第38話 休暇
調剤ギルドを出ると直ぐに教会に向かった。まだ、太陽は空の高いところにある。
数日前に来たばかりだが、教会にシャルたちが滞在している為なんか華やかな感じだ。花壇に花も咲いている気がする。植えたのかな…。
教会の裏の畑は、荒れている。瓦礫置き場になっていたのだからしょうがないのだろうけど…。シャルたちと一緒に種買いにいこうかな…。
「今日は~。」
「あ~っ、レイ君」
シャルが一番に見つけてくれた。
「みんな、落ち着いたかい?」
「う~ん?これからどうするかって考えるとねぇ。このままこの教会にいるわけにもいかないしねぇ。」
シャルと一緒に連れてこられていたお姉さんが愚痴っていた。そうだよね。これからどうするのが一番いいのかな。
でも、今日は、野菜の種買いに行こう。
「ねえ。今から、教会の裏に畑作ろうと思うんだけど手伝ってくれない?」
「良いわよ。前の教会では、私たちが畑の世話していたのよ。ねぇ、シャル。」
「で、畑に何を植えるの?今から秋に向けて収穫できるものって限りがあるわよ。」
「とっても良い肥料と良く育つ薬を手に入れたから夏野菜を植えてみようと思うんだよね。種や苗の費用は全部持つから手伝ってくれない?」
「ええええっ。今更夏野菜植えても育つ前に夏終わっちゃうじゃない。」
「そう思うよね。だから態々お願いしてるんだよ。とにかく騙されたと思って、手伝ってよ。」
僕はまず土魔術で土を耕すことから始める。この時にゴブリンの村の灰を漉き込む。魔力をふんだんに含んだ灰が土に漉き込まれる。
土が柔らかくなるとシャルたちがみんなで畝を作る。流石に慣れている。前の教会で畑の世話をしていただけある。
教会の裏の広場が三分の一位畑になった頃アンディとロジャーがやって来た。
「レイ。何やってんだ?」
「畑を作ってるんだ。ロジャーとアンディーも手伝ってよ。僕が、土を柔らかくするからロジャーとアンディーで畑にしてよ。それと、壁側をベリーとピーチの果樹園にしたい。」
「おっおう。良く分からんが、分かった。とにかく手伝えばいいんだな。」
「そう、まずアンディは土魔法で僕が灰を混ぜん込んだ土を細かく柔らかくしてほしい。ロジャーは畝つくり、OK?」
「OK。やってみよう。」
とアンディ。
「よっしゃ。シャルちゃん、一緒に畝つくり頑張ろう!」
みんな頑張った。本当に頑張っていた。
そして、
一時間もしないで畝づくりが終わった。
「まず、今日採集してきた木の実を食べよう。喉乾いただろう?」
僕はアイテムボックスの中のモモとベリーを渡した。畝づくりで喉が渇いてた皆はおいしそうにベリーやモモを食べ、種をだした。
ベリーの種は飲み込んでしまうから、残っているベリーを種として使う。
初級回復ポーションを種と混ぜる。種にポーション液を浸透させる反応を精錬魔術で進める。これで、準備は終了。
種をアイテムボックスから出すとシャルのお姉さんたちに壁際の果樹園スペースにベリーとピーチと分けて植えてくれるように頼んだ。
その間に僕は、シャルを連れて野菜の種を買いに行った。
果樹園の種植えはロジャーとアンディーも一緒にやってくれてるから種を買ってきたころには終わっているはずだ。
市場の種や苗を売っている場所に行くと夏野菜の種を買いまくる。売れ残りの種だから買うとオマケしてくれる。
来年用に安いうちに勝っている人みたいだ。熟したトウモロコシやトマトは、八百屋に売っている。サトウキビの種もまだ売っていた。
ジャガイモは、八百屋で買った。人参もルッコラや玉ねぎも買った。色々な種類の夏野菜を種や塾した実などいろいろ買って収納し、ポーションに漬け込んだ。ジャガイモは、切ってポーションに漬け込んで、切り口に灰を付けた。
「よし、シャル。畑に戻るぞ!」
「はーい。レイ君」
僕たちは、畑に戻ってポーションを浸透させた種を植えた。
トウモロコシ。トマト。ピーマン。ルッコラ…。沢山の種類の野菜を植えて、夕方になった。
全部の畝に野菜の種を植えたけどたくさんの夏野菜が残っていた。
僕は、教会にいってマリンさんに渡した。きっと美味しい晩御飯を作ってくれると思う。
森で狩っていたフォレストシープの肉も少し置いてきた。僕たちは、今日お祝いをする。シャルやケインたちも楽しいんで欲しい。
さあ、今から町に出てお祝いだ。それにしてもミラ姉遅いなぁ…。
もうすぐ夕方。宿を決めたらすぐに教会に来ると言っていたから、ミラ姉が一番に来ていてもおかしくないはず。でもまだ来ていないのは、何かあったから?
「ロジャー、アンディー、ミラ姉が来ないのっておかしいよね。どうしてだろう。」
「そうだな。教会で落ち合おうって言ってたのにな。宿、確認に行ってみようか。」
「俺が言ってくる。みんなで動いたらミラ姉が来た時、すれ違いになる。」
「そうだな。アンディー頼む。何かあったらすぐに動くからまずここに帰って来てくれ。」
「分かった。」
アンディは直ぐに宿の確認に走って行った。
しばらくてアンディーが戻ってきた。
「宿に伝言があった。町の警備隊に呼ばれたらしい。この前突き出したゴードンが逃亡したとかなんとかで…。とにかく警備隊の詰所に行ってみよう。」
「ごめん。みんな。」
詰所に行くとミラ姉がすまなそうに僕たちを出迎えてくれた。
「ゴードンが逃亡したって聞いたんだけど、私たちは、ここ3日森に行っていたでしょう。事情が分からないのと、シャルたちのことが心配だったから聞いてすぐに一度教会に行ったのよ。そして、シャルたちの無事を確認して、キャメロンさんたちを探したり、詰所の方に再度シャルたちの警護をお願いしたり、何からしたらいいのかわからなくてバタバタしてたわ。」
「凄いな、ミラ姉。一人で何もかも頑張ってたんだね。直ぐに俺たちに知らせてくれたらよかったのに。」
ロジャーはいつも真っ直ぐミラ姉に伝える。家族なのだから当たり前だと言って。
「そうだよ。ミラ姉。僕たちなかなか頼りになるはずだよ。」
「だってさ。今日は、せっかくの休暇なのに…。久しぶりの休暇なんだよ。台無しにしたくなかったんだ。」
「で、ゴードンは、まだ、この町の中にいるみたいなの?」
「いいえ。町の外に逃亡しているみたい。キャメロンさんたちも捜査に協力してくれたんだって。ゴードンの詳しい特徴を知らせて行き来する商人たちから聞き込みをしてくれたようなの。もうこの町から一日以上離れた場所で目撃されているようよ。」
「そうか。それが分かっただけでも一安心だね。」とアンディー。
「気分を切り替えて、予定していたお祝いに行こう。」
「そうね。そうしましょう。」
僕たちは、詰所を後にしてアンディとロジャーが準備してくれた店に出かけて行った。さあ、今日は、休暇を楽しもう。
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