毒消しポーションと瓶、体力回復ポーションと瓶を作った。状態異常解消ポーションは、作っていたものがあったから、余裕だった。


 箱が来た。アイテムボックスの中に収納し、中にポーションを20本ずつ入れて机の上に並べた。


 魔力病薬は、容器を持ってきてもらってから精錬した。容器を収納して、出来上がった薬を中に入れて机の上に並べた。高い容器の中に入っているとよく効く薬のように見えてきた。箱や容器も精錬したから、次から自分で作ることができる。材料は、魔石と材木と釘と魔力だけだった。


 (実際、驚くほどよく効くようだけど…。)


 「これで、一つ目の用は、解決しましたね。二つ目ですが、王室の皆さんからの依頼と同じなので…。では、調剤ギルトのドローンを僕たちと一緒に村まで行かせて、調剤ギルトまで戻らせましょうか?僕たちを信頼して頂けるのならばですが…。」


 「勿論、信頼しています。全面的に。では、フォレストメロウに戻るとき私共のドローンを同行させてください。よろしくお願いいたします。」


 「では、ブラウン様の用は、お済みになりましたか?」


 「では、もう一つ。」


 「何でしょう?」


 「いつか、皆さんの村まで遊びに行ってもよろしいでしょうか?」


 「え?うちの村ですか?何もない小さな村ですよ。」


 「そうです。皆さんの小さな村に行かせてもらって宜しいでしょか。」


 「勿論です。その時は、大歓迎します。」


 僕は、応えた。本心から。普通の人には、2週間以上もかかるとっても遠い所だけど、本心から言ってくれるギルドマスターの言葉が嬉しかった。


 「では、明日。正午の鐘の頃、王都の門から出発します。ドローンには、魔力を満タンにしておいてくださいね。それと、ドローンを介して薬のやり取りをするには、僕たちもマジックバッグの魔石に魔力登録をしておかないといけません。」


 「どなたの魔力を登録して頂けますか?」


 「では、僕が。僕のアイテムボックスがポーションの保存に都合が良いのです。」


 僕の魔力を調剤ギルドのドローンのマジックバッグに登録した。次は、王宮に向かおう。


 さっき、ミーシャ様たちとお別れしたばかりなのにもう王宮に向かうなんて…、やっぱり気まずい。フォレストメロウに帰ることをこっそり伝えよう。宰相閣下に伝われば、手はずを整えてくれるはずだ。


 「流石に、ドローンに手紙を持たせて伝えるのは失礼だよね。」


 僕が言うと


 「何バカなこと言っているの。不敬罪で牢屋に入れられても知らないわよ。」


 ミラ姉に一喝された。それで、しょうがなく、僕たちは、王宮に向かった。



 王宮を尋ねると直ぐに王様の執務室に案内された。いや、連行された。


 「お主ら、何故、王室の依頼を終了したのに報告に来ないのだ?」


 「「「「えっ?」」」」


 「私たちは、後は、ギルドに行って依頼の評価を窺うだけだと思っていました。」


 「仮にも王室依頼なのだぞ。そのようなはずはないだろう。お主らへの依頼、ミーシャ様もチャールズ様もS査定を渡すというのだぞ。そんなこと認められるはずないだろう。そのようなことをしたら、お主らを急にAランクかSランク冒険者にしろと王室から要求するということだぞ。できるはずないだろう。お主らは、来るべきなのだ。執務室に来ないといけないのだ。分かったか?」


 宰相閣下の勢いは止まらない。でも、ミラ姉が止めた。


 「分かりました。では、王女殿下と王子殿下に私たちへの評価をA査定にするようにとお伝えください。今、私たちは、上級冒険者になることを望んでいないと。」


 「俺たちの望みは、もうしばらくBランクのままで経験を積むことです。」

 ロジャーが答えた。


 アンディーは、コクコクと頷いている。


 「承知した。お主たちの願いであれば、王女殿と王子殿下も承諾なさるだろう。」


 「「「「よろしくお願いします。」」」」


 「ところで、お主らの用向きとは何なのだ。」と宰相閣下。


 「はい。明日の午後、フォレストメロウに帰郷いたしますので、そのご挨拶です。」


 ミラ姉が、簡潔に答えた。


 「何…。それは、急ではなないか。何かあったのか?」


 「急という訳ではなく、フォレストメロウの調剤ギルドと冒険者ギルドのギルドマスターが、王都に到着して魔術契約を行うまでの滞在予定でしたから。明日の午前には、終了する目途が立ちましたので、その後、帰郷しようということなのです。」


 「そうか。それでは、しょうがないな。気を付けて帰るのだぞ。」


 「あっ、王宮に来たついでという訳ではないのですが、ドローンの改造をさせて頂けないでしょうか?」


 「ん?どういうことだ?」


 「先日、フォレストメロウまでドローンを飛ばす実験を行ったのですが、その際、ドローンにアイテムバッグを持たせるより、合成しておいた方が安全だということが分かったのです。勿論、そのバッグと違うバッグを持って移動させることもできます。それで、王宮のドローンにもアイテムバッグを合成させて頂こうかと思いまして。宜しいでしょうか。」


 「そう言うことであれば、是非とも頼む。」


 王様の鶴の一声でドローンとアイテムバッグが持ってこられ。合成は直ぐに終了した。


 「では、失礼します。」


 「大儀であった。では、明日、王門で。」


 「???」

 (何故?明日?大門?)


 最後、不穏な言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。


 僕たちは、王期中を後にした。


 冒険者ギルドには、明日、朝一番で顔を出すのだから、挨拶はその時で大丈夫だ。 



 


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