第35話 ダンジョン概要

 僕たちは、ダンジョンには入らずギルド依頼を実行するため、コテージの中からダンジョン入り口の監視中だ。


 元気いっぱいの中級以上の冒険者パーティーが入り口から探索をしている最中に入り口付近で異変など起こるはずもなく、監視順を決めて見張るだけの仕事だった。


 ゆっくり時間が過ぎていくがお茶を飲んだり夕飯の準備をしながら過ごした。


 夜になって、トンカツとポトフという温かくてガッツリの晩御飯を食べていた頃冒険者たちが帰ってきた。報告会が開かれるということなので僕たちも参加することにした。


 でも、僕だけは、その間にこのコテージで監視をするパーティーにコテージの畳み方や使い方の説明や魔石への魔力の貯め方についてレクチャーすることになっている。


 僕も行きたいとかなりごねたけど誰も応援してくれなかった。パーティーは、役割分担が重要なんだそうだ。


 それでもやっぱり聞きに行きたかった。


 報告会が始まったころ監視役担当のパーティーがやってきた。


 魔石を抜いて外から見えるようにした後、魔力ランタンをいくつも点け辺りを明るくして、説明開始だ。


 急遽、撤収しないといけないときの為にまずは、畳方と組み立て方を練習しないといけない。


 僕も一度は組み立てたが、それっきりだったからかなり時間がかかった。


 説明書を見ながらなんとか収納できるように畳むことと組み立てることはできた。


 本当は何度も練習しないと緊急時に撤収することができるようにはならない気がする。だから、売れ残っていたのかもしれないな…。


 でも、ステルス性は、かなり高いから監視には役に立つはずだ。


 組み立ての前に7.5m四方の穴を掘ることを忘れないようにくれぐれも注意した。


 魔石は、僕が収納していたゴブリンの魔石の中から一番大きな物を利用する。この魔石はギルドが買い取ったものでその買い取り額は参加者パーティーに還元されるそうだ。


 パーティーメンバーみんなで懸命に魔力を貯めたが半分くらい程しかたまらず残りはサービスで僕が貯めてあげた。


 直ぐ満タンになったからみんな驚いていたが、みんなが驚くことを僕が驚いた。


 魔石に魔力がたまるとコテージに魔石をセットする方法と魔力を流す方法を実演して見せた。


 一人はコテージ内に残ってもらいコテージの外から魔力を通したコテージを見てもらった。


 「見えないな。」


 「ゴラン、索敵で捜査してみろ」


 「サーチ。…、見つからない。嘘だろ。」


 「でしょう。だから魔力を流したまま全員一緒に外に出ないことが大切です。ドアを開けていても何かのはずみで閉まってしまうかもしれないでしょう。さっき、出てきたドアから入れますか?試してみて」


 「おう。」


 索敵担当多分シーフ職のゴランさんがさっき出てきたほうに歩いて行ってドアのノブのあったあたりを手探りした。

 『スカッ』

 手探りは空振りしドアは開かない。


 「済みませーん。中からドアを開けてください。」


 さっきゴランさんが手探りしていた場所から2m程離れた場所が隙間になりドアの形が現れた。


 「じゃあ、僕が中に入ってドアを閉めるので手探りでドアノブを探してみてください。」


 僕は、中に入りドアを閉める。直ぐにゴランさんがドアノブを探し始めたが手はノブに当たらない。かなりあちこち移動しながら探したがドアノブを探し当てることはできなかった。


 「こんな風にドアから中に入るところを見られても、すぐに侵入されることはないので安心してください。こちらの声も外に漏れることはありません。でも、出入りするときが一番危ないので細心の注意をお願いします。では、ドアを開けてゴランさんを中に入れてあげましょう。」


 「こっちです。」


 僕は、ドアを開けゴランさんを中に入れた。ゴランさんにも同じことを言って地下のことを説明した。


 「地下の退避室は、もしもの時の為の場所ですが壁を破壊しないと非難道を作ることはできません。ただ、地下にも魔石をセットできて、侵入されたとしてもしばらくは、身を潜めておくことができます。小さな魔石で良いので魔力を貯めて地下室の予備魔石として置いておくことをお勧めします。そして、隙を見つけ壁を壊して脱出するのです。このコテージのすべての能力の説明は以上です。皆さんの監視業務に役立てていただければ嬉しいです。」


 「凄いな。このコテージは。ここでだったら一月だって楽勝で監視業務出来るぞ。食事の準備もこの中でやっても大丈夫なのか?例えば肉を焼いたりしても?」


 「大丈夫ですよ。でも、肉を焼いてすぐにドアを開けたら臭いは外に出てしまいます。ドア付近の匂いは結界が散らしてくれるようですが、その匂いは直ぐには消えませんから気を付けてください。注意が必要なのは出入りの時です。」


 「分かった。他に気を付けておかないといけないことは?」


 「魔石への魔力の補充は毎日寝る前にするようにした方が良いですね。全員が魔力切れするまで補充するわけにはいきませんが、空にならないように気を付けておいてください。」


 「今回の満タン状況で何日くらい持つ?」


 「一週間は補充なしでも大丈夫だとは思いますが、絶対ではありません。魔力の減り方は状況によって変わりますから。毎日少しずつでも補充してください。」


 「分かった。肝に据えておく。」


 「このコテージは、いつから明け渡してくれるんだ?」


 パーティーリーダーのディーコムさんが聞いてきた。



 「僕たちの拠点でもありますから明日の朝です。いくつのパーティは、残るようですが、基本明日には町に帰りますから。」


 「分かった。では、明日の朝、引き続きここで監視業務に入る。それまでの管理をよろしく頼む。」


 ディーコムさんたちのパーティが帰るとしばらくしてミラ姉たちが帰って来た。


 「レイ、今帰った。開けてくれ。」ロジャーの声だ。僕は窓から確認して、ドアに回って開けた。


 「お帰り。」


 「「「ただいま。」」」


 それから報告会の内容を聞きたかったのだが、すでに眠い。話を聞いても明日は町に帰るだけなんだが聞きたい。


 目がつぶりそうになりながら聞いてみる。


 「ここのダンジョンってどんなものなのか教えてくれない?」


 「そうだな。このダンジョンは、私たち向きかもしれないわね。」


 「ゴブリン以外の魔物の出現率が低い。まだ、4階層までしか調べられてないがゴブリン以外にボア・フォレストシープ・フォレストウルフなんかが今のところ見つかっているらしい。大型獣がまだ見つかっていないことが俺たち向きのところだな。」


 「それに、魔法系の魔物がゴブリン以外いないのがいいね。魔法やスキルを多用する魔物の相手は経験と知識が必要だからね。」


 ミラ姉たちの話を聞きながら僕は眠りに落ちて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る