第36話 グリーングラス
「クハァー、良く寝た~。」
(向こうの方からなんか情報書き込んでくれてるかな~?アイテムボックス・オープン!)
(ない…。気付いていないのか…。)
僕は、テントから出て顔を上げた。
緑だ。
風が、臭いが、全てが緑だ。
昨日蒔いた西洋芝が目の前に広がっていた。一晩と数時間だぞ。
これは、自分がやったんじゃない。何かの奇跡だ。
僕は知らない。ということにするよ。
「やあ、お早う。玲。」
父さんは笑顔だ、冷たくはない。ないよ…。
「おはよ。玲。」
母さんは、少し怖い。
(ここは、引き払うかな…。でも、父さんは10万円請求したいと言っていたよな…。どうしたら良いのだろう。母さんに任せよう。)
「朝ごはん食べる?」
「う、うん。食べたいな。」
「玲?なんかやった?」
「そうだなぁ…、大したことしてないのだけど大変なことになった気がするなぁ。魔力と回復ポーションを使って種を蒔いたんだよね。うまくいったと思うんだけど大変なことになったよね。緊急脱出しようか?朝ごはん食べたら。」
「そうね。とにかく朝食にしましょう。」
僕たちは、朝食後、今日できた芝生を散歩して回った。
気持ちよかった。
さて、どんな風に説明しよう。
僕たちは草刈りをしただけだとしらばっくれるのが一番簡単。
薬草を用いた回復ポーションの実験結果とするのはどうだろう?この奇跡は回復ポーションを西洋芝に使った実験が偶然うまくいった結果とするのは面白いかもしれない。
何種類かの薬草が見つかっているから、薬草採集さえすれば回復ポーションを精錬することはできる。
しかも、今回と同様の巻き方をすれば一晩と数時間で西洋芝を群生させることは可能なはずだ。
維持についてはもう少し様子を見る必要があるが…。
「父さん、母さん、回復ポーションの実験結果偶然こうなってしまったということです。」
(回復ポーションについては、いくつも作ることができます。芝の様子は…、偶然このような状態になったのでこれからしばらく観察する必要があるということで通す。)
「ん?どういうこと?回復ポーションって草刈りした中に入っていた何種類かの薬用効果のある植物で作った薬液よね?」
「そうだよ。飲んでみる?」
「このキャンプ場の寝泊まりしている間ストレスフリーだし体力回復ポーションを飲んだとしても効果を感じることできないと思うわー。」
「じゃあ、父さんが飲んでみる。昨日の運転の疲れが残っているのと若干の二日酔いがあるから。」
僕は、回復ポーションをコップに入れて出してあげた。
父さんは、コップに一杯入れられた回復ポーションを一気に飲み干した。
「う~ん!さわやかな水みたい。…、んっなんか肩こりは消えていく。胃のムカムカはなくなった。二日酔いには良いぞるこれ!」
「でも、ここまで芝生がきれいな場所になると実験することが少し怖くなるわね。」
母さんが足元を見ながらぼそりといった。
「そうだね。この芝生を焦がしたり、枯らしたりすると申し訳ない気分になるかも…。それと、私たちのテントの下はどうしましょう。」
「テントの下の分の芝の種はあるよ。バーベキュー場にも植えていいとけどそうするとバーベキューができなくなるよね。どうしたら良いのかな?」
「じゃあ、キャンプ場を海に移動しましょう。場所は、日本海側が良いわね。国定公園の指定外の場所で何とかなりそうなところを調べてみるわ。父さんもどこか心当たりない?」
「人生で最初で最後のごり押し試してみるかな…。」
父さんはスマホを取り出すとどこかに電話していた。
「昼ごはん食べたら出発するぞ。巡検宿泊所を貸してもらった。〇〇県の琴〇浜の近くだ。ここから高速使っても6時間は掛るからな。協力頼むぞ。」
「ねえ。巡検って何なのかな?」
「宿泊研修みたいなものだよ。」
「そうなの。で、そこに泊まるの?」
「今晩から2泊な。実験施設もあるから面白いことできるかもよ。」
「おっおう!」
それから6時間ののんびりドライブ。
途中寄った小さな滝で滝を収納してみた。落ちてくる滝の水をその勢いのまま収納してみる。
アイテムボックスの使い方がずいぶん自由にできるようになった。自分から百m以上離れている場所に収納口を大きく開くことも楽にできるようになっている。
薬草の効力がある植物はかなりの種類存在する。休憩のたびに森の草花をサーチして薬草だけ回収している。
口を大きく広げることができるのと同様に検索範囲をアイテムボックスの外側に広げるイメージ。
僕を中心に一キロ半径は楽勝だ。頑張ったら2kmまでいける。その中にある薬草は根こそぎ回収できる。
「さっき、滝の近くの森に行ったでしょう。その時、近くの森をサーチして薬草を沢山収納できたんだ。魔力や魔術は熟練すれば使い方が変えられるみたいだよ。」
僕たちは、途中スーパーによって肉や野菜などの食材を仕入れた。
夕方、日が沈むまでにはかなりの時間がある17時には巡検場に着いていた。
巡検場は、海岸のすぐそばにあった。海水浴にはもう遅い8月後半だけど、夕方の海は、アベックばかりで中学3年生の僕にはかなり刺激的な風景だった。
勿論夕涼みの家族もたくさん歩いていたから、身の置き場がないようなことはなかったけど、家族ずれの散歩組はマジョリティーとは言えない。
海岸線を歩いているとざらざらした砂浜に入った。僕は、砂を手に取ると薄く広げた。色がほとんどない透明な砂が沢山手の上にあった。
父さんに見せてみると
「石英だな。ガラスの材料だ。」
と教えてくれた。
(少し多めに収納してみよう。)
海水を薄く鋭い流水にしてウォーターカッターを作ってみた。
波打ち際に近寄って海の水を収納してそれを材料にたくさんのウォーターを精錬。近くにある海藻を刈り取り収納した。
(サザエとかアワビは収納できないかな…。)
頑張った。
サーチはできた。
収納はできなかった。
生きている動物は無理だった。植物も根付いているものは無理だ。海藻は、付着器で岩や海底に付着しているものは収納できなかった。でも切除すれば収納することができた。
サザエが取りたい。でも、無理だった。
海で様々な素材を収納したけど、食材は収納できなかった。明日釣り道具を買いに行こう。
晩御飯は、バーベキューだ。この際とことんキャンプを楽しむ。
久しぶりにベッドでねた。ぐっすり寝れた。
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