第34話 新ギルド依頼

 「目が覚めたのね。」


 「お早う。」


 「お早う。ロジャーとアンディは、洞窟の入り口の様子を見に行っているわ。」


 「夜が明けてもゴブリンたちが洞窟から罠の道や本ルートの方に侵入しようとしては動けなくなっているって。途中からルートを外れてこちらに来ようとしたゴブリンもいたらしいけど全部黒焦げになっているそうよ。これがさっきロジャーが持ってきた情報。水魔法を使うゴブリンがいたらしいけど何の効果もなかったみたい。洞窟の入り口で倒れたそうよ。昨日のファイヤボールどれだけ熱かったのよ。」


 「思った以上に熱かったのかも…。でも、今からみんなが歩ける道を作るよ。」


 僕は、朝食を済ませるとコテージを収納してゴブリンの集落跡地入り口に行った。


 ミラ姉が言ったように何百匹ものゴブリンが折り重なるように洞窟入り口の近くに倒れていた。


 その様子を見ていると、直ぐにギルドマスターがやって来た。


 「レイ、今から洞窟までの進入路を作ってくれるか?」


 「はい。勿論です。今から初めていいですか?」


 「始めてくれ。一番早く準備ができて洞窟突入は何時間後くらいになる」


 「昼前には入り口に届くように頑張ります。でも、進みながら道を作る方が安全だと思います。何人かずつでも道づくりに同行してもらえませんか?水使いの方が一緒だと安心です。」


 「分かった。水使いを一人、B級冒険者を必ず同行させよう。じゃあ、始めてくれ。俺は、同行させる冒険者を決めてくる。」


 僕は、すぐにリキロゲンボールを0.5m間隔で横に10発づつ撃って幅5mの道を作り始めた。


 100発のリキロゲンボールを打ち終えて道を5m伸ばすごとにオキシゲンカッターは、手前から奥に向かって5発撃つできるだけジグザグになるように気を付けて撃った。


それを、繰り返し行った。


 手順を覚えたロジャー達は、僕がうっかり手順を間違えると直ぐに注意訂正してくれた。だから完璧だ。


 進み始めてしばらくは、道を歩いている時、寒いくらいだったかけど、中央付近の道を作っている時は、真夏の日向の作業位の暑さだった。


 「氷魔魔法か水魔法でもう少し通り道を冷やしてもらえませんか?」


 「そうだな。やってくれか?」


 ギルマスは、入り口からずっと道づくりに付き合ってくれている。そのギルマスの指示で僕たちに同行してくれていた水魔法使いま冒険者が道冷やすことを手伝ってくれるようになった。


 真夏の日向での作業が真夏の日陰位になった。


 かなり急いだ。10発のリキロゲンボールを5秒で撃った。


 20発は、15秒かかるけど40発は30秒だ。だから20発を1ターンと考えた方が良いだろう。


 つまり、1m進むのに15秒かかるということ。1時間で240m進んだ。大急ぎだ。


 進み始めて3時間。罠の道と繋がった。道の左側にリキロゲンボールを6発ずつ右にはゴブリンの死体が積み重なっているが気にしない。


 ゴブリンが空気をかき混ぜているから少しは酸欠状態は解消しているが酸素は足りていない。オキシゲンカッターは、確実に打ち込んでいる。


 (よし!もう少しだ。)


 それから30分後、僕たちは洞窟の入り口に立っていた。


 「ギルドマスター。到着しました。」


 「良し。ご苦労様。ギルド依頼達成してくれてありがとう。」


 ギルドマスターは洞窟入り口に全冒険者を集めた。


 B級冒険者を動員して入り口付近にいたゴブリンを掃討し拠点場所を確保するとペーステントを張った。


 洞窟攻略の作戦本部だ。作戦本部にはBランク以上のパーティーリーダーが呼ばれていた。Cランク以下の参加パーティは、その下で活動するため今はテントを張ったり、掃討範囲の見張りを担当したりしている。


 何故かミラ姉と僕も参加させられている。まあ、入って来た道が利用できなくなったり、利用させないようにしたりするためには僕の魔術が必要だからと言うことらしい。


 「さあ、これからの行動指針の確認会議だ。このペースキャンプを確保するための掃討作戦で分かったことを共有したい。死んだゴブリンが洞窟に吸い込まれたという目撃証言がいくつも上がっているが間違いないか?」


 長いあごひげをはやした冒険者が手を上げた。


 「ソーマ、何だ?」


 「俺たちが殺したゴブリンは、進化種のゴブリンマジシャンだったと思うが、すぐに吸収されて魔石だけが残っていた。これがその時残っていた魔石だ。」


 「「「俺たちも魔石だけを手に入れた。」」」


 「俺たちが、ゴブリンを倒した時は、魔石とここにあるナイフが手に入ったぜ。」


 「その他の現象に気が付いたパーティはないか?」


 ギルマスの問いに反応するパーティーリーダーはいなかった。


 「今の証言だけで確定することはできないがここの洞窟はダンジョン化していると考えることが順当だろう。しかも、スタンピード目前のダンジョンだったと考えていいのだが、昨日の殲滅作戦で状況が変わった。あふれていた魔物は掃討された。しかし、スタンピードの危険が無くなったのではない。今残っている魔物の数と種類がスタンピードの危険性を教えてくれるだろう。そこで今回の我々の任務―ギルド依頼の内容を伝える。ダンジョン内の魔物の密度。種類の調査を頼む。できる限りで良い。今日できる限り深く潜ってこのダンジョンの階層を調べてほしい。直近のスタンピードの危険性が発見されなければ新規ダンジョン発見として今回参加の連名で中央ギルドに報告する。直近のスタンピードの危険性を発見した場合は王都へ葉や馬を走らせる。よって今回の任務。


 1.直近のスタンピードの危険性の発見

 2.ダンジョンの魔物密度と種類の確認・場合によっては1と同義

 3.ダンジョン構造のできる限りの解明

 以上。


 以上3つのギルド依頼引き受けてくれるパーティーは、契約を頼む。

 ゴブリン集落の殲滅依頼は終了した。報酬は、ギルド帰還後になるが、今回、回収してもらったゴブリンの魔石の買取金額の均等分配も含めて支払われる。およそ金貨1枚と銀貨5枚程度になるだろう。以上のことを踏まえてくれ。それを踏まえて再度契約を頼む。以上だ。今回参加したパーティーリーダーは、傘下のパーティーにも確実に伝えてくれ。たのんだぞ。尚、活動開始は1時間後だ。」


 長いギルドマスターの話が終わった。その後に僕たちが呼ばれた。


 「さて、まず、レイへの依頼だが、退路の確保と破壊。次にアンデフィーテッド・ポイナーへの依頼だが、洞窟入り口でのゴブリンの行動観察。できれば、洞窟からの撤退後の監視基地の提供をお願いしたいのだが…。」

 「じゃあ、一つずつ応えていきますね。」とミラ姉。


 「レイ?依頼受諾OKよね。そして、ギルマス?この依頼も私たちアンデフィーデッド・ビレジャーへの依頼と考えて良いのですか?」


 「勿論だ。レイ君もそれで良いのだろう。」


 「それが良いです。」


 僕はしっかりと答えた。


 (「が」が大事だ。)


 「2つ目。了解した。ここまでは契約にサインしても全く問題ない。3つ目は、少し相談させてくれ。コテージをここに預けておくことについてはもう少し考えさせてほしい。」


 「レイ、二つ目までのギルド依頼についてサインしてくる。3つ目の依頼は別書面にしてもらって持ち帰ってくる。それで良いな。」


 「OKだよ。ミラ姉。」


 ミラ姉は、ギルドテントに向かい僕たちはコテージを立てる場所を決めに洞窟の外に出た。洞窟内だと岩が固すぎるし結界でもごまかしにくい。洞窟のすぐ左側だ。熱を持っている場所にリキロゲンボールを9発打ち込み冷えたところに穴をあけた。いつも通りの大きさ7.5m四方の穴を空けコテージを設置する前にコテージを精錬してみた。


「アルケミー・コテージ」

(できた。)


 たくさん狩って収納した魔物の毛皮と森の中の木。数えきれないほどのくず魔石。それらを材料にコテージができた。


 新しいコテージを設置した。びったし穴にはまった。


 今まで使用していた魔石をセットして、魔力を通してみる。ロジャーたちはまだ、外にいる。ドアを開け外に出ると結界が効果を発揮しているのが分かった。


 (準備完了!!)


 すぐにミラ姉が戻って来た。僕たちを探し辺りをキョロキョロ見回している。


 「ミラ姉!」


僕は、コテージのドアを開けミラ姉を呼んだ。


 「お帰り。契約は済んだ?」


 「ええ。今から監視行動開始。監視場所は洞窟入り口。ここの場所は都合が良いわ。それと、中から大量のゴブリンが出て来た時、可能であれば森への進入口を破壊し森に出ることができないようにすること。一匹も出すなということじゃない。この辺は自分たちの命を第一に考えろということらしいわ。」


 「洞窟からゴブリンがあふれてきたら隠れていて、あふれ出しがいったん止まったら、道を破壊して逃げればいいんだね。」


 「そんなところじゃない?」


 「俺たちの出番って言うのは?」


 「言ったじゃない、洞窟入り口の見張りよ。いざという時の道の破壊がレイ。これで大丈夫?」


 「了解です。でね。気付かない?」


 「何に?」ロジャーとアンディはニヤニヤしている。」


 「壁の色…、違うでしょう。少し茶色っぽいと思わない?」


 「えっ…?せっ…精錬できたの?」


 「さっきやってみたらできた。で、さっ。このコテージを貸出しようかと思う。このままこの場所かゴブリンの集落の入り口付近に設置して。だからギルドマスターをここに招待して場所や向きのリクエストを聞いたらどうかな思ってさ。後、買い出し料はいくらくらいが良いかな?一月金貨1枚くらい?もちろん魔石別」


 「3枚くらいから交渉したら?多分OKしてくれると思うぞ」とロジャー。

 「5枚から行こうぜ。そうしたらこのコテージ買った時の代金を回収できる。」


 アンディは言いたい放題である。交渉するミラ姉の身にもなってあげないと。


 「はいはい、はしゃがない!期間がどのくらいかにもよるけど、私たちにも重要なアイテムなんだからそんなに安値じゃレンタルさせられないわ。一月なら金貨3枚は最低、長期ならもう少し高くするわ。じゃあ、ギルマスを招待しましょう。アンディ、お茶の準備をお願いね。」


 「了解。」


 ギルマスは、すぐにやって来た。契約もすぐに済んだ。一月金貨5枚。ただしコテージの場所移動が必要な時はギルドから要請を出すから移動させることも料金に含まれている。


 勿論移動依頼を達成した時には報酬は別途出すという内容。


 コテージ内でゆっくりとお茶を飲むことができたのも良かったようだ。ギルドマスターがコテージで僕たちとの契約を詰めている時には、他の冒険者は契約を済ませそれぞれダンジョンの探索に入っていた。


 夜には探索報告を聞くことができるだろう。


 


 

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