第80話 帰都
2学期2日目。
授業が、始まった。久しぶりの授業だ。1年から3年までの教科書の内容は収納しているから理解できないことはない。まあ、一日目から授業が進められることはなく、夏休みの宿題が集められて、質問タイムが取られただけだった。
僕は、宿題を提出していなくて良いと言われているので、特に何をすることもなく一日が過ぎて行った。給食は、まあまあだったよ。
ちょっと時間を持て余しすぎて、ダイアリーを覗いてみた。レイは、必要なこと以外書き込まないけど、もう一度、読み返してみよう。
レイから聞かれたことの返事に
ドローン
マウンテンバイク
回転するエンジンのことを伝えた。
レイは、どのくらい実現させたのかな…。
マウンテンバイクとエンジンで自動運転のゴーレムバイクは作ったと知らせてきた。
ドローンはどうなったのだろう。人を乗せて飛ぶことができるドローンなんて作ったりしたのかな…。
異世界の科学で実現できる夢を想像しながら、少し退屈な授業のゆっくり流れる時間をやり過ごしていった。
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朝食を済ませて、荷物をまとめると別荘の前にバイクを並べて待っていた。
ミーシャ様とチャールズ様は、朝食の時に、まだ帰りたくないと駄々をこねていたが、ボールス様とドリー様に、諫められていた。
しばらくして、少し目をはらしたお二人と、ボールス様とドリー様が出てきた。
「アンディー様、アンデフィーデッド・ビレジャーの皆さん。これからも、私たちの指名依頼受けてもらえますか?」
「絶対、受けてください。お願いします。」
チャールズ様が、ミーシャ様に被せる様に言ってきた。
(王族のお願いは、命令なのですよ。チャールズ様…。)
「チャールズ様、そのようなことを言うものではありません。」
ドリー様が、チャールズ様をお諌めしてくれた。
「す…、すまない。今のお願いは、撤回する。忘れてくれ。」
チャールズ様は、ドリー様の意をすぐにくんでくれたようだ。
「お気遣い、感謝したします。でも、お二人には、お約束したはずです。何かあれば必ず参上すると。ですから、ご安心ください。次の機会、お待ちしております。」
ミラ姉は、お二人の気持ちを汲んでそう伝えた。
(そうだね。王族からの指名依頼は怖いけど、二人は、可愛いから大丈夫。大歓迎だよ。)
「ありがとう。ミラ。」
チャールズ様は、涙声でお礼を言ってくれた。
ボールス様とドリー様も頭を下げている。
「では、出発するぞ。隊形は、来た時と同じだ。」
『「はい」』
全員が返事をする。
別荘の前に使用人たちが全員並んで見送りだ。グリーンレイクの住民たちには、王族が来ていることは知らせていないから見送りに来る者はいない。
「次の休憩地はメーソリータウン近くの馬車止めだ。ここから1時間もかからないだろう。ブランドン、頼んだぞ。」
「はい。」
「出発。」
ボールス様の合図で出発する。
行きよりも、スピードが上がっている。帰りは余裕があったので、索敵をかけたが、どのような魔物も近づくことができていない。
気配に気づいて、近づこうとした時には、通り過ぎていっているという感じだ。時速120kmは出ていると思う。
50分もしないで休憩予定地に到着した。
「ブランドン様、索敵しましたが、周りに魔物や怪しい人の気配はありません。」
僕、ロジャー、ウィル様が索敵結果を報告する。
「うむ。私も索敵したが、怪しい気配は感じない。」
僕は、東屋を出して、ジュースや軽食を並べた。
みんなで、途中の景色や追い越してきた魔物のことなど話しながら、休憩時間を過ごした。
昨日の夕食の時は、僕たちの話が中心だった。ウィルさんは、ウェポンバレットのことを聞きたがったが、ミーシャ様からの質問攻めに抗しきれなかった。山道の走り方、マウンテンベアーとの戦い、滝のこと、峠からの景色…。
休憩の時は、ウィルさんが頑張った。ウェポンバレット組が昨日何をしていたのかを聞き出そうと食い下がった。
「そうなの。私、ロックバレットができるようになったのよ。」
ミーシャ様は、アンディ―と魔力を循環させる練習方法を使ってロックバレットの中の石礫を発出させることができるようになったのだそうだ。石礫は、生成することはできなかったから、地面に落ちている石礫を使って発出させる方法を練習したのだそうだ。
ボールス様とブランドン様は、武器を作るクリエートの魔術を練習する前に、アンディーが作った木の武器をマジックバッグの中から肩の周りにセットし発出する練習から初めてボールス様は、50個、ブランドン様は30個の木の武器を発出できるようになったと言っていた。
最終的には、ボールス様は、手元に鉄のブロックがあればウェポンバレットをできるようになったと言っていた。アンディーと同様威力が強すぎて、練習場所に苦労しそうだと笑顔で教えてくれた。
ブランドン様は、まだ、クリエートの魔術をマスターできていないらしい。でも不格好ではあるが、ナイフの形は作ることができるようになったと胸を張った。
アンディーと魔力を循環させてクリエートの魔術を習得できたからといっていた。たしか、グル・アンディ―と言っていたような…。アンディーの弟子が一人増えた。
そんな話をしていると休憩時間はあっと言う間に1時間を超えてしまった。
「思った以上に時間が過ぎたようだ。正午の鐘の前に王都に着くように出発する。」
ボールス様の声に皆反応し、出発の準備を整える。
「では、出発する。」
『「はい」』
全員で返事をし、隊形を整えて出発した。
1時間後、王都の門の前に到着した。
「アンデフィーデッド・ビレジャーの諸君、今回の働き、誠に見事だった。本当に感謝する。」
「ミラ、アンディー、ロジャー、レイ、本当にありがとう。楽しかった。」
チャールズ様が、感謝の言葉をかけてくれた。
「私からも、心からの感謝の言葉を みなさん、ありがとう。」
僕たちは、王室の皆さんを門の前に立ち見送った。メーソリータウンから、出発前にドローンを送り、手紙を届けていた為、到着した時には、騎馬隊が待っていた。
騎馬隊に囲まれ、バイクに乗って王都の民に手を振りながら王宮へ向かうチャールズ様とミーシャ様。僕たちは、後ろから騎馬隊が見えなくなるまで見送った。
宿に戻ると、フォレストメロウの冒険者ギルトのギルマス、チェイスさんから伝言が届いていた。
『明日の朝、冒険者ギルドの会議室で魔術契約を行う。チャップリンは、今日の夜には到着する。』
と書いたメモを預かった。シンプルだ。分かりやすい。
宿で装備を外して、普段着に着替えた。僕たちは、王都でたくさんの服を買った。王都って、村にいる時みたいに着た切り雀では、いられない場所なんだ。
かなり服を買ったけど、全員分でも、金貨2枚もかかっていない。そのくらいの値段の普段着だ。
普段着のまま、軽食を食べに町に出ることにした。マウンテンバイクで長距離を走るとお腹がすくのだそうだ。僕は、空かないけど。ゴーレムバイクには、魔力を補充したよ。3分の1も減っていなかったけど。
軽食を済ませると時刻は1時を過ぎていた。王都に着いたのが11時頃だったから2時間立っただけか…。ここ二日は充実していたから、ぽっかり空いた時間がゆっくり進む。
明日は、午前中で魔術契約が終了するなら、午後にはフォレストメロウへ向かって出発することになるな。
「ミラ姉、明日フォレストメロウに帰る?」
「そうね。王都での用事は明日の午前中には終わってしまうからね。」
「じゃあ、王宮と、調剤ギルトには知らせておかないといけないんじゃない?」
「そ…、そうね…。じゃあ、みんなでお別れの挨拶がてら知らせに行きましょうか。」
「そうだね。ちょっと気が進まないけど、しょうがないよね。挨拶は大切だから。」
僕たちは、お世話になったところに挨拶に回ることにした。
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